明日のシンフォギアXDが楽しみです。
逃げていった艦娘の名前は卯月、弥生。二人は持っている艤装で砲撃しており、食らっている方の化け物はビクともしない。蟹の姿をした化け物の行動力自体は遅かったのが幸運であるものの、数がかなり多い。逃げ場のない状況で、二人は囲まれていた。
「つっ⁉︎こんな時にっ‼︎」
艤装が壊れ、鋭い爪先が二人に向かって刺そうとして来た時に、バリアが卯月の目の前に突然出現して彼女達を守る。
「君達は下がっていてくれっ!はぁぁぁっ‼︎」
横からバリアを展開している盾を前に構え、化け物の群れに青年が突撃して片手剣を持って突進する。剣は甲羅ごと蟹の身体を貫き、貫いた剣を抜くために蹴り落とす。他の蟹達は二人の艦娘ではなく横から入ってきた彼を襲ってくるものの、張ったバリアが行く手を阻む。
「…これじゃダメか」
彼は右手に持っている剣をしまうと腰にある片手斧を取り出して、バリアが崩れる前に何匹かいる蟹の甲羅を砕いた。砕かれた甲羅は破片となって散らばり、血が噴水のように溢れ出る。
大勢いた蟹はまるで恐れているかのように、散らばって逃げて行く。
「逃すかっ‼︎」
逃げて行った蟹の一匹を、投げた斧で倒し、真っ二つとなって裂かれた。
斧は彼の元へと戻り、それを腰にしまう。
*****
「任務、完了」
「…何者なの」
二人は彼に救われたものの、恐怖した顔をしている。提督に捨て駒扱いされ、人間不信になっている。助けてもらったからといって、化け物を殺して人間に恐怖している。
「…もう心配はいらないよ。僕の名前は北郷紡木。大丈夫かい?」
そんな二人の様子を見ている彼は両手にある武器を納め、手を差し伸ばしながら笑って自分のことを紹介した。それでも二人は警戒しており、手負いでも必死に逃げていくが、彼が張った結界によって逃げ道を塞がれる。
「って言っても、僕のこと怪しく思われて当然か。こんな物騒なものを持ってるんだから」
「…」
自分の持っている武器を見ている。手を差し伸ばそうとしても二人の艦娘は逃げ出そうとするが、見えない壁が道を塞いでいた。
「無駄だよ。仮にこっちが結界を解いたとして、行くあてがあるのかい?」
「そんなの、貴方には関係ない」
卯月を守るために弥生が前に出る。
彼は武器をしまい、自分が手を出さないことを示すために両手をあげる。
「ま、まま待ってよ⁉︎…無理に連れて行こうってわけじゃないから。僕はここで調査しないといけないことがあるからその間待ってもらっていいかな?」
「どういうつもりなの…」
「こっちはやるべきことがあるんだ。詳しい話はとりあえず落ち着いた場所に移動してからにしよう…君達の衣服も血だらけになっているから、そこで綺麗にすると良い。それに疲れているだろ?僕のことはまた後から説明するよ」
*****
彼が携帯を取り出してこの地域に蟹のような敵がいないかを確認し、彼女達に待ち合わせの場所を教えていた。暑さをしのぐために二人は洞窟の入り口へと移動し、彼が指示したところに待って一時間経つ。
「何者なの…?あの人」
二人はそのままのんびりと疲労を回復し、彼をずっと待っていた。こんな暑い中、彼はさっき出てきた化け物の調査をしているのか二人に気になっていたもののそもそも彼の存在自体が謎であるため深く考えても無駄だった。
「お待たせ。時間がかかってしまって」
砂場に長居しているせいで、彼の皮膚が少し黒くなっている。
さっき襲ってきた怪物の甲羅を回収し、網に入れている。
「何者なのですか…なんで私達のことを」
「神から貰った依頼で君達のことを教えてもらったからって言っても分からないか…僕のことを知るには、僕の船に是非来て欲しいんだけど?いいかな?」
「「…船?」」
彼は携帯を取り出して、二人と一緒に彼の言っている船へと移動させた。
*****
「これが、僕の言う船だよ。詳しく言えばただ単に海で移動するとかじゃなくてあらゆる世界に介入する船みたいなものかな?僕らは正義側という存在と呼ばれているんだ。
詳しい話はかなり長くなると思うから、まず君達はこの船内を好きに見学してもらっていいよ」
船内には白い壁はあるが窓は無く、内部は全体的に狭い。部屋はホテルのような宿泊室みたいになっており、外に出られないための洗濯物を干すための乾燥機室。生活に欠かせないものが機能し、充実している。家電には分かるように、その隣にラベルと取扱説明書が貼り付けられていた。
二人は船の中を見て驚いていたものの、気になっていたことがある。彼以外人がいないことだった。
「あの貴方以外誰かいますか?」
「実は、その…活動人数がほぼ僕だけで、一人…なんだ。だから二人にはもしも良かったら入ってもらいんだけど…ダメかな?」
(…えっ?)
