魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~   作:てりー

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第十五話 捕縛って難しいと思う

前回のあらすじ

ルカたちがさらわれました(事件じゃないよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 届いた情報をPCに移し、整理する。それをもとにフォーマットをつくり、目の前の画面に映し出された地図に打ち込んでいると、ドアがノックされた。

 

「どうだね調子は」

「グレアム隊長。お疲れさまです」

 

 俺、ティーダ・ランスターが所属するある事件を追っている。窃盗を繰り返している男なのだが、住居がどこにあるか分からずとも顔は割れているのでもうすこしで逮捕できるだろう。今は剣介やルーが聞き込みをおこなってくれている。 

俺はその情報を整理して、彼の行動範囲の絞り込みをおこなっている。もうかなりの情報が集まり、絞り込めているので、あとは逮捕するだけといったところだろうか。

 

「しかしありがちな事件ですね」

「うむ、そうだね。留守の家に入り込み、金品しめて5万円を窃盗。特に特筆すべきこともない」

 

 四軒も窃盗に入っていながら結局5万円ぽっちしか盗みださなかったのは良心の呵責からだろうか。それにしても安すぎる。

これだけ軽い窃盗だから育成課に回ってきたので、それは喜ぶべきなのかもしれないというのはケンスケの言葉だ。

 

「こちら……ルーオカ・キザンカ二等陸士……聞き込み……終わりました」

「じゃ、じゃあ報告を頼む」

「了解です」

 

 聞き込みが終わったルーからの報告がきたのだけれど、なぜか疲れきった顔をしている。聞き込み先で何かあったのだろうか。

それはともかくとして報告をしてもらう。捜査のマニュアルに従えばもう捕まえたも同然なんだが、そこは育成課。人数が少なすぎるので包囲網を形成するのに時間がかかりすぎてすまうのである。

 

「……最後に西102で17時に目撃っと。ありがとうルー。いま計算するから少し休んでいてくれ」

「りょ……了解です」

 

 ルーからの報告は決定的なものとなったかもしれない。時間まで詳細に知られているという事は、計算で時速が割り出される。それを基に行動範囲を調べていけば、かなりの部分まで割り出せることができるのだ。

 

「ティーダ。地図をもう一枚用意しておきなさい」

「あ、了解です」

 

 グレアム隊長がデバイスを差し入れて何かしら操作をしている。何をするのかはわからないがグレアム隊長がやることならば心配はいらない。

しかし地図がぐっちゃぐちゃになってきてしまった。計算式に動いている範囲の円などが書き込まれているので仕方ないが、自分だけがわかる地図になってしまっているから後で直さなければいけない。

 

「ティーダ、メニューに同期のコマンドがあるから同期しなさい」

「了解」

 

 何かの設定を終えたグレアム隊長に何かを指示される。本格的に指揮官としての訓練をするのは初めてだから、学ばなければいけないことが多い。

 

 左上にあるメニューコマンドを押し、同期と書かれた小さなコマンドを押すと、まっさらな地図に様々な円が描かれ始めた。

 

「お、おおぉぉ」

「地図作製の便利な機能だ。覚えておきなさい」

「あ、ありがとうございます」

 

 なんでも、同期する地図に書かれたもののなかで必要と判断されたものを自動でピックアップして地図に書くそうだ。必要でないものを消したり、必要なものを足したりすることもできるみたいだ。 

これがあれば局員に渡す用の地図などがすぐに制作できるので、色々な場所で重宝されているんだとか。

 

 先ほどの機能が力を発揮して、地図作製は思ったより早くできた。そして窃盗犯が住んでいるであろう場所が、50mの範囲まで集約することができた。 

 

 だから俺は目の前の画面から呼び出し用のアドレスを引っ張り出し、新人の五人を選び出す。マイクに向けて、集合するよう呼びかけた。

 

 

 

 

 

「ただいま~。ってどうしたルー」

「ルカちゃんも変だね。疲れたの?」

 

 ティーダの指示を受けて俺たちのは帰還した。先にルーの隊が着いていたようだが……なんか異様に疲れた顔をしている。何が起きたのかは分からんが、何か疲れるような事が起きたのは確かなようだ。俺があっちの担当でなくてよかったな。

 

