仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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今回はいつもより長いです。
書き方も変えてみました。
余談ですが、ちょっとした思い付きで、リリカルオーズでググってみたら、1ページのかなり上の辺りに、この作品の目次が出てきました。
……マジっすか?
私の作品を読んでくださっている皆様に感謝の気持ちを込めつつ、今回も張り切っていきますよ!!

カウント・ザ・メダルズ!!
今、オーズが使えるメダルは……

タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

トラ×2

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第9話 犬と水着とライダーバレ

 波乱に満ちた夜は明け、映司達は目を覚ました。

 映司が朝食のメニューを考案する際に、ユーノの食事はどうするかという問題が発生したが、人間と同じ物が食べられることが判明し、アンナの希望でフレンチトーストとフルーツサラダに決定され、なのは達から好評を貰った映司はご満悦だ。

 

 朝食も済ませて学校に行く時間帯となり、なのはは映司宅に置いておいた予備の制服に着替えを済ませ、同じく登校準備を整えた映司と一緒に家を出た。

 アンナは本日、翠屋のバイトは休みなので、ユーノとお留守番である。

 

 ◇◇◇

 

「おはよう、映司、なのは」

「映司君、なのはちゃん、おはよう」

「「アリサちゃんとすずかちゃんもおはよう」」

 

 教室に辿り着いた映司達は、先に到着していたアリサ達と挨拶を交わす。

 お嬢様の2人は時々、家から車で送迎される事も有るため、こうして映司達より早く教室に居る時も有るのだ。

 ここでアリサから話題が振られる。

 

「昨日フェレットを預かって貰った動物病院、原因不明の事故で壊れちゃったみたいよ」

「お医者さんはその時、病院に居なかったから無事みたいだけど、フェレットはどうしてるのかな……」

 

 

 昨日の事件の真相を知っている映司達からすれば、タネを明かされたマジックのような話だ。

 とは言え、グリードの事だけでもお腹一杯なアリサ達に真実を打ち明ける訳にもいかず、朝食の時にしておいた、打ち合わせ通りの話しをするしか無かった。

 

「フェレットの事なら大丈夫だよ、今は僕の家に居るから」

「どういう事?」

「実はね……」

 

 映司の言葉に首を傾けたすずかに対し、なのはが説明を始める。

 

「昨日の夜、どうしてもフェレットの事が気になったから、映司君と一緒に動物病院の方に行ってみたの」

「大丈夫だったのアンタ達!?」

「行く途中で例のフェレットを見つけたんだよ。 多分、病院が壊れた直後に、逃げ出して来たんだと思って、ひとまず僕の家で預かったんだ」

「だからフェレットも映司君達も無事だったんだね。 良かった……」

 

 大分脚色はされているが、少なくとも病院には入っていないし、事の顛末は間違っている訳では無い。

 取り敢えず映司達もフェレットも無事だったので、すずかは安堵の溜め息をついた。

 口には出していないが、アリサも安心した表情を浮かべている。

 しかし、ふと気になったアリサが、映司に質問してきた。

 

「でも、とっさの判断で決めた事よね? お医者さんにフェレットの事は伝えたの?」

「まだだけど、今日の放課後に病院の方に寄って、その時伝えてみようと思うんだ。 アンナさんにお願いしてフェレットを連れてきて貰って、怪我の様子を診て貰って問題が無いようなら、そのまま僕の家に居てもらうよ」

 

 仕方が無かったが、勝手に患畜を持ち出してしまったのは事実。

 これも朝食の時に決めた事なので、後でアンナと落ち合う予定である。

 ここで陽輝が教室に入ってきた。

 

「みんな、おはよう」

「「「「おはよう」」」」

 

 陽輝からの挨拶に映司達も返す。 

 アリサ達は陽輝にも動物病院の話しをしたが、映司達と同じく、真相を知っていた陽輝は適当に合わせてくれたので、特に問題も起こらず、その日の学校生活は進んだ。

 

 ◇◇◇

 

 放課後を迎え、用事が有った3人と別れた映司となのはは動物病院に行き、修復工事中の現場に居た先生に事情を話し、勝手に患畜を家に持ち帰った事を謝った。

 

「本当に済みませんでした」

「気にしないで良いのよ、むしろ私の方こそ、フェレットを保護してくれてありがとう。 探しても見かけなかったから、ずっと心配してたの。 預かっていたのはあの子だけだったから、無事で良かったわ」

 

 やはり脚色されているが、可能な限り正直に説明をした映司達に、先生は笑顔で言ってくれた。

 ずっと気にしていた事も解決し、心のつっかえが取れた映司達も自然と微笑む。

 そこでアンナがユーノを連れて現れ、簡素ではあるが、怪我の様子を診て貰った。

 

「もう殆ど治ってるわね、元気も良さそうだし、うん。 退院OKよ!」

「良かったね映司君、ユーノ君」

「「うん(キュッ)!」」

 

 退院許可を貰い、なのはに明るく声を掛けられた映司達は、嬉しそうに返事をする。

 

「それにしても、昨日の今日だと言うのに、随分早く工事が始められているな」

「ああ、それはね、鴻上ファウンデーションの方からの依頼だから」

「何!?」

 

 アンナが漏らした疑問に答えた先生の言葉に、アンナの方が驚いてしまった。

 事情を聞いてみると、以下のようだ。

 動物病院が壊れてしまった原因は、鴻上ファウンデーションが開発した試作品が起こしてしまった事に有り、その責任を取る為と言うことで鴻上自らが先生の所に赴き、頭を下げて謝罪をした上に、工事費は全て会社持ち、更に慰謝料も即日で支払って貰ったそうだ。

 

 この話しを聞いた映司となのはは鴻上に尊敬の念を抱いたが、アンナは不信感を持った。

 まだ確定してはいないが、ジュエルシードの件には、グリードを復活させた組織の陰謀が関わっているとアンナは確信している。

 であれば、その組織と繋がりが有る鴻上が責任を取るというのは、筋が通らない話しではない。

 

