仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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この作品の主人公映司は、戦いは素人です。
おまけに子供なので、情けなかったり、カッコ悪いところを見せてしまうと思いますが、暖かい目で見守ってあげて下さい。

追記ーー
戦闘シーンを変えてみました


第4話 メダルと美女とお子様ライダー

なのは達と出会ってから時は流れ、映司達は小学三年生となっていた。

今日は学校は休みであり、映司となのはは二人で、手を握って海鳴市内を歩いていた。

まあいわゆるデートというやつだ。

なのはを筆頭とする三人娘はこの二年の間に、映司に対しての想いが友達ではなく、恋焦がれる人に変わっていた。

 

中庭でのケンカをエキセントリックに止めたことを始めとして、なのは達は知らず知らずの内に映司に助けられていた。

助けた内容はせいぜい、転んでヒザを擦りむいた時におんぶして家に送ってあげたり、無くした物を一緒に探してあげたり、風邪を引いた時にお見舞いをしたりと、大した事ではなかった。

 

それでも映司はなのは達が困った時は、とるに足らない事でも精一杯の優しさをくれたのだ。

優秀な人が沢山の贈り物をくれるよりも、何も持っていなくても一生懸命な笑顔で、素朴で暖かい優しさをくれる映司に、なのは達は惹かれたのだ。

つまりなのは達はお互いに親友であるが、ライバル同士でもあり、今日映司となのはが二人っきりでいる理由は、お互いの本日のスケジュールにも寄るが、なのはの策略も有る。

 

実は本日、アリサとすずかはアリサの父の会社の提携企業のビル完成パーティーに出席していたからである。

最初は映司達もアリサ達に誘われたが、パーティー出席用の衣装を持っていないという理由で、今回は断るしかなかった。

もっともなのはの場合は桃子に頼めばすぐに用意してくれそうだが、映司と二人っきりになるために、桃子にはパーティーのことは内緒にしておいたのだ。

 

だがこの子にしてこの親あり。

桃子はなのはの思惑に気付いており、あえて知らない振りをして、娘の恋を応援することにした。

無論アリサ達も、なのはの考えは読めているが、家の都合上欠席することはできず、映司と二人っきりでいられることで、勝ち誇ったなのはのドヤ顔を、悔し涙を流しながら見ることしかできなかった。

 

ちなみに、映司の推薦で陽輝がパーティーに招待されたが、正直アリサ達は陽輝のことは、そこまで好きではなかった。

別に嫌いな訳でもないが、好きになる要素が感じられなかったのだ。

 

映司の方は、なのは達の自分への想いは知っている。

既に告白されたからだが、今の関係を壊すことを恐れて、特定の誰かとは付き合っておらず、現状維持となっているが、なのは達は納得している。

中途半端な気持ちで決めてしまえば、お互いを傷つけ合うだけだからだ。

 

なのは達の両親や家族も彼女達の想いは知っており、全員映司に対して好意的で、特に桃子は映司が自分の義理の息子になってくれるのを、楽しみにしている。

唯一難しい顔をしているのは美由希なのだが、その理由は妹への嫉妬である。

 

自分ですらまだ恋もしていないのに、妹に追い越されたと思い、その事でなのはとはちょくちょくケンカしている。

美由希曰わく、「姉より先に恋する妹なんかいねえ!!」

だそうな……

 

「今日は良いお天気だねー、映司君」

「そうだね。 のどかで暖かくて、良い日だよね」

 

特に目的地は決めていないが、こうして二人仲良く歩いているだけでも、幸せだと思える映司達である。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんの二人も居てくれるともっと良い……」

「む~」

 

不適当なことを言った映司を、なのははジト目で睨みながら手を強く握る。

痛い……と思う映司だが、これは映司が悪い。

せっかくの二人っきりのデートなのに、親友とは言え、他の女の子の話しをされたら不機嫌になってしまうのが、年頃の女の子の恋心というものなのだ。

 

