ゾイド NEW BATTLE STORY   作:龍大徳

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第一章
1 白き獅子との出会い 


「いってらっしゃい、カゴメ!」

「はーい、いってきまーす」

元気よく家を飛び出し、自身の黒い長髪を風になびかせながらカゴメはハイスクールへと向かった。2日前に入学式を終えて、今日が授業初日となる。

ここは東方大陸のエドゥーシティー。数ある大陸の都市の中で大きい部類に入る。カゴメはこの街のハイスクールに今年入学した15歳の少女である。これから始まる高校生活に期待を抱きながらの登校である。

「あの子ったらー、初日からあんなにはりきっちゃって。何かおきて落ち込んじゃわないかしら」

「大丈夫じゃカゴメなら」

「そうだよママ、ねーちゃんいつでも明るいから」

心配する母に祖父と弟が答え不安をなくすように促す。

 

 

 

桜並木を歩き、学校へ向かうカゴメ。

「おはよーカゴメ!」

「あら、おはよートキネ!早いわね」

「当り前じゃない。初日から遅刻なんてシャレになんないわよ」

声をかけたトキネと名の少女と合流する。カゴメと同じ長い黒髪だが、彼女は髪をポニーテールにしている。

「あれ、いつも一緒にいるヨシモリ君は?」

「あー、あいつならまだ寝てるわよ。あのバカ、徹夜してパティシエの本読み漁ってたみたいだから。だから置いてきたのよ」

そう話ながら二人は高校に着いた。

彼女らのクラスはA組。

始めホームルームがあり、その後午前の授業を受け昼休みに入った。

 

 

 

カゴメとトキネは教室で席をくっつけ昼食をとった。

「カゴメ、あんたクラブどこにするか決めた?」

「うーん、弓道にしよっかな。実家が神社で儀式とかで破魔矢を使ってたから」

「やっぱりね。あたしも小さいころから長刀やってたからそれにしよっかと思う。おばあちゃんに鍛えられたから自信あんのよ」

弁当の卵焼きをとりトキネは答えた。

「カゴメー、トキネー」

「あら、ユカ、エリ、アユミ」

B組の同級生たちがやってきた。

「クラブ何にするか決めたー?」

「私は長刀でカゴメは弓道よ。あなたたちは?」

「私は放送部で、エリがテニス、アユミは語学研究会よ」

3人のうちのユカと呼ばれる少女が答えた。

「でもねー、少し難しいけど結構人気あるのがゾイドウォーリアー部よ」

「ゾイドウォーリアー…もしかしてゾイドバトルの?」

「そうよ、ゾイドバトルの競技者よ。一応だれでも入れて他の部と掛け持ちしてる人多いのよ。といっても乗れるのはほとんど小型ゾイドみたいだけど。放課後見学にユカとエリとC組のアカネたちで行こうか思ってんだけど、2人もどう?」

「いいわよ。でもアカネも見に行くの?あの子不器用だから複雑な操縦できないんじゃ」

トキネがふと疑問に思った。

「それも問題ないわ。最初は自動操縦でだんだんと慣らしていくようだから」

「そっか、なら安心ね、でもゾイドかー。小さいころ私いつかゾイドに乗って冒険してみたいなんてこと言ってたなー」

「へー、カゴメそんな夢があったんだ。よかったじゃない、小さい頃の夢がかなうんだし」

エリが意外そうな顔をした。

「そう言えばカゴメのお父さんって有名なゾイド研究者よね。お父さんに乗せてもらったことないの?」

「小さい頃に少しだけあるわ。でも研究が忙しくてここ数年あまり会ってないの」

「ふーん、そうなんだ。それは残念ねー。まっ、とりあえず放課後ね」

 

 

 

放課後カゴメたちはゾイドウォーリアー部の見学に参加した。部の活動は校内のゾイド競技場で行われる。確かに小型ゾイドが大多数である。大きいものでいえば中型ゾイドに分類されるコマンドウルフやガンスナイパーくらいになる。