 それならば何故、鴻上は組織と共に在るのか……という疑問が残る。

 アンナが見た限り、鴻上からは悪意を感じられなかった。

 そんな人間が何故組織と手を組むのか。

 アンナの鴻上に対する疑問は増えていく一方だが、幾ら考えても無駄だと思い、それに関する考察は止めにした。

 

 その時、ユーノから念話ーー魔法によるテレパシーの事だが、それが映司達の頭に届いた。

 

《ジュエルシードの反応を感じたよ! もう発動しちゃってる!》

 

 正に緊急事態である。

 昨夜のように、ヤミーとジュエルシードが融合するような事が起これば、今度はちゃんと止められる保証は何処にも無い。

 先生に別れを告げた映司達は、ユーノの導きに従い、現場に急いだ。

 

 ◇◇◇

 

 人気の無い公園に辿り着いた映司達の目に飛び込んだのは犬であった。

 ただし……

 

「グルゥゥゥゥゥゥ……」

 

 地獄の番犬を連想させる、可愛さとは無縁な犬だったが。

 

「怖っ!」

「ヤミーと対して変わらんだろう」

「あれはあれで別の怖さが有るの!」

「僕はどちらかというと、昨夜のなのはの方がーー嘘です! 戯れ言です! お願いだからその目は止めて!!」

 

 どうやらジュエルシードは今回、飼い主と散歩中だった犬と融合したようだ。

 その変わり果てた姿に各々は感想を述べるが、不適切な事を言おうとしたユーノだけは、瞳からハイライトが消えたなのはに睨まれ、必死に謝っていた。

 そのやり取りが聞こえたのか、犬ーー否、魔犬は映司達の方に顔を向けた。

 

「ウオォォォォォォォン!!」

「見つかっちゃった!」

「アンナさん、昨日みたいな事出来る!?」

「あれは力を使いすぎる、セルメダルが少ない現状では出来ん!」

「それなら僕に任せて!」

 

 ユーノがそう言った直後、映司達の周りの空間が変わる。

 

「これは?」

「封時結界、僕の得意な魔法だよ。 一般人はこの中に入ってこれないから、安心して!」

「面白い力を使う、お前も負けるな映司!」

「よーし! 行くぞ!」

 

 突然の変化に困惑したなのはに説明するユーノに感心しつつ、アンナは映司に3枚のコアメダルを渡し、ユーノの働きに報いる為、映司は気合いを込めて変身の準備をする。

 

「ガアァァァァァァ!!」

「変身!!」

 

 先手を取る為、魔犬が突進してくる。

 それに恐れる事無く、オーズドライバーに装填したコアメダルをオースキャナーで読み取る際、映司はオースキャナーを持つ右手の動きに合わせるかのように、左手を顔の横に動かす。

 これは映司が考えた変身ポーズであり、なのは達を守る為に戦う事を決意した昨夜から、やろうと決めていた事である。

 そんな映司の想いに応えるかの如くーー

 

「タカ!! トラ!! バッタ!!」

「タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!」

 

 ーー空中に投影された、巨大なエネルギー状のコアメダル達が映司の周りを舞い、流れた歌が終わったと同時に変身は完了する。

 

「オォォォォォォォン!!」

「タアッ!」

「ガウゥッ!?」

 

 映司は突っ込んできた魔犬を右手の平手打ちで迎え撃つ。

 地味ではあるが、平手打ちというのは、相手に強い痛みを与えられる技でもある。

 それが強靱な腕力を誇るトラボディから繰り出される物なら、そのダメージは相当な物である。

 実際、左頬をひっぱたかれた魔犬は大きく吹き飛ばされ、その威力を伺い知る事が出来る。

 映司と魔犬の戦いはこうして始まり、アンナとユーノはなのはの方を向く。

 

「今度はなのはの番だよ!」

「早くパスワードを唱えて、戦いの準備を!」

「うん!」

 

 アンナ達の呼び掛けに応え、待機状態のレイジングハートを取り出したなのははーー

 

「所で……どんなパスワードだったっけ?」

「「は?」」

 

 ーー2人の期待に応えられないのであった。

 

「ちょっ、忘れちゃったの、なのは!?」

「締まらんツインテールめ……グ○ンに食われてしまえ!」

「だって私、国語苦手なんだもん! それにエビの味だってしないし、水陸両用でもないの!」

 

 なんとも締まらない……さっきの意気込みは何処に行ってしまったのか。

 ユーノはもう一度パスワードを教えるが、元々文章系が苦手ななのはには、複雑な文章はキツい。

 それでも、一生懸命に戦う映司の力になりたいなのはは、何とかパスワードを覚えようとするものの、気ばっかり急いでしまって、上手く復唱出来ない。

 その内軽くヤケになってしまったなのはは、手にしたレイジングハートに向かって叫びだした。

 

「もおぉぉ! レイジングハート、変身!!」

《待ってました》

 

 なのはの体を桜色の光が包み込み、それが晴れたと同時に、なのはの戦闘態勢は整った。

 

「ほ、本当に出来ちゃった」

《これからはそれで行きましょう、なのは》

「そ、そうだね。 にゃはは……」

 

 誤魔化し笑いをするなのはに、アンナとユーノは溜め息をついてしまう。

 そんななのはに合わせられるレイジングハートは、非常に優秀である。

 気を取り直し、真面目な顔になったなのはは、映司の加勢に向かった。

 

「映司君、お待たせ!」

「よし! やるよ、なのはちゃん!」

 

 真面目な話し、映司1人でも魔犬には勝てる。

 ヤミーに比べれば、身体能力が遥かに劣る犬との融合であるため、通常のヤミーの方がまだ手ごわく感じられる。

 じゃあ何故早く決着を付けないのかと言うと、映司にはジュエルシードを封印する術が無いからである。

 昨夜のジュエルマンティス戦で見せた砲撃は、ぶっちゃけまぐれであり、魔法の使い方が分からない映司は、魔導師としてはなのはに劣る故に、彼女が来るのを待っていたのだ。

 

