GOD EATER 2 RAGE BURST ~For fellows~   作:ゼロ・シン

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実地訓練

ロミオ先輩の質問タイムから一日がすぎた。自室から出て訓練に向かおうとフランさんに話しかける。

「おはようございます、フランさん。訓練受けたいんですけど今できますか?」

「訓練を行うことは可能ですが、ラケル博士からお会いしたいとの連絡がありました。研究室で、お待ちしているそうです。」

「あれ、そうなんですか。」

ラケル博士からの呼び出しは初めてだったため緊張が走る。前回の訓練の結果だろうか。

「あ、そういえば、博士の研究室ってどこにあるんですか?」

「階下の区画移動用エレベーターで行けますよ。高層フロアで降りて、右手のドアですね。」

「わかりました、ありがとうございます!」

私は服装を正すと、エレベーターに乗り込む。高層フロアに着くとジュリウス隊長がいた。

「あ、隊長!おはようございます!」

「おはよう。ラケル先生に会いに来たんだな。」

私はうなづく。

「俺の方も、少し話がある。ラケル先生の用事が終わったら、また声をかけてくれ。」

「わかりました、じゃあちょっと行ってきますね!」

「ああ。」

私はジュリウス隊長に軽く敬礼をして研究室の前にやってくる。この先にラケル博士がいる。そう思うと緊張した。

私はドアをノックする。

「ブラッド第二期候補生、柊 初凪、入ります。」

扉を開けて中に入るとラケル博士がモニターの前に座っていた。こちらに向き直るとニコッと笑ってソファを手で示す。

「どうぞそちらに。ほかの二人が到着するまで少しの間待っていてください。」

「わ、わかりました。」

私は恐る恐るソファに腰を掛ける。ラケル博士は再びモニターの方に向き直り、そこに映されているデータを見始める。

沈黙が走る。何か話した方がいいのかな。そう思った時だった。扉がノックされる。

「ブラッド候補生、香月ナナ入ります!」

「同じくロミオ・レオーニ、入ります!」

扉が開かれロミオ先輩とナナが入ってくる。

「あ、初凪ちゃん!先に来てたんだ!」

「うん。私もさっき来たところ。」

ラケル博士がモニターを見たまま二人にソファに腰掛けるよう促す。

二人が座るのを確認すると、博士はこちらに向き直って話し始める。

「よく来ましたね、ブラッド候補生の皆さん。本来なら、正式な晩餐会を催したいところですが……」

「あれ?ロミオ先輩も候補生なの?」

ロミオ先輩はうっと言いよどむ。

「う、うるさいぞナナ……!」

私はそのやり取りに思わず吹き出してしまう。

「お、お前も笑うな!!」

「すみません」

ラケル博士はくすっと笑う。

「すっかり仲良くなって、うれしいわ。」

ラケル博士は少し私たちの方に近づくと話し始める。

「それでね、今日は皆さんに、ブラッドとしての心得を、お伝えしておきたくて。」

「よ、よろしくお願いしますっ!」

ロミオ先輩が力を入れたように思えた。先輩も緊張とかするんだ。

「ご存知の通り、アラガミによって世界は滅びの道を進んでいます。それを押しとどめてきたのは、神を喰らう者、『ゴッドイーター』……

そして今、ゴッドイーターを超える『ブラッド』が、新たな時代を切り拓こうとしています。」

ロミオ先輩がそうそう!と言い、口を開く。

