翌日の放課後、俺はのんびり寮に戻ろうとしていた。呑気に鼻歌を歌いながら。
ふと、端末に連絡が入った。
『比企谷!助けてくれないか!?』
「何があった」
『ユリスが、ユリスを襲った犯人に1人で接触したかもしれないんだ』
「場所は?」
『再開発エリアの外れとしか……』
「分かった。任せろ」
電話を切り、気持ちを切り替える。久しぶりの仕事だ。しっかり成功させなければ。
「召喚、星龍」
龍に飛び乗り星龍の最高速度で再開発エリアに向かう。この速度ならほんの数十秒で着くはずだ。
さてシルヴィ、いつも力を借りてるけど今日は歌詞も借りるぞ。
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「解放、歌姫」
星辰力を練り、マイクを作り出す。そして、星龍を再開発エリアの中央上空まで進め、そこで歌う。
「In my eye and in my way
In the sky so far away
Are you hiding in the grey
I am on my way to find you」
龍の上に立ち、他の曲とは違う、凛とした歌声をどこか物悲しい民族音楽のような旋律に乗せる。
シルヴィの歌詞ではあるものの、シルヴィの能力とは違い、万応素ではなく、星辰力が嵐のように吹き荒れ、その星辰力は再開発エリアに降り注ぐ。
「Dancing like a lonely feather
In the windy weather
Looking for a beacon and some clarity」
降り注ぐ星辰力が情報を流し込んでくる。
ビルにいる多数の人ならざる影と1人の人影。その1人の人影に対面するように、1人の人影がいる。
そのビルを目指して走る1人の人影と、その後方に2人の人影がいる。
「My tomorrow my today
It is time for you to find your way」
どうやら、天霧は別の方法でそのビルの場所を特定したようだ。
しかし、これなら天霧の方が早そうだ。アイツは俺に助けを求める意味あるのか?
あ、これだけビルがあるなら2つ3つ壊してもいいだろう。
「圧縮」
適当なビルを圧縮し、星辰力と鉄に変換する。そして、鉄から
「変換、鋼龍」
龍を作り出す。
「お前はあそこのビルの上から1階ずつ剥がせ」
鋼龍は翼をはためかせ、リースフェルト達がいるビルに突撃する。
初めて作ったけど、やるな。速度は遅いけど攻撃力と防御力がかなり高いようだ。
「行くぞ、星龍よ」
星龍を鋼龍の近くに寄せる。やがて見えたリースフェルト達がいる階層は、大多数の人形が天霧を襲っている。尤も、天霧はそれを難なく斬っているが。片手にリースフェルトを抱いた状態で。
あれ?あの人形、圧縮すれば……。
「天霧!人形は壊さずに逃げに徹しろ!」
俺の声が届いたのか、黒炉の魔剣を振るのをやめ、後方に大きくジャンプする。
それにしてもよくこんな綺麗に上の階層を壊したな。鋼龍すげぇな。
「圧縮」
一言。そのたった一言で、戦っていた、或いは大柄な男を押さえ付けていた人形が消えた。そして、それを操っていただろう男の体内を圧縮するような感覚を送る。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせぇよ」
星龍から飛び降り、圧縮を掛けた相手の目の前に立つ。
「比企谷!」
天霧が呼んでいるが、ただ呼んだだけだろうか。その後の言葉を発しない。
「がぁぁ……、ぐう……、クイーン、やってしまえ……」
まだ人形があるのか。ていうかどこからそんなデカブツ出したんだよ。
細身の男の命令に従い、その巨体に似合わぬ素早い動きで俺に襲いかかってくる。
意味、ないのになぁ。
「比企谷!?」
うるせぇよ、天霧。
「星辰力を縛りし我は今を以て我が3統星を解放す」
解き放たれた星辰力が俺の周りを駆け巡る。その星辰力はデカブツの拳を受け止める。
その間、俺が動かしたのは口のみ。それも小声のため、聞こえたものはいなかったろう。
「ば、化け物……ぐぅ……」
ハッ、なんとでも言えばいいさ。
「圧縮」
目の前のデカブツと細身の男の手足の骨に圧力をかけて折る。
「ああああああ!?」
これでもう動けまい。
「黙れよ」
「ひっ」
「うあああ!?」
万応素が荒れ狂い、綾斗を覆う。
「綾斗!?」
めんどくせぇ。あいつもか。
「リースフェルト、悪いがアイツを見ていてくれ。俺は天霧を診る」
「わかった」
……、意識ないじゃないですか。治療院連れてった方が早いな。
「星龍」
ビルの上を飛行させていた星龍を呼ぶ。
「比企谷?」
「リースフェルト、天霧つれて治療院行け。意識失ってるなら俺はみれない。星龍、そこの男も連れてけ」
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「解放」
圧縮するような痛みをかけていた体内を解放し、俺は細身の男に話しかける。
「リースフェルトに喧嘩売るとか、馬鹿なのか?バックに天霧やクローディア、俺がいることを分かってるのか?」
まぁ、俺が動けば陽乃さんや今はいないけどシルヴィも動くからコイツに勝ち目なさそうだが。
「……」
黙秘か。
俺はクローディアに連絡をかける。
『どうしました?比企谷君』
「なぁ、コイツ殺ってもいいか?」
俺は倒れている細身の男を映す。
『殺さないでください。殺さなければ何してもいいですが』
「そうか」
『あと数十秒でそちらにつきます』
通話をきり、男に話しかける。
「聞こえてただろう?半殺しにしてやるよ。俺の友達(仮)を虐めた罰だ」
「や、やめろ……なんでもするから……」
「お前になんでも出来るわけないだろう」
馬鹿な奴だ。
「とりあえず1本貰おうか」
腕の骨を1本。
「や、やめっ」
「圧縮」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!」
うるせぇっつの。
「はいはい、比企谷君、そこまでです」
「よかったな、俺からは骨1本で済んで。クローディア、あとは任せた。俺は帰って寝る」
はい、任されました、の声を背後に、俺は待機させていた鋼龍に乗った。
もう厄介事はやだよ。めんどくさいし。
はぁ。疲れた。あと腹減った。
……こうして八幡は恨みを買ったのであった……。
変換
とある物を星辰力に変えたり、星辰力を物に変える。
歌姫などの解放はこの変換に近い。というより変換そのもの。
鋼龍
速度が遅い上に小回りが効かないが、かなりの防御力を誇る。また、物を破壊する時は綺麗に破壊する。
歌詞はLonely Featherより一部抜粋