魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~ 作:てりー
前回のあらすじ
第二局面だそうです
今日は育成課が休みなので、朝から俺とロッテ、アリアで根回し作業をしている。
いくら俺の狙い通りに事が運んでも、 育成課が動けるようにならなければ意味がないのだ。そのために重要なことと言えば、まぁ根回しになるわな。
そういうことでやってきたのは聖堂教会。ミッドでは管理局並みの影響力を誇る宗教組織だ。地球でいえばキリスト教のようなものだろう。
俺自身に信仰心はないのであまり来る機会はないと思っていたのだが、以外と早く訪れることになった。
ミッドの郊外にある聖堂教会の本部。本部らしく相当でかい。外から見た大きさはなんと言えばいいのだろう……あのネズミがハハッ! と言っているようなランド並といえばいいのだろうか。
当然宗教施設なのでおごそかな雰囲気だが、その中にも豪奢な装飾がしており、何とも言えない融合をおこしている。
「俺たちはどこに行けばいいんだ?」
「えっとねぇ~第二会議室らしいよ」
「宗教施設の割には、そこらへんの呼び名はあっさりしたもんだな」
「旅館じゃないんだから当たり前でしょうが」
まぁ確かに、ザビエルの間、ガブリエルの間。とかじゃなくてよかったかも。何かが待ちかまえてそうだしな。
敷地内を歩いていくとパイプオルガンの音が聞こえる。前世で一度だけ実物を見たことがあるのだが、それは荘厳なものだった。
教会の背面一杯に金色の筒が何本も並び、三段にもわたる鍵盤を操作するとそれぞれに違う天使の音が流れる、人間が生みだしたとはとても思えない天上の音楽。それがパイプオルガンなのだ。
とはいえ今日ここに来た理由は祈るためでもオルガンを聴くわけでもないからな。もっと色気のない用事だ。
二つほど大きな教会を通り過ぎると、不釣り合いのはずなのに、なぜかキレイにこの場の雰囲気とマッチするビルが現れた。
日本に似た感じで装飾がほとんど施されていないのに違和感がないのは、建設業者が頑張ったとでも言えばいいのだろうか。
アリアが受付に行ってパスをもらい、受付の奥にあるゲートをくぐる。やはり要人が多いのでテロ対策をしているのだろう。内部のセキュリティーはかなり頑丈だ。
会議室につくまでに3回のボディチェックをされるとは……。
会議室のドアを開けると、どうぞ。という声が聞こえたので中に入る。中には今日のお相手、ルマン枢機卿が待っていた。
「どうぞ。かけなさい」
「「失礼します」」
枢機卿の言葉を聞いて座ると、修道服を着た女性がコーヒーを持って入ってきた。
今日話す内容が内容だけに、あまり人は着てほしくない。俺もリーゼ姉妹もそう思った。するとそれを察したのか、笑顔でルマン枢機卿は俺らの不安をなくす。
「彼女は私専属の修道女だ。彼女はいないものとして扱ってくれて構わないよ。彼女が秘密をもらすことは、聖王に誓って絶対に無い」
猫のような目をした女性は一礼すると壁の脇まで移動した。話は聞かないという意思表示なのだろう。
俺もリーゼ姉妹も不安なところはあったが、聖王に誓ってとまで言われては何も言えない。日本人には分からない感覚だが、自分の信じる宗教に誓うというのはそれほど重いものなのだ。
「では話を聞きましょうか。石神君だけならばまだしも、グレアム君の使い魔である君たちが彼からのアポをとらず直接会いに来たというのは、それほどの用事だからでしょう」
少し考えればすぐに思いつく事ではあるから、驚いてはいない。でもこの品定めするような視線はやめてほしい。枢機卿といっても人の子。というわけなのだろうか。
しかし今そこを気にしていては始まらない。俺たちは、今まで起こったこと、そしてこれからの推論を話し始めた。