「そう、そうなんだよな!ジュリウスや俺たちが、『血の力』で……!」

そうね。と博士が言う。

「ブラッドに選ばれた者の中には、『血の力』が眠っています。『血の力』は意志の力……『血の目覚め』を迎えたブラッドは、その強い感応の力で、

あまねくゴッドイーター達を高め、導く……」

ラケル博士は私たち一人一人の顔を見回して言う。

「ロミオ、ナナ、そして初凪とジュリウス……皆さんは、ブラッドとして、ゴッドイーター達の先頭に立ち、彼らを教導する存在なのです。」

教導…ほかのゴッドイーター達を導く、ね。よくわかんないけど、ブラッドっていうのはすごい人たちなんだ。

「今はまだ眠れる種ですが……強い願いが、強い意志の力を生み、やがて『血の力』を目覚めさせるでしょう。その日を、楽しみにしていますよ……」

ロミオ先輩は目を輝かせて話を聞いていた。

「ラケル博士……!俺、頑張ります!」

「応援してるよ、ロミオ先輩!」

とナナが満面の笑みで答える。

「ばっ、ばか!他人事じゃないんだぞ!」

私も頑張らなくちゃ。早く血の力に目覚めて、第一線で戦うんだ。

 

ラケル博士の話を聞き終えた私たちは研究室を後にした。

「ねえねえ初凪ちゃん!この後ご飯食べに行かない?」

「あ、ごめん。私ジュリウス隊長に呼ばれてるんだ。」

「ジュリウス隊長に?」

「そうそう」

「なんだ?デートか?」

「違います!」

「じゃあ私たちは先に言ってるねー!」

「うん、ごめんね。また今度一緒に食べよ!」

「うん!じゃあね~!」

ナナとロミオ先輩はエレベーターに乗って降りて行った。

「終わったみたいだな。」

後ろからジュリウス隊長の声が聞こえる。

「た、隊長!?いたんですか!?」

「ああ。」

「ずっとですか?」

「ああ。」

私は顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。

「第二期候補生は優秀だな。」

「そ、そう…ですか?」

「ああ。そろそろ次のフェーズに移行しようと思う。前にも話した通り実地訓練だが、一つの試験でもある。」

「試験…」

「ゴッドイーターとしての今後を占う、試金石と考えてくれ。」

「わかりました。全力で取り組みます!」

隊長はうなづく。

「準備をしておいてくれ。もう少ししたら出発するぞ。ナナにも声をかけておいてくれ。」

「はい!」

私は一礼し、エレベーターで下の階に降りて行った。

 

ナナはロビーにいた。階段下から飾ってある絵を眺めている。

「あ、ナナ!」

「あれ、初凪ちゃん。ジュリウス隊長との話終わったの?」

ナナが小首をかしげてきいてくる。

「うん、それでね。もう少ししたら隊長と三人で実地訓練に行くんだって。準備しとけって隊長が。」

「オッケ~!その前にご飯食べていこーっと!」

「私は輸送機の中でいいかなー」

「じゃあ私もそうしようかな~。あ、おでんパン一緒に食べようよ!」

「え?あ、うん、いいよ」

「よーし、そうと決まったら準備するぞ~!」

ナナはおー!と声をあげると神機保管庫に向かっていった。

 

輸送機内。私とナナはおでんパンを食べつつ、ジュリウス隊長との合流ポイントに向かっていた。

「実地訓練って何やるんだろうね。」

「どうなんだろうね。」

「さすがに、本物のアラガミと戦うわけじゃないと思うけどさー」

あれ?ナナは聞いてないのかな?

