地噴の帯び手   作:観光

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プロローグ2/2

 後はもう死ぬだけだった。

 炎の熱に焼かれ、皮膚を爛れさせて、肺を炭化させ。そうして惨めに死んでいくだけだった。

 クズキはそれを理解し、憎悪の劫火に身を浸し、”万華胃(ばんかい)()”を強いまなざしで見据え――――遠くで涙を流し見つめてくれる穂乃美を横目に見ていた。

 思えば自分にはもったいない妻だった。

 美しく、教えたことをすぐに覚える聡明さを持ち、いつも夫を立ててくれる、よくできた妻だった。

 怒りに我を忘れ、彼女を逃がすこともできない不肖の夫の最後に付き合わせることになるのが、クズキの心残りだった。

 死神の鎌を前に、加速した思考の中で思う。

 こんな怪物がいるのだ。自分が死せば怨念となって化けてでれるかもしれない、と。

 もしそうなれば、自分はすべてをかけて彼女を逃がすだろう。怨霊などそもそも存在しないのかもしれないけれど……そう、なればいい。

 いや、違う。……そうするのだ。彼女を助けるのだ!

(彼女を生かす為に! 俺はそうしなければならないっ!)

 仲間一人助けられなかった愚鈍な国守だが、せめて妻を守れる夫でありたかった。

 クズキは怨念となってでも彼女を救う覚悟を決め、後残りわずかとなった生の時間、彼女の姿を焼き付けるため、彼女へ視線を向けた。

 そして、

 

 ――――――もしお前が人のすべてを失うことになろうとも、助けたいと願うのならば、

 ――――――お前に力をやろう。

 

 天から降る声を聞いた。

 なんだ、と思う暇もない。

 視界の中で穂乃美の体から爆炎が吹き出し、猛烈な風が吹き荒れた。

 

「なぁーーんだっとぉぉぉ――!?」

「穂乃美!?」

 

 吹き出した炎は揺らめき、陽炎の向こうで穂乃美の姿が掠れる。

 まるで深海を思わせる現実には到底あり得ない炎――――青墨の炎に息をのみ……あることに気がついて、クズキは顔色を変えた。

 これまでずっと、それこそ死の一歩手前まで感じていた半身たる妻の存在が急速に燃えていた。

 彼女の存在をあの青墨の炎が燃やし、焼いた端から何か異質で巨大な力が彼女を器にして流れ込んでいくのを感じる。

 

「ほ……のみ……」

 

 クズキのつぶやきすら原料とし青墨の炎は燃え盛り、クズキは静かに涙を流した。

(いま、燃え尽きた……穂乃美の存在は、この世から燃え尽きて……欠落した(・・・・)んだ……)

 青墨の炎の中、穂乃美だった存在が風に揺れた炎のように立ち上がる。

 一挙一動に力強さを感じさせ、その炎の向こうに揺らぐ姿はそう……

 

フレイム(ほのおの)ヘイズ(ゆらぎ)…………」

 

 口の端からもれた言葉はクズキが意識してのものではなかった。

 自然と零れた言葉だった。

 

 その瞬間、クズキの体に落雷にも似た衝撃が走る。

 

 ――あり得ない薄緑と青墨の炎。

 ――”紅世の王”と名乗る異形の怪物。

 ――喰われることで欠落する存在。

 

 クズキにはそれらに聞き覚えがあった。

 昔読んだ小説に、そんな話がなかったか?

 確か、その題名は――――灼眼の、シャナ。

 

「ああっ……!」

 

 記憶の欠片をつかめば、後は連鎖的だった。

 次々と浮かび上がる情報の数々。それは黄金にも勝る価値があり、そして何より、この現状を打破するのにこれ以上無いくらいの援護となる。

 クズキは強い意志を秘めた瞳を”万華胃の咀”へと向ける。

 ”万華胃の咀”は死にかけのクズキに興味を無くし、期待に眼を輝かせ、穂乃美に向き合っていた。

 

「こーれはこれは。まさか私が、あの! 同胞殺しの裏切り者に会えるとは、おもってもぉーみませんでしたよぉぉぉ――――」

「薄緑色の炎……最初の相手がまさか”万華胃(ばんかい)()”とはね。ずいぶんといやな奴に会ったわ」

 

 ”万華胃の咀”をにらむ穂乃美に変わって、彼女の左耳に新たにつけられた勾玉から、森の清涼な鳥に似た声が響く。

 

「ずーいぶんなことを言う。久しぶりの再開を祝って? あなたもこっちに来ませんかぁ、”剥迫(はくはく)(ひょう)”」

「冗談。私は”天壌の劫火”の掲げる正義のもと、大義名分を背負って、心置きなく自由にやりたいのよ。追われる生活なんて絶対ごめんよ」

「さーびしいですねぁ。あなたがいるならそれはそれは楽しいだろぉーに」

 

