ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

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台風凄いですねぇ
ニート予備軍である私には関係ありませんでしたが。

1ヶ月半も投稿せずにすみませんでした。
pixivでだらけきってました。
あと総合評価1000越えました。ありがとうございます。


6話

パァン。

乾いた音が辺りに響く。

 

「っ!」

 

昨日の壮年の男性が、渡り廊下でぶつかった少女を平手で叩いた……そんな音ではなく、その2人の近くにいた比企谷が純星煌式武装である、《隠蔽の星散》を空に向けて撃った音である。

 

「なぁ、爺さん。無抵抗の少女に平手打ちをしようとするのはどうかと思うぞ?」

 

比企谷のその言葉に、男は嘲笑を浮かべた。

もちろん、その笑みの種類が分からない比企谷ではない。

 

「貴様には関係ないだろう。というより、笑わせるな。自分の欲のために争いを繰り広げている貴様らが、どの口でそんな綺麗事をほざく?」

 

「自分の欲のため?その何が悪い。人間、誰しも少なからず欲を持っている。欲を持たないのはほんの1握りだ。ということで逆に聞くが、あんたは欲を持っていないのか?その欲のために何かを、誰かを利用したり、蹴落としたりしたことはないのか?」

 

「くっ……」

 

比企谷の返しに男は反論できなかった。自分の欲のために少女を利用していたからだ。

 

比企谷の返しを受ける前の威圧的な視線は霧散し、若干ではあるものの、縮こまっている。

 

やがて、元の威圧的な視線に戻ると、男の方が比企谷を振り払うようにして鼻を鳴らした。

 

「今のは躾だ。身内の問題に部外者が口出しをするな」

 

「身内。身内ねぇ。身内だからといって暴力は良くないと思うのだが?俺は星脈世代ではない教師に暴力を受けてきた。だが星脈世代だって痛みは感じる」

 

その言葉に、少女は比企谷を見上げる。次いで、いつの間にか隣りに来ていた天霧を見上げる。2人は叔父を名乗る、刀藤鋼一郎から、少女、刀藤綺凛を守るように立っていた。

綺凛はなにかを言おうと口を開きかけ……。しかし、戸惑ったように視線を彷徨わせて、結局何も言わずに飲み込んだ。

一方、刀藤氏はいかにも不快そうに顔を顰めている。

 

「たかだか学生風情が生意気な口を叩くものだな。貴様ら、名前は?」

 

「……天霧綾斗」

「……比企谷八幡」

 

2人が答えると、刀藤氏は懐から携帯端末を取り出し、手慣れた仕草で操作し、空間ウィンドウを展開させた。

 

(俺らのことでも調べてるんだろうなぁ)

 

比企谷は刀藤氏のしていることを予測し、これから起こる出来事に面倒臭さを覚えている。

 

「天霧……ふん、在名祭祀書入りもしてない雑魚と……比企谷……序列9位、そこそこやるようだがそれでもまだまだだな」

 

((イラ))

 

「ほう、黒炉の魔剣に隠蔽の星散をな……。なるほど、それなら無価値という訳でもないか……」

 

刀藤氏のその呟きは、本来誰にも聞こえない程の声量ではあったが、ぼっちによって無駄に鍛えられた聞き耳スキルが比企谷にその呟きを届かせた。

 

(キレたい。キレていいよね、コレ)

 

刀藤氏は不敵に笑うと、比企谷と天霧へ向き直った。

 

「いいだろう、小僧共。貴様らが私を気に食わぬというなら、この都市の、貴様らのルールで言うことを聞かせてみたまえ」

 

「あなたはそのルールの対象外の人間でしょう?」

 

「あぁ。だから」

 

刀藤氏は綺凛の後ろに回り込み、彼女の華奢な肩にぽんと手を置く。

 

「貴様らの相手は、これだ」

 

「なっ!」

 

天霧は思わず絶句した。一体なにがどうなったんな理屈になるのだろうか。

だが、比企谷の反応は違った。

 

「そのルールは、俺らどちらかが勝ったら適用されるのか?」

 

「少し違うな。貴様らのどちらかが戦い、勝ったら貴様らの要求を呑むし、貴様らが負けたところで、こちらから要求することはなにもない」

 

比企谷は内心ではあるが、ニヤリと笑う。ただの日本刀を使う少女が比企谷に勝てるはずがない。

 

「天霧、俺にやらせろ」

 

「あ、あぁ、分かった」

 

「ふむ……綺凛。あの隠蔽の星散を下したとなればそれなりに箔が付く。期待しているぞ」

 

ゆったりとした足取りで距離を取る刀藤氏とは逆に、天霧は野次馬根性旺盛な学生達の最前列にいた夜吹の隣に跳ぶ。

 

「わたしは……刀藤綺凛は、比企谷八幡先輩に決闘を申請します」

 

その震える声に、震えている声だがそれに応えるように綺凛と比企谷の校章が赤く発光する。

 

「受諾する」

 

比企谷は胸に手を当て、深呼吸するかのように声をだした。

同時に星辰力が封印された2統星のバッチを握り潰す。

直感ではあるものの、この少女の本気はコレ以上でないと務まらない。

星辰力が高まり、その光があたりに撒き散らされる。

それを目の当たりにした綺凛と刀藤氏、野次馬根性旺盛な学生達は驚いたように目を見開く。だが、綺凛の剣先は微動だにしない。

 

比企谷は隠蔽の星散を構える……ことなく、だらりと腕ごと下げたままであるが、綺凛を見据える……こともなく、目を閉じた。

 

「嘗めているんですか……!」

 

『決闘開始!』

 

「参ります!」

 

決闘開始と同時に綺凛が短く言った次の瞬間、比企谷の胸元に白刃が迫ろうとしていた。

が、その時にはそこに比企谷の姿はなく、綺凛の隣で普通のブレード型煌式武装を振り下ろしていた。

明らかに人間の反射速度を超えていた。

その行動が分かっていない限りは。

 

「ッ!?」

 

『決闘決着!勝者、比企谷八幡!』

 

ここにいた比企谷以外の全員が、強くて速いと知っていた天霧、ユリス、陽乃でさえ口を開きポカンとしていた。

 

が。

 

不意にカランという音が響く。

隠蔽の星散のウルムマナダイトが真っ二つになっていた。

そう、隠蔽の星散はたかが日本刀に煌式武装ですらないただの武器に負けた。

比企谷が日本刀を防ぎきれずにとっさに隠蔽の星散を盾のかわりにしてしまったのもその1つではあるのだが。

隠蔽の星散は能力の1つとして、武器の防御力の99%ダウンと、使用者の防御力の50%ダウンがある。

今回は隠蔽の星散の核であるウルムマナダイトに直接当たってしまったのが運の尽きだった。隠蔽の星散の核であるウルムマナダイトの防御力は0を通り越して、マイナス方向に振り切っている。

そのためこんなにもあっけなく散ったのだろう。

その散りざまはスターダストの様であった。

 

が、比企谷は外面ではそれを気にすることなくそのウルムマナダイトを拾い、刀藤氏にこう告げた。もう二度と彼女に暴力を振るうな、と。

それだけ言うと、比企谷は野次馬達を跳び越え、寮へと向かっていった。

 

 

 

 




はぁ……もう、はぁ……。

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