ロクでなし魔術講師と寡黙な義弟   作:ほにゃー

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第14話 寡黙な少年に友達が出来た日

「……俺、気絶してた?」

 

アルトが目を覚ますと、そこは保健室だった。

 

体を起き上がらせると、そこには不安そうにアルトを見ていたカッシュがいた。

 

「アルト!目覚めたか!よかった……!」

 

「カッシュ……だっけ?俺、一体……?」

 

「あのテロリストが自爆しようとした時、お前が皆を庇ってアイツごと外に落ちたんだよ。それで爆風をモロに浴びて……でも無事でよかったよ……」

 

「……他の皆は無事?」

 

「ああ、お前が守ってくれたから全員無事だ。今は教室で全員で固まってる」

 

カッシュがそう言いうとアルトは自分の腕を見つめる。

 

腕には包帯が不格好に巻かれ、頬にもガーゼが張られている。

 

火傷に効く軟膏の匂いが仄かに香ることから、火傷の手当てをしてくれたのだろうとアルトは思った。

 

「これ、カッシュがやったの?」

 

「あ、ああ……お前の怪我は俺の所為で負ったようなものだし……本当は魔術での治療が一番いいんだろうけどさ……お前になんかお詫びをしなきゃって……悪い、かえって迷惑だったな」

 

カッシュは落ち込み、力なく笑う。

 

するとアルトは、腕をカッシュに見せるように持ち上げ、軽く笑う。

 

「いや、ありがたいよ。俺、怪我とかは魔術で治されるの好きじゃないしさ。ありがとな」

 

そう言い、アルトはベッドから起き上がる。

 

「お、おい!アルト、お前どこに行くつもりだ?」

 

「グレンの所、気絶し過ぎたし、早く行かないと」

 

ペンダントを握りしめ、部屋を出ていこうとするアルトに、カッシュは声を掛けた。

 

「また……誰かを殺すのか?」

 

「……必要とあればね。見逃して、仲間を殺されるぐらいなら殺した方がマシさ」

 

「……確かに、アルトの言う通りだよ。敵に情けなんて掛けるもんじゃない。でも、それでも俺は………!」

 

カッシュの言い分は正しい。

 

正しいからこそ、悔しかった。

 

いくら正しいことを言っても、それを実行する力が自分にはない。

 

それがカッシュは悔しかった。

 

「俺は……自分の意志でこの手を血で染めてる」

 

アルトは手を見せるように上げる。

 

「それを後悔したことはない。だって、俺が手を汚すことで誰かが綺麗なままでいられるならそれがいいじゃん」

 

そう言うアルトは優しい目をしていた。

 

「カッシュの言ってることは正しい。だから、カッシュはそのままでいなよ。じゃ、行くから」

 

そう言い残してアルトは保健室を去った。

 

残されたカッシュは一人で、静かに拳を握った。

 

自分よりも背の小さい少年に守られなければならない現実に、そして、アルトの背負った物の大きさに涙した。

 

「強く……なりてえ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え》!」

 

グレンは黒魔〝ブレイズ・バースト”を使って侵入者迎撃用ガーディアン・ゴーレムにぶつける。

 

「破壊できたのは一体だけかよ……」

 

ゴーレムは爆散し、倒れるが、その周りにはまだ十数体のゴーレムがいる。

 

アルトと別れたあと、グレンは一人の〝天の智慧研究会”の人間と戦い、深手を負ったものの勝利した。

 

負った傷はシスティが治癒魔術の〝ライフ・アップ”で治してくれたこともあり、なんとか動けるまでに回復した。

 

回復した後、治療疲れで眠ってしまったシスティを横目に、セリカと連絡を取り、あることを知った。

 

講師陣に内通者がいる可能性が低いことと、学院に張られた結界は内側から外に出られないことだ。

 

それを聞き、グレンはどうやってルミアを連れ出すのかと考えた結果、ある推理が浮上した。

 

黒幕は昨夜の内に、既に学院に侵入し、結界の設定を書き換え、その後、後から侵入してきた仲間に転送陣の行き先を変更させるための道具を持ってこさせ、自分は転送陣の行き先を書き換える。

 

その間に、仲間たちはルミアを確保し、邪魔者を排除する。

 

それがグレンの推理だった。

 

そして、セリカ曰く仮にセリカ以上の空間魔術の天才で、あらかじめ術式を知り尽くし、道具をそろえていた場合、転送陣の行き先の書き換えには五、六時間の時間を要するとのことだった。

 

