魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~ 作:てりー
前回のあらすじ
リーゼ姉妹も捜査に加わってくれるそうです
「ケンスケ……いい?」
育成課の自室で装備の点検をしていると、部屋の外からリズの声が聞こえてきた。
「あぁ、いいぞ」
「失礼し……ます」
たぶんセラに言われたのだろう。とてつもなくぎこちない失礼しますを言い、ドアを開けた。
俺はメイドだからって口調を気にするタイプではないんだけど、それをセラに言ったら怒られたんだよな。ちょっと不服。
「頼まれてたもの、届いた」
「お、やっとか。サンキュー」
リズから封筒を受け取り、一気に封を開けて中の紙を取り出す。表紙には期待通りの言葉が踊っていた。それは。
『ナカジマ家調査記録』
データだけで人は判別できない。かといって俺やリーゼ姉妹が聞き込みをしていたら足が着いてしまう。ということで、プロの調査屋に頼んでおいたのだ。
「で、調査結果は……と。うん、期待通り」
ナカジマ家。家長ゲンヤ・ナカジマ 妻クイント・ナカジマ 長女ギンガ・ナカジマ 次女スバル・ナカジマ。
こういったデータが羅列してあるのだ。それぞれの所属部署や年齢。通っている学校の名前なども載っている。
「リズ。リーゼ姉妹を呼んできてくれ」
「わかった」
二人が来るまでの間にもう少し見直してみる。ゲンヤ・ナカジマはおいておくとしてクイント・ナカジマ。彼女はエリートのようだ。あのゼスト隊に所属している。
ゼスト隊というのは、管理局地上本部でも最強の部類に入る捜査部隊だ。部隊員こそ少ないものの、有名なストライカーであるゼスト・グライガンツを中心に一騎当千の猛者ばかりを集めていることで有名だ。
「戦闘方式は……と。うわっ、顔に似合わず力押しタイプかい」
これくらいのエリートになるとどんな戦闘スタイルなんだろうと調べてみたら、両腕につけたナックルで敵を倒すという超近距離の格闘タイプだった。……まぁ姿に似合わない戦闘スタイルは、なのはで慣れてるけどさ。
でも、これだけ整った綺麗なお姉さんが格闘か……少し見てみたい気もするな、デカパイだし。
「ケンスケ、つれて、きた」
「連れてこられたわ」
青少年ならありがちな考えをしていたら、ドアをノックする音が聞こえてアリアが入ってきた。
「ロッテは?」
「ん、いま外に出てるわね」
「りょーかい。じゃあ取りあえずこれ」
俺が差し出した資料をペラペラとめくっているアリア。俺はその間に別情報を整理することにした。それはナカジマ家の子供、ギンガとスバルに関しての物だ。同じ情報屋に、この二人だけ別料金で詳しく調べて貰ったのだ。
ギンガにスバル。今回の事件は、こいつらがキーマンになると思うんだよな。
「ふぅん。あのクイント・ナカジマがいるのね」
アリアは読み終わった資料をバサッと机の上に投げ捨てて肘をついた。何を考えているのかわからない顔をしている。
「でもゲンヤ・ナカジマも可哀想ね。これだけ娘二人が母親に似ているなんて」
クスクスと笑いながら感想を口にするが、それは残念ながら間違いだ。
ゲンヤ・ナカジマとクイント・ナカジマに娘……いや、子供なんて存在しないのだ。
「アリア、これ」
「ん? これは……嘘でしょ」
「うんにゃ、これでも別料金を払って貰って調べて貰ったんだ。嘘はつかないだろ」
手渡した資料に絶句するアリアを見ながら、テーブルに置いてある紅茶を持ち一口飲む。紅茶のふんわりとした匂いがいい感じ。
と、まぁ。俺もこうやって少し落ち着くしかなかったのだ。瓜二つにしかみえない二人の娘。ギンガ・ナカジマにスバル・ナカジマは、少し前にクイントが拾ってきた子供だという。
「……クローン?」
「そう考えるのが自然かもな。自分の娘でも、これだけ似ないだろ」
そもそも、スバルとギンガが同じ髪色、目、顔立ちをしているのもおかしいのだ。一卵性双生児ならともかく、歳が離れているからそれはない。加えて二人を大人にして髪を伸ばすとクイントそっくりになるとしか思えないのだ。これは誰がどう考えても不自然。本当に子供ならばゲンヤ・ナカジマの血も混じるだろうからな。
しかし、俺が親ならばどうだろう。自分の妻の瓜二つの子供を引き取って育てようなどと思うだろうか。