 2人の戦い方としては、映司が前衛を務める事でなのはは後方援護に回り、なのはに魔犬が近付けば、映司が蹴り飛ばし、飛ばされた際の落下ポイントを計算したなのはが、追い討ちの砲撃を加えるという物だ。

 2対1は卑怯と言う無かれ、ルールの無い、文字通り命懸けの戦いに卑怯なんて言葉は適用されないのだ。

 2人のコンビネーションに圧倒され、魔犬は動きを鈍らせる。

 勝機と見た映司は、なのはに念話ーー休み時間中等に、なのは共々、ユーノに教えて貰ったーーで作戦を伝える。

 

《なのはちゃん! 僕が必殺技で決めるから、アイツの動きを止めて! 封印は任せたよ!》

《分かった! 安心して、ちゃんと封印するから!》

 

 作戦を伝え終えた映司は、すかさず3枚のコアメダルを読み取る。

 

「スキャニングチャージ!!」

 

「ハアァァァァァァ……トオッ!!」

 

 コアメダルの力をより強く解放し、映司は空高く舞い上がる。

 

「グゥゥゥゥーー」

「そこ!」

「ギャンッ!?」

 

 野生の本能なのか、危険を察知した魔犬は逃げ出そうとするが、なのはの砲撃がそれを阻む。

 吹き飛ばされて動きを止めた魔犬に向かい、微調整をしながら映司は突っ込んで行く。

 現れた3つのリングを潜る毎に、映司のパワーはより増幅していきーー

 

「ゴメンね!! タトバキイィィィィィィック!!!!」

「ギャアァァァァァァァァッ!!?」

 

 ーー映司は謝りながらも、必殺のタトバキックを叩き込み、喰らってしまった魔犬は、並んだ3つのリングの紋章を浮かばせながら倒れてしまい、犬から分離したジュエルシードがなのは達の目に留まった。

 

「なのは!」

「今度はしっかり締めろ!」

「任せて! 行くよ、レイジングハート!!」

《フィナーレです。 シーリングモード、セットアップ!》

 

 2人の呼び掛けを受けたなのはの声に応え、レイジングハートはその姿を変える。

 ヘッドが音叉状に変わったのは昨夜と同様だが、今回は更に光の羽根が広がっている。

 なのははジュエルマンティス戦で見せたシューティングモードとは別の形態、シーリングモードにチェンジしたレイジングハートをジュエルシードに向け、詠唱を始める。

 

「リリカルマジカル。 ジュエルシード、シリアル16。 封印!!」

 

 桜色のリボンがレイジングハートから放たれ、ジュエルシードを包み込んでいく。

 

《シリアルナンバー16。 確かに》

 

 レイジングハートにジュエルシードは収納され、これで封印は完了である。

 戦いを終えた映司達に、アンナとユーノが笑顔で寄ってきた。

 

「お疲れ様! 2人とも格好良かったよ!」

「良いコンビプレーだった。 なのは、落ち着いて戦えたか?」

「ありがとう! なのはちゃんも凄かったよ!」

「昨日よりは戦い易かったし、映司君も居てくれてーー勿論、レイジングハートも頑張ってくれたから!」

《なのは達の力になれて、私も嬉しいです》

 

 健闘を讃え合う一同だが、映司が心配そうに犬の方を向き、なのは達もそれに釣られた。

 

「それにしても、ワンちゃんには可哀想な事しちゃったなあ……」

「仕方有るまい、あのままジュエルシードに取り付かれていた方が余程気の毒だ。 非殺傷設定にもしておいたんだから、特に問題は無いだろう。 不幸中の幸いにも、体が変異している時に受けた攻撃なら、そこまでダメージは無い筈だ」

「でも心配だよ……ユーノ君、あのワンちゃんの怪我を治してあげてくれないかな?」

「映司は優しいね、そういう事なら任せてよ!」

 

 ジュエルシードを封印する為とは言え、関係の無い者を巻き込むのは良くない。

 そう思う映司をアンナはフォローするが、それでも気になる映司はユーノに犬の治療を頼み、そんな映司に感心しつつ、ユーノは犬に回復魔法を掛けた。

 

「これで大丈夫。 飼い主さんの方も診ておいたけど、怪我はしてなかったよ」

「ありがとうユーノ君」

 

 映司は自分の頼みを聞いてくれたユーノにお礼を言いながら、変身を解除する。

 その後映司は犬の方に歩み寄り、犬を抱き上げて飼い主の傍に寝かせ、離れる時に軽く頭を撫でた。

 映司の一連の行動を目にしたなのは達は、彼を優しい眼差しで見つめていた。

 映司がなのは達の元に戻ってきた所で、アンナが元気良く声を出す。

 

「さて、一仕事を終えた所で、今日は翠屋に行って甘い物を食べよう!」

「賛成! お父さん達にユーノ君を紹介できるし」

「じゃあ、翠屋まで競争だ~!」

「ズルいよ映司!」

 

 映司達は笑いながら、翠屋に向かって走りゆく。

 あたかも、戦いに勝利した傭兵の如く…… 

 

 ◇◇◇

 

 一方その頃、陽輝は海鳴市内に新しく出来た温水プール施設に来ていた。

 その理由は……

 

「おかしいな……ジュエルシードの反応が無い……」

 

 彼は自身の中の知識に従い、ジュエルシードを封印する為にこの場所を訪れたのだ。

 いわゆる先物買いと言う奴だが、肝心のジュエルシードが見つからない事に、陽輝は困惑していた。

 

(ここには最初から無かったのか? グリードといい仮面ライダーといい、原作知識はもう役には立たないな……)

 

 いや、実はジュエルシードはちゃんと有ったのだ。

 ただ一足遅く、間の悪い結果になってしまったのである。

 ではジュエルシードは何処に行ってしまったのか?