一気にしゃべり終え、一息つく俺たち三人。ロッテは、わざわざあの話までしたからなのか疲れた顔をしている。
話を聞き終えた枢機卿は修道女にコーヒーのおかわりをもらい、味わって飲み干してから口を開いた。
「私もその話は聞いている。彼らは人間の欲求をそのまま発散しているのだろう。
それで、この話を私にして何をしてほしいのかな?」
……単刀直入だな。もう少し引き延ばしてくるかと思ったが、めんどくさかったのだろうか。
テーブルの上でキッチリと手を組んでいる姿からは、どちらに転ぶかまったく分からない。でもここまできたら話すほか無い。というか、そのために来たのだから。
「根回しをしてほしいのです。私たちが部隊として動けるように。」
俺たちが今日ここに来た目的。それは根回しだ。グレアムさんは上から命令されなければ動かない。と言っていた。それは逆を言えば、上からの命令があれば動かざるをえないということだ。ここで後見人の人々が活きてくる。
だがガイナスさんは役に立たないだろう。能力的な問題ではない。彼はグレアムさんと近すぎるのだ。
それに比べて枢機卿は違う。彼はグレアムさんと友人関係ではなく、後見人なので影響力が強いという、こちらの条件に会う使い勝手のよい人だったのだ。
そこを見逃すような俺たちではない。
それに、もしも後見人からの要請がなければ、せっかく捜査を命じられても、断ってしまう危険性があった。
組んだ手はそのままに、目を閉じて考えている枢機卿。まぁ虫の良い話だ。これが露見すれば、彼の後見人としての地位は下がるのに比べ、メリットはあまりない。当然俺たちの部隊が事件を解決すれば株はうなぎ登りだが、『鬼』相手にそんなことは無理。と考えるのが普通だろう。
たぶんこのままでは断られる。そう判断してアリアとロッテに目配せをすると、二人とも頷いた。たぶん二人もそう感じていたんだろう。
俺はバビロンを展開するーーと同時に首筋に冷たい銀のきらめきがあった。
「不審な動き……するな……斬る」
目の前にいるのはあの修道女。俺が一歩でも動けば本当に斬るのだろう。それを感じとったリーゼ姉妹も動けない。
命の危険を感じているわけではない。俺が取り出そうとしている物はその手のものではないからだ。しかし、いっさい反応できなかった。そこに驚いた。格別に素早かったわけではない。俺も視界ではとらえられていた。でもいつのまにか懐に入られていた。隙をつくのが上手すぎるのだ。
「ふふっ。まぁ待ちなさいヘレン。ここで私を殺しにかかるようなマネはしないだろう」
「は……い」
押し当てられていた冷たい感触が消えた。それでも警戒はしているようで、武器でも見せようものなら斬って捨てる。というオーラをだしていた。
まぁ俺が出そうとしているのは武器だなんて高尚なものではないがな。
もう一度バビロンに手をいれ、菓子折りを一つとりだした。
「枢機卿。これを」
「……なんだねこれは」
「私の住んでいる星。地球銘菓です」
俺が差し出したのは地球にあるお菓子。まぁ無難に饅頭とかなんだけど、ただの饅頭ではない。特別製で、一般人ではあまり作れない饅頭なのではないだろうか。
その証拠に、開けた瞬間。枢機卿の目の色が変わり、ヘレンと呼ばれた修道女は定位置に向かって踵をかえした。
「これは……リーゼロッテ君、リーゼアリア君。君たちの指導のたまものかね?」
「そうで「違います。これを考えついたのは俺だ。リーゼ姉妹はそこまで腐っちゃいませんよ」剣介あなたっ!」
「く……ふふっ、はっはっは! こんな子供からの
「えぇ分かりました。まずはですねーー」
会談は無事に。何の心配もなく終わった。そう。誰が見ても完璧に。
数日後、やはりというべきか。ユーノから俺に連絡が入ってきた。内容は当然のごとく管理局連続殺害について。
新たな犠牲者がでた。というのだ。
こんどは108部隊ではなく、もう少しミッド地上本部よりにある部隊だ。手口は前と同じで、人間を昆虫かなにかと勘違いしているようなもの。
