仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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『技の1号、力の2号』、この言葉は今の仮面ライダーの法則にも当てはまり、主人公が変身する1号ライダーは変身できるフォームが多かったり、豊富な特殊能力を持つなど、汎用性が高い。

それに対して2号ライダーはフォーム数が少ない分、身体能力が1号ライダーより高めなのが特徴。例外ともいえるのがバースであり、身体能力がオーズよりも低く、遠距離攻撃や多数のメカを使える分、汎用性はむしろオーズよりもある。

オーズの基本形態であるタトバコンボ自体、赤いマスクに緑の複眼、1号・2号のオマージュライダーであるWに比べて高いパワーを持っているなど、V3を意識しているように思える。

となれば、バースというのはライダーマンをイメージしているのだろうか? 最初の変身者である伊達は医学者、ライダーマンの変身者である結城丈二は科学者。畑は違えど、同じ学者であることからして…………。

カウント・ザ・メダルズ!

今、オーズが使えるメダルは……。


タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

ライオン×1
トラ×1
チーター×1

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第21話 真木の手助け

 何処とも知れぬ薄暗い部屋……。まるでここに招かれた者の不安を煽るかのように演出された照明……。部屋の中心にはソファに座らされたはやてがおり、ロープや手錠などで拘束されてはいないものの、もともと足が不自由な彼女に対してそんな物は不要でしかないが。

 

 はやての目の前には彼女をこの場に連れてくるように依頼した男性が立っており、はやてと何か話をしている。

 

 

「まずは非礼を詫びましょう。手荒なやり方でこんな所に連れてきてしまい、まことに申し訳ありませんでした」

 

「謝るんくらいなら最初からやるなや! だいたい、本気でスマンとも思ってへんクセに、白々しいわ!」

 

「いえいえ……貴女(あなた)の言葉を否定しきれないのは認めざるを得ませんが、はやてさんが私にとって大事な方だというのは本当ですよ」

 

 

 自分の楽しかった時間をぶち壊した目の前の男への嫌悪感を一切隠すことのないはやてだが、男は涼しい顔をして余裕を崩さない。それが(しゃく)に触ったのか、(ある)いはせめてもの抵抗なのか、なぜ自分に用があるのかを訪ねた。

 

 

「いったい私になんの用が有るんねや、悪いけど私はアンタらの事なんかこれっぽっちも知らんで」

 

「そうですか。成る程……水棲系の場合はそうなんですね……」

 

 

 男は何やら得心したかのように口元に手を添えて一人納得しているが、結局自分の質問に答えていないことが気に入らず、声を張り上げて理由を求める。

 

 

「なに一人で納得しとるんや! ええから早よう私の質問にキリキリ答えんかい!」

 

「おっと、これはとんだ失礼を。それはですね……」

 

 

 ようやく話し出そうとする様子を見て、はやては一言一句を聞き逃さないよう平常心を取り戻していく。

 

 

「理由としましては……勝手ながら、はやてさんの願いを叶えられるようにしたかったんです」

 

「私の……願い?」

 

 

 そうは言われても、なんで顔も名前も知らないこの男がそんなことをするのか理解できず、視線で続きを促すはやてに聞かせ続ける。

 

 

「友達から事情を話して貰えず爪弾(つまはじ)きにされて、寂しい顔を見せる貴女があまりにも不憫で……」

 

「なっ!? んな心配なんでアンタなんかにされなアカンのや!? 余計なお世話やで! そもそも私は爪弾きにされてなんかーー」

 

「ですが、貴女だけ彼から仮面ライダーであることを教えてもらえてませんよね?」

 

「ーーっ!」

 

 

 身も知らない奴が一方的に不幸扱いしてきたことに腹をたてて反論するはやてを否定するかのように遮り、彼女が認めたくなかった事実を突きつけてこられ、はやては言葉を詰まらせてしまった。

 

 実は海鳴市に謎の仮面戦士が現れ、突如として姿を現した怪物と戦っているという話自体は知っていたのだ。なにせ魔法関連以外、映司の戦いの舞台はいつも街中。携帯などで録画された動画がネットに流されたりもして、テレビのニュース等で報道されたこともある。