 その謎を解くには、一度場面を変える必要が有るのだが、もし宜しければ、こちらについて来て頂きたい……

 

 ◇◇◇

 

 座り心地が良さそうな椅子に座る若い男の前に、ウヴァが立っていた。

 

「困りますねえ、勝手な事をされるのは……」

「余り困っている様には見えんがな」

「それは気のせいと言う奴です。 ジュエルシードの探索は我々の仕事、その時は貴方達の力を借りる事になるかも知れません。 それまでは大人しくしていて下さると嬉しいのですが……」

「茶番はよせ。 昨日カザリにジュエルシードの匂いを嗅がせたのは、こうなる事を期待していたからだろう!」

 

 どうやらウヴァは昨夜の事件について呼び出されたようだが、どうも様子がおかしい。

 ウヴァと会話をしている男の方は、終始にこやかな顔をしており、ウヴァの指摘に対しては、無言で笑みを深くした。

 

「まあそう目くじらを立てないで下さい。 貴方の発言を否定する事は出来ませんが、ジュエルシードと融合したヤミーがあれだけの力を発揮するのは予想外でした。 それに、封印していないジュエルシードに触れたらどうなるか……それを軽率な事をする前に確認出来たのは、有る意味幸運ではありませんか。 嫌でしょう? 自分の意志が無くなるなんて」

「…………」

 

 今度は男の指摘にウヴァが黙ってしまった。

 実際、ジュエルシードを封印する術を持たないウヴァ達にとっては、ジュエルシードは両刃の剣と言う奴だ。

 自由を得る為に組織を倒しても、自由意志を捨ててしまうのは本末転倒である。

 そして必要な話しは終わり、ウヴァは自分達の部屋に戻る事になった。

 

 ◇◇◇

 

 グリード達が寝床にしている部屋に戻ってきたウヴァは、部屋の中心に置かれている大きな丸テーブルの周りに有るソファに座り、既にウヴァの対面に座っていたカザリと話し出した。

 

「何となくきな臭いとは思ったが、またしても俺達は組織の奴らの手の平の上で踊らされていたな…

…」

「迂闊だったね……もっとも、肝心の物を手に入れても、それが使えないと分かっただけでも良しとしようよ。 少なくとも、心を無くした化け物になるよりマシさ」

 

 カザリの言葉に納得はするウヴァだが、さっき話していた男の顔を思い出すと、また不機嫌になってしまった。

 

「それは良いが、俺はアイツのニヤケ面が気に入らん! コアメダルを取られた方が、まだ許せる!」

「そう言えば順の奴、そのニヤケ顔がいつもより多かったけど、何が有ったんだろうね?」

「それは多分私のせいね」

 

 2人の会話に入ってきたのは女の声であった。

 ウヴァとカザリが声のした方を振り向いた先に居たのは、2人の怪人。

 シャチに似た頭に、タコの足とヒレが合わさったかのようなマントを羽織り、下半身はタコの吸盤を思わせる意匠、ウヴァ達に比べると女性的である。

 もう1人は明らかに男。

 サイと象を組み合わせたような頭に、象のように巨大な下半身をしていた。

 

「メズール、それはどういう意味だ?」

「実はね、この前私が外出許可を貰った時、あの海鳴市の中に有る水遊び場に行ったんだけど……」

 

 シャチ頭の女怪人ーーメズールが事情を説明した。

 外出許可を貰ってヤミーを創ろうとした際、強い水の気配を感じたメズールは、海鳴市内の温水プール施設にやってきた。

 そこでヤミーの親を誰にするのか物色中、コソコソしている男を見つけた時、その男から欲望を感じ取ったメズールはそいつの前に現れ、ヤミーの親に選んだのである。

 

 セルメダルを投入した直後、メズールの姿に恐怖した男は逃げ去ったが、小さな青い宝石を落としていった。

 それを見つけたメズールは外に出る際に、組織の人間に言われた事を思い出す。

 青い宝石を見つけたら、連絡を寄越せと。

 組織の言う通りにするのはシャクだが、無視して外出許可が貰えなくなるのも嫌なので、取り敢えず連絡はしておいた。

 連絡してから数分が経ち、顔馴染みの、金髪のツインテールの少女がやってきて、不思議な機械を使い、青い宝石を回収するのを見届けた。

 

 メズールの話しを聞き終えたウヴァ達の疑問はやっと解けた。

 

「そういう事か……」

「正直に言わない方が良かったかしら?」

「それは気にしないで良いよ。 適当にご機嫌とりしなきゃ五月蠅いしね。 それより、フェイトはその後どうしたの?」

「あの子とはそこで別れたわ。 良かったら一緒に見て回ろうって言ったんだけど、またジュエルシードが見つかった時の為に、待機していないといけないからと言って、帰っちゃったのよ」

 

 フェイトと呼ばれる少女の話しを聞いて、ウヴァはさっきとは違う怒りを見せた。

 

「まだあんな小さな子供をこき使いやがって、俺が組織の奴らの部屋に殴り込みに行ってやろうか!」

「順に止められるのがオチだよ。 気持ちは分かるけどね……」

「フェイト、可哀想だ」

「ガメルは良い子ね」

 

 カザリの口調は穏やかだが、右手をよく見てみると、キツく握り締められている。

 ガメルと呼ばれた怪人はフェイトに同情し、そんなガメルの頭をメズールは優しく撫でた。

 やがて気を取り直したウヴァは、溜まった物を吐き出すように息を吹きながら、口を開く。

 

「ふー、後でプレシア達に頼み込んで、フェイトに差し入れを贈って貰おう。 でなきゃ不憫過ぎる」

「じゃあ俺が行ってくる! プレシアとリニスが作ってくれる料理やお菓子は美味しいもんね!」

「あ、僕達にも作って貰えるようにお願いしてきてくれるかな? 久し振りに食べたくなったよ」

「分かったー!」

 

 そう言ってガメルは部屋を走りながら出て行った。

 ウヴァ達の様子を見てみると、さっきより気分は良さそうだ。

 

