魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~ 作:てりー
前回のあらすじ
ストーキングすることになりました
あのあと生活が変わったかと言われると、そうでもない。保育園にクイント・ナカジマが迎えに来るのが毎日18時くらいなので、そこから家に帰るまでを見はっていればいい。
そう考えると、少し早くなることを予想して17時くらい保育園を観察できる場所にいればよく、帰宅も直帰ならば30分ほどなので、そこまで制限はされていないのだ。
これとは別に、育成課は一つの事件を追っている。ただの窃盗なのでそれほど大事にはならないだろうが、事件という意味で育成課にとっては初めての捜査なのだ。
今は二人一組で聞き込み調査をしているところだ。写真がばっちりあるので監視カメラの映像だけで捕まえることはできると思うが、下っ端の辛いところだな。
「ケンスケ君。次はどこに行く?」
「もっと人集まるとこいこーぜ。そうすりゃ綺麗なお姉さんに話きけんじゃん」
「なにアホなこと言ってんだ。そっちはルー達の領分」
「っかーー! なんで俺がそっちじゃねーんだよ」
「アルだからこその気がするけどなぁ」
〔まぁまぁアルさん。お姉さんならここにもいるじゃない〕
「デバイスを口説いてなんになる」
俺のパートナーはサラとアルだ。サラは人見知りの部分があるので聞き込みをするときためらいがちだが、女性相手にしか話しかけないアルよりマシだ。このやろうサラがいるからって軽くサボってるな。
ちなみに俺は話しかける役ではない。小学生が話しかけてマジメに応対してくれる人がはたして何人いるのだろうか気になるところではあるがな。
この事件。育成課が任せられるだけあって、それほど大きな事件ではない。数人の家に入って盗みを働いたというだけだ。少し範囲が広いものの、顔も割れているため数日で逮捕に至るだろう。
俺たちはその逮捕に至るまでを短くするための人海戦術をしている。ルーとルカも同じように聞き込みをしているが、あちらは場所が違う。ティーダは隊舎で情報の総括、指揮をしているはずである。
「でー、次はどこいくのよ」
〔次は公園よ。ここでも目撃情報があったらしいの〕
「センキュー。やっぱインテリジェントデバイスは便利だな」
「うん。アイギスにはいつも支えて貰ってるよ」
〔いいのよ。サラは私の可愛いマスターなんだから〕
「うっしアル。あいつら置いていこうか」
「空気がピンクなんだよな」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
立ち止まっていちゃいちゃしていたサラが慌てて追いかけてくる。こいつはマジでデバイスと結婚するんじゃないかってくらい仲がいいんだよな。レイジングハートやバルディッシュとはまた違う。主人と一緒に歩んでゆくデバイスとでもいえばいいだろうか。
レイジングハートやバルディッシュはあくまで主人であるなのはとフェイトの意思を尊重し、その意思を最大限に発揮できるように調整するという、しっかりとした主従関係を結んでいるデバイスで、アイギスは主従関係というより姉弟という感じだろう。彼の意思はもちろん尊重するが、おかしなところがあれば止める事もある。という点で、レイジングハートなどと違うのだ。
このインテリジェントデバイス。持っている物は少ない。適合するものが少ないとか、扱いが難しいなどの理由はあるが、一番は高価なところだろう。個人に合わせた物となるので一つ一つがオーダーメイド。細かい調整がずっと必要と言うところもあり、支給されるデバイスと桁が数個違うのだ。ポンと買えるものではない。レイジングハートの元々の所有者であるユーノは家が金持ちである。ということだな。
凶悪犯でないから、普通に話しながらタラタラと歩いていると公園についた。
それほど広くない公園で、ここで窃盗犯が数度目撃されたらしいのだ。数人の子供が遊んでおり、親もなごみながら見守っている。
「アル。次はおまえの出番だぞ」
