魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~ 作:てりー
前回のあらすじ
フェイトが泣き出しました
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
フェイトが最後の一個を食べ終わり、弁当はすっかり空になった。丁寧に両手をあわせて頭を下げるフェイトが微笑ましい。
「次はどこ行こうか」
時刻は12時丁度。門限は16時だが、それまでにはちょっと微妙とはいえまだ時間がある。
パンフレットを開いて中を見ると、館内案内の前のページにでかでかとイベント開催の知らせがある。
そっか。そりゃどこの場所にも、これはあるよな。
同じようにパンフレットを見つめて考えているフェイトは、まだこれに気がついていないようだ。サプライズにはちょうどいいかもしれない。
「なぁフェイト、俺がちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな」
「うんいいよ。そこに行こう」
さて、フェイトの驚く顔が見て取れるようだ。
「えっと、どこに行くのかな」
「な~いしょ」
水族館の本体である水槽を素通りして歩く俺に少し不安になったのか質問をしてくる。サプライズなのだから答えられるわけない。
まぁでも、ちょっと大きな水族館に親子連れで行った家族なら、たぶん誰でも知っているような場所だけれどね。
少し脇道に入ってまっすぐ行くと、広い場所。遊園地などでヒーローショーが行われる場所のような感じだろうか。
その舞台が大きな水槽になっている場所に到着した。
大人数ではないものの、すでにちらほらと人が見える。最前列にポンチョ無しで座るとか勇気あるな。
「ねぇケンスケ。何が始まるの?」
「な~いしょ」
「もぅ。さっきからそればっかり」
ちょっぴり不満気なフェイトの腕を引っ張って真ん中より少し前くらいの席に座る。全体が見渡せて、なおかつ顔も見やすいこの席は人気スポットなので、早めに来ないととられてしまうのだ。
さて、ここまできたらやるべきことは一つだ。それは…………待つことだ。
そして二十分が経過して、それまでは指スマやしりとりなどの小学生らしい遊びで時間をつぶす。小学生って、遊びにおいて無から有をつくることに関しては天才的だよな。どんなクソゲーでも楽しそうにやるもん。
「いつのまにか人が満杯だね」
「そうだな」
「……まだ教えてくれないの?」
「な~いしょ」
あきらめたような顔をしてしょんぼりとしている。教えたくなるけれどガマン。
飼育員のお姉さんがでてきたのでもう少しなんだからな。
そしてお姉さんが壇上に上がってーー。
「みなさ~ん、こ~んに~ちは~」
楽しいショーの始まり始まり。
イルカが跳ぶ。アザラシがボールで遊ぶ。
やっぱりイルカショーはすごい。だいたいどこの水族館でもやっているとはいえ、ここまでの芸を仕込んだ腕前。イルカの頭の良さ。こういった要素が上手にかみ合って、男も女も、大人も子供も魅了するショーになっている。
「うわぁっー……うわぁっー」
その証拠にほら。フェイトなんて、言葉も出せなくなっている。
イルカのジャンプに目を輝かせて、イルカの鳴き声で小刻みにリズムをとっている。なんかもぉ嬉しくて楽しくてたまらない。といった感じだ。
顔を紅潮させて胸の前で手を組み、祈りをささげるような格好で食い入るように見つめるフェイトは本当にお人形さんのよう。
「ケンスケ、どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「ふーん」
俺が見ている事に気がついたのか、こちらを振り向いたのだが、なんでもないというとすぐにイルカのほうに向き直った。
いつもなら不思議そうな顔をするんだけれどな、いまはイルカで頭がいっぱいなのだろう。
「ではショーの最後に皆で挨拶をしま~す。せ~の。みなさ~んありがとうございました~」
イルカ、アザラシ、飼育員の皆さんで、こちらに向かって頭を下げ、今回のショーは終了した。お客さんはみな、かえりながらもショーの感想で大盛り上がりだ。
一方フェイトはというと。
「……終わっちゃったね」
むっちゃ寂しそうだった。
フェイトにとって初めて見るショーだったからな。いつのまにか時間が過ぎ去っていたんだろう。
「このサプライズは楽しかったか?」
結果は聞かなくてもわかるけどさ。あんだけ輝いた顔を見せつけられちゃね。
フェイトは口の端をあげて
「うん!」
にっこりと笑った。
「誰におみやげ買っていくんだ?」
「えっと、母さんと兄さんとリンディさんかな」
「じゃー俺はなのはにでも買っていくか」
今はおみやげ売り場で吟味中。まだ時間が早いせいかすいているので選びやすい。
