魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~   作:てりー

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第十一話 鬼は怖いですね

前回のあらすじ

フェイトと水族館に行きました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はミッド北部のある地上部隊隊舎にいた。そう、『鬼』による犠牲者を出している場所だ。

 

 さすがに、というべきか。北部に向かうにつれ局員の緊張度が高まっており、ここの雰囲気なんぞ痛いくらいだ。

自分の家族が殺されるかもしれない恐怖が強いのか、仕事中も暇さえあれば家族に電話をかけている人が多い。

上官も見て見ぬ振り。いや、自分も電話をかけているものがほとんどだ。

 

 そして、そんな場所に俺みたいな子供がいるのもおかしなもので、先ほどからしきりにここから逃げるよう言われている。

 

 俺はここに調べに来たのだから帰ることはない。というか、なのはは本局勤めで高町家は地球にいるので、俺には心配要素がないのだ。

もしも地球にきたとして、あの家族が負けるなど考えられないからな。

 

「事件現場は……と、ここか」

 

 壁の部分に、不自然に花が手向けられているのですぐに分かった。壁は塗り替えられているので、周りに比べて異常なくらい真っ白だ。

手をあわせて死者に礼する。ここでこうしていると、無念さを呟く声が聞こえてくるようだ。

 

 ざっと一分手を合わせ祈ったあと軽く調べてみる。とはいえ調べるのはこの壁ではない。ここは鑑識の方々が隅から隅まで調べて異常なしと判断したところだ。専門職でない俺が調べても得られる物はないだろう。

 

 ならば何を調べるか。それは局員の交友関係である。ここを見張っていれば、仲の良かった人ならば花を手向けにきたりするだろう。その顔を記憶し、後で検索する。地味だが犯罪でない方法だと、これが最適だと思う。

ほら、さっそく餌に魚がくっついた。

 

 その人は少し顔が厳つい男性だった。彼はコーヒーを床に置いてどっかりと座り込む。缶をあけて自分より少し前に置き、次にポケットから同じコーヒー缶を置いてグイッと呷った。

 

 彼は

 

「ちょっといいですか?」

「ん? なんだい坊や」

「あそこで座っている方は誰ですか?」

「あぁ。あの人はゲンヤ・ナカジマ。あの場所と少しばかり関係があってね」

「そうなんですか。ありがとうございます」

 

 そこらにいた局員を適当に捕まえて質問すると、彼の名前がわかった。ここまでわかれば簡単に調べられる。

俺はその顔と名前を記憶して帰宅した。

 

 

 

 育成課に戻って早速パソコンを起動し管理局のデータベースにアクセスする。俺はあくまで二等陸士なので限られた情報しか見ることはできないが、誰がどの隊にいるかぐらいまでは見れる。

『ナカジマ』で絞り込んでみると二人ほどヒットした。クイント・ナカジマとゲンヤ・ナカジマ。クイントのほうはゲンヤの妻のようだ。

で、肝心のゲンヤ・ナカジマは……と。でたでた。

 

 ゲンヤ・ナカジマ。時空管理局 陸上警備隊108部隊隊員で一等陸尉……か。

年齢的に考えるとキャリア組というわけではなさそうだ。本人の腕でなりあがったのだろう。

指揮官訓練も終了しているらしく、将来の部隊長といったところか。

 

 ゲンヤ・ナカジマを映し出したウィンドウはそのままにし、新しく同じページ開く。次に調べるのは殺害された108部隊の局員だ。

ユーノから顔写真と名前は頼み込んで貰ったので108部隊員と照合するだけである。

 

 こういうときにインテリジェントデバイスがあったらと思う。インテリジェントデバイスがあれば、こうやって探すときなど写真ですむのだ。効率が段違いすぎる。

 

 そんな愚痴を考えながらスクロールしていくと一つの場所でとまった……こいつか。

他の二人は別の隊だったのでこいつでほぼ間違いないだろう。歳を考えてもゲンヤ・ナカジマと同じくらいだ。訓練校の同期とかそういった繋がりなのかもしれない。

 

 さて、今日はこれから訓練もある。これくらいにしておくか。

 

 ウィンドウをすべて閉じて電源を落とした。

 

 

 

「んじゃぁ。今日は実戦訓練の日だから……私とやろっか」

「……はい」

「元気ないよ!」

「はい!」

 

 無理に声をだすが新人達の顔は一様に暗い。なにしろ相手はロッテ。白兵戦の腕前ならば管理局トップクラスの実力をほこる相手だからだ。

何度か訓練はしているが、そのたびにボッコボコにされている。

 