 

 『海鳴に仮面ライダー現る!?』といったニュースが毎日のように流れれば、はやてだって嫌でも耳にするのは必然。まあ、まさか自分の友達がその仮面ライダーだとは(つゆ)ほどにも思ってはいなかったが。

 

 

「そ、それには何か理由があんねや! 秘密にせなアカン理由が!」

 

「どれほどの理由かは分かりませんが、あんなに頼んでも教えてもらえないのは寂しかったんでしょう? 悲しかったんでしょう? 他の友達と同じ立場のハズなのに、自分だけが孤独なのは……?」

 

「ーーっ」

 

 

 それは……彼女がずっと思ってきたこと。映司と親しくしている人達の中で自分だけが一人……。今まで考えないようにしてきたことが、この特殊な状況下によって精神不安定になってしまったはやての頭の中を駆け巡る。

 

 

(私だけ……私だけが映司君にとって特別やない……? ち、違う! そんなことあらへん! 映司君は私のことも大切にしてくれてるんや! …………せやけど、それやったらなんで……私だけが……?)

 

 

 自分もなのは達と同じぐらい、映司にとっての特別だ。そう己に必死に言い聞かせるのだが、それならばなぜ……自分に事情を説明してくれなかったのか? それを思うと映司を信じていたいという気持ちが崩れそうになって……悲しみで心がいっぱいになりそうで……。

 

 

「結局……貴女は一人なんですよ。どこまで行っても、どれだけ足掻こうとも、欲しいモノは全て手からこぼれ落ち……何一つ残ることなく一生を終えるのです」

 

「ち……ちがう……。映司君は私のことも大切な友達なんや…………私にとっても……映司君は大切な…………」

 

 

 男の言葉が少女の心を(えぐ)り、はやては誰に聞かせるわけでもなく、自分の砕けそうな心を守る為につぶやき続ける。その様を見て、男は内心ほくそ笑む。

 

 

(布石は全て打った。あとは事の成り行きを見守るだけ……)

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 一方その頃、窓ガラスも割れた上に先の騒動で本日の営業を休止した翠屋では映司となのはを除く高町家。アルフとリニスにメズール、リーゼ姉妹が集まっていた。彼らは皆さっきまではやてを(さら)っていった怪人の足取りを追っていたのだが、結果は思わしくないものに終わってしまっていた。

 

 

「それじゃあ、どっちに行ったのかも分からなかったんですか?」

 

「ああ……手掛かりすら掴めなかったよ。連中は人目につかないよう隠れながら逃げていったんだ。この辺りの人達みんなに聞いて回ったけど、誰も……」

 

「手際が良すぎる……。状況から考えて、あの姿を消してた化け物は最初から翠屋の中に居たんじゃないか?」

 

「言っておくけど、私は無関係よ。アイツらヤミーでもないし、組織の連中からは何も聞かされていないもの」

 

 

 映司からの問いかけに士郎が答え、恭也が疑いの目をメズールに向けながら推理し、いらぬ疑いをかけられた彼女は否定する。

 

 ついさっきまで映司と桃子とリニス以外の者達で怪人の捜索に励んでいたのだが、士郎の言うように姿を見せない者を通行人から聞き出せるはずもなく、途方に暮れていた。

 

 ついでに説明しておくと、映司も最初は行こうとしていたのだが、戦いで疲れている彼にそんなことはさせられないとみんなに止められ、桃子の場合は割れた窓ガラスや店内の片付け。リニスはその手伝いをしていたのである。

 

 とにかく、はやてを助けようにも情報が無ければ話にもならず、リニスが念話でアルフにある方法ではやての居場所をさがすよう頼んだのだが……。

 

 

「《アルフ、匂いで追えないのですか?》」

 

「《それがあのバケモン、逃げる時に変な匂いを街中にバラまいていったみたいで、アタシの鼻が利かないんだよ。ゴメン……》」

 

 

 変な匂い……怪人が閃光弾と一緒に使った、粉塵を入れていたカプセルはその為の物のようだ。なぜアルフが匂いで後を追えるのか気になるが、彼女の話を聞いてリニスは一つの可能性に至った。

 

 

(アルフの鼻を封じる為にそれだけの用意を? いくらなんでも話が出来すぎる。まさか……組織の方々が私達に対する備えとして? いえ、そう考えなければ辻褄(つじつま)が合いません。いったい彼らはなんの為にはやてさんを……?)