「よし! どの人妻から声かけりゃいい?」
とても良い顔をして人妻を凝視するアルにちょっと危ないものを感じながら一人を指差す。かなり若くてキレイな人だ。
まだこの公園にきて日が浅いのか、他のママさん連中とは馴染めていないようである。というのが一番のポイントだな。
小躍りしながら近づいていくアルに若干頭が痛くなりながらベンチに座る。ふと周りを見回すとサラが缶を片手に歩いてきた。飲み物を買ってきてくれたようだ。
ありがとう。と言いプルトップを開け一口呷ると、爽やかな味が渇いた喉を滑ってゆく。うん。美味い。
「しっかし平和だな~」
「そうだねぇ。平日の昼間ってのどかだね~」
定年すぎた爺さんと婆さんのようなやりとりも、久しぶりにゆっくりできる事件を扱っているからだろう。ここ最近は気を張る事が多かったからな。
缶の上部を五本の指で持ち、中身をくるくると回転させる。特に意味がある行為ではない。いわゆる手遊びというやつだ。こういう無意味な動作をしているときに考えるのはきまって常日頃から一番考えていること。今で言えば『鬼』についてである。
俺の計画は推論を基になりたっているので、一つ狂うと連鎖的にダメになっていく。それを防ぐためには情報の取捨選択と深く考えることが重要だ。ここまで至ったら考えることはなさそうだが、もしかしたら致命的な落とし穴があるかもしれない。そう考えると頭のなかで見直しせずにはいられないのだ。
「どうしたのケンスケ君。考え事?」
「ん? あ、あぁ。なんでもない」
サラに呼びかけられて我に帰った。いつのまにかマルチタスクを使用することも忘れて考え事をしていたらしい。
一度頭をふって考え事を追い払う。いまは育成課の一員として仕事を完遂させることが先だ。スバルやギンガをストーキングしているときは思考時間などたっぷりあるからな。そのときにマルチタスクを使用して考えればいいさ。
そうやって切り替えたところで、サラが話しかけてきた。
「そういえばケンスケ君」
「ん?」
「ケンスケ君は、どうして育成課に入ろうと思ったの?」
俺が育成課に入ろうとした理由。まぁ動きやすくするためとか、知り合いがいたほうが動きやすいとか色々あるけど、重大な理由はこれとは別だ。
俺が育成課に入った理由、それは自立。俺の自立ではない。なのはやフェイト、はやてといった、俺が守りたい人たちの自立だ。
実は、俺が望めば、俺はアースラ勤務をすることができた。リンディさんは最初はそのつもりだったし、実際に話を聞いた事もある。だがそれは選ばなかった。それは、こういった理由からだ。
俺がアースラに勤務したとする。たぶん、なのはとフェイトは一緒に勤務することを望むだろう。だがあいつらは紛れもない天才だ。手柄をあげて俺の元から巣立っていくだろう。そしてそれは決して遠い未来ではない。あいつらなら大丈夫。と俺が自信を持って言えるほど成長してから、とはならないだろう。
そして俺は甘い。あいつらが俺に依存してきたらそれに応えてしまう。それが成長を妨げると分かっていてもだ。それならば最初から俺がいないほうがよっぽどいい。中途半端に一緒にいるくらいなら、突き放すのもよい選択だ。
と、こういった理由なのだが、これをサラに言うわけにはいかない。たぶん言っても理解されないだろうしな。
さて、どうするか。
「んー。サラはどうなんだ? サラみたいにへたれが、わざわざ育成課みたいな場所に来た理由のほうが興味あるぞ」
とりあえずお茶を濁す事にした。この間に理由を考えよう。
サラは少し遠くを見るような目をした。それはとても寂しげだ。もしかしたら地雷踏んだかもしれない。
「あぁー、サラ。別に話したくなければいいからな」
わざわざ本人が嫌だと思うことをしゃべらせる事はない。俺だって知られたくないこと、絶対に話さない事があるのだから。
「いや、やっぱりケンスケ君には知っておいてほしいかな。そんな大した理由ではないから拍子抜けすると思うけれどね」
うん。と一つ頷いて、サラは口を開いた。