現在の時刻は十七時を回り、グレンは五時間近く気絶していたことにあんる。

 

その間に、グレンたちを襲ってこなかったということは、向こうも書き換えに時間を取られているということになる。

 

そのため、グレンはシスティをその場に残し、転送法陣安置所〝転送塔”に向かった。

 

案の定、転送塔に近づくとゴーレムが侵入者迎撃のため、起動し、襲い掛かってきた。

 

グレンの推理は当たっていた。

 

だが、グレンにはゴーレムを倒す(すべ)はなかった。

 

〝ブレイズ・バースト”で倒せはできるも、一体一体に当てていれば自身の魔力が底を尽く。

 

〝ライトニング・ピアス”では穴を開けられても破壊はできない。

 

セリカが編み出した、巨大な光の衝撃波を発生させ、対象を根源素(オリジン)にまで分解消滅させると言う最高峰の威力を持つ術、黒魔改〝イクスティンクション・レイ”も貴重な触媒が無い為使えず、そもそも使用後はマナ欠乏症で動けなくなるからもとから使えない。

 

グレンはゴーレムの攻撃を躱しながら、打開策を考える。

 

だが、思いつかなかった。

 

そして、脳裏に〝死”の一文字が過る。

 

「くそっ!死ねるか……こんな所で、死ねるか!」

 

グレンは大声で叫ぶが、グレンではゴーレムを倒せない。

 

そう………()()()()()倒せない。

 

「アルトォォォォ!」

 

だからこそ、グレンは叫んだ。

 

自分の、自慢の義弟(おとうと)の名を。

 

その直後、ゴーレムが頭上から落ちてきた何者かによって潰される様に破壊された。

 

「グレン、呼んだ?」

 

現れたのは真紅のメイスを手にしたアルトだった。

 

「ああ、呼んだぜ。悪いが、こいつらの相手を頼めるか?あの塔に、ルミアがいる」

 

「うん、わかった。アレを破壊すればいいんだね」

 

「ああ、任せたぞ!」

 

「任された」

 

アルトは唇を軽くなめ、メイスを握りしめ、ゴーレムを破壊する。

 

そして、その間をグレンは全力で走り、塔の中へと入る。

 

グレンが塔の中に入ったことを確認すると、アルトは息を吐き、メイスを回転させ、構える。

 

その視線の先には、破壊したはずのゴーレムが修復されている光景だった。

 

「自己修復の機能もあるんだ。なら……壊れるまで破壊し尽すだけだ」

 

アルトはそう言い、ゴーレムの軍団の中に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ルミアが三年前に病死したエルミアナ王女だったとはな」

 

事件から一ヶ月が経ったある日、グレンは屋上でアルトとセリカと一緒にいた。

 

塔の中に居たのはシスティたちの全員の担任であるヒューイ先生で、彼は〝天の智慧研究会”の一員であると同時に、学園に送り込まれた人間爆弾でもあった。

 

王族や政府関係者供が学院に入学した時、その人物を殺すために送り込まれていたのだった。

 

だが、そこにルミアと言う予想外の人物が入学してきた。

 

「おまけに異能者とはな。お陰で事情を知った俺とアルト、それに白猫は秘密を守るように国から協力要請って名前の脅しを掛けられたよ。面倒なこと押し付けてきやがって」

 

ルミアは異能者だった。

 

異能者とは生まれつき、ごくまれに魔術に依らない奇跡の力を生まれながらに体現する特殊能力者のことで、ルミアは〝触れた相手の魔力や魔術を自分の意思で何十倍にも増幅できる感応増幅者”だった。

 

そのため、〝天の智慧研究会”はルミアを生け捕りにし、ルミアが本部へ送られるのと同時に、魂を巨大な魔力へと変換し、学院を自分もろとも爆破する予定だった。

 

だが、グレンがあきらめなかったことと、ルミアの力があったこで、方陣は解呪され、ルミアは奪われずに済み、学院の爆破も未然で防げた。

 

そして、ヒューイはグレンに一発殴られ、気絶し、そのまま連行された。

 

「帝国では、異能者は悪魔の生まれ変わりとして迫害されている。国としちゃ王女がそんな存在だと色々拙いんだろう。胸くそ悪い話だがな」

 

「どーでもいいさ。アイツはアイツだ。今までと何も変わらねーよ」

 

「そうだよ。ルミアはルミア。それで十分でしょ」

 

グレンとアルトは他人事のようにあっけらかんとそう言う。

 