 再び見下すような笑みを貼付けた”万華胃の咀”に”剥迫(はくはく)(ひょう)”は躊躇いがちにある提案を持ちかけた。

 

「ねぇ”万華胃の咀”、ここは私たちを見逃してもらえないかしら?」

「ほうぅ?」

 

 その提案に驚いたのは穂乃美と”万華胃の咀”だった。

 ”剥迫の雹”は続けて、

 

「今の私たちじゃ、あんたには勝てないわ。私の性格はあなたもよく知ってるでしょう?」

 

 ”万華胃の咀”は彼女の言葉に納得のいった顔でうなった。

 

「確かに。あなたは勝てない勝負をぉーー極力(・・)避ける人でしたねぇー。私も何もしないというのなら、見逃すのもやぶさかではないですけれどぉー」

 

 彼は自分の足下に転がっているクズキに指差して、

 

「これは私がもらっていきま――――っとっと」

 

 戯けたことを言う前に、穂乃美の手から巨大な炎弾が飛び出していた。

 

「ちょっとなにやってんのよ! せっかくこの場はなんとかできそうだったのに!!」

「契約を忘れたのですか! 私はあの人を助ける為に、すべてを捧げたのです! あの人を捨て置けるわけがないでしょう!」

 

 彼女は腰元に吊るされた剣を引き抜いて、”万華胃の咀”へと切り掛かる。

 クズキのときは容易く砕かれた剣も、いかような力なのか、”万華胃の咀”を斬りつけても折れることは無く、むしろ奴はその剣を避けていた。

 

「あんたのこと、もう忘れて(・・・)るのに!?」

「関係ありません!」

「ああーもう! わかったわよ! そこの男! さっさと逃げなさい。ここは私たちが時間を作ってあげるから! ほらさっさと!」

「おっと、そうは行きませんよぉー」

 

 逃げろ、と言われてもクズキはすでに死に体なのだ。この重傷でどうやって逃げろというのか。

 クズキが考えるもいい案など浮かびもしないし、浮かべるだけの時間もなかった。

 ”万華胃の咀”は穂乃美の剣を避け、彼女の隣をくぐり抜けると、猛速でクズキへと突進を仕掛けてきたのだ。

 クズキにはどうしてこの奇怪な”万華胃の咀”とやらが自分に執着するのか、理由はまったくわかっていなかった。だが、奴が自分を殺しにきている、ということだけはわかる。

 一度は興味の対象外となったが、今度こそ殺されて人体実験の被験者にでもなるのだろうかと徐々に近づく”万華胃の咀”に、穂乃美がフレイムヘイズになってわき出した希望の分だけ、絶望と恐怖が溢れ出す。

 しかし恐怖から視線を外せないクズキと”万華胃の咀”の間に影が割り込んだ。

 それはまぎれも無く、共に過ごしてきた落穂巫女(おちほのみこ)だった。

 

 穂乃美は振りかぶった剣を裂帛の気合いとともに振り下ろす。風を切る音がうなりをあげる剣を、”万華胃の咀”は慌てて避けて、穂乃美から距離をとる。

 

「相変わらず厄介な『自在法』ですねぇー。にしてもまさか最初からその自在法『剥迫(はくはく)』が使えるとは思いませんでしたよぉー。成ったばかりのフレイムヘイズの評価をあーげないといけませんなー?」

「……」

 

 ”万華胃の咀”は周囲に眼を向け、いつの間にか漂っていた小さな氷の破片に眼を細めた。

 

「空間に干渉し、短距離を転移する自在法、ほーんとぉーにやっかいですねぇー」

 

 ――――自在法『剥迫(はくはく)

 強大な紅世の王”剥迫の雹”の名を冠したこの自在法は、周囲にちりばめた雹の元へと転移することを可能とする、名の通り『追って剥ぐ』自在法である。

 

 この自在法は空間に干渉する特性から、時に干渉する……とまでは言わなくともそれなりに難易度の高い自在法だ。

 ”剥迫の雹”も契約者がまさか最初から十全とは言えないまでも使用できることに、内心では驚いている。

 

「まぁー、それでもぉー? 成りたては成りたて。ここで食べておいてもぉー、いいでしょー?」

「……あんたが一体全体どうして”探耽求究”に憧れて口調まで真似してるのかは知らないけど、ホントきもいわ、あんた」

 

 ”剥迫の雹”の言葉に、小馬鹿にした笑みを口の端に表し、”万華胃の咀”は両腕を広げた。

 両腕のいたる所に掌ほどの口があり、気味の悪いうなり声とよだれを垂らしている。

 

「ちっ、後ろの男は動けないか……引く気はないのよね?」

「はい」

 

 ”剥迫の雹”の問いかけに、穂乃美は強い瞳で頷いた。

 

