ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

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11話

眩しい。

朝日が差し込んでいる。

小鳥の囀り、目覚まし時計の優しい音色。

そして、隣の柔らかく温かい感触。

柔らかく温かい感触?

意識が一気に浮上する。

 

目を開けるとそこには……。

 

「は、陽乃さん!?」

 

陽乃さんが俺に抱き着いて眠っていた。

 

待て待て待て待て、どういう状況だこれ。何があった。

 

「ん……比企、谷君……」

 

より強く抱きついてくる。

 

近い近い近い柔らかい柔らかいいい匂い温かい!

 

「ちょ……陽乃さん!起きてください!」

 

そして離せ。

 

「んん……」

 

何度も揺するが起きる気配がない。それどころか、逆に深い眠りに入っていってる気がする。

 

「陽乃さん!」

 

右手で陽乃さんの頬を抓る。

しかしそれでも起きる気配はない。

 

「ん……」

 

「うぇ!?」

 

陽乃さんが俺の首に近づいてきたかと思うと舐め上げてくる。

 

「んふ……んん……」

 

「う……ぁ……」

 

理性が飛ぶ前に……。

 

「捻り圧縮……」

 

俺の体に捻られるような痛みが襲う。

もちろん俺の能力だ。手放しかけた理性が一瞬にして舞い戻ってくる。

 

「ぐ、ぅああぁ……」

 

ついでに陽乃さんにもほんの少し星辰力を送り、捻り上げるように命令する。

 

「いたたたたたた!何!?」

 

その反応をみて能力を停止させる。

 

「おはようございます、陽乃さん。何でここにいるのか、説明してください」

 

何故か怯えたような目で俺を見ている。

 

「え、えぇと……」

 

「はやく言わないとまた捻り上げますよ?」

 

脅しだ。それに屈する陽乃さんではないだろうが。

 

「えぇと……言わなきゃだめ?」

 

「捻りあっ「言う!言うから待って!」……どうぞ」

 

「えぇと……比企谷君を驚かせるために……」

 

「なんのために俺を……」

 

ついついため息をついてしまう。

 

「だめ、だった……?」

 

俺も弱くなったなぁ。

陽乃さんのあざと可愛い涙目上目遣いにいとも簡単に堕とされる。

 

「別にいいですけど、もうしないでください。心臓に悪いんで」

 

「気をつけます……」

 

しょぼんとしている陽乃さんなんて新鮮だなぁ。

あっちに居た頃は絶対にみれなかった表情だったからなぁ。

 

「で、いつ離れて頂けるんですか?」

 

「あ、ご、ごめん」

 

どこか寂しそうな笑顔とともに名残惜しそうにゆっくりと離れていく。

ちょっと強く言い過ぎたかな……。

 

「はやく朝飯食べて街の案内をお願いします」

 

「うん、分かった。何食べたい?」

 

「陽乃さんの料理は美味しいのでなんでもいいですよ」

 

「比企谷君に言われるとなんか腹立つなぁ……」

 

ジト目で見てくる。

なんでですかね。流石に酷くないですかね。

 

「ま、いいけどねー。じゃあ朝ごはん作っておくから先にシャワーでも浴びてきなよ」

 

「わかりました」

 

**********************

 

朝飯を食べ終え、俺は陽乃さんと2人で市街地まででてきた。それはいい。約束だから。だとしても、だ。何故腕を組む必要があるのだろうか。

 

「そりゃ逃がさ……人が多いからだよ」

 

ナチュラルに人の思考を読まないでよ……。

 

「逃がさないって言いかけませんでした?」

 

「何を言っているのかな、比企谷君。私がそんなことするために腕を組むと思う?」

 

はい、思います。

てかさっきから道行く人からの視線がかなり痛い。

そりゃ陽乃さんも美女だから仕方ないけど。

 

「人が多いだけなら腕を組まなくても手を繋ぐでもいいんじゃないですかね?」

 

「ギクッ」

 

ギクッ、じゃねぇよ!

そもそもそんなに人が多いわけじゃないからね!?はぐれるほど人は多くないから!?