「なのはちゃん、機嫌直して……」

「じゃあ、ちゃんとなのはの事見てくれる?」

 

映司は自分の浅はかさに軽く後悔しつつ、なのはのご機嫌取りを試みる。

それに拗ねた態度で返すなのはに、映司は困ったように笑いながら、なのはが今一番聞きたい言葉を言う。

 

「分かったよ。 今はなのはちゃんだけを見る」

「ホント……?」

「ホントの本当だよ」

「……うん、じゃあ許してあげる!」

 

満面の笑みを浮かべるなのはに、映司も笑みを返す。

見ようによってはバカップルに見えなくもないお子様二人を、ロンリーな人は……

 

『爆発しろ!! マセガキカップル!!』

 

と、血涙を流しながら心の中で叫んだ。

もっとも、親子連れや夫婦、他のカップルは微笑ましく見ていた。

 

「とりあえず、最近新しくオープンしたクレープ屋さんに行こう!」

「そう言われると、僕も食べたくなってきたなあ」

 

急遽目的地が決まり、其処に向かおうとする二人だが、足下に何かが落ちているのに気付き、それを拾って見てみる。

 

「何だろうコレ?」

「ふわぁ~綺麗なの~」

 

拾った物はメダルであった。

それもなのはの言うとおり、鮮やかに赤く、鳥の意匠が彫られたメダルで、宝物のように見えた程に、小学生でも美しいと思える物だった。

 

「落とし物なのかなあ」

「それなら、交番のお巡りさんにお届けしよう」

「いや、こちらに渡してくれれば良い」

 

交番に届けようと思った矢先、後ろから声を掛けられたので、その人がこのメダルの持ち主と思い、振り返った二人の目に映ったのは……

 

 

 

 

人間の頭程の大きさの、背中に赤い翼を生やした美しい女性であった。

 

「……えっと、なのはちゃん、何が見える……?」

「……赤い羽の生えた、妖精さんが見えるの……」

「む? お前達、私の声が良く聞こえなかったのか? ならばもう一度言おう。 そのメダルは私の物だから此方に渡せ」

 

呆ける映司達に再び声を掛ける女性。

その直後……

 

「妖精さんお持ち帰りいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「うお!? な、何だ貴様、私を何処に連れて行くつもりだあぁぁぁぁぁぁ!!?」

「なのはちゃあぁぁぁぁん!? 中の人が違うよおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 

感激したなのはに拉致された女性を助けるために、映司は駆け抜ける。

 

 

 

 

一方その頃、市内のジュエリーショップでは非常事態が起こっていた。

悲鳴が飛び交う中、パニックを起こした人々の視線の先に居たのは、上半身が緑色の甲殻に覆われた、複数の昆虫が一つになったような姿をした怪人だった。

 

「アンナを探している最中に、見慣れない所に来てしまったが……」

 

怪人は独り言を呟きながら、店の中を興味深そうに眺める。

 

「やはりこの時代の人間の欲望は、八百年前とは随分変わったな……」

 

そうして怪人は、店内に居た1人の夫人に注目して、その夫人は怪人に睨まれた事に怯え、怪人は夫人の身なりを注意深く観察した。

 

「成る程、お前はそういう物が欲しいのか」

 

そう言って怪人はメダルを一枚取り出す。

そのメダルは映司達が拾った物に似ていたが、銀色の上に、カマキリの意匠であった。

そして怪人は、そのメダルを夫人に投げた。

 

「その欲望、解放しろ」

「あっ!?」

 

怪人の投げたメダルは、夫人の額にメダルがぶつかる直前に現れた、硬貨の投入口のような物の中に入っていった。

その直後、夫人の腹の辺りから妙な物が出て来た。

夫人から産まれるように出て来たのは、ある意味メダルを投げ入れた怪人より不気味に見える、全身に包帯のような布切れを巻かれた、ミイラ男そっくりの怪人だった。

自分の体から出て来た怪人に夫人は混乱するも、メダルを投げ入れた怪人に体を抑えられる。

 