知らせを聞いた後、アリアに念話で報告し、被害現場に向かった。
「ごめんね。ぼく。ここから先は、局員でも立ち入り禁止なのよ」
「……そうだったんですか。ではまた今度くるとしますね」
部隊は荒れていた。厳重な規制をしいているらしく、一般人はそもそも建物に、管理局員も、捜査官や鑑識以外は現場からかなり遠いところで規制がかかっており通れない。チート能力の一つ、五感の強化によりなんとか遠目から見ることができたが、すでに死体はなかった。人間の血液でできた花を見ることが出来ただけでもよしとするか。
花を見た感想としては、一言でいえば凄惨だ。俺は鑑識の人などと違い血を見て殺されたのが何分前だとか、凶器はなんだとかは分からない。しかしそんな俺でも分かったことが一つある。
今回の被害者は、生きたまま張り付けにされたという事だ。
壁一面に広がっていた血の跡、あれは殺してから張り付けたような生温いものじゃない。たぶん何らかの方法で気絶させた後に生きたままグサッといったのだろう。これまでより残酷で、よくぞここまで悪質なものを考えたと感心するほどだ。これほどの悪意は、普通の人間では想像すらしないだろう。
「あぁアリアか? あぁ見てきた。うん。うん。いや、今までより酷かったな」
今まで見てきた物を電話で簡単に報告する。詳しい対策は帰って練るしかない。誰が殺されたのかによって、今までの推理があってるかどうかが明らかになるしな。
同時にマルチタスクでユーノにメールをうつ。1時間でも30分でもいい。抜け出せる日がないか聞くためだ。
一般局員のなかでは、収まりかけていた。と思われていた事件が再燃したのだ。今ごろ無限書庫にも理不尽な要求が届いていることだろう。
その中で抜け出させてしまうのは心苦しいが、俺も背に腹を変えている場合ではない。本格的に手を出すと決めた以上、少しでも手を抜けば喰われるのはこっちだ。やつらも、個人単位で今回の事件に関わっている人物を洗い出しに来るはずだ。そうなる前に部隊レベルでの捜査にしないと、逆に危ないことになる。
「さてと、さっさと帰らないとな」
いったん頭の中をからっぽにしてリフレッシュ。マルチタスクにまだ馴れていないので、すべてを100%で扱おうとすると負担がでかいのだ。
それゆえ一回使った後は首をふるなり伸びをするなり、一度リフレッシュさせなければ保たないのだ。スマホで言えばタスクマネージャーから、全部を終了させる感じだな。
あいつらを長時間待たせるのも悪いので、少しだけ足を速める。パッパと次の対策に移れるように。
「やっぱりだな」
「えぇ。やっぱりね」
先ほど帰っている途中、ユーノからメールの返信がきた。殺された人の名前が送られてきただけの簡素なメールだったが十分だし、それくらい忙しいのだろう。
その名前を検索して年齢と階級を調べてプリントアウトする。俺の予想は間違っていなかったみたいだ。
「さて、今回のでほぼ確実に俺の予想通りなわけだが。これからの分担を決めようか」
「そうね。剣介、あなたはこのまま、自分の考えている通りに行動しなさい。私とロッテはそれをサポートするわ」
「了解。じゃあ、よろしくな。アリア、ロッテ」
「まかせなさいな」
俺がここでやることはそこまで多くない。強いて言えば時間だろうか。ただそれだけなのだが……正直かなり面倒な事には違いない。なにせストーカーをするのだからな。
子供の笑い声や泣き声、叫び声がけたたましい。まぁでも、それは当然なのだろう。俺がいる場所はそういった場所なんだから。
ここはミッド北の保育園。普段ならまったく縁のない場所なのだが、今回は特別だ。
「ふぅん。これなら保育園にいる最中にさらわれるということはなさそうだな」