 

 

 リニスもそうだが、リーゼ姉妹も頭を悩ませていたりする。内容はもちろんはやてに関する事であり、彼女達はアルフとは違う方法ではやてを探そうとしているのだが、その表情から察するに、あまり上手くいっていなさそうだ。

 

 

「《ダメダメぜ~んぜんダメ。魔力反応が感じられないよ》」

 

「《弱ったわね……私達がついていながら、はやてを攫われるだなんて……》」

 

「《地球(こっち)に来て初日からこんなドジするなんて……。お父様になんて言えばいいんだろ……》」

 

「《言えるわけないでしょこんなこと! 言ったら言ったで卒倒しかねないわ! なんとしても、最低でも今日中にはやてを助けなきゃ……!》」

 

「《でもさ……どこをどう捜す? 雲を掴むような話だよ?》」

 

「《だからこうして悩んでるんでしょうが……」

 

 

 リーゼ姉妹も苦悩しているが、一人の少年もそうだというのを忘れてはいけない。

 

 

(本当にどうすればいいんだ……? ヤミーじゃないからメズールさんの探知にも引っかからないし、なのはちゃんにお願いしようにも、捜すアテもないんじゃ……)

 

 

 誰一人として名案は思い浮かばず、絶望に(とら)われかけたその時、本日営業中止の看板を意に介せず入ってきた者がいた。

 

 

「失礼いたします」

 

「ん? なにかご用ですか? すみませんが、今日はもう……」

 

「いえ、客として来たのではなく、あなた達の手助けの為です」

 

 

 やってきたのは真木。彼の来店に士郎が店主として応対するが、ここに来た理由が分からず首を傾げてしまう。ただ、久し振りに聞き覚えのある声を聞いて(うつむ)いていた頭を上げて来訪者を確認した映司によって話は進む。

 

 

「? …………まき……真木さんですか……? 確か二年ぐらい前の……」

 

「覚えていてくれてましたか」

 

 

 自分を思い出してくれたことが思いの(ほか)嬉しかったのか、普段からの仏頂面が少し緩んだ気がするのは気のせいだろうか? 映司以外は皆、小さな紙を持った不気味な人形を二の腕に乗せている真木に対して少々引いているが。しかし、この掛け合いで映司と真木が知り合いであることが分かったので、士郎は彼の素性を訪ねる。

 

 

「私は高町士郎と申します。失礼ですが、あなたのお名前は……?」

 

「申し遅れました。私は鴻上生体工学研究所に所属する、真木清人といいます。以後、お見知りおきを」

 

 

 そう言って彼は人形に持たせていた紙片を士郎に手渡す。受け取った紙を見てみると、名前や電話番号が記載されていることから、名刺であることが分かる。

 

 でもなんで人形に名刺を持たせていたのだろうか? そりゃ懐から取り出すよりは早いが。それに士郎と話しているハズなのに、人形の方を向いて会話している姿を見て女性連中はやっぱり引き気味。

 

 もっとも、そんな事を真木はいちいち気にするようなタマではないので、用件を手早く済ませることにする。まず彼は左手に持っていたアタッシュケースを手近なテーブルの上に置き、開いてその中身を見せた。

 

 

「なんだいコレ? 缶ジュース?」

 

「セルメダルをエネルギー源にする自立稼動型マシン、カンドロイドです」

 

「カン……ドロイド?」

 

 

 アルフの質問に見せた物の名称を教えると、聞き慣れない名前に美由希が復唱した。アタッシュケースいっぱいに隙間無く収められたのは赤・青・緑と銀で塗装された飲料用の缶。しかしこれは真木の話によれば機械であり、セルメダルのエネルギーで動けるようだ。