カゴメたちはもしかしたら大型ゾイドも少しくらいいるのではと半ば期待していたが、どうもそれも無駄だったようだ。

「まーウォーリアーといってもアマだししょうがないわよね….他にどんなゾイドがあるかしら?」

C組のアカネはそう残念そうにいいながらあたりを見回した。すると…

 

ズンズンズン….ガーオー。

 

巨大な青い影が競技場の扉から現れた。

「あれってシールドライガー?なんだ、大型ゾイドもいるじゃない。」

見学者たちは一機のシールドライガーに注目した。その時コックピットが開き、上級生らしき学生がそこから降りてきた。

「新入生のみんな、俺はこのクラブの主将のレビンだ。よろしく。」

茶髪で身長は180cmほどの体格のいい学生だ。

「ねー、あの人マジでウォーリアーって感じじゃない。あの人についていけばプロのゾイド乗りになれるかも。」

エリが期待気に言う。

「さっそくだが、入部希望者はこの紙に名前と連絡先を記入してくれ。この後実際に好きなゾイドに乗ってもらう。最初は自動操縦、その後徐々に自分で操縦してもらうことになる。」

 

新入生たちは希望書類に氏名、連絡先を記入すると闘技場にあるゾイドを選び操縦してみた。カゴメはコマンドウルフ、トキネはヘルキャット、アカネが選んだのはガンスナイパー、他の三人はモルガやガイサック、シーパンツァーに搭乗した。カゴメ達以外の新入生もほぼ同じようなゾイドである。自動操縦でコックピットでゾイドの動きを体感させた後、通常操縦に切り替える。

「へー、意外と簡単なのね。これは楽ちんねー!」

「当り前さ。一応ゾイドが暴走しないようリミッターをかけてるし、そうでなくても人に慣れさせるようにしてるからね」

レビンは通信でカゴメ達に伝える。

「なんだかゾイドバトルしたくなっちゃうわー。」

「はっはっはっ、それはまだまだだなあ。動かすのと実際にバトルをするのとでは全然ちがうからね。乗り始めの君たちにそんな危険なことはさせたくないよ」

「そうかー、でもこんな風に慣れてけばいつかはバトルもできるか」

 

そんな感じで新入生が操縦し始めてからあっという間に1時間ほど経った。ほとんどの新入生たちは操縦に慣れてきた。

それを見計らってかレビンが、

「よし今日はここまで、新入生のみんな。操縦を止めてコックピットから降りてくれ」

「えーと、操縦を止めるのはブレーキをかけて…ってあれ止まらない!?」

アカネが困惑してしまう。

「あれっ、どうして?先輩の説明通りやったけどだめだわ」

「アカネ君、レバーを動かさずに固定してブレーキをかけて」

「はい、…ってあれだめだわ。どうして~?このこの止まれー」

とその時、

 

ガチャッ!

 

何回も強く踏みすぎたせいでレバーを壊してしまった。

「あー、どうしよう!」と同時にレバーも折ってしまう。

ギャー、ズンズンズンズン。

勝手にガンスナイパーが動き出した。

「えーうそ~、なんでいうこと聞かないのよー。止まってー!!」

「アカネー!やっぱりあの子やらかしたわー。もうどこまで不器用なのよー」

カゴメ達は呆れてしまう。

「アカネ君!いかんこうしちゃおれん。待ってろ今行く。」

レビンはすぐさまライガーに乗り暴走するガンスナイパーの動きを止めようとした。

「キャー!止まってー、止まってー」

闘技場の壁にぶつかろうとしたその時、

ガシーッ!

シールドライガーが両前足で後ろからガンスナイパーの動きを制御した。しかしスナイパーもなんとかライガーから離れようとする。

「くっ、ダメだ。ライガーだけでも不十分か」

歯ぎしりしながらもレビンは必死で止めようとする。

『まずい、このままじゃ2人とも。こうなったら』

意を決してカゴメはウルフを動かし、ライガーに加勢した。

 

ガン!