「ほら僕ってさ、へたれじゃない。前はそれが原因で、からかわれたりすることがよくあったんだよね。でもアイギスと出会ってさ、僕のへたれな部分を良いところ。って言ってくれたんだ。それがすごく嬉しくてさ、思ったんだ。こんな僕でも、同じように誰かを嬉しい気分に出来るんじゃないかって。でもそれには確固たる実力が必要だから、それが養える|育成課(ここ)を選んだんだ」
話し終えたサラは、飲み物を含んだ後にアイギスを取り出して見つめている。あぁもう。本当に良いコンビだな。ただの機械ではない。AIを持ち、マスターの事を考え続けたからできる絆。ただの人間ではない。デバイスとともに歩んでいくと決めたことによる全幅の信頼。
こいつらを見ていたら、俺もインテリジェントデバイスが欲しくなってきた……まぁ魔力を使うことができないんだけどね。
ひとしきりいちゃラブしたあと、サラは俺を見つめてきた。そうだな。次は俺の部分だ。
とはいえ本当の理由は話せないので適当に取り繕うことになる。まぁこいつらは信用をしてはいるんだけどな。
「俺は「ただいま~」……っとアル。おかえりなさい」
「お、おかえり……ちょっとタイミングが悪かったかな」
「みたいだな」
「ん? 何の話だ?」
俺にとってはタイミングが良いのかも知れない。
ちょうど話し始めようとした時、アルが聞き込みから帰ってきた。そうなると、聞いたことの整理や報告などが先になり、無駄話をしてる余裕はなくなってしまうのだ。
「じゃー報告すんな~」
「ほらルー。あっちいくよ!」
こ、この状況、どうしましょうか。顔立ちからいって兄妹にはみられませんね。それではまさか恋人に……いえいえそんなわけはない。そんな関係に見えるには歳が離れてますからね。では他には……普通に管理局員ですよね。制服も着てますし。
私、ルーオカ・キザンカは我ながらかなり戸惑っているようです。そもそも私は女性が苦手、いくら共同生活が出来るようになったからと言って女性と二人で捜査というのは嫌がらせなのではないでしょうか。
ですがこれは私の弱点ですので、乗り越えなければなりません。逆にチャンスととらえるべきなのでしょうか。
私とルカさんがいるのは、ミッドの中でも特に栄えた中心部。ケンスケさんが前、シブヤみたいだと呟いていました。彼が住んでいる星の中に、同じような都市があるのでしょう。
しかし手がかりがまったくと言っていいほどありません。窃盗の被害にあった家などにも行ってみたのですが、痕跡らしい痕跡はなかったです。そう比べてみると、被害が大きい代わりに目撃情報などが多数の、ケンスケさん達がいる方が調べやすかったですね。こちらは目撃情報も少ししかないようですし。
「ルー! おっそーい!」
おっと。ルカさんに怒られてしまいました。さて、次はどこにいきましょうか。情報を得るなら、酒場などがゲームの王道でしょうが、あいにくゲームにあるような酒場はありませんからね。
「お待たせしましたルカさん。次はどこで目撃情報が?」
「次にこっから近いのは……ここだね!」
ルカさんが指を指した場所。それはここから歩いて10分くらいのようですね。何かの建物のようですが……。何をしているのか気になるところです。
今の場所はどちらかと言えば遊ぶ場所が多いですが、少し歩くとファッション街になります。今歩いている場所はそんな感じ。色々なブランドがひしめきあった、ミッド屈指のファッション街ですね。
「あぁ!? もう新作でてるんだぁ!」
いきなり大声をあげたルカさんが走っていったのは、若い女性に人気のあるブランド。最近はジュニア向けにも力をいれていると話題の洋服店。仕事なのであまり遊ぶようなことはしてはいけないのですが、これくらいならば許してあげてもいいのではないでしょうか。
私が店内に入ることはありませんが。
「このワンピ可愛いな~……うーんちょっと高いかも」
お店の中までは入らないようで、ショーウィンドウを見て一喜一憂していますね。私たちの給料は待遇の良い管理局のなかでも貧弱です。寮に飯も提供してもらっているので文句は言いませんが、それでも薄給なのは事実。こういった新作などを買うのは厳しいのでしょう。