 

 

「これは機械なのですか?」

 

「はい、使い方はこうです」

 

 

 真木はケースの中にある赤いタカのマークが描かれた缶を一つ取り出し、本物の缶ジュース同様プルタブを起こす。すると……。

 

 

『タカカン』

 

「うわっ!」

 

「と、鳥になった!?」

 

 

 電子音声が流れ、先ほど翠屋の屋根にいた鳥型の小型メカへと瞬時に変形。それを目の当たりにしてロッテとアリアが驚く。その他の面々も目を見開いているが、映司だけはキラキラした目でカンドロイドを眺めており、その辺はやっぱり子供である。

 

 

「これがカンドロイド……」

 

「てことはさ、ケースの中にある他のもそうなのかい?」

 

「もちろん、これを使えば逃げた怪人の追跡も可能となります。恐らくはもうそろそろ……」

 

 

 そこまで言ったところで、タイミングを見計らったかのように割れた窓からもう一つの鳥型カンドロイドーータカカンドロイドが店内に飛び込み、真木の手のひらに止まった。

 

 

「噂をすれば、どうやら怪人の居所を突き止めてきたようです」

 

「え!? もう!?」

 

「そんなあっさりと……」

 

 

 自分達があれコレと悩んでいた事柄が簡単に解決してしまい、思わず力が抜けてへたり込みそうになってしまう一同。だがここで何かに気づいた桃子が真木に質問してきた。

 

 

「あの、何時の間に捜してくれていたのですか?」

 

「これを渡そうとお店に行こうとした道中、この辺りに怪物が出たという話を聞き、カンドロイドのいくつかを先に飛ばして一部始終を見させてもらっていたのです。その時ついでに、逃げていった怪人を追うように指示しておきましたが……余計なお世話でしたか?」

 

「いや! あなたのおかげで望みが出てきた! ありがとうございます!」

 

 

 ようやく見えてきた希望に顔を輝かせた恭也は真木にお礼を言い、早くはやてを助ける為に映司は真木に彼女の居場所を聞き出そうとする。

 

 

「それで! はやてちゃんはどこにいるんですか!?」

 

「私に聞くよりもカンドロイドに案内してもらった方が早いでしょう、指示すれば言うとおりにしてくれます」

 

「この子がナビしてくれるんですね? よーしそれなら早速ーー」

 

「お待ちください。もう一つ教えたいことが有るのです」

 

 

 居ても経ってもいられなくなった映司は善は急げとばかりに息巻く。だがそれを窘めつつ、真木はもう一つ説明しておきたい事があるのを知らせる。

 

 

「なんなんですか? すいませんけど手短にお願いします!」

 

「メダジャリバーは持っていますか? それの機能について説明し忘れた部分があり、それを教えておきたいんです。君の役に立つと思いますよ?」

 

「機能?」

 

 

 真木の言葉に焦った心はさざ波のごとく緩やかに落ち着き、問いただしてきた映司に説明を始める。

 

 

「メダジャリバーにセルメダルを装填し、スキャニングチャージを発動する際、変身に使用しているコアメダルの属性を付加させることが出来ます」

 

「それってつまり、必殺技が強くなるってことですか?」

 

「はい。ただ、それを問題無く行う為のプログラムを組み込んだチップの開発が難航し、現状は必要最低限の状態でしかありませんでした。ですがそれも先日になってようやく完成いたしましたので、そちらの取り付けも行っておきたいのです」

 

「でも……出来ればはやてちゃんの方を早く……」

 

「制御チップを組み込むだけならすぐに済みます。電池を取り付けるようなものですよ。それに、八神君を助ける時の事を考えれば、またあの怪人達と戦うことになるのは火を見るより明らかです。その時の為に、強い力が有った方がよろしいでしょう?」

 

「まあ、それは……確かに。じゃあ、お願いしても良いですか?」

 

「ええ、メダジャリバーを出してもらえればすぐにでも」

 