その言葉で空気が沈んでいく。二人からしたら一人だけで機能しているこの組織って本当に大丈夫なのかと一瞬思ってしまった。
「で、でもね!神の依頼に応じてちゃんとした報酬だってあるんだよ‼︎それにこの船には生きる為の必要最低限のものが保証されてるんだ‼︎
電気家電とか、水とか、医療機器とか…食料の方は世界に介入して調達しないといけないけど、それでも君達のいたブラック鎮守府よりは幾分もマシだと…思う!」
食料は世界に介入して手に入れればいいから、生活には不便はない。
前の鎮守府のように深海棲艦と戦ったり、捨て艦のような酷い扱いを受けることはない。しかも、彼はクズ提督のような二人に欲情して襲って来る様子も見当たらなかった。
「必要なら他の艦娘も連れて行くことができるよ。でも僕はこの船に入りたいかどうかという君達の意思を尊重したいからね。実際僕一人だけでも依頼は上手くやってるし、何か質問はあるかい?」
「あの、質問があるぴょん。貴方は依頼って言ってるけどどんな仕事をするんだぴょん?」
「そうだね。あらゆる世界に住んでいる人達を守ることや、さっきのような君達のいる世界とは違う別の世界から来た化け物をきちんと退治すること。
他にも、別世界で大事故が起きている際に密かに住民を助けたり…そういう誰かを助ける為の仕事をしているんだ。そしてその仕事の報酬として神から高い報奨金をもらえる。僕らの組織のことを正義側っていうんだ。でも、正義側といってもそれぞれ枝分かれしているものがあるんだ。今分かったのが6つのグループに分けられてるんだけど。
過激派、穏健派、強硬派、中立派、信仰派、隠密派の六つだね…ちなみに僕がいるのは中立派だよ。やり方は違ってどんななのかは残念ながら機密事項になっているから教えれないんだ。
彼らの情報が分からないからね」
返答に長々と説明すると卯月の次は弥生が紡木に対して、質問が飛んで来る。
「仕事内容については分かったけど、さっきから言っている神って?」
「えーと、それは『どうしたんだ、ぼっち』誰がボッチだよっ⁉︎」
大きいテレビの電源がオンになっており、その画面には白と黒の勾玉の形が映った。
『神に失礼なことを言うな』
「え、えっ…えええっ⁉︎まさかあれが」
「うん、認めたくないけど僕らの言う神様だよ」
白黒の勾玉のようなのが、テレビ越しに自分のことを神様だと言っている。
「これについても紹介が遅れたね。
まぁ、あれについては要するになんでもアリな浮いてるオブジェクト、または石像だと覚えてくれ。いちいち癪に触るようなことばかり言うけど生活を支えているのはこれのおかげなんだ」
『オブジェクトとか石像とかこれ扱いとか神に失礼だな。ちゃんと神様と呼ぶべきだ』
「お前のような神様がいるか‼︎とにかく、パンフレットを二人に渡しておくからそれも目を通しておいてね」
今度は、画面を通り抜けてテレビを通過して出て来る。パンフレットを渡された弥生と卯月は唖然としていた。
『それにしても二人にこんな親切に教えなくても良いだろう。行くあてがないんだから、勧誘しても良いと思うぞ。あんな小島に生きている生物なんてごくわずかだろう。
行くあてもないのなら、素直に俺と共に来いってカリスマ性ある言葉で二人を勧誘すれば良いだろ。あと報酬は携帯に送ってるから確認してね』
「分かったよ。それと、僕にカリスマ性なんて微塵もないよ。どんな手段を使ってでも二人を強引に船に連れ込もうとしても、彼女らに強い意志がないのなら一緒に仕事するなら支障をきたすし」
『そんなんだから童貞で、かつ一人ぼっちなんだよ。小娘相手に内心ドキドキしてばっかりだろ』
「よ、余計なこと言うなぁ!あと童貞は関係ないだろっ‼︎」
紡木が大袈裟に言っているところ、脅していた時に彼の喋りがガチガチになったことがあったなと思い返している。
「僕はね…今後も君達のようなどこにも行くあてのない人たちに見せて、さし伸ばそうと考えてるんだ。僕一人じゃどうにもできないこともあるかもしれないからさ…まぁ、10人以上は今の所必要ないけど」
「で、でも…それって宗教の勧誘とかじゃないぴょん?だって、神様だとかまるで信仰みたいな感じだし、まさか教えを説がせるために洗脳するわけじゃ‼︎」
だとしても神様に支えられていると言っているためにまるで宗教勧誘のようなものだと言ったが、紡木はそんな組織じゃないと否定する。
「えっ、いやいやいやいや⁉︎何か二人とも勘違いしているけど、そんなお経唱えたりとか、教えは絶対だから背いたら罰を下されるなんてことやらないよ!そもそもそんな信仰的なことないし、非人道的なことは絶対にしないから!確かに神様はいるのはいるけど、基本勝手だし。教えとか関係なしに自分の意思を尊重しているから無理矢理船に連行しようとは全く考えてないよ‼︎宗教とか全然関係ないからねっ‼︎」
盛大な勘違いをしている二人の誤解を解くために彼はまたもう一度この組織について説明した。宗教団体ならば、神様を崇むための儀式だのしきたりだのお経だの制約だのに縛られるがそんなことはない。
「とりあえず、君達二人はまだ入るって言う気持ちにはなってなさそうだからね。考える時間が必要だそうだからとりあえず1週間か衣食住は保証するけど…もし入る気になったら、僕に声をかけてくれ。二人の部屋も用意するよ。
僕の方はさっきの怪物を調べなくちゃいけないから、自室に戻るね。君達が持っていた壊れかけの艤装も神様に相談して治してもらうように聞いてみるよ。何かあったらドアにインターホンがあるから言ってくれ」
紡木は二人の部屋を用意するためにネームプレートと鍵を作成して、差し出した。神様はいつの間にかいなくなっており紡木は部屋に帰って現れた怪物のことを調べてようとした。
「どうしよっか…入るのは部屋で一緒に考える?」
「…うん。そうしようよ」
卯月は頷き、紡木が用意した部屋へと歩いていった。
せっかく衣食住を用意してくれたものを二人が断るわけにもいかなかった。