「落ち着け、コイツはヤミー。 お前の欲望から生まれたモノだ。 言ってみれば……お前がやりたい事をやってくれる奴さ。」

 

ヤミーと呼ばれた怪人は夫人の身に付けていた、高価な指輪を食べるように飲み込んだ。

余程大切にしていた指輪を食べられたせいで、夫人は泣き崩れ、店員に介抱された。

指輪を食べたヤミーはまだ満足しないのか、店内の宝石類をむさぼるように食べていく。

しばらくして、ヤミーに異変が起きた。

急に震えだしたと思ったら、その直後に、脱皮するように、ヤミーから何かが生まれた。

 

それはやはり怪人だが、さっきと違い、カマキリそっくりの怪人だったのだ。

それを見てメダルを投入した怪人は、生まれ変わったヤミー、カマキリヤミーに命令を下した。

 

「お前に使命を与える。 アンナを見つけ出し、コアメダルを取り戻せ」

「コアメダルを、取り戻す……!」

「そうだ、行け!!」

 

主からの命令を遂行するため、店内を飛び出て、何処かに向かうカマキリヤミー。

一体この怪人達の正体は何なのか?

何が目的なのか?

謎だらけではあるが、唯一分かっているのは、この海鳴市にかつてない危機が迫っていることだ……

 

 

 

 

 

妖精のような女性を家に持って帰ろうと爆走していたなのはだが、転んだ所を映司に捕獲され、近くの広場に連行された。

 

「全くもう、なのはちゃんはこういう時に限って足が早いんだから……」

「にゃ、にゃはは。 ごめんなさい……」

「恐ろしい速さだったが、何者なんだこの娘は?」

 

追いかけっこに疲れた映司はベンチに座って缶コーヒーを飲み、なのははあんまり反省していない様子で謝り、赤髪の女性はなのはの力に戦慄するという異様な光景であった。

落ち着いた映司は、女性にメダルのことを聞いてみることにした。

 

「やっぱりこのメダルはあなたの物なんですか?」

「そうだ。 それは貴重品でな、無くしたら困る所だった」

「そういえば、周りの人達は妖精さんのことを見てなかったのは何でだろう?」

 

なのはは自分が思った疑問を言ってみる。

実際に、この広場に来るまで色んな人達とすれ違ったけれど、誰も赤髪の女性を見るどころか、見えていないように思えた。

赤い長髪に、頭と額には角、背中には赤い翼が生え、尻尾も持ち、赤と黒の装束を纏った女性は、誰もが振り向く美貌をも併せ持つ、目立つ姿をしていたというのに。

 

「周りの人間に見えないようにしていたのだが、お前達からメダルを返してもらうために、お前達にだけ見えるようにしたのだ。」

 

女性の説明の通りなら、他の人達に見えないのは当然だ。

まるで魔法のような力だが、この妖精あるいは悪魔に見えなくもないほど幻想的な姿を見れば、思わず納得してしまう。

 

「じゃあ、メダルをお返しします」

「礼を言うぞ。 邪魔をして済まなかったな」

「あ、あの!」

 

素直に返してくれた映司にお礼を言って飛び去ろうとした所を、なのはに呼び止められて振り向く女性。

 

「もし良かったらお名前を教えて下さい、妖精さん!」

「僕にも教えて下さい」

「そうだな……メダルを返してくれた礼といっては何だが、私の名前で良ければ教えよう。 その代わり、お前達の名前も教えてくれないか?」

 

なのはのお願いへの返答を聞き、映司達は笑みを持って名乗る。

 

「私は高町なのはです!」

「僕は白野映司です!」

「映司になのはか、私の名前はアンナ」

 

映司達に微笑みながら名乗るアンナ。

その微笑みは美しく、映司も見とれてしまったほどである。

 

「映司君……?」

「ふふっ」

 