 

 真木の言うとおり、どうせなら強くなった方がはやてを助けられる可能性も高まる。早く行きたいのは山々だが、焦って失敗したら笑い話にもならないので、はやる気持ちを抑えてメダジャリバーを入れてきたリュックから取り出す。

 

 けれど、取り出されたメダジャリバーは麻袋で包まれており、それを疑問に思ったロッテは映司に聞いてきた。

 

 

「エイジ、なんでわざわざ袋に入れてんの? これじゃ出す時メンドいでしょ」

 

「こうしておかないとリュックの底が切れてメダジャリバーが落っこちてきちゃうんですよ。現にこのリュックだって三つ目なんですよ?」

 

「それは確かに危ないね……」

 

 

 映司からの答えに同調するアルフ。それを知った真木は気持ち済まなそうな雰囲気をまとい、映司に解決策を申し出た。

 

 

「どうやら知らず知らずの内に迷惑をかけていたようですね。後でメダジャリバーの刃を覆うカバーを作ってお送りしましょう」

 

「いいんですか?」

 

「構いませんよ。寸法のデータはありますし、そう手間のかかる作業でもありません」

 

 

 もしこの時の真木を鴻上が見ていたら目を丸くしていただろう。真木はあまり人と関わりを持ちたがるタイプではなく、自分の仕事に妥協はしないが他人の為に特別何かをしてあげるということもない。それが自ら進んで行おうとはどういうことか?

 

 それは映司から渡されたメダジャリバーを見た際……。

 

 

(よく磨き込まれていますね。毎日手入れを欠かさずにしなければこうは…………ここまで大事にしてもらっているのに、リュックを二つも使い物にならなくしたというのは少々、心苦しいものがありますね……)

 

 

 どうやらメダジャリバーを大切にしてくれていたのが少し嬉しかった様子。よく見ると、ほんのちょっとだけ穏やかな顔をしている気がする。

 

 そんな真木がメダジャリバーの柄の一部分をスライドさせ、そこに懐の内ポケットから透明なケースからチップを取り出して取り付ける。そしてもう一度スライドして元の状態に戻して作業完了となった。

 

 

「終わりました」

 

「ホントにすぐですね……」

 

「ずいぶんその武器の構造に詳しいのね」

 

「それはそうでしょう、なにせ私が設計開発を担当していたのですから」

 

 

 手渡された、強化型メダジャリバーをマジマジと見つめる映司。メズールは真木の手際の良さに感心していたが、その理由を知ると発言者以外のみんなが目を見開いて当人を見つめていた。

 

 

「……何か?」

 

「設計って! じゃあまさか! この缶のロボットも!?」

 

「私です」

 

「剣と一緒に鴻上さんがくれたというバイクもですか?」

 

「もちろんです。と言っても組み立てや成形などは専門のスタッフの方がいますので、私が一から十まで作り上げた訳ではないので勘違いなさらぬよう、お願いします」

 

「いや、それでもスゴいよね、リニス?」

 

「え、ええ……プレシアも天才的研究者ですが、この方も相当な……」

 

 

 なるほど、なんとなく分かった。自分の手掛けた物が大事にされれば、多少なりとも嬉しいと思うのは当然と言える。だからこそ真木は、映司を気遣ってカバーを作ってくれようとしたのだろう。無愛想ではあるが、人間味が無いわけじゃなさそうだ。

 

 

「さて、ではそろそろ私は引き上げさせていただきます」

 

「もう行ってしまうのですか?」

 

「もうこれ以上私がここに居ても映司君の力にはなれませんからね。カンドロイドの説明書などはケースの中に同封されていますので、よく読んでおいてください」

 

 

 そうして立ち去ろうとする真木に映司はいま伝えるべきことを伝える。

 

 

「色々とありがとうございます。真木さんがしてくれたこと……絶対無駄になんかさせません。必ずはやてちゃんを助ける力にしてみせます!」

 

 

 淀みない感謝の気持ちを伝えられ、真木の瞳は僅かに揺れる。そして映司の真剣にはやてを想う目に士郎達は見入り、しばし沈黙に包まれる。

 