「組織の奴らはセルメダルしかくれないからな。 しかも必要最低限の」

「ここじゃ彼女達の作ってくれる手料理位しか楽しみが無いもんね」

「でも、あまりプレシア達に迷惑を掛ける訳にはいかないわ。 彼女の病気の事も有るし……」

 

 メズールの言葉に暗くなってしまうウヴァ達。

 そんな中、カザリはメズールに聞く。

 

「プレシアの病気、君の力でも治せないの?」

「病気の進行を止めつつ、僅かずつ治すぐらいが精々ね。 支給されるセルメダルだけじゃ足りないわ」

「プレシア達の為にも、メズールのヤミーがオーズに見つからないように祈らんとな……」

 

 ウヴァ達は天井を仰ぎ見る。

 彼等にとってプレシア、リニス、フェイトと呼ばれる人達は、大切な存在のようだ。

 しかし、彼等の期待は裏切られてしまう……

 

 ◇◇◇

 

 魔犬騒動から翌日、学校を終えた映司達は大人数で移動していた。

 何故なら……

 

「さあ、今日は思いっ切り楽しむわよ!!」

「「「お~!!」」」

 

 アリサの号令に元気良く応える映司達を、同行している大人達は微笑ましい顔で見ている。

 今日は海鳴市内の温水プール施設に遊び来ていたのだ。

 メンバーは映司、アンナ、なのは、ユーノ、アリサ、すずか、美由希、士郎、桃子。

 更にすずかの家のメイド姉妹である、ノエルとファリンも一緒である。

 ジュエルシード探しばかりでは身が持たない、たまにはこうして息抜きも必要なのだ。

 

 ちなみに恭也はそのプールでバイト中であり、彼とはそこで合流する形となる。

 陽輝も誘われたが、家の用事で行けないからという理由で、ここには居ない。

 と言っても本当の理由はジュエルシードである。

 昨日見つけられなかった事が気にかかり、別の可能性を当たっているのだ

 映司となのはには、念話で本当の事は伝えてあり、最初は彼等も手伝うと言ったが、昨日はジュエルシードを封印したんだから、今日は楽しんでこいと勧められて、映司達はその言葉に甘える事にした。

 

 ◇◇◇

 

 プールに到着し、着替え終えた映司がユーノと一緒に、真っ先にプールサイドに来ていた。

 その際に、監視員をしていた恭也を見掛けたので、声を掛ける。

 

「お仕事お疲れ様です、恭也さん」

「お、来たか映司。 ユーノはどうした?」

「ここです」

 

 そう言って映司が防水仕様のウエストポーチを指し示すと、開いたジッパーからユーノが顔を出してきた。

 

「そこに居たのか。 お前も楽しんでいけよ」

「キュッ」

 

 恭也はユーノの頭を撫で、ユーノも嬉しそうにしている。

 その後恭也は映司に注意を呼び掛けた。

 

「映司、俺より先になのはや父さん達と会えたら伝えて欲しいんだが、この前このプールで変質者が捕まったんだ」

「変質者ってまさか……」

「そのまさかだ。 女子更衣室荒らしでな、そう直ぐに同じ事が起こるとは思えないけど、一応注意はしておいてくれ」

「はい、見掛けたら、その時に」

「ありがとう、まあ、そんなに気にせず、楽しんでいってくれ」

 

 話しが済んだところで、映司は恭也と別れ、なのは達に事情を説明する為に、彼女達が来るのを待った。

 

 ◇◇◇ 

 

まずは士郎、続いてなのはを始めとする女性陣達がやってきたので、恭也からの注意を伝える。

 

「許せない、女性の更衣室に侵入するなんて。 見つけたら迷わず士郎さんと恭也さんに教えないと」

「その時は任せてくれアリサちゃん。 私が全力でその不届き者を捕まえよう」

「士郎さん、やり過ぎないようにして下さいね」

 

 アリサの呟きに士郎が目の笑っていない笑みで応え、桃子がそれをたしなめた。

 用件を伝え終わった所で、女性陣達に視線を向ける映司は彼女達に聞かれる前に、水着の感想を伝える事にした。

 

「なのはちゃん達、その水着似合ってるね。 とっても可愛いよ」

「にゃはは、ありがとう」

「まあ、当然よね」

「嬉しい」

 

 映司の素直な感想になのは達は本当に嬉しそうにしている。

 もちろん、年長組への感想も忘れない。

 

「皆さんも綺麗ですよ。 見とれちゃいそうです」

「ふむ、まあ及第点な褒め言葉だな」

「お世辞が上手ね映司君」

「ありがと」

「ありがとうございます、映司様」

「映司様も、その水着似合ってますよ」

 

 シンプルではあるが、映司の人柄を知っている彼女達からすれば、これで充分である。

 しかし、映司の評価に納得出来ないアリサが噛み付いてきた。

 

「映司! 桃子さん達に見とれてるなら、私達はどうなのよ!?」

「えっと、それは……」

「お姉ちゃんだけじゃなく、私にも見とれてるよね!?」

「年上趣味なの映司君は!?」

 

 なのはとすずかまで参戦しだし、返答に困った映司は後ずさる。

 3人娘の視線に耐えかねた映司は決心した。

 

「僕を捕まえられたらね~!!」

「あっ、逃げたわ! 追うわよ2人共!」

「「「待て~!!」」」

「キュゥゥゥゥ!?《このまま水に入ったら溺れちゃうよおぉぉぉぉ!?》」

 

 面白がった美由希までもが、逃走中映司バージョンに参加し、ユーノの悲鳴が轟いた。

 

 ◇◇◇

 

 結局映司は捕まってしまったが、その頃にはもう追いかけた理由なんてどうでも良くなっていた。

 あっさりなのは達に許された映司は、今はユーノを肩に乗せた状態でバナナボートに乗っている。

 その後ろにはノエルとファリンがおり、なのは達はアンナと美由希から泳ぎを教えて貰い、士郎は桃子にナンパをしようとする輩を目で威嚇しながら、夫婦の時間を楽しんでいた。

 