そんな映司をジト目で見るなのは。

アンナはそれを見て面白そうに笑う。

其処には穏やかな時間が流れており、アンナはその一時を喜んでいた。

しかし、安寧の時は乱入者によって壊される。

 

「見つけたぞ、アンナ」

「「「!?」」」

 

突如現れたカマキリヤミーの声に振り向き、その異形を見た映司達は驚愕する。

 

「何だ、アレ……」

「か、カマキリそっくりなの……」

「しまった、もうヤミーを生み出していたのか」

 

カマキリヤミーの姿を見た映司となのはは怯え、アンナは苦虫を噛み潰したような顔をする。

その映司達に近づいてくるカマキリヤミーは、鎌と一体化したような腕を動かすと、両腕の間に何かが生じた。

 

「コアメダルを返してもらうぞ! ハッ!!」

「クッ!?」

「うわあ!?」

「にゃっ!?」

 

生じた物の正体はエネルギー状の刃であり、それを映司達に向かって飛ばしてきたが、アンナがバリアのような物で防いでくれたおかげで、映司となのはは無傷だったが、バリアに弾かれた刃は地面にぶつかり、地面は破壊された。

 

アンナが守ってくれなければ、自分達が破壊された地面と同じになっていたと思うと、映司達は血の気が失せそうになる。

一方アンナはカマキリヤミーに怒りの表情を向けた。

 

「貴様!! 関係の無い子供達まで狙ったな!!」

「我が主から下された使命は、コアメダルを取り返す事、他の事など知らん」

 

怒りに満ちたアンナの声に、涼しく返すカマキリヤミー。

狙ったのはあくまでもアンナだが、巻き添えを食らいかけた映司達からすれば、結局同じである。

 

「映司、なのは! お前達は逃げろ! 奴は私が食い止める!」

「「アンナさん!?」」

 

映司達を逃がすために、カマキリヤミーに向かって飛んでいくアンナ。

 

「ハアアアアッ!!」

「フンッ、ハアッ!」

「グアアッ!?」

 

果敢に攻め込むアンナだが、カマキリヤミーはその突進を受け流し、アンナを鎌で切りつける。

切られた所から流れ出る血を気にもせず、アンナはカマキリヤミーに攻撃を仕掛ける。

 

「チイッ! 手こずらせるな!!」

「アアッ!!」

 

しかし、力の差は歴然であり、アンナは地面に叩きつけられてしまう。

その凄惨な光景を目の当たりにした映司達は、逃げることすら忘れてしまう。

 

「ひ、酷いの……」

「あんなの、一方的過ぎるよ……」

 

なのははアンナが一方的に苦しめられている姿に泣きそうな顔をし、映司は怒っていた。

自分達を守る為に、傷付くアンナを見ていると、逃げ出す気持ちになれなかったのだ。

しかし、映司は自分の怒りの正体が分からなかった。

アンナを傷付けるカマキリヤミーに対してか、それとも神様が助けてくれないことにか。

カマキリヤミーは地面に横たわるアンナを掴み、自分の目の高さにまで持ち上げる。

 

「さあ、コアメダルを返せ」

「断る……」

「ならば、お前を細切れにしてから返してもらおう」

 

右手の鎌をアンナに振り下ろそうとするカマキリヤミー。

だがーー

 

「ん?」

 

それは、カマキリヤミーの頭に地面の瓦礫をぶつけた映司によって、止められた。

 

「映司君!?」

「映司……?」

「何だ? 小僧」

「もう止めろよ、アンナさんが死んじゃうだろ……」

 

映司の行動になのはとアンナは驚き、カマキリヤミーは映司に問いかけ、映司は激情により目に涙を溜めながら、カマキリヤミーの一方的な蹂躙を止めさせようとする。

今の映司の中には、カマキリヤミーに対する恐怖が有ったが、それを上回る怒りによって動いているのだ。

だがそれは、無慈悲な加害者であるカマキリヤミーにではなく、自分自身への怒りだ。

自分達を守る為に命懸けで戦い、傷付くアンナを見て、怖くて動かなかった自分への……

 

