仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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こっちも編集してみました。
よろしかったら、読んでみてください。


第2話 翠屋と美少年と待ち焦がれる想い

 映司となのはは二人並んでなのはの家に歩いて行く。 その道中映司は、なのはと何気ない話しをしていた。

 今二人がいるこの街は海鳴市内の藤見町という場所であり、なのはの家はその商店街に構える喫茶店兼洋菓子店、翠屋という地元の有名店だそうだ。 店を経営している両親は仲が良く、なのはの兄と姉もいつも優しく、大好きな家族だとなのはは話した。

 

 しかし公園でなのはが言っていたように、なのはの父親が重傷で入院し、その抜けた穴を埋める為になのはの母親と兄と姉が忙しく働いており、故になのははそんな家族達に迷惑をかけないように、さっき出てきた公園に一人居たそうだ。

 そこで映司は、なのはに言い出した。

 

「素直に、寂しいよって言えば良いんじゃないかな」

「だ、駄目だよ。 だって、そんなワガママを言ったら、なのはは悪い子になって、お母さん達に嫌われちゃうよ……」

 

 なのはの目尻にまた涙が浮かんでしまった。 折角泣き止んだのに再び泣き出しそうになり、映司は悪い事をしてしまったと思った。

 なのはの言いたい事は分かる。 まだ幼いのにここまで考えが至るのは、なのはがそれだけ聡い子ということだ。 しかし、この年頃の子供はまだ家族に甘えたいものである。

 家の事情とはいえ、幼いなのはがこれほどまでに苦しい想いをしなければいけないのか、と映司は考える。

 

 映司にはなのはに会う前の記憶が何故か無かった。 それでも自分の身の周りの知識は有る。家族というものがどういうものなのかは、知識でなら知っている。

 だが映司には、自分の家族の事に関する記憶が無い。 故になのはの、家族に甘えられない事の苦しさや、寂しさが分からなかった。

 それでもーー知識だけではあるが、家族は大切な、暖かい存在だということは知っているのだ。

 また泣かせてしまうかもしれないーーそういうことを考えつつも、映司はこの言葉をなのはに伝える。

 

「なのはちゃんはお母さんや、お兄ちゃんもお姉ちゃんも大好きなんでしょう?」

「うん……」

「だったら……お家の人達もみんな、なのはちゃんの事が大好きだと思うよ」

「!」

 

 なのはは驚いたように顔を映司の方に向ける。 そこにはやはり、暖かい精一杯の笑顔が有った。

 

「うん……ちょっとドキドキするけど……なのは、頑張って言ってみる!」

「うん!」

 

 服の袖で涙を拭きながら、なのはは映司に宣言する。

 映司はその言葉に満足したような顔をしながら、微笑みをもって応えた。

 そうして先程より気持ち軽い足取りで歩いていくと、二人は喫茶店にたどり着いた。

 

「ここがなのはのお家、翠屋なの!」

「このお店がそうなんだ……」

 

 なのはが家を紹介し、映司はそれを聞いて感慨深げに翠屋を眺めた。 喫茶店の知識は有るが、ここがなのはの家と思うとどこか不思議な気持ちに、これからの自分にとっても大切な場所のように想えたからだ。

 

「じゃあどうぞ、中に入って」

「うん、お邪魔します……」

 

 ただ喫茶店に入るだけなのに、ここはまだ家の中という訳ではないのに、映司は少しの緊張と興味と共に、なのはに促されるまま中に入っていった。

 

「ただいま~」

 

 なのはが帰りの挨拶をしながら店の奥に進んで行くのを、興味深そうに見ながら後をついて行く映司。

 程なく店のカウンターの向こう側から人が来た。

 

「お帰りなさい、なのは」

「うん!」

 

 なのはが帰ってきたことに、微笑みながら迎えの言葉を掛ける若い女性。なのははその言葉に嬉しそうに応える。

 女性はなのはと同じ色の髪をロングのストレートにし、その顔立ちはなのはそっくりだったので、映司はこの人がなのはの姉だと思った。

 女性はなのはの側に一人の少年がいるのに気付いた。

 