「でも外のフィールドって危なそう…。うーやばい、緊張するとお腹減るんだよねー」

「ねえナナ、今回の実地訓練はね―――」

「まもなく、作戦ポイント上空です。作戦開始準備をお願いいたします。」

操縦士が私の言葉を遮って通達する。

「あ、はーい!初凪ちゃん、何か言った?」

「…いや、別に」

私たちはヘリから降りると、作戦エリアに向かった。ポイントA。そこがジュリウス隊長に指定された合流ポイントだった。

ポイントに到着すると、既にジュリウス隊長が待機していた。

「来たか。」

「フェンリル極地化技術開発局、ブラッド所属、第二期候補生二名、到着いたしましたぁ!」

ナナが敬礼して言う。

私もナナに倣って敬礼する。

「ようこそブラッドへ。隊長のジュリウス・ヴィスコンティだ。」

ジュリウス隊長は一呼吸おいてエリアに向き直る。

「それでは……今より実地訓練を開始する。」

ナナがえ?と驚いたような声をあげた。

「見ろ。アレが人類を脅かす災い……駆逐すべき天敵、アラガミだ。」

エリアに目をやると、二匹のオウガテイルが赤い羽根のようなものが生えた虎のようなアラガミを捕食しているのが見える。

私の頭に、かつての情景がよみがえる。力のなかった自分。泣き叫んだあの日。でももうそんなことはない。

誰かを守れる力。私は神機使いになったんだ。私は神機を握りしめる。

「手段は問わない、完膚なきまでにアラガミを叩きのめせ。……いいな?」

「え?あっ……あのっ、これって……実践ですか?」

ナナが弱気な声をあげる。それにジュリウス隊長が笑って答える。

「本物の戦場でやってこその実地訓練だ。お前たちが実力を発揮できさえすれば、問題になるような相手ではない、いいな?」

ジュリウス隊長がそういったとき、一体のオウガテイルが隊長の背後から飛び上がる。

ナナは硬直している。ジュリウス隊長の攻撃は間に合わないかもしれない。そう思ったとき、私の体は自然と動いていた。

「ナナ!危ない!」

そう叫んでナナに覆いかぶさるようにしてかばう。

血の吹き出す音が聞こえる。ああ、死んじゃったかな…そう思ったが痛みがない。

不思議に思って顔をあげると、ジュリウス隊長が片手でオウガテイルを制していたいた。その手からは血が出ている。

「た、隊長…!」

私の情けない声にジュリウス隊長は軽く笑って答える。

隊長はオウガテイルを見やり、神機を銃形態から剣形態に変化させる。

「せやっ!」

隊長はそう声をあげ、オウガテイルを空中に切り払う。

オウガテイルは空中を飛んでいき、地面に落下した。

腰を抜かしている私たちのそばに隊長がやってくる。

「古来から人間は強大な敵と対峙し、常にそれを退けてきた。鋭い牙も、強靭な爪も持たない人類が、なぜ勝利したのか。」

隊長は続ける。

「共闘し、連係し、助け合う『戦略』と『戦術』。人という群れを一つにする、強い意志の力。

『意志』こそが、俺たち人間に与えられた『最大の武器』なんだ。それを忘れるな。」

隊長は神機を構える。

「時間だ。行くぞ。」

隊長はそう静かに告げる。

私たちが神機を持つのを見ると、隊長は作戦エリアに降りて行った。私たちもそれを追いかけて作戦エリアに入る。

降りてきた私たちに隊長は言う。

「今回の相手は攻撃的なアラガミではないが、注意しろ。」

ナナがオウガテイルを見て声をあげる。

「うわぁー、本物のアラガミだぁ……」

無線にフランさんからの声が届く。

「サポートします。」

「よろしく頼む。」

ジュリウス隊長はそう答える。

オウガテイルがこちらに気づいたようで、威嚇の声をあげ、こちらに向かってくる。

「距離をとってアラガミの動きを観察しろ。」

隊長がそういうのと同時に、神機を変形させ、オウガテイルめがけて発砲した。

紫色の閃光がオウガテイルめがけて飛んでいき、命中すると火花を散らした。

「ナナ、初凪、左右から回り込め。俺はこのまま正面から行く!」

「りょ、了解!」

ナナが返事をして右に回り込んでいく。

私も左側面からオウガテイルに近づいていく。ジュリウス隊長からの援護射撃もあってか、オウガテイルはあまり動けずにいるようだ。

その隙を見計らって、私はナナとオウガテイルを攻撃する。

ピリピリとした、緊張した空気があたりを包み込む。

これが本物の戦場…

数発切り込んでみると、オウガテイルは数歩後ずさり、反転すると一気に走り去った。