 

壁とスナイパーのわずかな隙間からスナイパーの動きを止めようとウルフが首で止めようとした。

「ぐー、お願い!とまってー!」

「カゴメ君、よすんだ!」

「ダメです!アカネと先輩を見捨てられません!」

暴れるスナイパー。周りはただ見守ることしかできない。しかし、二体の力でか、あるいは2人のパイロットの意志が通じたのか、徐々に暴走ゾイドの動きは鈍くなり、ついに力尽きて動きを止めた。

コックピットから飛び出したレビンとカゴメは手動でガンスナイパーのコックピットを開いた。

「アカネ君!アカネ君!大丈夫か!」

「アカネ!だいじょうぶ!?」

「先輩、カゴメ…なんとか…生きてます」

息を切らしながらもアカネは無事なようだ。

「そうか、よかった。しかし念のため医務室で診てもらおう」

 

 

 

医務室のベッドに運ばれたものの、アカネの身体には異常はないようだ。

「先輩、カゴメ、ごめんなさい!!私のせいで危険な目に合わせてしまって。私が不器用なばっかりに」

レビンたちの前で目に涙を浮かべて謝罪する。

「いや、いいんだよ。君が無事でいてくれて。あのスナイパーのレバーだが少し劣化してたようだ。それを見逃してしまった俺にも責任はある。」

「でも私も冷静にしてたらこんなことには」

「そうだな。今度はもう少し優しいゾイドで試してくれ。」

そう言うとレビンは医務室を後にした。

「アカネ、気にしないで。無事でなによりじゃない。」

「そうよ。それにしてもカゴメもすごいじゃない。とっさにゾイドを動かしてアカネを助けようとするなんて。先輩たちも感心してたわ」

「あれは、ただそうしなきゃって思っただけよ。出なかったら2人ともどうなってたか」

「思っても普通はできないよ。私なんか怖くてただ見てるだけだったもん」

「カゴメ、助けてくれてありがとう。」

「いいわよ、でも無事で本当によかったー」

女子たちで話してると

「カゴメ君、ちょっといいかな?」

とレビンがカゴメを呼び出した。

「はい…」

 

 

呼び出されたのは廊下だった。

「俺が何を言いたいかわかるね」

そう冷静に尋ねると、

「はい…勝手なことしてすみませんでした!」

「うん、君の勇気は称えたいが、一歩間違えれば君もただでは済まなかった。いくら友達を助けるにしても無茶な行為は控えてほしい」

口調は穏やかでも、レビンの目は厳しい。

そしてなぜか自分の手が震えていた。アカネを助けようとしたときは感じなかった恐怖が今になってなぜか。

「今後は君も冷静に考えて行動してくれ。ゾイドの操縦は危険と隣り合わせの場合もある。そのことを念頭にいれておくように」

勇気ある行動ではあるものの責められて当然のことだとカゴメは理解していた。

「ところで、君はどうやってあそこまでウルフの操縦をすることができたんだ?まだ歩行か早歩きぐらいしか教えてないが」

レビンは疑問に思いながら尋ねた。

「実は小さいころ父に何度か乗せられたことがあって、今日実際乗ってみてある程度どう動かせばいいか思い出したんです。父はゾイドの研究者でもあるんですが。それとそのころからいつかはゾイドに乗って旅したいなとも思ってたんで」

「なるほど。ん?待てよ、君のお父さんの名は?」

「タダマサ ヒガサです」

「タダマサ?やはりそうか!あのゾイド生物学の」

「知ってるんですか!?父のこと」

カゴメは大声をあげて驚いた。

「あー、知ってるともその道では有名な先生だ。ゾイド生物学だけでなく古代ゾイド文明の考古学などにも造士が深い人だ。去年実際に会ったことがあるよ」

「ホントですか!!それで今父はどこに!?」

「すまない、去年初めてお会いしてからそれ以降はわからない。西方大陸にいるという噂もあるんだが詳しいことは」

「そうですか。2年前から父は家を離れて仕事をしているんですが。それで父と会ったときにどんな話を?」

「俺たちのクラブにあるゾイドを寄贈してくれたんだ。といってもまだ誰も乗りこなせていないんだが」

「あるゾイド…?」

「ああ、ライガーゼロだ」

「ライガーゼロってあのライガーゼロですか?」

 