 

「……私が腕を組みたいからじゃ、だめ?」

 

う……。その涙目上目遣いはずるいと思うんですが……。

 

「はぁ、いいですよ。でも、そろそろ一人部屋にしますね」

 

「え!そ、それは……」

 

かなり寂しそうな表情だが、こればかりは譲れない。下手に天霧を呼ぶこともできないのだ。クローディアは知っているだろうから呼べるかもしれないが……。

 

「今回は譲りません。いつでも泊まりに来てもいいですし、夕飯は連絡してくれれば用意しておきますから」

 

「……」

 

「……」

 

真剣に陽乃さんの瞳を見つめる。

先に目を逸らしたら負けだ。

 

「……そっか。うん、分かった。じゃあ今日から泊まっちゃおうかな。あと夕飯は毎日よろしくね?」

 

先に目を逸らしたのは陽乃さんだった。

 

「ま、毎日ですか……。まぁ、善処します」

 

ほんとはこのままでもいいんだけどな。

 

「……まぁ、天霧とか呼びたい時があるってだけなんですけどね」

 

俺は独り言のようにボソボソと誰に告げるわけでもなく、

 

「天霧君達呼びたいだけならこのままでもいいんじゃないかな、比企谷君」

 

聞こえていたようだ。

 

「そ、ソンナコトナイデスヨー」

 

ま、まぁ、シルヴィは呼ばないようにすればいいしな。正直このままの方が楽である。

 

「いいよね?」

 

「はい」

 

結局俺の負けである。

 

**********************

 

アスタリスクの市街地は主に外縁居住区と中央区に分けられるらしい。

外縁居住区にはモノレールの環状線が走り、縁の部分にあたる港湾ブロックと居住エリア、そして6つの学園を繋いでいる。

俺達はとりあえず外縁居住区から見ていくことにした。

星導館にほど近い駅からモノレールに乗り、今はクインヴェールの近くの駅だ。

 

「あそこがクインヴェールだよ。女子校だから近づくとめんどくさいよ、男の子は」

 

「え、何そこ近づきたくない」

 

「でもシルヴィアさんはそこの序列1位で生徒会長だよ」

 

え、そうなの?まぁ、世界の歌姫っていうくらいだしクインヴェールっぽいけどな。

序列1位の生徒会長とは思わなかった。

 

「そうなんですか?」

 

「逆に知らなかったの?」

 

「はい」

 

「……」

 

なんとも言えぬ表情で俺を見てくる。呆れられてる?

 

クインヴェールを過ぎ、レヴォルフに近づいてきた。確かレヴォルフは不良学生が多いという。絡まれたくないから近づかないでおこう。

 

「あそこはレヴォルフだね。普通に市街地とかで乱戦するから気をつけた方がいいよ。あと乱闘に見せかけてターゲットを取り囲んで痛めつけることもするからボサッとしてたら色々されちゃうよ」

 

「うっわ、めんどくさ。そんなとこに行かなくて良かったわ」

 

「もう一つ。レヴォルフの冒頭の十二人はどの学園も認めるほどの実力者がいるよ。特に序列1位の孤毒の魔女はかなり強いよ。常に毒を振りまいてるから近づくと毒に侵されると思う」

 

レヴォルフにはめんどくさい奴しかいないのだろうか。

 

「わかりました。気をつけます」

 

人が多くなってきた。座っているから押し潰されることはないが、無理やり座ろうとする輩が少なからずいる。

だから陽乃さんとの距離も縮まるのだが。

流石にこれは縮まりすぎではないだろうか。すでに肩だけでなく、太ももや膝にいたるまで密着している。腕もなんだか柔らかい部分に接触している。

 

「ひぅっ、ひ、比企谷君、動かないで……」

 

「そ、そんなこと言われましても……」

 

「うぅ、あ、あそこはアルルカント・アカデミーだよ……。それぞれ派閥にわかれていて、派閥どうしが争ってるんだよ……」

 

無理して説明しなくてもいいと思いますが。

まったく、どこからこんなに人が溢れて来てるんだろうか。疲れがどんどん溜まっていくよ……。

 

「陽乃さん、界龍近くの駅についたら降りましょう。さすがにキツくなってきました」

 

「う、うん、わかった」

 

 




捻り圧縮
自身、または相手の体内に合わせて作られた星辰力を捻りながら潰す攻撃技。
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