ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

13 / 21
13話

明くる日の日曜日。

特に予定のない俺は昼頃までベッドでゴロゴロしていようと思っていたのだが。

 

「どうしてこうなった……」

 

珍しく朝自然に目が覚めた俺は、昨日と似たような温もりと柔らかさに包まれていて、ぼやっとしていた意識が一気に覚めた。

また、陽乃さんが隣で寝ていたのだ。それも、昨日より悪化した形で。

陽乃さんは俺に抱き枕のようにしがみつき、俺は身動きがとれない状況となっている。それに加えて、首筋に顔を埋め、舐め上げてくるのだ。

理性を保つために捻り影を常に使っている。

 

「どうやって起こしたもんかなぁ」

 

捻りでは目を覚まさず、かと言ってもう一段階上の圧縮技では逆に気絶してしまうかもしれない。

 

「ていうかトイレ行きたいんだが」

 

暴圧縮使わないと起きないよな……。捻りで起きないんだし。

星辰力少なめでやってみようかね。

 

「暴圧縮」

 

陽乃さんの口から送り込んだ星辰力をゆっくりと振動させる。

 

さすがにこれはキツいだろうなぁ。

 

「ひっ……い、ぁぁあ……」

 

少しの星辰力でこれだからなぁ。てか起きろよ、マジでさ。これで起きないってどういうことよ。

かなり痛いはずなんだけどな。

あれ、俺って鬼畜?

気の所為だよね?鬼畜じゃないよね?

 

俺はもう少し星辰力の量を増やすことにした。

鬼畜じゃないから!?どこぞのこの○ばのカ○マさんじゃないから!?

 

「やぁああああぁあああ!」

 

うっさ!?強めた俺が馬鹿だった!!

 

圧縮を強めた瞬間、陽乃さんが絶叫した。

 

「比企谷君!?起こすにしてももっと穏便にすませられないの!?すごく痛いんだけど!?」

 

「身動きがとれなかったので。あと捻りで起きませんでしたし」

 

「痛い痛い痛い痛い!そろそろ止めて!」

 

あ、忘れてた。

急いで解除する。

 

「離れてください。そろそろ俺の痛覚も麻痺してきて理性がヤバいです」

 

「んふふー、やだ♪」

 

「圧しゅ「やめて!?」次は全力の暴圧縮使いますよ」

 

全力の圧縮使ったことないからわかんないけど死ぬかもしれない」

 

「えっ!?」

 

ん?何故驚いた?声にでてた?

 

「ひ、比企谷君?死ぬかもって……どういうこと、かな?」

 

「そりゃそのままの意味ですよ。肉や骨が圧縮されるんですから。軽めだと痛覚だけが反応するみたいですけど」

 

実験してみたいのは山々だけど星脈世代以外にやったら確実に死刑だし、動物にやるのは可哀想というかやりたくない。

 

「それを私にやろうとしてたの!?」

 

「やだなー、ただの脅しじゃないですかー」

 

裏声になってた気がする。てか離れてくれよ……。

 

「うわ……」

 

あ、引かれたついでに離れた。ようやくトイレに行ける。

 

「散歩とトイレ行ってきます」

 

「あ、うん、いってらっしゃい?」

 

**********************

 

さて、ついほとぼりを冷ますために外に出てきたはいいのだが。

 

「どこいこうかね」

 

陽乃さんが添い寝していることに気付いたのは朝日が射し込む前。

なんやかんやで理性を保つために捻り圧縮を使っていたのは数十分にも及ぶ。それと同じくらい陽乃さんに捻り圧縮を使っていたのに起きなかった。さすがにおかしいと思った。実はもう起きていたのではないだろうか。

それならば、何故起きていることを隠していたのか。

なんのために俺に抱き着いているのか。

疑問が繰り返し脳裏をよぎる。

 

「歌うか」

 

誰もいない、朝早い公園。朝日が照らす木をステージ代わりに。観客は深い霧。

誰かに聞いてもらうために歌うわけじゃない。自分の趣味のために歌うのだ。

 

「光よ街の天使達に届け

輝く夢を叶えられるように」

 

なんでこの曲にしたのかはわからない。俺が歌う曲は全てなんとなく決めている。

自作曲を歌ってみたい。歌詞を作ってそれを曲にのせたい。でも無理だ。色んな意味で。黒歴史を掘り起こしたり、そもそも作曲してくれる人がいなかったりな。

シルヴィと歌ってみたい。だけど時間がない。それにシルヴィに合わせる歌唱力もないと思う。

でも1週間前みたいに夢も希望もない子供じゃない。

今はシルヴィと肩を並べて歌いたい。それが夢だ。でもそんな都合の良いことなんて出来るわけがない。

世界の歌姫と、無名の路上ライブすらしたことのない俺が釣り合う訳が無い。

 

「そっと吐き出すため息を吸い込んだ

後悔は苦い味残して」

 

どんどん日が昇ってくる。霧も徐々に薄くなってきている。

 

「悲しげに咲く花に 君の面影を見た 大好きな雨なのに

何故か今日は冷たくて」

 

けれど、物陰から俺を見ている人影に、その時は気付けなかった。

 

「帰るか」

 

3曲だけ歌った俺は木を降りた。

 

そして…

 

「……」

 

物陰に隠れていた人と目が合った。

 

「げ……」

 

「比企谷君、歌上手いね」

 

陽乃さんは拍手をしながら近づいてきた。

 

よりによって一番聞かれたくない人に!?

 

「な、なんでいるんすか……」

 

「なんとなくついてきちゃった」

 

ついてきちゃったじゃねーよ!?

めっちゃ弄られるじゃん!?

さすがに困るからね!?

どうすればいい!?

逃げ出したい。

 

「はぁ……」

 

「あっ、ひっどーい。お姉さんにそれはないんじゃないかなぁ?」

 

「生憎、陽乃さんをお姉さんと思ったことは1回しかありませんよ。あとは年上の人か妹みたいな人です」

 

大半が妹だと思ってるけど。

 

「妹だと思ってるなら呼び捨てでもいいんじゃないかな」

 

それを言われると痛い。でも意地でも呼ばない。

 

「いつか気が向いたら呼びますよ」

 

いつか。そういつか。いつになるかはわからない。

 

「むぅ……」

 

頬を膨らませた。なんていうか、

 

「あざとい」

 

「闇よ、敵の視界を奪え」

 

ちょっ!?

 

「は、陽乃さん!?なんというか、これはやめていただきたいのですが!?」

 

「ふふふー、だーめ」

 

 




途中の歌詞は特捜戦隊デカレンジャーと月光花とCatch the Momentです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。