「あら、初めてのお客様ね。 いらっしゃいませ」

「は、初めまして、僕は……」

 

 なのは以外の女性に声を掛けられて、気後れしながら挨拶をする映司。

 女性はそんな映司の様子を見て、笑顔で話し掛ける。

 

「ふふ……そんなに緊張しなくても良いのよ。 貴方はなのはのお友達ね」

「えっ……」

 

 女性の言葉に呆然としてしまう映司。

 友達、それは仲の良い人達に対して使われる言葉だ。 この場合、それは映司となのはの事だろう。

 

「うん! さっき近くの公園で会ったお友達なの!!」

 

 なのはが映司の代わりを務めるかのように、笑顔で話す。 映司は最初呆然としていたが、言葉の意味を理解していくにつれ、ある想いが出てきた。

 

(友達……僕となのはちゃんが……!)

 

 沸々と湧き起こるその気持ち……それは喜びだ。 なのはと友達であることに喜びで胸がいっぱいになりながら、映司は女性に応える。

 

「はい! 僕はなのはちゃんのお友達です!」

「やっぱり、なのはのお友達が来てくれて嬉しいわ」

 

 映司の言葉に本当に嬉しそうにして応える女性。 そんな彼女に映司は自己紹介をする。

 

「改めて自己紹介します! 僕の名前は白野映司です!」

「白野映司君ね、私の名前は高町桃子。 桃子って呼んでね」

 

 元気良く自己紹介する映司に微笑みながら、自分も自己紹介する桃子。

 

「こちらこそ、僕のことは映司と呼んでください。 桃子お姉さん」

「あらあら、お姉さんだなんて。 お世辞が上手ね」

 

 映司の桃子の呼び方に嬉しそうにする桃子。

 

「だってなのはちゃんのお姉さんなんでしょう? 桃子お姉さんは」

「ふぇ?」

 

 なのはに確認する映司に対し、なのはは目を丸くする。

 

「ち、違うよっ、この人はなのはのお母さんだよっ!」

「まさかそんなーー」

「本当よ。 私はなのはのお母さんでーす」

「えっ……?」

 

 必死に訂正しようとするなのはの言葉を冗談だと思う映司に対し、桃子はイタズラが成功したような笑顔で、なのはの言葉を肯定する。 それに対し、固まってしまった映司を誰が責められようか。

 

「ええぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

 ショックの余り叫び声を上げる映司。 これも責められない。

 

「嘘っ!? じゃあなのはちゃんの本当のお姉さんはっ!?」

「何今の叫び声っ!? それに誰か私のこと呼んだっ!?」

「どうしたっ!? 強盗でも来たのかっ!?」

 

 映司の叫び声を聞いて、二人の若い男女が慌ててやってきた。

 男性の容姿は黒い髪を短髪でまとめ、精悍な顔立ちをしている高校生ぐらいの青年。

 一方女性の方は男性に近い色合いのロングヘアがお尻にまで届き、それをリボンを使ってうなじの辺りで束ねた、眼鏡をかけている中学生くらいの少女であった。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ただいま」

「あ、お帰りなさい、なのは」

「お帰り、なのは。 さっきの大声は一体何なんだ?」

 

 その二人にただいまと言うなのはに、二人の男女はお帰りと返し、男の方はなのはに、大声の理由を聞く。

 

「えっとね、お友達の映司君を連れてきたんだけど……映司君がお母さんを、なのはのお姉ちゃんだと勘違いしちゃって……」

「あー、実は母親だと知って驚いたのか……」

「たまーにあるんだよねぇ……」

 

 なのはから理由を聞くと、二人の男女は微妙に遠い目をしながら納得した。

 一方映司は、人騒がせなことをして迷惑を掛けてしまったことを謝った。

 

「す、すみません……ついびっくりしただけで、困らせようとしたわけじゃ無いんです」

「いや、気にしなくて良い。 時々あるんだよ」

「うちのお母さん、見た目のせいで間違えられることがあるから」

 

