赤い館でのことから一日経った。
あの巫女と吸血鬼は人里にまではこなかった。
今は少しビクビクしながら仕事をしている。
そして、やっと俺は布団を買えたのだ。これで畳で寝る必要はなくなった。
(やっと布団で寝られるぜ。畳も悪くはなかったが、体に痕がつくからな。)
だよなぁ。畳で寝ると身体中が痛くて仕方ない。
最近、俺のことが人里に広まっている。それで少し博麗の巫女なのかーやら、色々聞かれる。
文さんの新聞が原因らしいが、博麗の巫女とは顔が似ているだけと分かると普通に接してくれる。
あの巫女の神社は"妖怪神社"とか言われてるらしい。
なんでも、神社には妖怪がよく来ていて巫女となにかをしているから…だそうだ。
(まだいいじゃねぇか。こっちなんて妖怪すら来なかったぞ。…年明けと同時に賽銭箱担いで稼ぎに行ったりもしたな。)
稼ぎに行く…というのがどういう意味なのかは聞かない。絶対ヤバイ。
そうやって鬼巫女と念話みたいなので会話してると、
「靈夢さーん。こんにちわー。」
文さんだ。
(げっ。鴉天狗じゃねぇか。これは厄介ごとを持ってきた感じがする。断っとけ。なんか頼まれても。)
えぇ。文さんが?それは無いと思うぞ。厄介ごとなわけが…。
「今日の夜って空いてます?博麗神社で宴会が…。」
すまん。鬼巫女。厄介ごとだわ。
(…博麗神社っつーことはだ。こっちの私と鉢合うことになる。昨日のこと問い詰められたり、下手すりゃ襲ってくるな。)
出来れば断りたいな。よし、この見た目のことを言って、断るか。
「あー、すんません。博麗神社はちょっと…。」
「あ、見た目のことでしたら、新聞に載せてますし大丈夫ですよ。私からも言いますし。」
(そ、外堀から埋められてたか。慧音も知り合いとどっか行くって言ってたしなぁ。)
これは逃げられそうにないな。絶対なんか起きるわ。
よし、宴会に行く前にスペルカードでも作るか。
(そういや作ってなかったな。弾飛ばしてただけだもんな。)
おう。美しさを競うとか書いてあったからな。…そういえば俺の霊力弾って。
(あん?見てなかったっけ?赤黒い弾だぞ。美しさ?無理じゃねぇかな。)
そういやそうだった。俺の霊力は赤黒いらしい。恐らく、二つの魂が同時に存在するからじゃないか?
(まぁ、そうかもな。でもスペルカードねぇ。私の技使うか?)
技?と言うと?
(例えば…必然「キングクリムゾン」とかか?)
それ…即死じゃないですかー。
(あぁ、そうか。もうあそこじゃねぇんだもんな。なら殺傷能力は必要ないか。手加減すりゃいけんことも無さそうだが…。)
因みに手加減すると?
(…相手が意識不明になる位じゃねぇかなー。)
「えーと。大丈夫ですか?」
文さんまだ居たのかー!?
(…ずっと居たぞ。)
「考え事してたみたいですが…。つまりOKってことでいいんですね?なら夜にまたこっちに迎えに来ますねー。」
と、すごいスピードで飛んでいく。
天狗って早いんだなー。
(あ、布団買うときに耳に挟んだんだが。妖怪とか詳しく書いてある本があるらしいぞ。)
どこで聞いたそんなこと!?
