ロクでなし魔術講師と寡黙な義弟   作:ほにゃー

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第7話 日常の崩落

グレンがまじめに授業を始めて数日が経った。

 

グレンの授業は多くの学院の生徒から人気となり、十日が経つ頃には教室に授業を立ち見に来る生徒が増えていた。

 

講師の中にも、今までの授業に疑問を持つものも現れ始め、また若く熱心な講師の中にはグレンの授業に参加して、グレンの教え方や魔術理論を学ぼうとするものまでいた。

 

「魔術には汎用魔術と固有魔術(オリジナル)の二つがあり、お前らは誰でも使える汎用魔術を馬鹿にし、魔術師にとってオンリーワンである固有魔術(オリジナル)を神聖視している。だが、固有魔術(オリジナル)は俺のような三流魔術師にだって作れる。大事なのは自分一人で術式を組み、かつ、それら汎用魔術の完成度をなんらかの形で超える必要があるってことだ。じゃねーと固有魔術(オリジナル)の意味がないからな」

 

グレンの言ったとことメモを取り、クラスメイトは真剣に授業を受ける。

 

「一方、汎用魔術は見ての通り隙も改良の余地もない。それもそうだ。大昔に、お前等の何百倍も優秀な何百人もの魔術師たちが、何百年も掛けて、少しずつ改良・洗練させてきた代物なんだからな。それを独創性がないだの、古臭いだの……もうね、お前らアホかと」

 

チョークで黒板の魔術式を突きながらグレンは笑う。

 

「この領域の話になってくると、センスや才能の問題になる。だが、先達が完成させた汎用魔術の術式をじっくり追っていくことには意味がある。自身の術式構築力を高める意味でも、ネタかぶりを避ける意味でもな。、将来、自分だけの固有魔術(オリジナル)を作りたいって思っているなら、なおさらだ。じゃあ、今日はこれまでな。あー、疲れた」

 

時間を確認し、グレンは黒板を消そうとする。

 

「あ、先生待って!まだ消さないで下さい!私、まだ板書取ってないんです!」

 

システィが手を挙げてそういうが、グレンはにやっと笑って、黒板を消す。

 

「ふははははははっ!もう半分近く消えたぞ!?ザマミロ!」

 

「子供ですか!?貴方は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒たちが帰った後、グレンはアルトと共に学院の屋上にいた。

 

「本当に、からかいがいのあるな、あの白猫は」

 

そう言って笑うグレンの横顔を、アルトはじっと見つめていた。

 

「どうした。アルト?」

 

「いや、グレン。ここ最近、よく笑うようになったなって思って」

 

「あー……そう言えばそうだな。まぁなんつーか、悪くない………って思ってな」

 

「おーおー、夕日に向かって黄昏ちゃって、青春してるなー」

 

すると、そこにセリカが現れた。

 

「セリカか。何しに来たんだよ?」

 

「おいおい、息子に会いに来ちゃ悪いのか?」

 

「誰が息子だよ。俺たちは赤の他人だろ。それに年齢的には婆さんと孫だろうが」

 

「やれやれ、人を遠ざけようとするその病気、いい加減治しておけよ………でもまぁ、元気が出たようでよかった。最近のお前、結構活き活きした顔をしてるしな。前は死んで三ヶ月経った魚のような目をしてたが、今は死んで一日目の魚のような目だ」

 

「結局死んでんじゃねぇか!……たっく、心配かけたな。悪かったよ」

 

そう言うグレンにセリカはうれしそうに笑い、アルトの方を見る。

 

「どうだ、アルトは?学校、楽しいか?」

 

「うん、悪くはないよ。………でも」

 

いつもは物事を簡潔に言うアルトには珍しい反応に、セリカだけでなくグレンも反応する。

 

「友達っていうのはまだできてないかな」

 

「友達?」

 

「うん。前に本で読んだんだ。学校には友達がいるって。でも、俺にはまだできてない。それに、作り方も分からない」

 

「そうだな。お前が、理屈抜きに一緒にいたい、一緒にいて楽しいって思えりゃ友達だよ」

 

「じゃあ、グレンとセリカは俺の友達?」

 

「あー、いや、違うな。俺はお前の兄貴だし。セリカはお前の保護者、まぁ母親みたいなもんだ」

 

「いいか、アルト。友達ってのは理屈じゃないんだ。友達ってのは気が付けばいつのまにかなってる。そういうものだ」

 

二人からそういわれ、アルトはよくわかんないと言いた気に頭を掻く。

 