 気にする事無く映司を許してくれた二人に、映司はほっとした

 

「本当にすみませんでした。 あ、僕は白野映司といいます。 なのはちゃんのお友達です」

「そうなのか。 俺はなのはの兄の高町恭也。 恭也と呼んで良いぞ」

「私はその妹で、なのはのお姉ちゃんの美由希。 高町さんって呼ばれると誰のことなのか分からなくなっちゃうから、私のことも美由希って呼んでね」

「恭也さんと美由希さんですね。 僕のことも映司と呼んでください」

 

 もう一度謝りながら自己紹介をする映司は、二人もにこやかに自己紹介してくれたことに安堵する。

 それに対してなのはは内心緊張していた。 さっき映司と話しをして、自分の気持ちを家族に打ち明けることにであるが、ああは言ったものの、いざという時になって不安になってしまったのだ。

 

(こんなことを言って嫌われないかな……)

 

 なのはは思わず映司の方を見てしまう。

 そんななのはの視線に気付き、その不安げに揺れる目を見て、映司は優しく微笑む。

 映司の微笑みに勇気づけられて、なのはは意を決して口を開く。

 

「あ、あのね……お母さんたちに大事なお話しがあるの……」

 

 なのはのたどたどしい、しかしどこか重みを感じさせる声を聞き、三人は無言で首を縦に振り続きを促す。

 

「お父さんが怪我で入院してからみんな、お店のお仕事で大変だったから、なのははお母さん達に迷惑掛けたくなかったから、なのははワガママを言わない良い子になろうとしたんだよ……」

「でも……なのは、寂しいよ……またお母さん達に抱っこして欲しいよ……」

 

 静かに涙を流しながら、自分の気持ちを伝えるなのは。

 翠屋の店主であるなのはの父が入院してから、家族に迷惑を掛けないために今まで我慢してきたが、もう一度大好きな家族と触れ合いたいというなのはの想いを聞いた三人は……

 

「……なのは」

 

 静かに声を掛けられて身を縮めるなのは。

 

(嫌われちゃった……)

 

 そう思うなのはを待っていたのは……

 

「ごめんなさい、なのは……」

「ふぇ……?」

 

 謝罪の言葉と共に、自分を優しく抱きしめる、暖かい母の愛であった。

 

「今までごめんなさい……お仕事ばっかりで、なのはを抱っこしてあげられなくて……本当にごめんなさい……」

 

 優しくも、もう二度と離すまいとする桃子は、なのはに謝り続ける。

 

「お母さん……」

「お兄ちゃんもだ……ごめんよなのは。 お兄ちゃん馬鹿だから、なのはの寂しいって気持ちに気づけなかった……ごめんよ……」

「私もごめんねなのは……ずっとお姉ちゃん達に甘えたかったんだよね? なのはの気持ちが分からなかったお姉ちゃん達を許して……」

 

 なのはの寂しさに気づけなかったことを、涙を流しながら謝り続ける家族達。 そんな人達の、自分を愛してくれている暖かい想いを感じたなのはは、さっきとは違う喜びの涙を流した。

 

「お母さん、お兄ちゃんお姉ちゃん……」

「これからはなのはが抱っこして欲しい時は、お母さんがちゃんと抱っこしてあげるからね……」

「お兄ちゃんも、いっぱい肩車してあげるから……」

「なのは……お姉ちゃん、もっともっと一緒に遊んであげるからね。これからも仲良くしようね……」

 

 恭也と美由希も桃子越しになのはを抱きしめる。

 そこには小さいけれど、この世で最も大切な幸せが確かに有るのだ。

 そんな暖かい光景を目の当たりにした映司は静かに泣いていた。 最初は何故自分も泣くのか分からなかったが、悲しい気持ちで泣くのでは無く、自分の胸の中に感じる、この暖かい何かを感じられて良かったと思った。

 それから少しして店のドアが開き、来訪者に気付いた桃子は、涙を指で拭いながら声を掛けた。

 