周りをぐるりと一周してみたのだが、なかなかどうしてセキュリティーがしっかりしている。ここを選んだのはさすがというべきだろうか。
ここなら保育園にいながらにして誘拐される。なんてことにはならないだろう。乗り込んできて攫うというなら話は別だが。
「お、お姉ちゃん。待ってよぉ」
「あ、ごめんね。スバル」
俺が見つめる先、今回のストーカー対象がいた。それはギンガ・ナカジマとスバル・ナカジマ。そう。ゲンヤ・ナカジマの娘二人である。こいつらが第二局面のキーマンだ。
なぜこんなガキどもがキーマンとなりえるといえるのか。それは、前から言っている、『鬼』による管理局員殺害事件の法則性だ。
四人目が殺されたことにより、今まで黒に近い疑惑だったのが黒になったといっても良いだろう。
今まで殺された人間は、階級も性別も、年齢もバラバラだったが共通していることがあった。それは、ノンキャリアで、年齢が30歳以上。そして局員として、将来部隊長を任せられるほどの位置にいるであろう優秀な人材。これだ。
今までは確証に至るまでほんの少し足りなかったが、今回の事件でほぼ確定できたと俺は判断する。
そして、この判断を信じるとすると、ゲンヤ・ナカジマにも魔の手がせまっているのだ。彼の殺されたという友人は、彼の一歩先をいっていた。年齢でも階級でも少しだけ上だったのである。ゲンヤ・ナカジマは本来ならば友人の副官になる手はずだったのだろう。しかしその友人は殺された。そうなると、次に108部隊の部隊長となりえるノンキャリアの男……ゲンヤ・ナカジマしかいないのだ。
そしてなぜスバルとギンガを見張る意味があるのか。今度は死亡時刻と『鬼』の残虐性に関係がある。
これはあらかじめユーノから聞いていた情報なのだが、殺された三人のうち、一人は独身。一人は彼女持ちの独身。そして一人は家族持ち。だったらしいのだ。そして彼らの中に親、兄弟はいるが、そこらの人間には手出しをされていない。
ここから導き出される結論は、殺害対象が一家の長となったとき、その下に属するものということ。そして最新の殺害では、彼女の有無はまだ謎だが、少なくとも彼を家長とする家族はいなかったのだ。
次に死亡時刻だが、これもユーノから聞き出した情報。いつのまにかこの事件に深く立ち入ることになっていたらしい。さすが天才、頼りにされているな。
その情報によると、特に家族が殺された人の死亡時刻は、子供が一番早いらしい。まずは赤ん坊、次に子供、そして妻の順に殺されていった。そして最後に局員が殺される。ここから導き出せる結論としては、息子や妻を人質にとったということだ。カップルのほうも、あまり差はないが女性から殺害されているらしいので確定と見ていいだろう。
これをゲンヤ・ナカジマに置き換えてみると、残念ながら妻をストーキングすることに意味はない。彼女が捕らえられることは考えづらいからだ。クイント・ナカジマが強いなんていう情報は『鬼』ならつかんでいるだろう。ということは、狙われる可能性が高いのはこの娘っこ達なのである。たぶんこいつらを人質にしてクイントをおびき寄せ、数人がかりで制圧するのだろうな、俺ならそうする。
子供をダシに使う。あまりほめられた方法ではないのだろうが、それがどうした。俺が主人公というわけでもあるまいし、とれる手は打っておいた方がいいに決まっている。
ただ一つ懸念があるとすれば、クイント・ナカジマだろうか。この娘っこ達の送り迎えは彼女がしているはずだ。彼女がいる間は『鬼』の連中も手出しはできない。へんなジレンマだな。まぁでもそこは『鬼』に期待するとしよう。上手い具合におびき寄せてくれよ。
その場でくるりと半回転し、足を駅のほうにむける。どこまでも青い空を見つめながら、すっかり悪役になったなぁ。と、自嘲にも似た苦笑を浮かべながら帰ることにした。
次回 事件が動き出す前の一休み
この小説をよんでくださる全ての方々にありったけの感謝を