「……いい、あれが少しでも隙を見せたら、『剥迫』で男拾って逃げるわよ。正面からじゃ絶対に勝てないんだから。それから――――」

「……来ます!」

 

 注意すべきことを続けようとした”剥迫の雹”を遮るように、”万華胃の咀”の腕口から薄緑の炎が吹き出された。

 その炎は地面を伝って穂乃美の足下へと伸びた。

 

「まずい! 男拾って逃げなさい!」

 

 喚起の鋭い声が上がった。

 穂乃美は急ぎクズキの元へと転移し、さらにもう一度離れた場所に転移した。

 

 二度の転移によって”万華胃の咀”との距離は大きく広がる。

 しかし彼女の動きを読んでいたのか、薄緑の炎は穂乃美も元へと軌道を修正し追いすがってきた。

 

「――――っ!?」

 

 穂乃美は急ぎもう一度転移しようと体に力をいれた、が。慣れない自在法の行使、そして二度の連続転移による虚脱感が体を襲う。

 薄緑色の炎は、目の前にあった。

(だめ、逃げられない!)

 

「うぉぉぉぉおお――――!」

 

 眼をつぶった穂乃美の体が動く。

 虚脱感に膝をつきかけた穂乃美の体を死に体のクズキが抱え上げ、走り出したのだ。とはいえ重傷には変わりなく、走れたのはわずか五歩分の距離だけ。

 クズキは激痛に足をもつれさせ、二人してゴロゴロと大地を転がった。

 だが、そのわずかな距離が二人を救う。

 二人の眼と鼻の先で、薄緑色の炎は花火のように広がり、直径十メートルほどの円となり、そして広がった面積すべてを一気に喰らった(・・・・)

 大地がごっそりと消えてなくなる。

 

 ある一定範囲内の物体を問答無用で喰らう――――”万華胃の咀”固有の自在法・咀嚼遠(そしゃくおん)。今でこそ一本だが、最大で数百もの火線をのばせるこれは、紅世の王の名に違わぬ強力な自在法である。

 穂乃美は相手の強力な自在法に、顔を真っ青にする。

 その彼女に向かって、”万華胃の咀”は両腕を広げ威圧するように近づいて、

 

「さぁー、これからが楽しー楽しー狩ぁーりの時間ですよぉー」

 

 あの人を見下した笑みで穂乃美を笑った。

 

 

 

 

 

 それからは一方的だった。

 迫る咀嚼遠(そしゃくおん)から逃げる穂乃美。時折穂乃美も不意をうって攻勢に移るも、”万華胃の咀”は巧みに『咀嚼遠』を操って、転移先をつぶしていく。”万華胃の咀”の動きは蛇のように知的で、柳のような柔軟さとしなやかで穂乃美を着実に追いつめていた。

 

「ほんと、性格悪いわね、”万華胃の咀”は!」

「いーぇ。私は徒としてのぉー本能に忠実なだけでー。別に性格が悪いわけではないのーでーすよー」

「それが性格悪いっていってるのよ!」

 

 力の消費が激しく、肩で息をする穂乃美に変わって、苛立まじりに”剥迫の雹”が怒鳴った。それにくつくつと笑いを返す”万華胃の咀”はどうみたって性格が悪い。

 今だって穂乃美が息を整える為に足を止めたというのに、わざわざ合わせて足を止めているのだ。これを悪いと言わずに何というのか。

 

(あいつはちょっと昔の知り合いで、私たちの武器である『剥迫』で何をできるか知ってる! 私たちには分が悪いわ!)

(……せめて私がもう少し力をうまく使えるなら……)

(いいえ、あんたはよくやってるわ……ただあいつのほうが一枚上手なだけ)

 

 穂乃美はちらり、抱えている夫に視線を向けた。

 妻の腕の中にいる夫に常の意気はなく、重傷故の息の荒さを無くし、微かな鼓動のみが彼の生存を主張している。もはや一刻の猶予もない。すぐに治療を開始しても命が危うい状況だった。

 いつにない彼の弱々しい姿に穂乃美の冷静な思考回路にわずかな焦りが過電流となって流れている。熱くなった思考がショートしそうだ。

 

(……このままじゃじり貧よ。”万華胃の咀”の自在法『咀嚼遠』は数少ない人間以外のものを存在の力に変えて吸収できるようになる自在法。あいつは私たちを追いながら、ちゃんと土や木を変えて使った分を補充してる。長期戦は不利になるだけよ)

(……はい)

(あんたはその男を手放せない。ならもうやることは決まってるわ)

 