「い、いらっしゃいませ。 お客様は何名ーー」

「やぁ、なのは。 元気にしているかい」

 

 桃子の声を遮りながら笑顔でなのはに挨拶する少年。 その少年は銀髪で、非常に整った顔立ちの美少年であった。

 

「えっと、あなたは誰?」

「あぁ、これは失礼。 俺の名前は高上陽輝(たかがみはるき)だよ」

 

 なのはに名前を聞かれて、自己紹介をする陽輝。

 

「君はどうしてなのはの名前を知ってるの?」

「それは、翠屋の天使って有名だったからです」

 

 そうだったろうか? 店の仕事をまだなのはには手伝ってもらってないのに、そんな別名が付くものなのか?

 美由希の質問に答える陽輝だが、彼はミスを犯していた。 まだなのはと顔合わせもしていないのに、なのはの名前を呼んでしまったことだ。

 当然不思議に思った美由希にその理由を聞かれて適当な回答をしたが、余計に疑問を持たせてしまったのである。

 

「ま、まぁ。 それよりも、士郎さんが入院してからは大変そうですね、桃子さん」

「え、えぇ」

「でも、割と早く家に帰ってきてくれると思いますよ」

「「「「えっ?」」」」

 

 自分の失態を感じ取り、無理やり気味に話題転換をする陽輝だが、その直後の彼の台詞に高町家の皆さんは、間の抜けた声を出してしまった。 

 しかしそれは無理も無い。 高町家の良き夫であり、良き父親でもある高町士郎はまだ意識も回復していないのに、そんなことをのたまう陽輝の言葉の意味が分からなかったからである。

 そんな高町家から映司の方に顔を向ける陽輝。

 

「ところで、君の名前を聞かせてくれるかな?」

「僕? 僕の名前は白野映司。 映司で良いよ」

「映司君だね。 俺のことも陽輝と呼んでくれて構わない」

「じゃあそう呼ばせてもらうよ、よろしく陽輝君」

「こちらこそよろしく」

 

 陽輝は答えてくれた映司に微笑む。

 その陽輝の目は何となく自分を探るように感じたが、悪意は感じられなかったので、映司は気にしなかった。

 

「さて、挨拶は済んだので俺はこの辺で失礼をーーと、忘れてた。 これは今日俺が焼いてみたクッキーです。 良かったらどうぞ」

「あっ、ご丁寧にどうも」

「いえいえ、ではまたいつかお会いしましょう」

 

 帰るさいに、手に持っていたひも付きの紙袋を桃子に渡して、陽輝は店を出て行った。

 彼が来店する前にこの空間に有った、暖かい空気を軽く壊していった気がするのは気のせいだろうか?

 

「結局、彼は何の用事が有って来たんだろう?」

「さあ? 悪い子じゃ無さそうだけど……」

「ていうかさ、微妙に冷やかし?」

 

 何となく恭也の言葉に相づちを打つ桃子だが、直後の美由希の言ったことに、内心同意してしまったのは、周りのみんなには内緒である。

 

「それにしてもなのは、本当にごめんなさいね……なのはの気持ちに気付いてあげられなくて……」

「ううん……なのはがこうしてお母さん達になのはの気持ちを言えたのは、映司君のおかげなんだよ」

 

 そう言ってなのはは映司に顔を向ける。 それに釣られて桃子達も映司に顔を向けた。

 

「映司君、なのはの気持ちに気付いてくれてありがとう。 あなたがいてくれなかったら、私達はなのはをずっと苦しめていたかもしれないわ」

「本当にありがとう映司君。 父さんが帰ってくるまでは、俺がみんなを守ろうと決めたのに、俺はまだまだ未熟者だ……」

「それは私だって同じだよ恭ちゃん。 でも、本当にありがとう映司君」

「い、いえ……それほどのことはしてないと思いますよ……」

 

 それぞれ映司に感謝を述べて、映司は照れてしまう。

 高町家の人々は、映司のそんな様子を微笑ましく眺めた。

 