「なんであんなに、もみくちゃにされなきゃいけないのよ……」

「あれは……あれは一種の拷問です」

 

「うーん。何が起きたのか聞きたいところだが「言えるわけ無いでしょ変態!」変態とまで言われちゃ無理だわな」

「あはは。あまり触れない方がよさそうだね」

 

 お互いの話で盛り上がっていると、グレアムさんとティーダが入ってきた。空気がピンと張り詰めるこの感覚は初めて経験するものだ。これが逮捕の前。というわけなのだろうか。

そんなことを考えていると、静かにグレアムさんの口が開いた。

 

「これが初めて育成課で動く事件だ。君達は育成課に入って、様々な事を学んだだろう。それは戦闘であり、チームワークであり、捜査の仕方でもある。だが訓練と現実は違う。何が起こるか誰も予測がつかないのが現実だ。決して慢心しないように。ケガをせぬように。君たちの吉報を待っている。……ではティーダ一等陸士、全員に説明を」

 

 一人一人の目をゆっくりと見て、一語ずつ噛みしめるように語りかけられる。

口調は部下に向けたものだが、本当に親が子を心配するような、そんな慈愛に満ちた声音が印象的だ。頑張ろう。という気が湧いてくる。

 

「では作戦の説明をする。いま地図を配るから、それを参考にして。ケンスケ以外にはデバイス用のチップも用意してあるけど、とりあえずは地図で説明するから」

 

 手元の地図には、中央の家に×がついていて、そこから円が広がっており、円周上に赤い点がついているものだ。

ティーダの説明によれば、窃盗犯が根城にしているであろう家が×で、円周上にある点が、俺らの配置。さすがにこの家、と絞り込むことはできず、円内の家ならば根城である可能性があるそうだ。

 

「上空にサーチャーを飛ばして俺が見るから、家から出てくるのを見逃すということはない。でた家に従い指示をとばすので確保して。たぶん逃げ出すだろうから、路地まで泳がせて一人が話しかけ、二人で挟み撃ちするように。そうなるように指示は出すが、心がけておいてくれ」

「「了解!」」

「じゃあ作戦開始!」

 

 

 

 

【で、いつ出てくるって?】

【たぶんもうそろそろじゃねーの。いつもこのくらいの時間帯に外にでてるよーだし】

 

 中心の円から100m。俺はその地点で壁にもたれている。俺の位置は唯一大通りに面した場所で、ここだけは絶対に通すな。という厳命を受けている。俺なら取り逃がす事はない。という判断だろう。まぁそりゃそうさな。ひいき目に見ても、育成課で基本スペックが一番高いのは俺だ。チート能力のおかげでな。

 

 ちなみに、今回の事件で関係してこなかったリーゼ姉妹は俺の代わりに幼稚園に行ってくれている。だから安心して逮捕してきなさい。だそうだ。

 

 だが暇だ。まぁ張り込みなんてこんなもんなんだろうが、何もない場所で立っているだけでよく警察官は耐えられるなと言いたい。

 

【ターゲット出現!】

【アルはつかず離れずのキョリを保って。サラは横の道からくるからそこで待機、ルカは後ろから近づいて、アルより更に離れながらね。ルーはサラのほうに、ケンスケはルカのほうに回ってくれ】

【【了解!】】

 

 突然の声に驚く。俺の場所からは離れた家にターゲットがいたらしい。地図を見てルカがどっちにいるか確認し、アルとルーから犯人がどこにいるのかおおよそ把握。最短距離を調べてそちらに向かう。こういう時に御神流は強いな、気配消せるし。

 

【ティーダ。サラとの遭遇までどれくらいだ?】

【あと40秒。ケンスケは間に合いそう?】

【すまん無理、俺も40秒はかかりそうだ】

【了解。ではアルは職質をかけて、逃げたとき、特にルカは注意して】

【【了解!】】

 

 サラのところまで行かせてはいけないので、今話しかけなくてはいけない。そして犯人はルカのほうに向けて逃げるだろう。少女が止められるとは思わないはずだ。

もうそろそろ着くはずだ。アルの真剣な声が聞こえてくる。

 

「お急ぎのところすみません。時空管理局のものですが、少しお時間を……待て!」

【ルカ! デバイス使用、許可!】

【りょ、了解!】

 