「ほら、さっさと配置について」

 

【今日は一人一人の幅を狭めよう。全員の間隔を6mに変更】

【【了解】】

 

 ロッテとアリアは得意分野が完全に別れている。ロッテが白兵戦でアリアが遠距離魔法だ。それゆえいつもロッテに負ける原因は懐に入り込まれることだ。今回の作戦は一見、理にかなっているように見えるが相手はロッテ。どんなことをしてくるかわからない。

だからーー。

 

「開始!」

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

 

 ーーまずは遠距離に逃げて貰おう。

 

 俺の背後に開いた巨大な宝物庫から木刀や竹刀といった、木でできた武器が豪雨のように降り注ぐ。

 

 さすがに対人訓練の場合、宝具を使うとまずいので木刀や竹刀を複製して射出しているのだが、地面に当たった瞬間に木刀が砕けるのを見ると、十分危ないと思う。ロッテなら平気だと思うけれど。

 

「まだまだ甘いよ!」

 

 近づいてくる木刀の雨を前に、グッと腰を落とし構えた。……まさか。 

 

「はぁぁっ!」

 

 ロッテが拳を振るうごとに一つは受け流され、一つはたたき折られる。しかも正確に自分の身体に当たるものだけを選んでいる。動体視力、拳の強度、スピード。全てにおいて予想を遥かに越えていた。

 

「うわ……」

「……すっげ」

 

 最後に飛来した竹刀を回し蹴りで叩き落とし、勢いのままにクルッと回って撃墜終了。ロッテの周りには、円上に木の残骸が山積みとなっている。

 

 超絶美技を見せられた育成課の面々はロッテに魅せられて近づこうとすらしていない。俺も驚いたし仕方ないけれどね。

だからこそここで俺が突撃するしかない。戦闘経験は俺の方が圧倒的に上なのだから、ある意味で模範的な行動もしなければいけない。 

 

 複製した木刀を構えなおし走る。ロッテも気がつきもう一度腰を落とした。距離的にはあと二十歩くらい。剣の間合いで一方的に攻撃できるように歩幅を修正し突撃する。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 気合いを入れて剣を横に払う。相手の拳は届かず、払われても俺なら途中で修正できる。上手くいった一撃だった。

だが

 

「気がつかないと思った!?」

 

 俺が歩幅を変えたのに気がついたのだろう。俺が剣を振るう瞬間。軽く後ろにさがりギリギリで剣が届かない位置に移動したのだ。

そして俺が剣を振り切り無防備になる。その時始めて前に出て渾身の一撃を放つつもりなのだろう。

でもな

 

「残念。読み合いは俺の勝ちだよ……風王結界(インビジブル・エア)!」

 

 ロッテの顔が驚愕に染まる。それはそうだろう。俺が叫んだ瞬間、何もなかった虚空に先の丸い竹刀があらわれたのだから。

 

 これは騎士王が、自分の有名すぎる剣を隠すために使った宝具。空気を圧縮することで屈折率をあげ、目には見えないようにするためのものだ。効果は単純。それゆえに汎用性に優れ、どんな機会でも扱える便利な宝具だ。

 

 そしてこれは、ただカウンターのために待ちかまえているわけではない。この竹刀の底には今、風王結界が固まって渦巻いている。そう。それを爆発させるのだ。

 

「風よ……舞い上がれ!」

「ぬあぁぁぁっ!」

 

 咄嗟に拳を引き戻そうとするがもう遅い。いくらロッテとはいえ、暴風より速く動けるなんてことはない。

 

「がっっ! ……けはっ! ……がふっ!」

 

 これで試合終りょ…………あ。

 

「こら! 石神二士!」

「す、すいません。リーゼロッテ副長」

 

 いやいや、さすがにやりすぎた。途中から完全にスイッチ入ってタイマンみたいな事をしてしまった。風で隠すまではいいとして、なんで爆発までさせたんだろう。

 

「……うぐぅ……」

 

 腹部を抑えて悶絶している。だがロッテでよかった。ロッテの鍛え抜かれた腹筋があったからこそ悶絶ですんでいるのだ。たぶんアリアだったら貫いていた。

 

「剣介さん。やりすぎです」

「大丈夫? リーゼロッテ副長」

 

 何かがおかしいと察知したのか他の新人達も駆けつけてきた。うーん。本当に申し訳ない。

 

「ほらさっさとロッテを医務室に連れて行きなさいな。他の新人達は私と訓練の続きね」

「了解!」

 

