ロクでなし魔術講師と寡黙な義弟   作:ほにゃー

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第30話 我が名は――

〝ハシュマル”と名乗った青年、アインはアルトを見るとそのまま近づき、片手で持ち上げる。

 

「アルト=レーダス………アルスター夫妻が生み出し禁忌の子よ。貴様の存在があの夫妻を陥れ、命を奪った。貴様のその存在、万死に値する。ただ存在するだけで、貴様の罪は加速する。貴様の罪は、私が裁く」

 

短剣を抜き、それをアルトへと突き刺そうとする。

 

その瞬間、アルトは手をあげ短剣を受け止める。

 

短剣はアルトに突き刺さらずアルトの手を貫通しただけだった。

 

「何!?」

 

黒魔〝ライトニング・レイディアント”を食らったことで当分は動けないはずだったのにも関わらず、アルトは体を動かすことができた。

 

アルトは突き刺された手で短剣ごと腕を掴み、そのまま蹴りをアインの顔に当てる。

 

アインはそれを受け止め、アルトを殴り飛ばす。

 

体を捻って地面を滑るように着地したアルトはメイスを手にして構える。

 

「貴様、なぜ動ける?」

 

「さぁね」

 

「やはり貴様は捨ててはおけない。貴様のその力はいずれ我らの障害になる。そうなればアルスター夫妻の名誉に傷が付く。その前に、私の自らの手で葬ろう!」

 

アインは指をアルトへと向ける。

 

「《貫け》!」

 

〝ライトニング・ピアス”が放たれるが、アルトはそれをメイスの一振りで打ち払い、逆に攻め込む。

 

「《剣をこの手に》!《我・秘めたる力を・解放せん》!」

 

アインは剣を錬成し、〝フィジカル・ブースト”で身体能力を底上げしアルトの攻撃を受け止める。

 

戦い慣れしているらしくアルトのメイスを受け止めるのではなく受け流し、的確に攻撃をしており、アルトは戦いにくさを感じていた。

 

「くっ……アルト……!」

 

グレンの目からしてもアルトが戦いにくそうにしているのは感じられた。

 

アルトの戦い方は正面からの力押し。

 

対してアインは相手の体力・気力を削ぎつつ、自身の体力の消耗を抑えた戦い。

 

そして、攻撃の隙に放たれる一撃。

 

力で勝っていても技術で負けていた。

 

グレンは何とかしてアルトの援護をしようとしたが、まだ体が痺れて動けなかった。

 

銃を手に取ることも、〝愚者の世界”を発動することもできなかった。

 

アルトは次第に追い詰められるようになり徐々に攻撃の勢いが落ちていき、とうとうアルトは膝をついた。

 

「これで終わりだ。貴様の次はアルスター夫妻を実際に手を掛けたグレン=レーダスを殺す。そして、ルミア=ティンジェル、リィエル=レイフォードは組織にとってはまだ有用だ。連れて行かせてもらおう」

 

その言葉にアルトは反応した。

 

グレンを殺し、ルミアとリィエルを連れていく。

 

メイスを握る手に力が籠められる。

 

「そんなこと……させる、か!」

 

メイスを振り上げ、再び攻撃を仕掛ける。

 

下から突き上げられるように放たれたメイスを胸にくらい、アインは倒れる。

 

「や、やったのか………?」

 

その光景にグレンは、思わずそう呟く。

 

「……どうやら、私は間違えていたようだ」

 

アインはゆっくりと起き上がり、剣を放り捨てた。

 

「悪魔を殺すのに人間の武器が効くわけがなかった。悪魔には天使の力だ」

 

そう言うとアインの体が光り、そして、光が収まるとそこには背中から白い翼が四枚生えていた。

 

固有魔術(オリジナル)天使の翼(マシュハル・ランジュ)”。この翼はいかなる攻撃を持ってしても折ることはできず、悪しきものを断罪する刃。悪魔を葬るには相応しいものだ」

 

そう言うと背中の羽を操りアルトに攻撃をした。

 

その攻撃を、アルトは見切ることができず、そのまま攻撃を食らって壁に叩き付けられた。

 

「がはっ!」

 

口から血を吐き、そして、壁を背にアルトは座り込んで動かなくなった。

 

「これで終わった。次はお前だ、グレン=レーダス」

 

マシュハルの名に恥じぬ神々しさを身に纏ったアインはゆっくりとグレンに近づく。

 

そしてグレンは、死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(強いな、アイツ……このまま死ぬのか……)

 

薄れゆく意識の中、アルトはそんなことを考えていた。

 

圧倒的な力の前に、アルトは手も足も出なかった。

 

(ま、悪魔が天使に敵うわけないか………)

 

意識がなくなって行き、アルトの瞼がゆっくりと落ちる。

 

『貴様、死ぬのか?』

 

その時、誰かに声を掛けられた。

 

暗闇の中から自分に。

 

『貴様が死ぬのは我も困る。体を寄越せ。貴様の代わりに我があの主天使を狩ってやろう』

 

(………体を寄越せ?何言ってんのさ。お前が俺に力を寄越すんだよ。お前の力を……全てを寄越せ!)

 

『………我に向かって、力を寄越せとはな。面白い!力をやろう!我が名を呼べ!さすれば、力を与えよう!我が名は―――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                「―――バルバトス」

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