それを考えると人間的に素晴らしい人なのかもな。
ただもう一つの疑問がある。地球でクローン技術は、倫理面の問題だけでなく短命である。という理由で研究は進んでいない。
宇宙の技術ではそこを克服しているのかどうか。それが気になる。
「いや、もう一つ可能性があるわね」
とても言いにくそうに、思いつめた表情でアリアがつぶやいた。伝えたくない。という気持ちが痛いほど伝わってくる。
こういうときは、たとえビックリするような事実でも騒がずに対処しなければいけない。わざわざ言いにくい事を伝えてくれるんだからな。
「その可能性とは?」
「……あなたの極身近にいる子よ」
「俺の身近……? あぁフェイトか」
大魔導師プレシア・テスタロッサの娘アリシア・テスタロッサ。彼女が亡くなったことによりフェイトが産み出された。
使い魔を超える人造生命の再現と死者蘇生の研究。そのプロジェクトの名前がプロジェクト『F・A・T・E』。
プレシアの記憶などで再現されたので、クローンというよりは人造魔導師と言ったほうが正しいのかもしれない。
だがこれで再現されたとはいえ、フェイトは普通の人間だ。短命というわけでもなければ生殖機能だって問題ない。
フェイトを人間にしてしまったのは、ある意味プレシア最大の失敗だろう。彼女がフェイトを愛しながらも毛嫌いしてしまった要因は、アリシアと違う性格にあったのだから。
記憶を頼りに強引に記憶を操作すれば人形になる。記憶をイジらなければ同じ人格にはならない。小学生でもわかるジレンマだな。
しかしプレシアは俺の手で殺した。そして研究成果などは管理局が全て闇に葬った……はずなのだが。
「待て、管理局内に内通者がいるというのか?」
「少し落ち着きなさい。管理局に内通者がいるとは言い切れないわ。プレシアが生きている間に研究協力した人かもしれないし、そもそも今回の事件とは関係ない可能性だってある」
アリアにたしなめられて少し冷静になった。
そうだ、今回の事件。人造魔導師を狙うならもっと絞り込んでくるだろう。あくまでギンガとスバルの発見は副産物にすぎないのだ。
だが副産物だとしても疑問点が出てくる。なぜクイント・ナカジマに瓜二つなのか、だ。
彼女が研究協力をしているとでもいうのだろうか。
そうであるとするならば管理局が関わっている事がいよいよ現実味をおびてくる。
「なら、なぜこいつらはクイントとそっくりなんだ?」
「あら? 剣介は人造魔導師には詳しくないのね。いまは少量のDNAがあれば造れるのよ。それこそハンカチに血を染み込ませるくらいでね。それくらいなら簡単じゃないかしら」
「……ふむ。少し自分でも調べてみるか」
「ふふっ。そうしなさい。他人の情報を鵜呑みにするのは危険だわ」
アリアの忠告を受けて考えを改める。
金で雇ったプロ以外の情報や地球の常識を信用するのはかなり危険だな。
ここは地球の外。地球よりよっぽど文明が進んでいる国なのだから。
さて、本題から脱線してしまった。今日考えるべきことは他にある。スバルやギンガはどうでもいい情報なのだ。
そしてそれは、どうやってゲンヤ・ナカジマと接触するか。
いきなりガキが調査の協力を頼んだって受けてはくれないだろう。リーゼ姉妹は最後の切り札として残しておきたいし、グレアムさん的な意味で切りたくない手札なのだが。
「最初は武力面で頼りになる。というような方法も考えていたんだけれどな」
「クイント・ナカジマがいるなら武力は必要ないわよね」
彼女が一人いれば最低限の武力は確保できるのだ。いざとなればゼスト隊の面々も引っ張ってこれるしね。
そんな感じで考えている俺に浮かんだのは一つの提案。しかしこれは……人としてどうなんだろうか。前のアリアを見ると、同じ事を考えついたようだ。
名案……なんだけどなぁ。という表情をしているのが何よりの証拠。
「やっぱ……やるしかないのかね」
「そうね……これ以上の策もないでしょう……はぁ」
「じゃあ来たるべき日に備えて根回しし始めますか」
「そうね。そうしましょう」
立ち上がってドアを開ける。さぁこれから第二局面だ。
ある星にある部屋。そこに男だろうか、女だろうか。とにかく人が数人いるようだ。一人は座っており、他の者はそれを取り囲むように立っている。