 俺がつくと、ちょうどこちらに向けて走ってくる最中だった。後ろから見るルカは明らかに緊張でガチガチだった。これでは突破されるどころかケガをするかもしれない。

 

「俺も着いたから心配すんなルカ! ……って終わりかよ」

 

 ルカを励ますつもりで叫んだのだが、いきなりの増援に驚いて、相手は膝をついてしまった。まぁ結果オーライ……かな。

 

 その後は普通に逮捕して終了。なぜ犯行に及んだかなどは俺らが調べる場所ではないから違う部署に引き渡した。

 

 

 

「でも不甲斐ないなぁ」

 

 事件が解決し、諸々が終わった後、ルカが呟いた。

いつものルカからは想像もつかない小さな声に、全員が驚く。

 

「ど、どうしたのルカちゃん」

「なーに辛気臭くなってんの~」

 

 銘々が尋ねると、沈んだ声で訳を話し始めた。

 

「だってね。私、いつも騒いでるくせに、あのとき怖かったんだ。いつも訓練で相手にしているような人よりよっぽど弱いのに、私の方が強いんだってわかってるのに……動けなかった」

 

 ぽろぽろと零れる雫は悔しさの結晶だった。顔を伏せ、両手で顔を覆っても抑えきれない心の雨。そんなルカに俺は声をかけられない。今のルカに声をかけられるとするならばーー。

 

「泣くな。キュルカス・クローバー君」

 

 優しく頭に手を置く男性。ギル・グレアム隊長しかいないだろう。管理局に勤めて何十年。そんなグレアムさんだからこそ伝えられる言葉があるし、そんなグレアムさんしか分からない事がある。

それはまだ新人の俺たちではわかり得るはずのないことだった。

 

「でもさ、ルカみたいなことって俺らもあるかもしれないんだな」

 

 ルカは少し遠くでグレアムさんと話している。そんなルカを横目で見ながらアルが呟いた。

 

「そうですね。今回はたまたまルカさんのほうに向かっただけですから」

 

 ルーもそれに同調する。もう少し経験をつめば何とかなるんだろう。びびってしまうのは経験不足にほかならないからな。それを克服したいなら場数を踏むしかない。だが育成課には時間がない……俺がなくさせようとしている。

こいつらの実力はかなり高くなってきている。相手が『鬼』でも多数で組めば何とかやれるはずだ。経験不足。この一点をどうやって解消するか。それが問題だな。

 

「みんなごめんね……たっだいま!」

 

 すっかり立ち直ったルカの顔を見ても気分が晴れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

「入れ」

 

 ここはミッド地上本部の一室。私はそこに秘密裏でよばれた。使い魔であるロッテとアリアも連れてくるなということで、機密性の高い話をされるのは確実だろう。

 

 扉をあけて中にはいると、角刈りで精力に満ちた目をしている男と、ツンツンとした黒髪で、もう一人の男より更にガッチリとした身体の男の二人だけが座っていた。

 

「して、私になんの話ですかな。ミッドの守護者、レジアス・ゲイズ中将。最強のストライカー、ゼスト・グランガイツ殿」

 

 地上本部でも特に影響力の高い二人。この二人に呼び出されるという事は、あまり愉快な話ではないのかもしれない。

 

「グレアム。君もよく知っている『鬼』についてだ」

「何が起きているかは知っているつもりですが……まさか我々に捜査をしろというわけではないですよね」

 

 冗談でもそんなことはあってはいけない。先日の事件でも経験不足を露呈したところだ。今の彼らが『鬼』に挑めば殺されるくらいの生温さではすまないだろう。

 

 静かな怒りがこみあげてくる。レジアス中将に助けていただいたのは事実だが、私の子供でもある育成課の新人を危険に晒すことを許してはならない。

 

「そう睨むな、何も青二才どもだけに任せるとは言ってなかろう。儂はな、そろそろ限界なのだ」

 

 すぅっと息を一つ吸い込む。目には見えないグレアムの闘気がドンドン増していく。

 

「ミッドの魔導師でない叩きあげの連中が殺され、それを是とするのがな。本局の腰抜けどもは管理局を巻き込んだ戦争になるから深入りするなと言ってくる。つまりは人材不足とわめきながら魔法の使えない局員は切り捨てろと言うことだ」