 ”剥迫の雹”が明確に言葉にしなかったことを、穂乃美はしっかり認識していた。

 穂乃美は夫であるクズキを見捨てることができない。彼女が人を捨ててでも守りたかった彼を死なせることは、絶対に許せない。

 しかし彼を抱えたまま、穂乃美が逃げることはできない。そもそも自分一人だったとしても、穂乃美は目の前の”王”から逃げ切れる気がしなかった。

 逃げられない。ならば、することは一つ。

 ”剥迫の雹”は案にこういっていた。――万に一つの可能性である、”万華胃の咀”の打倒。それを目指すしか無い……と。

 穂乃美は唇を噛み締め、にやにやと笑う”万華胃の咀”の死角の茂みに転移した。

 そこでクズキを丁寧に地面におろし、

 

「……」

 

 耳元で何か言おうと口を開いて、結局何も言えない自分に苦笑した。

 

(さっきも言ったけど、あんたの旦那はあんたのこと何も覚えてないわ。それでも挑むのね?)

(記憶の有る無しに意味はないのです。ただ彼が生きている、それだけで私がこうする意味になる)

(本当に一途な女。前の契約者もそうだったけど、あなたもよっぽどよ。私だったら放っておかない)

(放っておかれなかったから、私は妻になったのです)

 

 穂乃美は背後のクズキを一瞥し、再び転移した。

 

「おんやぁー。男がいーませんねぇー」

(わかってるくせに。白々しい!)

 

 穂乃美の行動など浅はかだと顔に書いてある”万華胃の咀”をこれ以上無いほど研いだ視線でにらむ。

 これから穂乃美がすることはなんてことない。

 ”万華胃の咀”の討滅だ。できるかできないかは関係ない。穂乃美はそうしなければいけなかった。

 

(ここで”万華胃の咀”を倒さなければ、他の村人のように、私たちは、あの人は――――!)

 

 穂乃美は瞳を閉じ、開く。

 研がれた鋭い視線が決意という熱に打ち直され、覚悟の刃となって敵を見据える。

 

(わかってるわね……あんたは度重なる転移で疲労してる。存在の力も残りわずか。最初ならいざ知らず、今のあなたじゃ残りをまとめてぶつけなきゃ、意味はないわ。もしもうっかり外せばあの意地の悪いやつのことよ。あなたの目の前で夫を殺すでしょう)

(……そんなことはさせません……!)

(そう、させない。だから意思を振り絞りなさい。研磨した剣のように、細く鋭く、あなたの中にある存在の力を氷柱のように凍てつく雹へ)

(細く……鋭く……)

(自信をもつの。確固たる力なのだと。不安に感じることはないわ。あなたの力は天変が一つ。雹の力なのだから)

 

 穂乃美の体内で意思がわき出す。凝縮された守る意思は鼓動と共に存在の力へ練りあげられる。

 圧縮し、純化した存在の力が間欠泉のごとく、彼女の両肩から噴き出す。

 溢れた力は青墨色の炎となって揺らめき、僅かに離れた場所で温度を逆転させ、氷塊へと身を転じる。氷塊は噴き出した勢いのまま距離が生まれると徐々に分裂し、雹へと姿を変えた。

 まるで吹雪のように、雹は彼女を中心に渦巻く。数百の雹は嵐となり、渦巻く中心で、穂乃美の瞳が強い光を放っていた。

 

「素晴らしぃー! 『剥追』に加えて『雹乱運(ひょうらんうん)まで扱って見せるとは! よほど存在の力を扱う才能があったのか……」

 

 横目で茂みをみて、

 

「日常的に存在の力に触れていたのか……興ぉー味は尽きませんねぇー」

 

 ”万華胃の咀”のつぶやきと共に穂乃美の自在法が顕現する。

 彼女を中心に吹き荒ぶ『雹乱運』は後の新大陸の荒野で猛威を振るうツイスターさながらの嵐となっていた。

 

 穂乃美はタクトのように右腕を掲げた。それに従い雹は天空高く登る。雹一つ一つが鱗となって、まるで蛇のごとくとぐろを巻いた。

 

「真っ正面からいくわ」

「”剥追の雹”ぉー? この程度が本当に最後でーすかー?」

「ええ、勿論。だから受け止めなさいよ? 穂乃美!!」

「自在法――――『雹乱運(ひょうらんうん)』」

 

 タクトは振り下ろされた。

 示す先は”万華胃の咀”。待ち望んだ解放の号令に雹は大地に向かって一斉射された。

 

 巨大な龍が襲いかかるように数万の雹塊が豪雨となって突き進む。

 それは重機関銃の連射をも凌駕する威力であり、穂乃美の残りの力のすべてを注ぎ込んだ最大の攻撃だった。

 

「ぬわーーーっはっはっは!!」

 

 迎え撃つは幾万の口を持つもの。

 高らかに笑いながら、両腕のいたるところから火線が雹に向かって空を走しる。その数は実に数百を数え、落雹を迎え撃つ。

 中間で空気がはじけ、雹が喰われてゆく。

 