「しかし、どういう風の吹き回しだ?本当に講師になると言い出すとは思わなかった。その講師用のローブ似合うじゃないか」

 

「ああ?別に……ただ、この間のヒューイって奴が他人事には思えなくてな。ま、自分の人生の失敗を魔術の所為にするのを止めたのさ。少しだけ、前向きに生きてもいいだろうってな。それに」

 

グレンは隣に立つアルトを見て、そして頭を撫でる。

 

義弟(おとうと)を一人にするのがまだまだ心配なんでな。此奴がしっかりするまでは傍にいてやらねーと」

 

「俺、そこまで心配掛けてるつもりないけど」

 

「心配掛けてないってんなら、友達の一人でも作ってみろってんだ」

 

「友達ねぇ……」

 

アルトは上の空で空を見上げ、そう呟く。

 

「おっ、アルト!ここにいたか!」

 

すると屋上の扉が開き、カッシュが現れる。

 

「カッシュ。どうしたの?」

 

「コレだよ、コレ。最近新しくオープンした菓子屋の人気商品のマフィン。昨日のバイト帰りに見つけてよ。アルト、甘いもん好きだろ?食おうぜ」

 

「いいの?ありがとう」

 

カッシュからマフィンを受け取り、アルトは食べる。

 

「うまいね」

 

「だろ!俺も食って驚いたんだよ!これが結構美味くてさ」

 

カッシュと楽しそうに話すアルトにグレンとセリカは思わず、同じ感想を抱いた。

 

((友達出来たんだな))

 

そう思い、グレンは思わず優しい笑みを浮かべる。

 

「あ、先生!やっと見つけましたよ!」

 

すると今度はシスティとルミアの二人も現れた。

 

「やれやれうるさそうなのに見つかったか」

 

「今日の授業でいくつか言いたいことがあるんですけど」

 

「お前もいい加減、俺のことが分かってきたと思ったのに。あの時だって、何も言わずに〝ディスペル・フォース”の重ね掛けしてくれたし」

 

「それは、まぁ、先生の考えにも慣れてきましたし……じゃなくて!学院の講師になったからには、今まで以上にふさわしい行動が必要になってくるんですからね!大体先生には」

 

システィがグレンに文句を言ってる中、ルミアはその光景を笑って見ながらアルトに声を掛けた。

 

「ねぇ、アルト君。甘いもの好きなら、今日の放課後、おいしいケーキ食べに行かない?いいお店知ってるんだ」

 

「本当?ぜひ教えて」

 

「うん、いいよ。システィも行くよね?」

 

「ええ、もちろんよ」

 

ルミアにそう言われ、システィはグレンへの文句を一時中断して言う。

 

「アルトにも沢山お世話になったし、そのお礼をしないと」

 

「じゃあ、決まりだね」

 

「あ、俺も!俺も行っていい?」

 

わいわいがやがやと話してるシスティとルミア、そしてアルトに積極的に話しかけてくるカッシュと、その中で満更でもなさそうに小さな笑みを浮かべるアルト。

 

その光景に、グレンは口元を緩めて笑う。

 

(それに、見てみたくなったんだよな。此奴らが、将来何をやってくれるのか。それに、此奴らならアルトといい友達になってくれそうだしな)

 

そんなグレンとアルトを見て、セリカも思わず微笑む。

 

(もう大丈夫そうだな、グレン。アルトも、ここなら良き出会いに恵まれそうだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある一室、長机の上座に位置する席に一人の男が座っていた。

 

男は手にした三人分の書類を机に置き、手を組んで席に座っている者たちに話しかける。

 

「三年前病死したことになっているエルミアナ王女、愚者”のグレン=レーダス。そして、〝バルバトス”のアルト=レーダス。この三人、捨て置くわけにはいかないな」

 

男が言った名前にある者が反応を示す。

 

「特務分室からは〝星”と〝戦車”の二名が派遣される。そこで我々〝第二”も応援を出そうと思う」

 

「室長、私が行きます」

 

すると、席に座っていた一人のサイドテールの少女が立ち上がる。

 

「……君か。ふむ、いいだろう。では、君を応援として派遣しよう」

 

「室長待ってくれ。そいつ一人じゃ不安だ。俺も行く」

 

今度は背の高い男が立ち上がる。

 

「いいだろう。彼女に加えて、君もいるのは心強い。では、頼むよ。〝ベレト”のシンリィ、〝グシオン”のドウェイン」




カッシュってオルフェンズで登場したハッシュ君と似た名前ですよね。
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