 

「……いいえ。使い古された言葉ですが、ご武運を祈ります。良き、終わりを……」

 

 

 そうしてナビゲート役のタカカンドロイドを置き、真木は去っていった。彼が残していった最後の言葉だけは何故か、みんなの心に残ったようなように思える。

 

 何はともあれ、ダメージも回復したし、怪人達の居場所も分かって必殺技をパワーアップする術も手に入れた以上、もうここで立ち止まるのは終わりだ。あとはタカカンドロイドの導きに従って行けばいいのだが、ここで映司に待ったをかける者がいた。

 

 

「待ちなさい坊や、私達も行くわ」

 

「メズールさん? あの……達って?」

 

 

 呼び止められた映司は『達』という言葉を問いただすと、周りにいる四人の女性陣が一斉に名乗り出た。

 

 

「アタシらに決まってるじゃんか!」

 

「こうなってはもう見過ごす訳にはいきません。はやてさんの救出には私達もお供します」

 

「どっちにしたって私とロッテはついていくわ。でなきゃあの子の下に来た意味が無いもの」

 

「はやてに酷いことした分、アイツらにお返ししなきゃあ気も済まないからね。秘伝の奥義、ロッテラッシュを見舞ってやる……!」

 

 

 みんな揃って行く気満々だが、それを『ハイ一緒に行きましょう』だなんて即答出来るハズもなく、行かせないように説得を試みる映司。

 

 

「駄目ですよ! 何があるのかも分からないのに、皆さんを連れていく訳にはーー」

 

『あなただけじゃ不安!!』

 

「…………」

 

 

 総ツッコミを喰らって涙目になってしまったお子様が一人いじけている。て言うかあっさりと玉砕しちゃったね。だが彼女達にだって譲れないものは有るのだ。

 

 

「あのねえ坊や、よくお聞き。今回の事件には組織も関わっているのは明白よ。私達は今日ここにはお礼を言うために来たって言うのに、身内に恩を仇で返されるのは黙っていられないのよ」

 

「プレシアもフェイトも、ここに居ればきっと同じ事を言ってます。それに子供が一人で危ない目に遭おうとしているのを黙って見ているほど、私達は冷たい女ではありませんよ」

 

「それにフェイトの友達はアタシの友達でもあるんだ。友達を助けるのに理由なんて要るのかい?」

 

「エイジ、あなた一人だけで頑張らなくてもいいのよ? 困った時はお互い様なんだから、遠慮せずに頼りなさい」

 

 

 友達だから、筋を通したいから、純粋に映司を助けたいから、これらは彼女達の嘘偽らざる想いだ。それが分かっているからこそ、映司にだって貫きたい信念というものがある。

 

 

「でも……」

 

「デモもストもないでしょうが。なんなのさっきから、反抗期?」

 

「だって……僕は男で、アルフさん達は女の人だから……僕が皆さんを守る為に戦うのは当たり前で……」

 

 

 ロッテの茶化すような言葉に対し、左右の人差し指を胸の前でツンツン突き合わせながら気まずそうに言う映司にキョトンとする一同。前時代的な考えかもしれないが、男が女子供を守るのは当然と考える映司にとって、自分についてきた女達が危険な目に遭うのだけはどうしても認められなかったのだ。

 

 そんな映司を見やったメズールは親指でロックした人差し指を彼の額の前に構え、弾いて小気味良い音を響かせる。そして、いきなりデコピンされて呆気にとられる映司と目を合わせ、メズールは優しく諭すように言う。

 

 

「いい、坊や。その考えは立派だけど、だからってなんでもかんでも背負い込もうとしたら本当に何も守れなくなる時が出てくるわ。あなたは一人で戦っている訳じゃない。あなたが守ろうとしている人達に支えられているからこそ、今日まで戦ってこられたんじゃない? そんな人達が助けてくれるって言うなら、素直に甘えなさい」

 

 