「あの化け物……っ! この『雹乱運』を真正面から食いつくす気なのね!」

 

 ”剥追の雹”が怒気を露わにする。

 『雹乱運』と”万華胃の租”が自在法『咀嚼遠』はお互いの中間で矛を交え、一方的に『咀嚼遠』に食われるという状況で均衡した。

 しかし『咀嚼遠(そしゃくおん)』は強力な自在法だが、あくまで任意あるいは接触した場所から一定の範囲内の物体を食らうだけの自在法だ。次々と遅い来る雹を一つの『咀嚼遠』で喰らい続けることはできない。

 そのため莫大な物量ならば穂乃美でも”万華胃の租”に勝てるかもしれないと一途の望みをかけて、この『雹乱運』を行使した。

 しかし、”万華胃の租”は”剥追の雹”の想像を超えていた。『雹乱運』の圧倒的物量に、『咀嚼遠』の連射で対応しようとしているのだ。事実、均衡は徐々に穂乃美へと近づいている。

 なにより力の限り生み出し続けられる『咀嚼遠』と違い、穂乃美の『雹乱運』は穂乃美が攻撃の前に生み出した雹しか存在しない。最初の攻撃(ファーストアタック)で押しきれなかった以上、じり貧になるのは穂乃美のほうだったのだ。

 

「かて……ない……っ!」

「ぬほほーーーほっぉーー!」

 

 押し寄せる濁流も、最後は竜頭蛇尾となって消えていった。

 すべての力を失い、もはや立つことも穂乃美にはできない。

 力が空っぽの器は身動ぎすらできないほどに、衰弱していた。もはや膝をつき、正面からねじ伏せた”万華胃の租”を涙ながらに眺めるのみ。

 ”万華胃の租”は大声で彼女をあざ笑った。

 この徒にとって人間も敵対する徒も食すためのものでしかないが、すべてをねじ伏せられ、まだ足掻ける力を残しつつも絶望に身を任せた状態がもっとも美味しいと、”万華胃の租”は知っていた。

 だからこそ、”万華胃の租”はすぐにでも叩き潰せる新米のフレイムヘイズ(炎のゆらぎ)を遠まわしに攻め続けた。

 ”万華胃の租”は食べることに無上の喜悦を感じ、自らうまいものを求める。

 これこそが強大なる紅世の王”万華胃の租”の原始の欲求であり、徒のすべてであった。

 

 今だ食したことのないフレイムヘイズはどんな味があるのだろうか。

 呆然と涙をこぼす穂乃美を見ているだけで”万華胃の租”の口元からはよだれがだらだらと溢れだしてくる。

 すでに下ごしらえは終わった。後は最後のひとさじ。

 

「そーういえばぁ、男がもう一人いましたぁーんねぇー?」

 

 ぴくり、穂乃美の肩が震えた。

 彼女の耳元の勾玉は落ち着きなく震えている。おそらく”剥追の雹”が何度も呼びかけているのだろう。

 

「さーて、どこにいたーかーなぁー?」

 

 わざとくるりと反転し、穂乃美に背中を見せる”万華胃の租”。徒の口元はひどく歪んでいる。

 彼は一歩一歩ある茂みへと近づき、その茂みを覗き込んだ。

 

「こーんなところにー?」

 

 そして”万華胃の租”最後の一味の首根っこを捕まえ、穂乃美に見せつけるように持ち上げた。

 それは穂乃美の夫であるクズキだった。

 今だしぶとくかすかな呼吸をしているが、誰の眼に見ても八割がた黄泉路に足を踏み入れている。

 

「……や、め……て」

 

 穂乃美の口から洩れた、懇願の言葉。

 ”万華胃の租”は頬をつりあげ、鼻をひくつかせる。今の穂乃美は実に好みの香を漂わせていた。

 ”万華胃の租”は確信する。――これは近年まれにみる傑作になる。

 

(興奮に焦ってはいーけませんよぉー。最後の一工程こそがぁー、もーーーーっとも旨さを左右するのですからぁー)

 

 ”万華胃の租”は丁寧に丁寧にクズキの首に力を込めた。

 真綿で首を締め付けるように。肉が柔らかくなるまで弱火でじっくり煮詰めるように。

 クズキの首をしめる。

 

 力なくぶら下がるばかりのクズキが、もがく。

 酸素をよこせと手足を震わせた。

 その様を見る穂乃美の瞳に憎悪が溢れる。

 

「……っ! ッ!」

 

 言葉にならない感情の発露は、彼女の肉を軟らかくするだろう。

 そして何もできなかった事実は、彼女の肉を甘くするだろう。

 愛する夫が無残に殺された結果は、彼女の肉にえもしれぬ法悦を加えるだろう。

 

「……ああ! ――ぁぁあぁあああああああ!!」

 