部屋の中央部は光に満ちているのだが、人のいる部分は暗い。中央部に立った人間は、人が数人いることしか確認できず、逆に暗がりにいる数名は細部まで見えることだろう。
「では、そろそろ呼ばせていただきます」
涼しげな秋空を思い出させるような爽やかな声が響く。手にはいつから持っていたのだろう。誰かの履歴書を持っていた。
彼の名はトール・マーグリス。次元世界最大の犯罪組織『アヴァタラム』の幹部であり、人事などを総括している数少ない文官である。
横で気だるそうに座っている人物と、そのほかの者に心の準備を込めた確認をする。そして
彼らが頷いたのを確認し、今日のメインである万隊長を呼んだ。
「失礼します」
少し硬い声を絞り出して入ってきたのは、若い男だった。瞳には羨望、喜び、狂気がないまぜになった混沌の色が浮かんでいる。
「えぇ。そこにおかけになってください……今日は良い天気ですね」
少し緊張しているのだろうか。
そう感じとったトールは、軽い世間話をする。今日の質問に緊張は邪魔だからだ。
この万隊長。『アヴァタラム』に入ってからの年月はとても浅い。それにも関わらず幹部一歩手前の万隊長にまで成り上がる事ができたのは、基本能力だけでなく、どんな相手を殺すのを躊躇わない残虐性と、不思議な人望。そして完全実力主義の態勢にあるだろう。
この完全実力主義の中で、彼が任せられている仕事。それは現在の『アヴァタラム』でもっとも重要な案件と言うのが正解だろう。
それは管理局員連続殺害。複数の局員及び複数の近縁者を残虐かつスマートに殺害したのは彼だった。
そんな彼がこの功績を受け、幹部に推薦されるのは当然の流れと言えるだろう。
「さて、では最初の質問です。今回の手口。誰と考案し、誰と実行しましたか?」
「私の直属の上司であるゲール様です。実行したのは私一人です」
「あの手口は素晴らしいものでした。監視カメラに自分の姿を一切映さずあれだけの強烈なメッセージを送る。誰にでも出来ることではないでしょう」
「お褒めいただきありがとうございます」
少しづつ顔が変化する万隊長と違い、ポーカーフェイスを崩さないトールから感情は感じられない。自分の言うべき事を淡々としゃべる。それを実行しているだけのように見える。
後ろの幹部達も同様だ。直立不動で動かない。まるで蝋人形かなにかのようである。唯一動くのは一人座っている人物。肘置きに片肘をついて頭を載せ、欠伸をしながら退屈な雰囲気を押し殺そうともしていない。
実はこの万隊長、かなりプライドの高い人間である。自分をバカにする上司を遠慮なく殺害したこともあるのだ。
しかしそんなプライドの高い男でさえ、目の前で座っている男の所作は気にならない。むしろ陶酔した表情でそれを見つめている。このことから座っている男のカリスマ性が知れるというものである。
「では次に、なぜあなたはなぜ管理局員を殺害したのですか?」
この一言で明らかに空気が変わった。直立している者だけでなく、先ほどまで退屈そうに座っていた男でさえ鋭い眼光で万隊長を見据えている。
この雰囲気を感じ取れないほど愚鈍な者では万隊長になりえはしない。彼もまた生唾を飲み込み質問の答えを探る。
しかし相手は百戦錬磨の幹部達。下手な嘘は通用しないだろうと考え、純粋な気持ちを話す事にした。
「少し……少し長くなりますがよろしいでしょうか」
「……えぇ、かまいませんよ」
ここで空気が一気に弛緩して、かなり話しやすいムードになる。成功したか? という気持ちとここで油断するな。という二つの相反する気持ちを抑えながら彼は話し始めた。彼の昔話を。
彼は幼い頃、活発な少年であった。少々厳しいが自分を愛してくれる母と、家では優しい父。二人に囲まれた少年はすくすくと育つと思われていた。自分も、そして周りも。
その証拠に、彼が幼稚園児の頃書いた将来の夢は父と同じ管理局員である。
そしてそれを叶えるために彼はよく勉学に励み、運動に興じた。このまま成長すればキャリアになるに違いないと、彼の父も母も期待するほどだった。
しかし、そんな暖かな生活はあっけなく終わりを迎える。彼の両親が殺害されるという最悪の形によって。
だが彼は頑張った。父母を殺した犯人を捕まえようと、それを生涯の目標にしようと心に決め、今まで以上に自分を追い込んだ。