「私は主からの御命令を遂行しているだけだ。 関係の無いお前は引っ込んでいろ」

「関係無くなんか無い!」

「何?」

 

関係無い筈である。

映司とアンナはついさっき出会ったばかりの、落とし物を拾い、自己紹介をし合っただけのーー

 

「僕はアンナさんが落としたメダルを拾った!! アンナさんは僕となのはちゃんと自己紹介もした!! それだけでも、会ったばかりだけどーー僕はアンナさんのことをなのはちゃん達と同じくらい大切だと思えるから!! 関係無くなんか無いんだ!!!」

「「!!」」

「………」

 

映司にとっては、それだけでも掛け替えのない、大切な繋がりだからだ。

涙を流しながら言い放つ映司の声を聞き、なのはとアンナは絶句する。

カマキリヤミーはそんな映司を冷ややかな目で見た後、アンナの方に向き直る。

 

「下らんな……」

「止めろよおぉぉぉぉぉ!!」

「ンッ!? な、何だ!?」

 

アンナに止めを刺そうとするカマキリヤミーの足に、映司はしがみついて止めようとする。

カマキリヤミーは思わずアンナを放し、そのアンナは、まるで輝かしい物を見たかのような表情で映司を見る。

なのはもまた、そんな映司に見入っていた。

 

『目に曇りがない、映司は本気で私を救おうとーー』

 

今度はアンナの目に涙が浮かんだ。

傷による痛みにでは無く、暖かい何かに優しく包まれたように感じたから………

 

「ええい、目障りだ! 消えろ!」

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!?」

「映司君!!」

 

映司の体を片手で持ち上げ、ベンチに向かって思いっ切り投げつけるカマキリヤミー。

それを見たなのはは、悲鳴を上げてしまう。

 

「させるかっ!!」

「!?」

 

だが、ギリギリのところで飛んできたアンナが、映司の腕を掴んで止めてくれたおかげで大事に至らず、ぶつかった時の衝撃に備えて目を閉じていた映司は、急に自分の体が止まった事におどろいた。

アンナは映司を優しく地面に下ろした後、映司に問いかける。

 

「映司君! 大丈夫!?」

「映司、お前は私を助けてくれるか?」

「大丈夫だよ、なのはちゃん。 アンナさん、助けてくれてありがとう!」

「答えてくれ映司。 お前は私を助ける為に、あの怪物と戦ってくれるか?」

 

なのはは2人に駆け寄って、映司の安否を確かめる。

映司の礼に構わず、アンナはもう一度問いかける。

意味は良く分からなかったが、アンナの縋るような目と、隣に居るなのはを見て、映司の心は決まった。

 

「僕に何が出来るのか分からないけどーーなのはちゃんとアンナさんを守れるなら、戦うよ!!」

「映司君……!」

「ありがとう映司! 心配するな、戦う力は私があげよう!!」

 

ハッキリと言い放った映司になのはは見入り、アンナは映司の言葉に喜び勇み、自分の体から3つの窪みが付いた石板のような物を取り出した。

 

「ま、まさか!? それは封印の!?」

「ふぇっ!?」

「い、今のどうなってるの!?」

「細かい事は気にするな!」

 

アンナが取り出した石板を見て驚愕するカマキリヤミー。

映司達は、いきなり体の中から出てきた事に驚いていたが。

そんな映司達に構わず、アンナは石板を映司の腰にあてがう。

すると石板は一瞬光ったかと思うと、どう見ても石造りでは無い機械的な物に変わり、ベルト状になって、映司の腰に巻き付いた。

 

「何コレ!? 凄い事が起こったよ!」

「アンナさん、何をしようとしてるの!?」

「本当に凄い事が起こるのはこれからだ!」

 