 だが、楽しい一時に変化が訪れた。

 事の起こりは、1人の女性客が悲鳴を上げた所から始まる。

 

「きゃあ!?」

「どうしたの?」

 

 女性客の友人と思われる女性が、悲鳴を上げた理由を聞くと……

 

「水着が、無い……」

「え? 流されちゃったの!?」

「ううん、上も下も無くなってるの!!」

「へ?」

 

 言葉の意味が分からず、気の抜けた声を出してしまった直後ーー

 

「きゃあ!?」

「え!? まさか……」

「私も……無くなってる……」

 

 事態はそれだけに留まらず、他の女性客にも同じ事が起こった。

 少しずつ範囲が広がり、バナナボートに乗っている映司達の近くの人にまで被害が及び始めた。

 

「何だろう? 急に騒がしくなりましたね」

「そうですね、何事でしょうか」

「ん? あぁっ!? お、お姉様! 水着、水着が!!」

「「「え(キュ)?」」」

 

 いきなり慌てふためいたファリンの声に促され、映司とノエルとユーノが見た先には……

 

「「「は?」」」

 

 水着の上も下も失い、産まれたままの姿になった、ノエルの美しい裸身が有った。

 

「キャアァァァァァァァァッ!!?」

「えぇぇぇぇぇぇっ!?」

「ぶはっ!?」

 

 衝撃の事態に対し、ノエルは両手で体を隠しながら悲鳴を上げ、映司は驚愕の叫び声を、ユーノは鼻から鮮血を出した。

 

「お姉様!! いつから露出狂に目覚めたんですか!?」

「そんな訳無いでしょう!! ってファリン!? あなたまで!?」

「えっ!?」

 

 ノエルの指摘通り、ファリンの水着も消えていた。

 

「イヤアァァァァァァァァッ!!?」

「ファリンさん!?」

「映司様! こちらを見ないで下さい!!」

「あ、ごめんなさい!!」

 

 ノエルの嘆願を聞き、映司は前に向き直る。

 後ろを見ないように注意しながら周りを確かめてみると、ノエル達だけでは無く、他の女性客にも同じ事が起こっている事に気付いた。

 

「一体、何がどうなってるんだ?」

「分かりません、水着はどこに……」

「あ! 映司様! お姉様! そっちを見て下さい!!」

 

 ファリンが指差した先には、全長1メートルくらいの、黄色い半透明なクラゲが浮いていた。

 

「何コレ!? クラゲが浮いてる!?」

「しかも、このクラゲが持っているのは!?」

 

 そう、クラゲの触手にはノエル達が身に着けていた水着が絡まっていた。

 

 慌てつつも映司は、バナナボートを漕ぐのに使用したオールを使ってクラゲを叩き落とそうとするが、当たった瞬間彼の体に電撃が流れた。

 

「うあっ!?」

「「映司様!?」」

 

 怯んでしまった映司を見て、ノエル達は声を上げてしまう。

 そうこうしている内にクラゲは遠くに行ってしまった。

 

「映司様! 大丈夫ですか!?」

「心配しないで下さい……それよりも済みません。 水着、取り返せなくて……」

「水着などよりも、映司様のお体の方が大事です!!」

「ありがとうございます……とにかく、一度プールサイドに行きましょう」

 

 痺れが残る体に鞭を打ちながらも、映司は必死にバナナボートを漕ぐ。

 そうしてプールサイドに辿り着き、映司は近くに落ちていたタオルを拾い集め、ノエル達に被せる。

 

「取り敢えず、今はこれで隠してて下さい」

「あ、ありがとうございます映司様……」

「そう言えば、お嬢様達はご無事でしょうか?」

 

 ノエルがお礼を言って、ファリンがすずか達の心配をする。

 心配なのは映司も一緒なので、ノエル達に断りを入れた後、映司はなのは達を探しに向かった。

 

 ◇◇◇

 

 クラゲから逃げ惑う来場客達を掻き分けながら、映司は進む。

 途中自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらの方に行くと、なのは達を引き連れるアンナと出会った。

 アンナは無事だったが、なのは達はタオルで体を隠している所から察すると、既にクラゲに水着を奪われた後のようだ。

 

「アンナさん! このクラゲ達は一体!?」

「これはメズールのヤミーだ! しかも、出口はこいつらが塞いでしまっている!!」

 

 メズールのヤミー……その特徴はこの数である。

 1体1体は大した力は持たないが、物量戦術でそれを補うのだ。

 オマケに出口を塞がれているという事は、このクラゲヤミー達を全滅させない限り、被害は止まらないという訳だ。

 

 士郎と桃子の姿が見えず、彼等の行方が気になった映司はアンナに訪ねる。

 アンナは自分の後ろの方を指し示し、映司はその先を見たが、士郎と恭也がクラゲヤミーから桃子と来場客を守る為に、必死に戦っていた。

 しかし、攻撃を当てる度に電撃を受けてしまうので、2人はボロボロである。

 それでも立ち上がる士郎達を見かねた映司はユーノを降ろした後、ウエストポーチの中に入れておいたオーズドライバーを装着する。

 

「アンナさん、早くメダルを!」

「今回はタトバコンボは無しだ。 コレで行け!」

 

 そう言ってアンナは緑、青、赤のコアメダルを渡す。

 渡されたコアメダルを確認した映司は、その選抜に納得しつつ、変身準備を整える。

 

「変身!!」

 

「クワガタ!! ウナギ!! コンドル!!」

 

「良し!」

「映司君!?」

「まあ……」

「映司、お前……?」

「映司君!? どうしちゃったの!?」

 

 映司の変身を目の当たりにした士郎達は、思わず呆然としてしまうが、タトバコンボとは違う亜種形態、ガタウドルに変身した映司は、彼等に近付くクラゲヤミー達を殴りつける。

 しかし、さっきと違い、電撃を流す力を持つウナギボディは、クラゲヤミーからの電撃をシャットアウトしてくれる。

 

「映司君、後ろ!!」

「ハアッ!」

 