その成果もあり、元々の才能もあり、彼は小学校を首席で卒業した。それも圧倒的にだ。
しかし、同じように勉学に励んでいたある日。彼に一本の電話がかかってきた。それは非通知で一瞬でようかでるまいか迷い、ちょうど暇な時間であったことをキッカケに電話をとった。そこで彼は、今まで積み上げてきた物を全て失ってしまうほどの衝撃に出会うのであった。
「もしもし、ーーですが」
「よかった。繋がって……ーー君であっているかな?」
「えぇそうですが……あなたは?」
「………………」
「……もしもし?」
電話をとると、40歳くらいだろうか。少々老けながらも精力的な男性の声がきこえた。だが彼が名前を尋ねるも口を開かない。何かがおかしい。そう思った彼は電話を切ろうとするが、ある一言によって遮られた。それは驚くべき事だった。
「君は、君はーー夫妻。君の両親の死の真実を知りたくはないか?」
「…………は……? ど、どういうことですかそれは!?」
頭が回らない。彼を表現するのにこれほど適した言葉はないだろう。本能的に危険を感じとった脳は彼に警鐘を鳴らすが、それ以上に復讐心、探求心が勝ってしまった。彼の運命が根本から変わった瞬間なのま間違いないだろう。
電話口の男が話した内容はにわかには信じられない内容だった。彼の両親が管理局員に殺されたというのだ。
そんなはずはない。
そんなことがあるわけがない。
そう思った彼だが男はドンドン追い詰める。
彼の父親が見てはならない何かを見てしまったというのだ。そして彼が殺される瞬間を自分はたまたま見てしまったと。そしてその者が名乗った名は管理局最高評議会親衛隊。最高評議会子飼いの暗殺部隊であるとも教えてくれた。
最後に男は、真実は自分で確かめなさい。とだけいい電話をきった。
彼の驚きは大きく、数日間食事が喉を通らなくなったほどである。
そして彼がとった決断は……管理局について調べることだった。これまで盲信的に信じていた管理局。先ほどの男の言っていたことが事実だとするのであれば、彼は自分の敵のために命を捧げていたといっても過言ではない。それはあってはならないことだ。
自分の出来る範囲で積極的に調べ、聞き込み、理解し、納得し、反芻し、彼が選んだ先は……『アヴァタラム』だった。
「どう考えてもおかしかった。そもそも管理局という名前からしておかしい! 世界を管理するのなんて神の領域だ。人間が立ち入っていい場所ではない! そして私の先祖がいた土地では三権分立なるものが成り立っている。管理局はその星を未開惑星として設定しているが、権力を分散させず集中させるほうが未開だとなぜ分からない! 加えて犯罪者でも子供でも、力さえあれば良いという精神なんぞクソくらえだ! こんな……こんな組織に父が籍を置き、そして殺されたのかと思うと反吐がでる! 確定的な証拠は出てこなかったが、どう考えても父母は殺された! これほどの悪行を重ねた管理局が殺さないはずがない! だから……だから俺は管理局相手に復讐をしたい! 管理局員を殺したい!」
一息で話し終えた彼は肩で息をしながら息を整える。それほどまでに怒りは深く、根太いものだった。彼にとっての管理局は、既に憧れの場所から憎しみの場所へと移っていたのだ。
そこまで苦しんだ者の慟哭が胸をつかないわけがない。この語りをもし近くで聞いたならば、涙を流して彼に賛同している者は多いだろう。
そして、そんな彼の魂の叫びを聞いて、座っている男は立ち上がった。そして近所に散歩をしにいくように命じたのだった。
「おい。こいつ
「はっ! 了解しました!」
感想感謝コーナーです。
『竜華零』さん感想ありがとうございました。
今回、アンチ管理局といえる描写がありますが、私はアンチ管理局ではありません。先ほど書いてある事には、子供を雇用している以外にはしっかりと反論がありますので。
これからさき、アンチ管理局ともとれる展開に進むかも知れませんが、私は魔法少女リリカルなのはにおいて、アンチ要素を使おうとは思っておりません。
なんか、全然リリカル成分がありませんね。むしろ最後なんてホラーに近づいている気がします。やはりオリジナルは難しいものですね。オリジナル展開で面白い物を書いている方は尊敬に値します。
次回 下準備
この小説を読んでくださる全ての方々にありったけの感謝を