 穂乃美の涙の絶叫が森に響く。

 返す音はなく、”万華胃の租”の口元が絶頂を前に恍惚となるのみ。

 急かす本能を抑え、絶叫をコーラスに”万華胃の租”はゆっくりと力を加えてゆきーーーー首の折れる音がした。

 

 静寂。

 穂乃美はとうとう訪れたその音に、目の前を真っ白にし――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃやああああぁぁぁあ!!」

 

 

 という悲鳴(・・・)を聞いた。

 ”万華胃の租”は手首を抑え、脂汗の浮かんだ顔で痛みを耐えている。

 骨が折れたのは首は首でも、”万華胃の租”の手首だった。

 

 どうして彼が手首を押さえているのか。どうして彼の手首が曲がっているのか。

 疑問の溢れる穂乃美をさらに混乱させるように、大地が光り輝いた。

 

 その輝きは次第に高さを生み、穂乃美の腰元まで伸びた。

 輝き一つひとつはどれもが稲穂の形を取り、風に穂をなびかせている。

 穂乃美にはその輝きに見覚えがあった。

 かつて夫と見た夕焼けの中に光る稲穂だった。

 

 彼女の瞳に、涙が一雫こぼれ落ちた。

 真っ白だった光景に、言葉にできない黄金の稲穂の美しい風景が広がった。それは彼女の戦いに擦れた心に安堵と安心感を与えてくれる。

 

 稲穂がひと際ゆれる。

 その中心で太陽が生まれた。

 午後の柔らかな日差しを思わせるその光に、穂乃美は胸の前で手を合わせ、ぎゅっと指輪を握りしめた。

 太陽の光に、瞳を潤ませて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”万華胃の咀”にとって、それは歓迎すべきことのはずだった。

 目の前で生まれた新たなフレイムヘイズ(炎の揺らぎ)は、極上の食料が突然二つになる天来の贈り物というべきことのはずだった。

 しかし。

 ”万華胃の咀”は食欲ではなく、恐怖に身を震わせていた。

 

「お、おお……っ! おまえぇっ……」

 

 目の前にいたのは虫の息の人間一人。

 それが今、強大なる紅世の王”万華胃の咀”が震えおののくほどの強烈な存在を主張していた。

 

 フレイムヘイズは普通、契約した「人としての全存在」を紅世の王に捧げられ、捧げられた分の存在の力に空いた空白に契約者が入ることで完成する。

 その際捧げられる「人としての全存在」――運命という名の器の大きさによって存在の力の総量が確定する。

 今、”万華胃の咀”が感じるフレイムヘイズの力の総量は、強大なる紅世の王でも見通せぬほどに巨大だった。それは地平線の彼方に沈む太陽を見てこの地球の広さを測ることに似ている。

 強力な徒であるという強い自負を持つ”万華胃の咀”にとって、自身がちっぽけな存在にすぎないという事実を叩き付けられることは、追いつめた穂乃美の存在を忘れ、食欲すら無くす、圧倒的恐怖だった。

 

 稲穂が揺れる。

 クズキを包む炎は天を突くほどに高く燃え上がった。

 全てを焼尽す劫火の炎柱がそのすべてが契約者の存在を焼失させるための炎だ。本来であれば一瞬で終わるはずのそれが、終わらない。時間が経つほどに感じる存在の力は増大の一途をたどる。

 

 その力の総量に”万華胃の咀”は恐怖におののいた。穂乃美は頼もしさを覚えた。そして炎の持ち主である契約者”地壌の殻”は焼尽せぬほどに強大な契約者の「運命という名の器」の大きさに驚くばかりだった。

 

「――――――穂乃美」

 

 滔々した言葉で神の落し子は巫女の名を呼んだ。

 炎柱は弾け、吹き飛び、中心に男が立っている。

 

 その男はみるも無惨な風体だった。

 服は血に汚れ、ぼろのよう。何度も転がった体は泥にまみれ、髪は乱れている。

 だが、それらの要素をすべて眼に入らぬほど、その眼は強い光を帯びていた。ただ立っているだけで見放せないほどに、男は存在感があった。

 泰然とたたずむ巨岩のごとく男は佇み、徒を見据えている。

 

「――――――すぐ、終わらせる」

 

 一歩、踏み出す。

 瞬間、大地が震え上がった。強大にもすぎる存在の力によって顕現したその男に、誰もが震え上がった。

 ”万華胃の咀”は口の端から泡を吹きながら絶叫した。

 

「なんだ! それはなんだ!」

 

 このときばかりはいつもの話し方を忘れ、陳腐な言葉しか叫べなかった。

 それほどまでに男は圧倒的だった。

 