 まだ動けないロッテの腹部を刺激しないよう気をつけて抱える。はぁ……本当に失敗したな。たぶん実戦だったらロッテはあそこまで危険な戦いはしなかっただろう。乾坤一擲の賭けにでるには早すぎる。 

で、俺は添えるだけでよかった罠を射出……と。アホか。

 

 途中でリズに声をかけて同行を頼む。さすがはアインツベルンというべきなのだろうか。リズとセラはただのメイドの力を大きく越えている。というか、一人いれば全て足りるくらいの能力を持っているのだ。

 

「よっと。すまんなロッテ……平気か?」

「ん……なん……とかね。当たる……前に折ったんだけど、勢いが止め……られなかったよ」

 

 ……マジでか。たぶんあの瞬間。音速を超えていたであろう竹刀を折っていたとは、さすがロッテ。

でもそれでこのダメージなんだよな……本当にやりすぎた。

 

「剣介様」

「どうだった? リズ」

 

 負傷の確認をするために身体を触っていたリズが手を止めてこちらを振り向く。どうやら終了したようだ。

 

「どうだった」

「はい。重度の打ち身です。このままでも平気かと思いますが、少々内臓を傷つけている可能性があります。どうなされますか?」

「そっか、ありがと。俺が治癒するからいいよ」

「わかりました」

 

 内臓器官の損傷と外部の打ち身なら両方から治さなければならないか……まぁどっちでも手間は変わらないんだが。

ロッテのシャツをめくって患部を露出させる。肌は赤黒くなっていて、他の白さとのギャップが際だっている。

 

「じゃぁロッテ……いくぞ」

「ん。了解」

 

 バビロンから短剣を出し手のひらに当てる。そしてーー

 

治療変換(セラフィエ・カンバセイション)

 

 ナイフを一気に引いた。

 

 肌色の手に一筋の切れ込みが入り鮮血の赤が手を覆う。俺はそのまま血をロッテの腹に垂らし、次にロッテに飲ませる。

 

 これは俺の魔術。起源の一つである『癒』を主体とした魔術だ。

自分の血を変換することによって骨折くらいならすぐに治せるようにする物だ。血、そのものに治癒効果があるので、他人の外傷だけでなく飲ませれば内臓器官の治療にも使えるのだ。味は保証しないけど。

 

「ん……っはぁ。んー……うぇ」

 

 渋い顔をしながらも喉をゴクリと鳴らし一気に飲み干した。先ほど垂らした血も、もう効果を発揮したようで赤黒かったお腹は元の透き通るような白い肌に戻っている。

 

「これから10分は動けないんだっけ?」

「そうだな。副作用ってやつだ」

 

 強力な魔術を使うにはそれなりのデメリットが伴う。この『癒』の魔術に関してもそうだ。元の血に戻すまでの10分間。チート能力がほぼ全て解除されるのだ。

それは宝具の使用だけでなく、身体能力も10歳のそれになってしまう事を示している。当然普通の10歳よりは圧倒的に上だが、それでもチート能力に慣れた身体を動かすのは厳しく、歩くだけでもなかなかに辛いのだ。

 

「じゃさ、ちょっと話さない?」

「いいけど何をだ?」

「『鬼』について」

 

 室内の温度が急激に下がる。にこやかに笑っているロッテだが、それが逆に怖い。何を言われるのやら。

 

「さっきさ、北部の隊舎にいたでしょ」

「……その感じじゃごまかしても無駄か。なぜ知ってる? 今日の昼間だぞ」

「お姉さんの情報網をナメちゃだめってことよ」

 

 あくまで軽く話しているが、何を考えているのか真意は見えてこない。それでも冷たい空気がただよっているので俺にとって有利な話にはならないだろう。

 

「で、俺は個人で勝手に動いているわけだが……何が言いたい?」

「……じゃ、単刀直入に言うわね。手をひきなさい」

 

 そういうロッテの目は鋭く、本気で言っていることは明らかだ。冗談で言っているのならば、あんなに刺すような目では見てこないだろう。

 

「なぜ?」

「危険だからよ。いくら剣介でも、一人であいつらを相手にしたらろくな事にならないよ」

 

 相手は次元世界最大の犯罪組織。俺一人では歯牙にもかけられないだろう。いくらチート能力を持っているとはいえな。一騎当千の武将が一人いたところで万には勝てないのだ。戦いは数。これは真理だろう。

 