(ん?どこだっけな。里の…紫色の髪の毛したヤツが同じくらいのちっさいやつに言ってたぞ。紫色のヤツが書いてるらしいな。)
へー。そりゃ役立ちそうだな。
(ま、そんなもんに使う金はもうないんだがな。)
…仕方ねぇだろ。布団は高かったんだ。
(布団の他にも色々買ってただろうが。買ったと言えば…外のもんだったが、あの茶色い水は旨かったな。)
あぁ、コーラか。ここじゃ飲めそうにないしな。
もっと味わっとけば良かった。
(お。客が来たみたいだぞ。)
おっと、仕事に戻らねぇとな。
◇◇◇
Side 霊夢
あの私擬きを知ったのは、鴉天狗の新聞が初めてだった。
人里に博麗の巫女らしき人物が居たらしいという内容で、写真付き。
最初はガセだろうと思ってた。
でもあの吸血鬼の異変の時に実物を見てしまった。
髪の毛と目の色以外は殆ど私だった。
あまりにも似すぎではないだろうか。
妖力は感じなかったので、化けている…というわけではないんでしょうね。
アイツは強かった。
昔から博麗の巫女として、最低限の修行はしていた。
そんな事しなくても大体のことは出来たのでサボってはいた。
負けたことはなかった。
自分が地面に倒れることははじめての経験で、
気がついて、負けたと理解したとき、何とも言えない気分になっていた。
「途中で急に雰囲気も変わったし…、何者なのかしらね。」
そう。突然、雰囲気が変わったのだ。
それだけではない。人間ではありえない脚力。
不思議と私の中では私擬きのことしか浮かんでこなかった。
まあ、めんどうさえ起こしてくれなきゃどうでもいいんだけどね。
そして私は宴会の準備をする。
費用は全部あっちが負担してくれるらしいのでちょっとした会場作りだけで済むのは楽だった。
…そうして宴会の時間に近づいていった。
Side out
◇◇◇
遂に宴会の時間が来てしまった。
スペルカードも考えた!お払い棒も用意した!
後は心の準備だけだ。
(…大丈夫だろ。こっちの私も多分淡白だ。…多分だがな。)
多分じゃダメなんスよ!根に持つタイプとかだったら怖いじゃないですか!
(口調が安定してねぇぞ。…落ち着け。あのブン屋がなんとかすんだろうさ。吸血鬼には不干渉で居ればいいだろう。S咲夜ももう帰っただろう。)
そうだな。あ、でもあの門番さんには謝っといた方が…。
(…あー、居たなぁ。そういや。それくらいはしとけ。)
「靈夢さん。待たせました?仕事が長引いてしまって。」
「いや。大丈夫ですよ。んじゃ、行きましょう。」
「博麗神社に着いて思ったこと。」
(…私も思ったことがある。)
「(殆ど女じゃねぇか!)」
まさかの妖怪や妖精が全員女性とは…。
ハーレム系を目指すやつなら喜ぶところだろうが、俺は生憎そういうのはちょっとな。
元男だからな。ちょっと辛い。
(私の所でも男は結構いたんだがなぁ。よくわからん世界だ。)
本当に人間より人外の方が多い。妖怪神社ってのは本当だったか。
「あやー。皆さん既に出来上がってますね。靈夢さんはお酒。大丈夫ですか?」
酒…。俺は未成年だったが、こっちでは年齢制限なしなのか…。
(やめとけよ。酒は。)
ん?何故だ?
(お前…この体で出来上がって暴れてみろ。私は実際ヤバかったぞ。)
…うん。やめよう。酒は。
「そうですか。苦手なんですねぇ。なら料理とか摘まみます?私は飲ませてもらいますが…。」
そうさせてもらおう。
(…巫女が来たぞ。)
…なんですと?
「アンタ…。少し話があるんだけど。」
ヤクザみたいな顔してるわ。これはあかん。
(…私に変われ。対応してやるよ。)
はい。お願いします。
今回も入れ替わりに問題はなかった。
鬼巫女は普段こんな感じで見てるんだな。
自分と同じ視点で見てる感じだ。
本当に共有してるらしい。
「……………」
鬼巫女は博麗の巫女をジロジロと見る。
巫女さんは少し困惑してる。
「これがこっちの私か。ふーん。浮く能力…って所
か。」
「!?…本質に気付くなんて!いや、そもそも何故能力が分かったの!?」
「言っただろ?"こっちの私"だって。」
ば、バラしたー!?平行世界だってバラしたぞ!?
「…成る程。道理で。似てるわけだし、能力も知ってるわけね。でも…、私と少し違うわね。」
「当然だな。因みに能力は"あらゆる干渉を否定し我を通す程度の能力"だ。平行世界の私同士。仲良くしようぜ?」
現実すら葬ったもんなぁ…。鬼巫女。
さて、あっちの反応は?
「ふーん。まぁ種はわかったわ。めんどうさえ起こしてくれなきゃなんでもいいわ。んじゃ。話は終わりよ。」
…マジか。こういう人なんだな。
そして体の感覚が戻る。
(これでいいだろ。あっちも干渉してこなさそうだしな。)
特になにもなかったことに驚きだ。
後は門番さんに謝るだけだな。
門番さんには普通に許してもらえた。
ご感想ありがとうございます。
お陰でモチベーションも上がりました。