うーん、と残念そうに唸ってショーウィンドウから離れ、こちらに向き直る。かなり不満そうですね。
「もぉ、新作はやっぱり高いわねぇ~」
「ふふっ。そうですね。特に女性物は高い印象があります」
「本当よね。あれはいくらなんでも暴利よ! これ買っちゃったら、今月はどこにもいけないじゃない」
ブランド物はえてして高いもの。どうせこういった新作も、ワンシーズンすぎればかなり安くなりますからね。そうなったときに買ってほしいです。
うん。私も二人だけという状況に驚くこと少なくなってきたようですね。ルカさんとは共同生活をしているので、他の人よりは慣れているのでしょう。
こうして少しの休憩を挟み、聞き込みをするべき場所へ向かった私たちですが……。
「………………正気ですか」
「え? どうしたの?」
「こういうところは……アルのほうが適任でしょうが……」
目的地は意外と近く、少し嬉しかったりもしたのですが、この看板で全てが台無しですね。
『クラブ・ファースト』
半地下にあるこのお店。どこからどうみてもキャバクラじゃないですか。そもそも未成年ですよ私は。何をしろと言っているのでしょうか。
「ねぇねぇアル。ここって何をするお店なの?」
「あー……なんといいますか。綺麗な女性とお酒を飲むところです」
「へ~。なんだか楽しそうな場所だね!」
あぁ。今の私には、その無邪気さがまぶしいです。ですが今はこの状況をどうするかがですね。このままでは私が聞き込みをする羽目に……それは絶対に避けなくては。女性に囲まれるなど拷問でしかありまーー。
「あぁ窃盗事件の聞き込みをしてくださる方々ですか。お待ちしておりました。どうぞこちらに」
……世界はかくも残酷なものなのですね。
「ウーロン茶です。未成年ですしお仕事という事ですのでこちらにさせていただきました。ではごゆるりと」
うやうやしく頭を下げて去っていく黒服タキシードのフロアマネージャー。どうみても顔面蒼白な私を置いていくのは罰ゲームだからなのでしょうか。
「ねぇねぇ、あなた管理局員なんだって。エリートじゃ~ん」
「は、ははははい。あり、ありりがとございます」
「緊張してるかんわい~」
なぜ。なぜこの女性達は私の太ももを撫でるのですか。なぜ腕に絡みつくのですか。
「で、では質問させていただきますね」
「え~。もっとクミと遊んでいきなよ~」
「そ、そういわわわれましても」
「あのこも遊んでいるみたいだしさ~」
私とは別の席につかされたルカさんを見てみます。かなりカオスな状態になっていますね。いつも元気で人のペースを握るルカさんがあれというのはすごいです。
「えー。この子お肌プニプニ~」
「次は私にもだっこさせてよ~」
「え? ふぇぇ!? わ、私は遊びにきたわけじゃ」
「いいじゃな~い。こんな可愛い女の子がくることなんてめったにないんだからぁ。そーれふにふに~」
「や、そんなやめ。ふぁぁぁっ」
そもそも、なぜ聞き込みをするだけなのに、こんな状況になっているのでしょうかね。普通にお店の中で立って数分間の予定だったのですが。
わざわざこんな、お金にもならないようなことを。
「意外と胸板とか厚いのね~」
……特に理由などありそうにないですね。確実にただ楽しんでいるだけのようです。私たちはここから出ることができるのでしょうかね。
今回は育成課初の事件前編ですね。幕間っぽいですが幕間ではないと信じて作っております。
これほどなのはやフェイトが出てこない小説も珍しいんじゃないかと自負しております。出番が一番多い原作キャラがリーゼ姉妹ですからね。
しかし育成課の面々が出てくると話が軽くなりますね。いつも基本がシリアスなんで、書くのが楽しいです(笑)
おかしな文章表現や展開など、なんでも感想よろしくお願い致します。誰でも気軽によろしくです。
次回 後編
この小説を読んでくださる全ての方にありったけの感謝を