「じゃあ数でも上まわれるとしたら?」

「本気で言ってる? 相手は最大の組織。そんなところ相手に管理局が手を出したら戦争になるわよ」

「それは殲滅戦になったら。の話だろう。……管理局には『鬼』に対して沸点超えそうな人が一人いるだろ」

「いるにはいるわね。でも、いくら彼でも『鬼』を敵に回すにはもっと時間がかかるわ」

「そうだな。でもこれ続くぜ」

「……なんの根拠があって?」

 

 いぶかしげに俺を見る。そんなロッテに対し、ニヤリと笑い俺は一つの切り札をだす。

本来ならこんなところで使いたくはなかったんだけど状況が状況だ。

 

「殺された局員にはある方向性があるからだ……とはいえこれはまだ予想の域。あと数人は殺してくれないと証拠として弱いがな」

「…………それが本当なら力付くでも聞き出すしかないわね」

 

 バチンと拳で手のひらを殴りこちらを見てくる。まぁこういった反応が帰ってくるのは予想できた。逆にこういう反応以外考えてなかったというべきか。

未だ力が戻ってない俺相手でも容赦する気がないのは、その闘気から伝わってくる。

 

「まぁまてロッテ。事件を調べて少ししかたってない俺が気がついたんだぞ。調査してるやつらが気がついてないはずないだろ」

「そうね。ならなんで動きがないのかな?」

「そりゃ根拠が薄いからだ。さっきも言ったろ予想だって」

 

 浮かしかけた腰を落としベッドに身体を沈みこむ。呆れたかのように息を吐くロッテ。俺もドッと疲れがでたのでイスに座り背中を背もたれに預けた。

 

 ロッテやグレアムさんの言うとおり、『鬼』を相手にするには危険が伴う。それは分かっている。でもこうやって危険な事をしなければ得られない事もあるのだ。

それを得ようとしているから俺が捜査をやめはしないだろう。

 

「ねぇ剣介。私はさ、あんたの事が心配なのよ」

 

 少し時間が立ち、空気が弛緩したところでロッテがつぶやいた

 

「勝手な行動してるからか?」

「ちがう。あなたの能力が、よ」

 

 ロッテは笑いながら俺の言葉を否定した。

俺の能力……か。まぁ分不相応な物を貰っちまったってのはあるよな。

 

「あなたはまだ10歳でしょ。そのくせして達観しすぎなのよ」

「そりゃ俺だけじゃないさ。なのはだってフェイトだって精神年齢はむちゃくちゃ高い」

「あの子たちと比べても、よ。なのはちゃん達も大人っぽいけど、子供な部分がキッチリとある。でもあなたはどう見ても高校生くらいの大人なの」

 

 そりゃ元の世界では高校生だったからな。10歳くらいの精神年齢がどれくらいか分からないし、たぶん真似もできない。小学生に戻る。ってのも結構難しいのよ。

 

「まぁ心配してくれるのはありがたいけどな。そこまで気にするもんでもないさ」

「……はぁ、わかったわ。あくまで引く気がないのなら、単独で動くのは禁止。これからは私とアリアも捜査に参加する」

 

 ロッテのありえない言葉に本気で耳を疑った。彼女たちはグレアムさんの使い魔だ。主の意向に反することをするなどありえない。と思ったのだが。

 

「本気で言ってるのか?」

「もっちろん! 父様を出し抜くような真似になっちゃうのは申し訳ないんだけどね……これ以上犠牲者がでてもいいわけじゃないからさ」

 

 そうやって呟くロッテの顔はポーカーフェイスで真意は読み取れない。……でも手を思いっきり握ってるんだよなぁ。爪を食い込ませて悔しさを紛らわせているのは明らかだ。

 

「……じゃあ甘えさせて貰うよ」

「そうそう。何かあれば遠慮なく甘えなさい。私は皆のお姉さんなんだから」

 

 ロッテが腕を突き出してきたので俺も倣う。そして拳の距離は近づいてーーコツンと子気味よい音が響いた。  

 

 




今回もグデーっとした回なのですが……まぁ次回はもう少し情勢が動くことを期待しましょう。

リーゼ姉妹が剣介の味方をしたことに違和感を覚える人も多いと思いますが、大きく説明するとこういった理由です。
グレアムさんは、隊を危険に導くから。という理由で、上からの要請がなければ隊として動くことはないと断言した。
リーゼ姉妹は単独捜査が危険と判断し、剣介を手伝う事によって危険を減らそうとした。

まぁこれがどう転がるかはこれからの展開次第です。

次回 ナカジマ家とは……?

この小説を読んでくださるすべての方々にありったけの感謝を

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