次々と起こる変化に映司達は混乱しかけてしまい、映司は思わず立ち上がる。

それを気にせず、アンナは何処からか、それぞれ色が異なる3枚のメダルを取り出し、両手に抱えながら映司に見せる。

 

「次に、この3枚のメダルをーー」

 

そう言ってベルトのバックル部分を示し。

 

「ここにはめ込むのだ」

 

と、言うアンナは映司に3枚のメダルを手渡す。

 

「メダルをはめ込む時には順番がある。先ず、赤いタカのメダルはお前から見て一番右に、黄色いトラのメダルは真ん中に、最後に緑のバッタのメダルを左にはめ込め」

 

映司は手渡されたメダルを確認して、間違えないように気をつけながらはめ込もうとするが

ーー

 

「待て! アンナの言葉に乗せられるな! 取り返しのつかない事になるぞ!!」

「えっ!?」

 

カマキリヤミーの必死な呼び掛けに止まってしまう。

良く分からないが、その慌てようからすると、かなりの大事になりそうだ。

 

「惑わされるな! それを使われると困るのは奴のほうだ。 アイツにとって、これからお前が行おうとしている事は、厄介以外の何物でも無いからだ!」

「ぐっ!」

 

そう言ってアンナは映司の迷いを断ち切り、カマキリヤミーは苦しげに呻く。

実際カマキリヤミーは焦っていた。

アンナが映司に与えた力は、自分とっては天敵だからだ。

そして映司はアンナの言葉を聞き、意を決する。

 

「分からない事ばっかりだけどーー僕がやるしか無いんだよね!」

 

映司は右手にタカのメダル、左手にバッタのメダルを持ち、最初にどっちから入れようか迷ったが、思い切って2枚同時にはめ込み、最後にトラのメダルをはめ込む。

それを見届けたアンナは、はめ込まれたメダルを装填している部品ーーメダクリスタを斜めに傾ける。

 

「良し! 最後にこの機械ーーオースキャナーで3枚のメダルを右から一気に読み取れ!」

 

ベルトの右腰部に取り付けられていたオースキャナーは、そこから外された瞬間、音を鳴りだした。

それを渡された映司は覚悟を決めたかのように頷きーー

 

「させるかあああああああああ!!!」

 

映司の行動を阻止しようとするカマキリヤミーを見据えて、オースキャナーで3枚のメダルを読み取りーー

 

オースキャナーがメダルを通過する度に、甲高い音が響く。

鳴動音が止まった瞬間、映司の頭の中に一言が浮かび、叫ぶ。

 

「変、身!!」

 

 

 

 

 

 

「タカ!! トラ!! バッタ!!」

「タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!」

 

その直後、頭、胴体、下半身の前に順番にメダルが宙に現れ、軽快な音楽と共に歌が流れ出し、それに合わせるかのように、幾つものメダルが映司の周りを回転し、歌の終了と同時にメダルが映司の前で合わさり、それが胸に付いた時ーー映司の姿は変わった。

 

「良し! 成功だ!!」

「ふぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

変身が終了した映司の姿を確認し、アンナは歓喜の声を、なのはは驚愕の叫び声を上げた。

なのはが驚くのも無理は無い、今の映司はそれ程までに変化してしまったからだ。

 

体がカマキリヤミーと並び立てる程に大きくなり、主な体色は黒く、赤いマスクに緑の複眼、黄色い胴体、下半身は緑に染まって、胸には変身に使用した3枚のメダルのマークがサークルの中に収まり、1つの紋章ーーオーラングサークルになっていた。

 

「何コレどうなってんの!? 本当に変身しちゃってる!? タトバって歌は何なの~!?」

「説明は後だ。 それより敵が来たぞ!!」

「ウオォォォォォ!!」

 

混乱する映司をなだめつつ、注意をするアンナ。

カマキリヤミーは躊躇無く飛びかかって来た。

 

「ウワアァァァァ!!?」

「グアッ!?」

 