 美由希の注意通り、映司の後ろにはクラゲヤミーが接近していたが、回し蹴りの要領で、コンドルレッグから繰り出される真空波により迎撃された。

 

「美由希さん、ありがとうございます。 でも大丈夫ですよ、見えてましたから」

「そ、そうなんだ」

 

 映司の言葉に微妙な顔をしてしまう美由希に構わず、戦いは続けられる。

 ウヴァ同様、全方位への視界を有するクワガタヘッドのお陰で、近付かれる前に電気ウナギウィップで薙ぎ払い、鋭利な爪を持つコンドルレッグからの真空波が、クラゲヤミーを切り裂く。

 

 だがその数は多く、善戦はしているものの、映司1人では時間が掛かる上に、プール場を埋め尽くすように広がっている為、末端にまで手が届かない。

 なのはの協力が欲しい所だが、周りには人が居るので、アンナはユーノに頼んで、結界を張って貰おうとするが……

 

「え? 何?」

 

 鼻血を拭き取っている姿を見て顔をひきつらせてしまい、そんなユーノの首根っこを掴む。

 

「フェレットの分際でなに人間の女の裸に欲情してるんだ! このケダモノが!!」

「そんな事言われたって~」

 

 情けない姿に呆れてはいるが、この状況を打破する鍵はユーノが握っている為、用件を伝える事を優先するアンナ。

 

「それよりも早く、例の結界を張れ!」

「無理、範囲が広すぎて、結界の中に居る人達を外に出せないんだ」

 

 とうとうアンナの堪忍袋の緒が切れ、ユーノを地面に投げた後、禁断の言葉を発してしまう。

 

「なんて使えんのだ、この淫獣が!!」

「酷い!! この作品ならそう呼ばれないと信じていたのに!!」

「知るか! 原作のお前と、この作品の作者に文句を言え!!」

「なんで僕をこんな扱いにした作者ぁぁ!!」

 

 作品中のキャラからの苦情は一切受け付けておりません。

 それはともかく、なのはと共闘出来ないのはツラい。

 セルメダルが足りない為、アンナ独自の術も使えず、映司だけで戦わねばならない。

 殆どの人が映司の戦いに注目しているので、アンナとユーノのやり取りを聞いていたのはなのはだけだが、映司の力になる方法を必死に考える。

 そうして間もなく名案を思い付き、物陰に隠れながらレイジングハートに語り掛ける。

 

「レイジングハート、アレならクラゲヤミー達をまとめる事が出来るよね?」

《ぶっつけ本番ではありますが、映司を助ける為ならば、それが得策でしょう》

「じゃあお願いね、変身!」

《行きます》

 

 なのはは秘策を持って、クラゲヤミー達を一網打尽にする作戦を実行に移す。

 

 ◇◇◇

 

 映司は奮闘しているが、中々数が減らない。

 まだ水着を着ている人達にクラゲヤミー達は向かっている為、桃子やアンナの傍から離れられず、攻めあぐねている。

 だが急に変化が起こった。

 見渡す限りのクラゲヤミー達に光の輪が現れ、その場に拘束されただけでなく、映司の目の前に一カ所に集まった。

 不思議な現象に映司が混乱している中、なのはからの念話が届いた。

 

《映司君聞こえる? それは私のだから安心して。 クラゲヤミー達は全部まとめたから、今がチャンスだよ!》

《なのはちゃんありがとう!》

 

 念話でお礼を返したあと、すぐさまメダルを読み取り、決着を付ける。

 

「スキャニングチャージ!!」

 

「タアッ!!」

 

 ジャンプした後、コンドルレッグが本物の鳥の爪のように変わり、電気ウナギウィップを伸ばしてクラゲヤミー達に巻き付け、収縮する勢いを利用し、突っ込んでいく。

 

「オーズ! ガタウドルクラァァァァァァッシュッ!!!」

 

 映司の渾身の一撃を受け、クラゲヤミー達は爆散し、セルメダルが降り注ぐ。

 ようやく戦いが終わり、映司はもう一度なのはに念話でお礼を伝える。

 

《なのはちゃん、本当にありがとう。 お陰で助かったよ》

《どういたしまして。 良かった、映司君の力になれて》

 

 念話も終わり、振り向いた先には高町家と、何時の間にかすずかの傍に来ていたノエルとファリンが映司を見ている事に気付く。

 

(説明しなきゃね……)

 

 映司は心の中で1人ごちる。

 事情を話す前に、アンナがセルメダルを回収するのが先だが。

 

 ◇◇◇

 

 一度翠屋に集まり、今日はプールに行くのに閉店していた為、店内の椅子に座りながら映司とアンナの説明が始まり、その際になのはにアリサ、すずかは既に映司の事情を知っていた事が分かったので、士郎達に軽くお説教されてしまった。

 説明も済んだ所で恭也が口を開く。

 

「そんな危険な事を映司にやらせているのか!?」

「好きでやらせている訳では無い。 他の方法が無かったからだ」

「しかし、それで映司君の身に万が一の事が有ったら、どうするつもりだい?」

 

 剣呑な空気を発しながら問い掛ける士郎の目を見返しながら、アンナはハッキリと答える。

 

「その時は私も後を追おう。 映司が居なければ、この世界に未練は無い。 巻き込んでしまった以上、私は最後まで映司の傍に居る」

 

 迷いの無い言葉を耳にし、流石の士郎も沈黙してしまう。

 それでも恭也は納得いかず、椅子から立ち上がりながら、映司に詰め寄る。

 

「それなら俺が戦う。 子供に戦わせるのを黙って見ていられるか! 映司、オーズドライバーを俺に渡してくれ」

「止めとけ、痛い目を見るぞ。 そもそもお前では変身すら出来ん」

「やってみなくちゃ分からないだろ!」

「やらなくても分かるから言ってるんだぞ。 お前がオーズドライバーを身に付けた直後、大変な事が起こる。 だから止めておけ」

「いいから貸してくれ! それまで俺は諦めないぞ!」

「……先に忠告したからな。 映司、貸してやれ。 心配しなくてもそこまで酷い事にはならんさ」

 