 これほどの存在の力が「運命という名の器」の大きさによって比例することは”万華胃の咀”も知っていた。

 ”万華胃の咀”にはこれほどの存在の力を一個人が保有することなど、とても信じられない。

 故に、叫んだ。

 だが複雑怪奇な自分を納得させ落ち着かせる理由を求める”万華胃の咀”の思惑を外れ、その理由は簡単かつ明朗なものだ。――男、クズキ・ホズミが未来を生きた人間だった。それだけの話だった。

 

 そも「運命という名の器」の大きさはどうやって決定されているのか。

 「運命という名の器」は個体の持つ時間軸に左右されないあらゆる可能性、死後やあの世、他の存在への影響力のことである。生きている間でもこの器の大きさは常に変化しており、必ずしも現時点での功績や影響力によって決定されるものではない。

 この器が大きいものとしては、生まれることに大きな意味を持つ王族であったり、後の世に広く使われる発明家であったりと、多種多様だが必ず影響力の強い存在の器が大きいものであった。

 確かにクズキも国主であり、見方によっては王族であり、その影響力は人よりも大きいだろう。だがその程度(・・・・)のことでこれほど大きくなるならば、この世の徒はすべて殲滅されているだろう。

 クズキはお世辞にも有能な人間ではない。これからの未来でなにか大きなことをして器が広がることも、子孫によって影響力が強くなることも考えずらい。

 

 ならばなぜ?

 その理由は一つ、彼が未来を生きた人間――――つまるところ、彼の頭の中にある雑多な未来の知識である。

 彼は別に勉学に勤しんでいた人間ではない。ごく普通に一般教養とされている程度の知識を持つにすぎない普通の一般人だった。

 しかし、その一般教養程度の知識の大多数は天才と呼ばれる人間の研究の末であったり、偶然の奇跡が見つけ出した知識なのだ。

 未来であっては誰もが知っていることでも、この時代であればその知識の価値は万金を軽く凌駕する。

 

 例えばクズキはすでにいくつかの知識をこの世界に――狭い範囲とはいえ、伝えてきた。

 そのうちの一つに妊娠法がある。危険日と安全日を生理周期から求める方法だ。これは意外なことに二十世紀に見つかったばかりのわりと新しく確実性のある方法として世界中に広まっている。

 この方法が広まるまで、妊娠のメカニズムはあまり知られていなかった。この時代の人間にも理解できる単純な方法だが、時代にはあまりに不釣り合いな知識なのだ。

 もしこれがこのまま広がっていけば世界に多大な影響を与えるだろう。

 たかが妊娠法だろ、と思う人間がいるかもしれない。

 だがもしこれを史実では子供に恵まれなかった王や将軍のような強い影響力のある人間が知ればどうなるだろうか。史実にはいなかった人間が生まれ、その人間が後をつぎ、まったく違う治世を行うかもしれない。

 王族でなくともたったもう一人生まれて結婚すれば、その人間と本来結婚する人間が違う人と結婚し、後の世に莫大な変化をもたらす。

 たかが妊娠法。されど妊娠法。その影響力はきわめて強い。

 

 他にも予防接種を始めとした影響力のありすぎる「当たり前の知識」をクズキは多数保有している。

 むろんクズキがそれらの知識を十全に扱えるとは限らない。

 だが扱えなくてもいいのだ。

 なぜなら「運命という名の器」は――――「時間軸に左右されないあらゆる可能性(・・・・・・・)」によって決定されるのだから。

 

 クズキがその知識を広めずとも構わない。

 使われなくとも変わらない。

 ただその知識――――『現代知識』というべきこれををクズキが保有していて、わずかでもそれを広められる可能性(・・・)があるのならば、クズキの器は大きく広がるのだ。

 

 一人の人間が一生で一つ見つければ歴史書に名を残すに足る知識を幾多保有するクズキの器は、もはや紅世真性の神すら認める『偉大なる者』をも凌駕する。

 クズキ・ホズミという未来を生きた一般人は――――太古の彼方で『偉大なる者』すらも超克する存在となる。 

 

 あらゆる生物の耳目を集めたまま、クズキはゆっくりと手を掲げた。

 掲げた腕の先、空に尋常でない存在の力が放出された。それは集い、変化し、圧縮され、炎の色の通り輝く第二の太陽として空に成った。

 

 太陽は美しい。

 黄金に輝く稲穂に降り注ぐ陽光は柔らかだ。

 穂乃美はその光に、彼の膝元で眠った春を思い出す。

 

「あ……あ……」

 

 けれど、それは”万華胃の咀”にとっての絶望だった。

 タクトのように手を掲げるクズキの姿は先刻の穂乃美と同様だが、起こりえる結果は違う。

 引き絞った口のまま、クズキは無言で手を振り下ろした。

 