襲いかかってきたカマキリヤミーに対し、映司は反射的に右手を突き出して、それが偶然掌底打ちのように胸に当たり、相手にダメージを与えた。

 

「おのれ! ハアアアア!!」

「ウワッ!?」

 

振り下ろしてきた両手の鎌を両腕で受け止める映司。

鍔迫り合いのようになるが、敵を振り払う為に強い力を無意識に求める映司に応じるかのごとく、オーラングサークルのトラの部分が輝く。

その直後、オーラングサークルから身体各所に伸びる回路ーーラインドライブを伝ってエネルギーが両腕に届き、アンクレットから鋭利な爪ーートラクローが展開された。

 

「ううッ!? タアッ!!」

「グオッ!?」

 

いきなり変化した事に一瞬驚いたものの、トラクローでカマキリヤミーの胸を切り裂く。

更に、切られた所から銀色のメダルが何枚か飛び出してきた。

 

「何アレ? メダルがいっぱい出てきた!」

「それは気にしなくていい、敵に集中しろ映司!」

 

その事に疑問を持ちつつも、アンナの叱咤に従い、カマキリヤミーを見据える映司。

体から湧き出る力を感じながら、映司は足に意識を集中し、オーラングサークルからエネルギーが足に伝わってきた。

 

「デヤアァァァァ!!」

「うおぉぉっ!?」

 

この前テレビで放送された映画のアクションシーンを思い出し、見よう見まねで跳び蹴りを食らわせる。

 

「たあぁぁぁ!」

「調子に乗るな小僧!!」

「うわあぁぁっ!?」

 

追い討ちを掛けようと駆け寄るが、怒ったカマキリヤミーはまたエネルギー状の刃を飛ばし、それに反応出来なかった映司は、攻撃をまともに受けてしまう。

 

「ツアアッ! ハアッ!!」

「ガッ!?うわぁぁぁぁっ!?」

 

カマキリヤミーは怯んだ映司の胴体に連続攻撃を与える。

切られたことで火花を散らしながら吹き飛ばされてしまう。

 

「映司君!!」

「あれ!? 何だ!?」

 

倒れた映司を見て悲鳴を上げてしまうなのは。

何とか起き上がった映司は、胸のオーラングサークルのトラの部分が点滅した事に驚く。

 

「いかん、限界かーー映司!! トラのメダルからコレに変えて、もう一度オースキャナーで読み取れ!!」

 

そう言ってアンナは、青いウナギのメダルを取り出し、映司に投げ与え、映司はそれをキャッチする。

 

「コレと交換?」

「ハアァァァァ!!」

「くっ!? このっ!!」

「ぐあっ!?」

 

突っ込んできたカマキリヤミーの攻撃を一度受け止め、腹を思い切り蹴ることで距離を離す。

訝しみながらも、映司はアンナの言うとおりメダルを交換し、オースキャナーで読み取る。

 

「タカ!! ウナギ!! バッタ!!」

 

変身した時と同様に、読み取ったメダルが映司の前に投影され、それらが1つに重なってオーラングサークルに収まったと同時に、映司の姿が変わった。

 

「い、色が変わったの!」

「変わったのは色だけでは無い」

「それはメズールのメダル!」

 

映司の胴体の色が変わったことに、自分の主の盟友のメダルを使われたことに驚くなのはとカマキリヤミー。

今の映司は胴体が黄色から青色に変わっており、オーラングサークルも、トラだった部分がウナギになっていた。

 

「好きにさせるかあぁぁぁぁ!!」

「くっ!」

 

主のメダルを取り戻す為に、映司に突進するカマキリヤミー。

それに対し映司は、両腕に意識を集中することで、腕に取り付けられていた武器を展開した。

 

「たっ! ヤアッ!!」

「ぐあっ!」

 

映司はカマキリヤミーの攻撃が届く前に、両手に持った鞭ーー電気ウナギウィップで迎え撃ち、反撃する。

 