 メズールの言葉は映司の(かたく)なな心を少しずつ解きほぐしていく。自分は今までなのは達を守る為に戦ってきた。それはこれからも変えていくつもりは無いが、みんながそばに居てくれていたお陰でそうしてこれたのも事実。であるならば、アルフ達の力に頼らないという事はその人達の意志を無視しているのと同じで、それはどこか間違っていると思ったからこそ……。

 

 

「…………すみませんが……お力をお借りしても良いですか?」

 

 

 改めて彼女達に助力を求める。するとその言葉にみんなが笑顔をもって応じ、それを見て恭也と美由希も名乗り出る。

 

 

「よーし、俺もだ!」

 

「私も!」

 

「二人はここに残りなさい」

 

 

 ーーのだが……父親にそれは認めてもらえず、二人は士郎に食ってかかり、止める理由を問いただす。

 

 

「ちょっ、なんで!?」

 

「映司君のように怪人と真っ正面から戦える訳でも、メズールさんのように不思議な力を持ってもいない私達が同行したところで(なん)になる? かえって足手まといになるだけだからだ」

 

「じゃあリニスさん達はどうなるのさ!?」

 

 

 美由希に続く恭也からの問いに対しては少々考え込む素振りを見せ、静かに理由を語る。

 

 

「仮に戦闘は映司君とメズールさんが担当するとして、リニスさん達には怪人達に気づかれないよう、はやてちゃんを探す役割がある。だけど、それも多すぎると見つかる恐れが上がり、助けたあと迅速に逃げるのも難しくなる。ここは少数で行くのがベストだ」

 

 

 これが士郎の思惑。まあ確かに、はやてさえ助けられれば怪人を倒す必要も無く、映司達が囮となってリニス達に目が向かないよう暴れれば、彼女達に戦闘力が無くても別段問題にはならない。例え士郎達が代わりに行ったとしても、炎の怪人の高熱が相手では近づくだけで大火傷してしまう以上、誰が行っても同じ。

 

 それだったらはやての世話係としてやってきたリーゼ姉妹と、今回の事で責任を感じたアルフとリニスの気持ちを()んでやった方が良いだろう。もっとも、それだけが理由でもない。

 

 

(リーゼさん達の歩き方……あれは幾つもの修羅場を潜り抜けてきた者と同じだ。それも無意識でそうしている。それに、彼女達はどこか違う……。ハッキリとはしないが、普通の人間とは違う『何か』がある。なんとなくだが……アンナさんと少し似通(にかよ)っている……)

 

 

 どうやら士郎、アルフ達の正体に感づいている模様。見た目からでは計れない、彼女達の力を察したようだ。でなければ、映司達との同行なんぞ到底看過(かんか)できない。この辺り、彼自身の確かな実力を有していることでもある。

 

 

「話が決まったなら早く行こうよ! モタモタしてたら逃げられちゃうよ!」

 

「分かってるわ。だからそう焦らないで。準備はいい、坊や?」

 

「いつでも行けます、て言うか今すぐ行きます!」

 

 

 急かすアルフを宥めつつ、今にも飛び出しそうな映司に苦笑するメズール。こうしてはやてを救出する為の六人一組のチームが結成され、残される士郎達は次々とエールを送っていく。

 

 

「君達なら必ずはやてちゃんを助けられる。だから、全員無事に帰ってくるんだよ?」

 

「きっとよみんな。あなた達の為に美味しいデザートを作って待っているからね?」

 

「だけど無理はするなよ? はやてちゃんを助けたらすぐに逃げてもいいんだからな? 怪人達に勝つことよりも、みんなが帰ってくることの方を考えてくれよ?」

 

「ぜっったいだからね! でなきゃ高町家みんなからのO☆HA☆NA☆SHIをするからね!」

 

「ちゃんとみんなで帰ってきます。さあ、道案内頼むよタカちゃん!」

 

『キュイー!』

 

 

 士郎達からの激励を受け、一行はタカカンドロイドの案内の下、翠屋を後にする。進んだ先に待ち受けるのは少女の祝福か、はたまた悪鬼の暴虐か…………。




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