俺の場合、おみやげはいらないと桃子さんから言われたので、小さなチョコでも買っていくことにした。最低限の礼儀ってやつだな。
フェイトは先ほどから湯呑みを見ている。それだけで誰用なのかわかるのだが、それにしても水族館のおみやげが湯呑みってのはどうかと思うぞ。
「母さんはこういうの好きだし……うーん、こっちのほうがいいかな」
それとなく別の物を勧めてみるつもりだったがやめた。これほど真剣に悩んでいるのだ、リンディさんなら絶対に喜んでくれる。
俺はキーホルダー売り場に移動。なのはへのおみやげは無難な物にしようかなと思ったのだ。
「ん……これなんていいかもな」
目についたのはクリスタルブロックにイルカの絵が入ってるやつだ。どこにでもあるような代物なのだが、同じクリスタルブロックでも中に入っている絵はそこ特有のものなので、意外と被ることが少ない一品なのである。
おみやげ決定までわずか10秒。我ながら即断即決だとは思う。これならまだフェイトはリンディさんへのプレゼントを考えているだろうと思ったら、すでにいなかった。
「ど~こ行ったんかなー」
こういうときは全体を流し見するのが基本。俺は買い物だなの端っこに立ちざっと眺めてみた。
「お、いたいた」
両手で湯呑みを抱えながら何かを見ている。目線を追ってみると、それは小さなイルカのぬいぐるみだった。
手のひらくらいの小さなイルカを物欲しそうに見つめている。プレゼントってよりかは自分で欲しいって感じだな。
何度か首をひねり、手を伸ばしかけ、それを空中でとめる。というやりとりが続いた後、とぼとぼと別コーナーに歩いていった。
まぁ子供の持っているお金なんて、そんなに多くはないからな、仕方がない。
と、いうことで。棚からぬいぐるみを取り出して買い物かごに入れる。さってと、バレるとまずいから、先に会計しておこうかな。
「1950円になりま~す。ぼく、楽しかった?」
「はい、とても楽しかったです」
「50円のお釣りですね。またきてくださいね~」
次のお客さんがいるのにも関わらず手を振ってくれた。こういった営業努力が行き届いているお店は少ないから、ここが頑張っている証だろう。
もう一度フェイトを探すと、今度はTシャツのコーナーにいた。クロノのおみやげで悩んでいるのだろうか。
「今は何でお悩み中?」
「あ、ケンスケ。うん、いまは兄さんのプレゼントでちょっと」
そういってTシャツ探しに戻っていく。邪魔するのも悪いからぶらぶらしてようかなと思った矢先、俺は見つけたのだ。そう、最高の
「なぁフェイト。これなんていいんじゃないか?」
「どれかな……これ?」
フェイトがビミョーな表情をする。まぁそりゃそうだろう。
『俺最強』
とだけ書かれているシャツなのだから。
まぁちょっとフェイトには悪いけど、やっぱりクロノっていじられキャラだと思うんだよね。あの感じはさ。
「うーんケンスケがそういうならこれにしようかな」
どんまいクロノ。信じてくれるのは嬉しいけれど、お宅の妹さんにはもう少し自己主張を覚えさせた方がいいかもしれんよ。
そしてフェイトが買い終わり今日のデート(?)は終わった。
で、もうそろそろハラオウン家なのだが。
「う……ん……スッー、スッー」
俺の背中にはフェイトがのっかている。電車内で眠ってしまったのだ。でも眠ってしまうほど楽しんでくれたのなら冥利に尽きるというものだし、寝顔のフェイトはかなり可愛かったりする。
エレベーターに乗ってハラオウン家の前まで行く。チャイムを鳴らすと、にやにやとした顔でリンディさんがでてきた。
「お・か・え・り……あら、フェイトは寝ちゃってるのかしら」
「えぇそうなんですよ」
「わざわざありがとう。……楽しそうだったかしら」
「えぇ、楽しそうでした」
背中からリンディさんの腕の中にフェイトパスする。
もぞもぞと動いたものの、目を覚ますことはなかった。
「では俺はこれで……っと、フェイトの枕もとにこれを置いておいてください」
「えぇ分かったわ。うーん、やり口が憎いわねぇ~」
「いやいや、寝ちゃったから渡す機会がなかっただけなんですけれど。では、失礼します」
「えぇ、今日はありがとう」
リンディさんにイルカのぬいぐるみを渡して別れを告げた。
さて、明日からも仕事頑張りますかね。
その後クロノから電話がきた。
「あのおみやげは君が考えたものだろう」
「よくわかったな、喜んだ?」
「誰がよろ……いやフェイトから貰ったのは嬉しいが」
「やーい、シスコーン」
「な!? 元はといえば君が元凶で」
楽しそうでなによりです。
今回はデートの話後編でした。
次回 シリアスが戻ってくる
この小説を読んでくださる全ての方にありったけの感謝を
抑えきれない嬉しさをここに。
Chelsea優勝おめでとう!!