「たあっ! やあっ! ハアッ!」

「うっ、ぐあっ、ああっ!」

 

攻撃されない為に、映司は電気ウナギウィップで叩きまくる。

怒涛の連続攻撃を受け、堪らずカマキリヤミーはダウンする。

それを見たアンナは、もう1枚メダルを取り出した。

 

「映司! タカをこれと交換だ!」

「は、ハイ!」

 

再びアンナは、メダルを投げ渡す。

映司が受け取ったメダルは、白いサイのメダルであった。

何をやれば良いのかは分かっているので、直ぐにメダルをチェンジした。

 

「サイ!! ウナギ!! バッタ!!」

 

今度は頭が変化した。

白いマスクに赤い複眼で、額には1本の大きな角が生えていた。

さっきより強い力が溢れてくるのを感じた映司は、電気ウナギウィップをしまった後、立ち上がったカマキリヤミーを思いっきり殴りつけた。

 

「タアァッ!」

「ぐあっ!?」

 

更に、倒れ込んだカマキリヤミーを両手で掴んで立たせてーー

 

「ダアァッ!!」

「があぁぁぁっ!?」

 

強烈な頭突きを見舞ってやった。

頭を打ち鳴らされたカマキリヤミーは、すっかりフラフラである。

 

「今がチャンスーー映司! メダルを交換せずに、もう一度メダルを読み取れ!!」

「はいっ!!」

 

勝機と見たアンナが映司に指示を与え、メダルを読み取るとーー

 

「スキャニングチャージ!!」

 

と、音声が流れると、オーラングサークルからエネルギーが全身に伝わり、映司の体により強い力が湧き上がった。

そして映司は、電気ウナギウィップをカマキリヤミーに巻き付けて、強力な電撃を喰らわせる。

 

「うわあぁぁぁぁっ!?」

「タアッ!!」

 

その直後、高くジャンプした映司は頭を下に向け、カマキリヤミーに突っ込む。

 

「ウアァァァァァァッ!!!」

「アァァァァァッ!!?」

 

隕石のような頭突きを喰らったカマキリヤミーは、断末魔の叫び声を上げて爆散し、カマキリヤミーの居た所には、沢山の銀色のメダルが散らばった。

なのはは戦いが終わった事を確信し、映司に駆け寄る。

 

「映司君! 大丈夫!?」

「なのはちゃん……僕は大丈夫だよ。 なのはちゃんこそ怪我は無い?」

「映司君が守ってくれたから大丈夫なの!」

 

映司を心配するなのはに、自分もなのはの無事を尋ねる。

笑顔で怪我が無い事をアピールするなのはに、映司は安堵する。

 

「そうだ、アンナさんはーー」

「やっとセルメダルにありつけるな」

 

アンナの無事を確認しようとする映司は、アンナが銀色のメダルの上にいるのを見る。

その直後ーー

 

「にゃっ!?」

「アンナさん!?」

 

光に包まれるアンナ。

その輝きに驚いて目を塞ぐ映司達。

そして……

 

 

 

 

 

 

「ふう。 ようやくこの姿に戻れた」

 

其処には、大人の身長にまでなったアンナが居た。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、海鳴市内のとあるアパートでは……

 

「はあ……」

 

1人の苦学生が溜め息をついていた。

理由は、お金の悩みである。

 

「バイトしなきゃ生活出来ないし、そうすると今度は勉強する時間が無くなるし……」

 

生活費に困り、勉強も工面しなければならないことに頭を抱えていた。

 

「せめて、お金だけでも余裕があればーー」

「そうか。 お前は金が欲しいんだな」

「えっ?」

 

突然後ろから聞こえた声に振り返りーー

 

「その欲望、解放しろ」

 

上半身が緑色の怪人に、メダルを投げ込まれた。

街の危機は、まだ去ってなどいなかったのだ……




アンナの見た目は、シャイニング・フォース イクサのリームシアンです。
翼は鳥状のものですが。
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