「あれ?逃げちゃった!」

「アラガミ、捕食のために離脱しました。」

オウガテイルが逃げて行った先に、壊れた自動車があった。オウガテイルはそれを貪り食っている。

「ひゃあ!ほんとにアラガミってなんでも食べるんだねぇ…」

「まるでナナみたい」

私が笑って言うと、私自動車は食べないよ!とナナ。

「追撃するぞ。」とジュリウス隊長が神機を剣形態に変形させる。

私はオウガテイルにゆっくりと近づく。神機を捕喰形態に変形させ、オウガテイルに喰らいつかせる。

途端に体が熱くなる。バースト状態だ。

「これで最後…!」

私は神機を構え、剣状態で銃撃を放つ。

インパルスエッジ。ロングブレードのみに搭載されている特殊攻撃。オラクルポイントを激しく消費する代わりに、強力な砲撃を繰り出すことができる。

それを喰らったオウガテイルは数メートル吹き飛び、動かなくなった。

「コアを摘出するんだ。じゃないと、また復活するぞ。」

「は、はい!」

私はオウガテイルを捕食した。コアが光り輝く。

その時だった。

「アラガミ反応、数は二。ドレットパイクです。」

フランさんからの無線が入る。

「来たぞ。」

ジュリウス隊長が後ろを振り向く。見ると、緑色をした甲虫のような見た目のアラガミが地面から湧き出てきていた。

「うわ!地面から出てきたよ!」

「やつは固いぞ!注意しろ!」

ジュリウス隊長がドレットパイクに接近し、その甲殻を切り裂く。剣と甲殻の間から火花が散る。

私も剣で切り裂いてみたが、思うようにダメージが入らない。

「だったら!」

私は再び神機を構えなおし、インパルスエッジを放った。

ドレットパイクは霧散した。

「やった!」

「更にドレットパイクの反応です!」

「まだ来るの!きついよ~!」

ジュリウス隊長がもう一体のドレットパイクを片付ける。

「おそらく最後の一体だ。いくぞ!」

私たち三人はドレットパイク目指して突撃していく。一斉に切りかかると、ドレットパイクはあっけなく倒れた。

「アラガミの討伐、完了しました。」

「ふぅー、何とか倒せたー」

ナナがため息をつく。

「いい動きだったぞ。この調子で頼む。」

私は神機を見る。ほんとに神機ってすごい。あんなに怖かったアラガミが簡単に……

「っ!アラガミ反応を確認!近いです!」

「ええ!?まだくるの!?」

「種別は?」

「オウガテイルと思われます。」

「よし、迎撃するぞ!」

ジュリウス隊長がそういうと、目の前の道からオウガテイルが数体現れる。

「行きます!」

私が神機を構え、突撃しようと思ったその時、ジュリウス隊長が手でそれを遮った。

「ジュリウス…隊長?」

「いい機会だ。お前たちが目覚めるべき、『血の力』をここで見せておこう。」

ジュリウス隊長が神機を構えるのと同時に、隊長の体が一瞬赤く光る。

それと同時に私たちの体に変化が起こる。

「力が…みなぎる…!」

ナナが言う。

私もだった。この感覚は…

「バースト状態…?」

「今から『ブラッドアーツ』を目標に対して放つ。少し離れていろ。」

「ブラッドアーツ?」

「戦況を覆す、大いなる力…戦いの中どこまでも進化する、刻まれた血の為せる技。」

隊長が足を強く踏みしめる。それと同時に風のごとくアラガミに突っ込んでいく。

その軌跡は剣戟で埋め尽くされ、オウガテイルを切り裂く。

全てのオウガテイルは地面に溶け込んでいった。

「す、すごい…」

「これが、ブラッドアーツだ。」

隊長は私たちに向き直ると言う。

「俺たちブラッドに宿る『血の力』。そして『ブラッドアーツ』。これをどう伸ばし、生かしていくかは…

すべてお前たちの『意思』次第だ。覚えておいてくれ。いいな?」

私たちは静かにうなずいた。




今回もご覧下さりありがとうございます。ゼロ・シンです。
さて、今回の話を投稿したことで書置きが尽きてしまいました...w
そのため、これ以降の投稿はさらにローペースになってしまうと思われます。
私のリアルも忙しくなりつつあり、小説を書く時間が確保できません辛いです。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
PS:麩菓子がマイブームとなりました

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