ライガーゼロ。それはライオン型究極野生体をベースに開発された旧ヘリック共和国閃光師団所属の高速戦闘ゾイドである。目立った特徴はないもののCASと呼ばれるシステムで戦況ごとに装備を変えられる万能型のゾイドだ。かつての西方大陸の大戦末期から中央大陸、北方大陸の戦争にかけて活躍した機体でもある。その過程でB-CASなるシステムも構築され、なかでも中央大陸の旧ヘリックシティでのレイ グレックのライガーゼロファルコンとネオゼネバス皇帝ヴォルフ ムーロアのエナジーライガーの戦いは、西方大陸のイヴポリスでの戦いと同じく惑星Ziの歴史に名の残る戦いとなった。その後この両者はイヴポリスでの戦いでZiを救った伝説のゾイド乗りたちとともにディカルドの野望を阻止した。余談になるが、ライガーゼロの他に同じく閃光師団所属のムラサメライガー、ハヤテライガー、ムゲンライガー、さらにネオゼネバスのエナジーライガーもライオン型究極野生体をベースにつくられた。これらの開発には東方大陸の巨大企業ZOITECが関わっていた。いずれにしろこれらのライガー達は惑星Ziの歴史を語るうえでは外せないゾイドである。

しかし、数が極端に少ないのと扱いが難しいのと、CASがなければ地味なゾイドであるということから、現在となってはその人気は全くない。

 

「ライガーゼロなら知っています。父がその話をよくしてくれたので」

「そうか、そうだそれならこっちに来てくれないか。ライガーゼロを見せてあげよう」

レビンに言われて格納庫まで案内される。そこには、闘技場で見たものとは違うゾイドもいくつか見られる。ボルドガルドやビームトータスにヘルディガンナー、ジークドーベルにカノンフォートなど、シュトルヒにプテラスやレイノス、大きいものではセイバータイガーやレッドホーンまである。その中でもひときわ目立つ真っ白な獅子が立っている。

「これが…ライガーゼロ」

ガゴメも実際見るのは初めてであるが、どこか懐かしい感じがする。

「どうして父はライガーゼロを?」

「ゼロは今となっては扱いづらいうえで地味だからゾイド乗りの間でもあまり人気がないが、乗りこなせれば計り知れない力を発揮できる。CASやB-CASがあろうがなかろうが。だから君のお父さんも我々に送ってくれたんだろう。去年俺たちのチームが東方大陸インターハイで優勝した際に」

それを聞いてカゴメは仰天した。

「あの、このチームって去年の優勝チームだったんですか?」

「ああそうだよ、毎回ではないが常に上位を保ってるチームだ」

「すみません!何も知らなくて。私たちみたいな素人が普通に入れるもんだからそうとは知らず…」

「ははは、気にするな。ハイスクールでゾイドバトルができるとこなんて数えるぐらいだ。その中で上位だからたいしたことないよ。それにあまり世間にも知られていないからね。プロのゾイドウォーリアーでない限り取り上げられないよ」

笑いながらそう答えた。

「ただ俺も卒業したらプロのゾイドウォーリアーとして活躍していきたい。プロのチームからもスカウトが来てる。でもその前に今年も優勝を狙いたい」

「先輩ならできますよ!」

「ああ、でもどうやらこのライガーゼロは無駄だったかなあ。君のお父さんがせっかく送ってくれたのに誰も乗りこなせない。それが心残りかなあ」

溜息交じりにレビンは言った。

「誰も乗りこなせないか~、残念でしたね」

カゴメがそういった時。

グルルル~

と白き獅子は唸った。

 

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