 上空で存在を主張する太陽。その下部に火線で織りなされた円形の紋章が現れ、その中心に太陽の光が凝縮された。

 高密度の太陽光は文字通り太陽の熱を持って、一条の光芒となって”万華胃の咀”へと降り注いだ。

 地獄の業火すら生温い光は大地を溶かし、空気を破裂させ、徒を一瞬で炭化させた。

 

 強大なる紅世の王”万華胃の咀”。

 ただ食すことにどん欲な王の最後は、本能に刻み込まれた食欲すら吹き飛ばす太陽の力による、なんとも呆気の無いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、もう無理!」

 

 そういってクズキは大地にごろりと転がった。

 穂乃美は多少回復してきたのか、クズキの側によって彼の頭を膝の上に乗せた。

 彼女の手が愛おしげに夫の髪をなでる。

 

 クズキはその優しげな手つきにくすぐったさを覚えるが、文句は言わなかった。

 いうほど体力があるわけではなかったからだ。

 クズキは穂乃美が絶望した表情を朦朧とした意識のまま見て、その怒りから契約し、”万華胃の咀”の討滅を成したが、彼の傷自体は未だそのままだ。

 フレイムヘイズとなったことで回復力が眼に見えて上昇したものの、未だに体の節々には痛みが残っている。

 問題は多数残っているが、できることならこのまま寝てしまいたかった。

 クズキの現実逃避を許さないと、彼の右耳の勾玉――契約者”地壌の殻”の意思を表出させる神器からくぐもった声が聞こえた。

 

「無理? 残念だけどもう少しだけ僕と話をしてほしいな」

「わーってるよ。ただ言いたくなるくらいには疲れてるってだけだ」

 

 勾玉から声が聞こえたのに、穂乃美が納得のいった顔で頷いた。

 

「やはりあなたも私と同じく……」

「ああ。まぁそういうことだ」

 

 どこか悲しそうな顔をする穂乃美だが、耳元の彼女がのんきな声で”地壌の殻”に声をかける。

 

「ずいぶん遅かったじゃない。せっかくの逸材を失うかもってはらはらしたわ」

「はらはら? 君はそういうのが好きで契約するんだろう。よかったじゃないか。……まぁいいわけさせてもらうと僕もなるべく速く来たかったんだけどね?」

「そう? それならいいけど」

 

 どこか親しげに話す二人に、穂乃美が首を傾げた。

 

「二人はお知り合いなのですか?」

「知り合い、というか。元々私たちは二人一組のフレイムヘイズを作ろうと考えてた……なんていうのかしら」

「知り合い? というよりも同士、といったほうが適任なのかもしれないね」

 

 ”地壌の殻”はつけたして、

 

「心配? 別に僕たちは君たちへ不利益をもたらそうなんて考えてないよ? 君は夫婦みたいだしね。むしろ二人に長く生きていてほしいから僕たちは二人一組のフレイムヘイズを作ろうと思ったんだから」

 

 彼はさらに説明を続けようとする。

 そこにクズキが割って入った。

 

「あー、そっちもいろいろ考えてることがあるんだろうけどさ。それよりもまず現状と説明を頼む」

「説明? そうだね。そっちが先だったよ」

 

 納得するように”地壌の殻”が笑い、

 

「とりあえず? 最初に覚えていてほしいのは君たちと僕たちは長い付き合いになるということだよ」

「こっち風にいうなら、共に因果の路を歩くことになった……って感じね」

 

 ”剥迫の雹”が追随し、

 

「改めて、私は”剥迫の雹”」

「名前? 僕は”地壌の殻”」

 

 二人は息をそろえ、

 

「「因果の路を共に歩こう」」

 

 百代の代まで共にあるものに、言葉を贈った。

 

 




 1. 本小説はライトノベル『灼眼のシャナ』の二次創作となっています。

 語句の説明等はなるべく行っていますが、あくまで『灼眼のシャナ』原作、またはアニメを見た人を対象としています。そのため、原作を知らない、アニメも見ていない、といった方への配慮はまったく行っていません。これからも行いません。見てからを推奨します。
 原作ネタばれが多分に含まれているので、それでも読みたいという人はどうぞ。

 2. 本小説における時代設定について

 舞台を縄文から弥生時代と設定しています。こちらもできる限り調べてから書き出しているものの、細かい所は異なっている場合があります。もしそれは時代が違う、ということが分かる人がいましたら、連絡をください。小説の流れが変わらない修正でしたら、より雰囲気を出すために修正したいと考えています。

 3. 本小説の更新期間について

 作者はある程度区切りがつく所まで書いて、そこから前を修正。という形で小説を書いています。そのため、本小説はある程度区切りがつくまで投稿されることがありません。
 よって投稿は、ある程度区切りがつくまで書かれると、そこから毎日一話ずつ区切りまで投稿、という形になります。
 不定期で、更新のときは大容量かつ毎日投稿という変則投稿ですが、ご了承ください。

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