「そうだ。言い忘れてたが、明日、学院の講師たちは帝都の魔術学会に行くが、お前たちのクラスは前任のヒューイが失踪したことで、授業が遅れてるから補習だからな」

 

「はぁ!?なんだよソレ!聞いてねー………って失踪ってどういうことだ?退職のはずじゃ……」

 

「生徒たちにはそう言ってあるが、実際は失踪した。いきなりだったこともあり、正式な後任を呼べなかったのさ。足取りはいまだ行方不明だ」

 

「なんか、妙な話だね」

 

三人が神妙な面持ちで話してると屋上の扉が突然開く。

 

「こんな所に!やっと見つけましたよ、先生!」

 

「あっ、アルト君にアルフォネア教授も」

 

やって来たのはシスティとルミアだった。

 

「お前ら、どうしたんだ?」

 

「いや、そのー……」

 

「システィが今日の授業で聞きたいことがあるって」

 

「ちょ、それは言わないって約束でしょ!?」

 

「ほう?なら、このグレン大先生様がご教授してやるか」

 

グレンはにやっと笑い、挑発気味に言う。

 

「くっ……だから嫌だったのよ……!アンタに頼むのが」

 

「あの、先生。実は私もよく分からなくて」

 

「ああ、ルミア。俺もそう思ってたんだよ。今日の授業で少し言葉足らずな部分があったから多分そこだろ」

 

「なんで、ルミアと対応が違うのよ!?」

 

「ルミアは可愛い、お前は生意気。以上」

 

「むきぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

生徒と戯れるグレンを見て、セリカは安堵した笑みを浮かべ屋上を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおお!!遅刻だああああ!!」

 

翌日、グレンはまた遅刻を仕掛け町の中を全力で走っていた。

 

その後ろをもちろんアルトも一緒に走る。

 

「くそっ!何も休校日の日に授業なんかしなくたって………ん?」

 

すると、グレンは走っていた足を止め立ち止まる。

 

「出て来いよ。そこでこそこそしてんのはバレバレだぜ?」

 

グレンがそういうと、路地から癖っ毛の男が現れる。

 

「即席の人払いの結界とはいえ、第三開廷(トレンデ)の三流魔術師にしては中々に鋭いではないですか」

 

「一体どこのどちら様で?」

 

「グレン、こいつら嫌な感じがする。あの人たちと………同じ感じだ」

 

「何!?まさか、お前ら!」

 

「気付いたようですね。ですが、もう遅い!」

 

そう言う男の左腕には短剣に蛇が絡みついた紋章があった。

 

「やっぱり……〝天の知恵研究会”か!」

 

「グレン!下がって!」

 

「《穢れよ・爛れよ・朽ち果てよ》!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャレルの野郎は上手くやれたかな、兄貴」

 

「あの男が標的を仕損じることがあったか?むしろやり過ぎるぐらいだ」

 

「違いないな」

 

グレンとアルトが、キャレルと言う男とあってるのと同時刻、学園の正門に三人の男がいた。

 

「おおー、すげー。流石は天下のアルザーノ魔術学院」

 

バンダナをした男は結界を叩きながら笑う。

 

「遊ぶなジン。早くあの男から送られた解呪呪文を試せ」

 

「どうやら、バレたようだぞ」

 

顔に傷のある男に続いて、眼鏡をかけた男が言う。

 

眼鏡の男の視線の先には学院の警備員が走っていた。

 

「貴様ら!そこで何をしている!」

 

「《(ザン)》」

 

眼鏡の男は指を振る様に動かし、そう言う。

 

すると、警備員は体を縦に引き裂かれ、そのまま死んだ。

 

「おーおー。忠告もなしに真っ二つ。やるねー、ランス」

 

「お前が遊んでるからだろ。さっさと仕事を片付けるぞ」

 

そう言い、ランスは符を取り出し、そこに書かれたルーン語を読み上げる。

 

すると、結界は砕かれた様な音をならし、破壊される。

 

三人は結界が破壊されたのを確認して、正門を潜る。

 

「入ったぞ。閉めて構わない」

 

通信用の宝石を使い、誰かと連絡をすると背後で結界が再び構築される。

 

「恐ろしいな、あの男は」

 

顔に傷のある男、レイクは氷の笑みを浮かべた。

 

「帝国公的機関魔導セキュリティをこうも完全に掌握するとはな」

 

「噂の魔術要塞もこうなりゃ。形無しだぜ」

 

「行くぞ。東館二階の2‐2教室。そこに標的がいる」

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