「本当になんてお礼をすれば良いのかーーそうだわ! 映司君、良かったら今日はうちでお夕飯を食べていってもらえないかしら?」

「えっ? でも……」

「君の都合が良かったらで構わないよ。 もちろん遠慮はいらないさ」

「お母さんの作る料理は美味しいよ」

「映司君! なのは達と一緒にご飯を食べていってほしいの!」

 

 桃子の提案に最初は遠慮するものの、恭也達の映司を高町家の食卓にご招待する気満々な様子を見て嬉しく想い、彼女達のお誘いに乗ることにした。

 

「ご迷惑じゃ無ければ……ご馳走になりたいです!」

「ご迷惑だなんてとんでもないわ! もう少しで仕事が終わるから、その後お夕飯を作るわね。 それまでなのはと遊んでいてもらえるかしら?」

「はい。 僕で良ければ」

「ありがとう映司君! 今日は腕によりをかけなきゃ!」

 

 映司が自分の提案を受けてくれたことに、嬉しそうにしながら、桃子は仕事に戻っていった。 恭也達も仕事に戻り、映司はなのはに誘われて、彼女と遊びながら、家の中で夕飯を待った。

 やがて夕飯の時間となり、映司は桃子が作ってくれた料理をありがたく味わった。 本当に美味しそうに食べてくれる映司に桃子達は嬉しくなり、その日の夕飯は士郎が入院して以来、心から楽しいと想える食卓となった。

 

 食事も終わり、ほどなくして映司は帰宅する事になった。

 映司が家に帰ることに、寂しげな様子を見せるなのはだが、映司の住まいが高町家の近所に有り、また明日遊びに来ると映司が約束したので、なのははそれを楽しみに待つことにした。

 

 ◇◇◇

 

 自宅に帰ってきた映司は、自分が背負っていたリュックに家の鍵が入っていることに気付き、それを使って家に入った。

 

「ただいま!」

 

 なのはが家に帰ってきた時に言った言葉を思い出し、自分もやってみた映司だが、迎えどころか返事すら無く、しかも明かりが点いていないことを不思議に思いながら、電灯を点けながら家の中を進んでいく映司は、家には誰も居ないことに気付く。

 

「僕、家族、いないんだ……」

 

 自分にも居ると信じていた映司は一人寂しく呟く。

 映司の自宅は一般的な一軒家より大きいものの、それは今の彼にとっては何の喜びにもならなかった。

 ひとまず風呂場を見つけて入浴した後に、冷蔵庫の中を確認したところ、一通りの食材や飲み物が入っており、そこから牛乳を取り出してコップに注いで飲み干す。

 炊飯器と米を見つけて、明日の朝のために今日の内に米を磨いて炊飯予約をした後に、テレビを軽く視聴してから寝室と思われる部屋に行き、ベッドに入った映司は呟いた。

 

「なんか、寂しいな……」

 

 明日、またなのは達に会うのを心待ちにしながら、眠りにつくのであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 その深夜、とある病院の中の病室の前に、一人の少年が佇んでいた。

 その少年は翠屋に現れた陽輝であり、彼の目の前の病室のネームプレートには、高町士郎と書かれていた。 彼はその病室に入り込み、ベッドの上で眠り続ける士郎の前に立った。

 

「さて、投影、開始(トレース オン)

 

 そう言った彼の手には、緑色の液体が入ったビンが握られていた。

 知っている人がいたら、その液体をこう呼んだだろう。 エリクサーと。

 そのエリクサーを士郎の口に流し込み、飲んだのを確認して、士郎の様子を見守る陽輝。 その直後、士郎の体を淡い光が包むが、直ぐに光は収まり、陽輝は士郎の体を解析する。

 

「良し、士郎さんの怪我は完治したぞ」

 

 体の様子を確認し終わって、陽輝は満足気に病室を後にする。

 自分は善い事をしたと思い込む陽輝だが、彼はまだ知らない。 翌日に、この行いを注意されることを……

 

 

 

 

 




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