 そう言われて映司は恭也にオーズドライバーを渡し、緊張しつつも恭也は腰に当てるが……

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!?」

『恭也(さん、様、恭ちゃん、お兄ちゃん)!?』

 

 恭也の体を電撃が襲いかかり、その場に居たアンナ以外の人達は思わず叫んでしまった。

 気絶した恭也を介抱し、数分経って目が覚めたので、恭也が変身出来なかった理由を説明しだすアンナ。

 

「これで分かっただろう? 変身出来るのは、石板となっているオーズドライバーの封印を最初に解いた者ーー映司だけなのだ。 それ以外の者が身に付けると、さっきみたいにオーズドライバーが拒絶するのだ」

「そういう事は早く言ってーー」

「最初に言ったではないか。 止めておけ、大変な事が起きると。 私の忠告を無視したお前の自己責任だ」

 

 もっともな言葉に恭也は黙ってしまう。

 しかし、こうなる事を予測していたからこそ、アンナは強く止めなかったのだから、割と確信犯である。

 アンナの話しは締めに入る。

 

「と言う訳で映司が戦う事になってしまうのだ。 オーズになってしまった者の宿命ーーなんて言葉で片付けたくは無いが、映司が戦うのは必然なのだ」

「変身出来なくても俺は強い、映司が戦わなくても……」

「あのクラゲ共相手にボロボロだったくせに、よくそんな事が言える。 言っておくが、あんなのはまだ子供騙しだ。 これから先はもっと強いヤミーが出て来る。 戦う度にあんな状態では、早死にするのがオチだ」

 

 死ーーその言葉に誰もが黙ってしまう。

 誰だって死ぬのは怖い、だからと言って子供を戦わせておいて、自分達だけが安全な場所に居るなんて許されない。

 映司の戦いを目の当たりにした人達は皆一様にそう思うが……

 

「あ、あの……」

 

 その思考も、映司によって遮られる。

 

「僕は、遊びで仮面ライダーをやっている訳じゃ有りません。 戦うのは怖いけど、それでも僕は、なのはちゃん達をーー皆さんを守りたいんです。 だから、このまま仮面ライダーをやらせて下さい、皆さんを守らせて下さい。 お願いします!!」

 

 椅子から立ち上がり、映司は深く頭を下げながら、自分の気持ちを打ち明ける。

 その真剣な言葉に、なのは達は映司に見入ってしまい、アンナ迄もが静かに立ち上がった。

 

「私が言えた事では無いが、映司を守りたいのは私だって同じだ。 どうか、映司の支えになって欲しい、この通りだ。 映司を助けてやってくれ!」

 

 アンナも頭を深く下げ、士郎達に頼み込む。

 それを受けた彼等は、しばしの沈黙の後……

 

「……済まないが、このまま黙っている訳にはいかない」

 

 士郎の言葉にショックを受けてしまうが……

 

「だから、私は今後、映司君を鍛えたいと思う」

 

 続く言葉を聞いてしまえば、それも無くなってしまい、映司とアンナは頭を上げて、士郎の顔を見た。

 

「悔しいが、あんな醜態を晒しておいては、私なんかでは戦えない。 だが、それでも映司君を鍛える事は出来る筈だ」

「父さん!? でもそれはーー」

「恭也、事ここに至っては、私達では力不足だ。 映司君に対して私達が出来る事は、彼を支えてあげる事だと思っている。 映司君が居てくれなければ、私達はあそこで終わっていたかも知れないんだぞ」

 

 士郎の言葉に抗議しようとした恭也だが、正論を聞かされては何も言えない。

 その後はアリサが口を開いた。

 

「しょうが無いわね、私も協力してあげるわ。 パパにも事情を話しておけば、士郎さんとは違う形で助けられるかも知れないし」

「アリサちゃん!?」

「私も、お姉ちゃん達にお願いすれば、何とかなるかも……ノエルとファリンも一緒にお願いしてくれる?」

「私どもでよろしければ」

「映司様にも恩返し出来ますしね!」

「すずかちゃん達迄……」

 

 次々と上がる声に唖然としてしまう恭也。

 桃子や美由希、なのは迄もが映司の味方になってしまい、士郎達の視線に耐えかね、とうとう恭也も協力する事になった。

 

「ありがとうございます!!」

「ありがとう!」

 

 そんな彼等に対し、映司とアンナは笑顔でお礼を言った。

 ひとまず訓練をするのは後日改めてと言う話しとなり、桃子の要望により、何時かの時みたいに、オーズに変身した映司の撮影会が行われた。

 

 ◇◇◇

 

 夜もふけて、映司達はそれぞれの家に帰り、高町家の夫婦の寝室では士郎と桃子が話しをしていた。

 

「大変な事になってしまいましたね……メダルのお化けだなんて、聞いた事が有りません」

「それに、この街にもとうとう仮面ライダーが現れた……近くでは風都位だったのに」

「映司君のこれからが心配です……」

「私もさ。 だからこそ、私達は映司君の支えにならなければ。 それが、仮面ライダーと関わった者達に出来る、精一杯の事さ……」

 

 士郎達はそう言って、映司の助けになる決意をより強く固めたのであった。

 

 

  

  




次回は少し話しが飛びます。
そう……みんな大好き、金髪ツインテールのあの子!!
ーーではなく、リリなの世界の希少種、眼鏡の彼女にスポットを当てます。

「私の出番まだなんだ、あんなに伏線張っといて……」

ゴメンね! もうちょっと待ってて! 原作より扱い良くするから!!

ちなみに、クラゲヤミー達が水着を気付かれずに盗めた理由は、体からすり抜けるように水着を外す、気配を隠す、そういう能力だったからです。
アンナに気付かれなかったのは、そのお陰です。
メズールから逃げ出した男は、別の場所で犯罪を犯した為、捕まりました。
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