 

 かたや魔法が使えずとも有能であれば良いという考えのミッド。かたや魔法が使えなければ使えないという考えの本局。それぞれの主張もわかるが、これでは平行線になるのも仕方がない。ミッドにはミッドの、本局には本局の考えがあるのだ。どちらも分かるからこそ溝が埋まらないのだろう。

 

 先ほどまで目をつぶっていたゼストが口を開いた。レジアスの盟友である彼は本局の事をどう思っているのだろうか。

 

「俺はあの外道どもを許す気にはなれない。ここ数ヶ月。ミッドで犯罪が増えているのはやつらと無関係ではないだろう」

「つまり……『鬼』を滅ぼすと……? 馬鹿な。そんなことをすれば戦争だ。ミッドのみならず次元世界が泥沼に陥る」

 

 ゼストの思いを吐き捨てるように斬る。彼とはまったくの同意見だが、それと『鬼』を滅ぼすのは話が変わる。彼らほどの組織を壊滅できるわけがない。

 

 フンッと鼻を鳴らしてこちらを見るレジアス。伝えることを楽しんでいるような、嬉しがっているような、そんな感じが伝わってくる。

 

「誰が壊滅させると言った。儂はあくまでもミッドから追い払うだけだ。それならばミッドの戦力でも十分であろう」

「む……」

 

 確かにミッドだけから排除するとなれば、壊滅させるよりは遥かに手軽になる。それでも大きく戦力を使うことに間違ってはいないが。

 

「そして育成課にはゼスト隊の下に入って貰う。どうだ、悪い条件ではなかろう」

 

 なぜゼストがいるのかようやく理解した。確かにこれなら育成課はかなり楽になるだろう。しかし……。

結論を出すのを渋っていると、我慢できなくなったのかレジアスが口を開いた。

 

「それにの。これは儂やゼストの案ではない。おまえ達の後見人からの要望だぞ」

「そういう……そういうことか」

 

 やってくれる。いきなりレジアスが私を呼び出し、ゼスト隊を使ってまで育成課を巻き込もうとしたのか理解した。ルマン枢機卿の指図か。

 

 これはガイナスの指示ではない。本局を嫌っているレジアスが、本局の者に指図されたら逆の判断をするか無視するだろう。彼はその力くらい持っている。だが枢機卿相手となると話は別だ。聖王教会はミッドでも独立国家を形成するほどの勢力だ。わざわざ逆らうような真似はしないだろう。それにガイナスはこんな気遣いができはしない。

 

「では一つだけこちらの要求ものんでもらって構わないでしょうか」

「ふむ、言ってみろ」

「もう一つ部隊が欲しいのです。この戦いは大きすぎる。ゼスト隊だけでなく、普通の規模が大きな部隊と連携させてください」

「それは構わんが……活躍の場が減るぞ」

「いいです。私はそもそも活躍させようなどとは思っていませんから」

 

 そうか。と声に出しレジアスはイスから腰を浮かした。

 

「あともう一つ。いつからこの作戦は決行となるのですか?」

「一ヶ月後だな。もしその間に襲撃があれば早まるが」

「そうですか、ありがとうございます。ではゼスト殿」

「あぁ。よろしく頼むグレアム殿」

 

 話し合いが終わり、私とゼストはがっちりと握手をした。

 

 

 

 

 

「トール様。茶をお持ちしました」

「えぇ。ありがとうございます」

 

 目の前にあるのは『アヴァタラム』に所属している全隊員の名簿。今更読むまでもなく頭に入ってはいますが、それでも確認しなければ落ち着いていられないほどに問題は切迫しています。隊員が少ないことが原因ですね。 

 

 先日の大粛正で一万人を失った我らでは、今の規模を維持するのは難しくなってきています。前に奪い取った子供を産ませるための女達も活躍してはいますが、赤子が必要なわけではなく。即戦力が必要ですから意味がありません。

 

 頭をひねりますが良い考えが浮かびませんね。今の管理局襲撃をやめれば少しは状況が良くなるのでしょうが、あの方にそのような考えはありません。

今のあの方は隊員一人一人に声をかけている最中でしょうか。彼がいるからこそ『アヴァタラム』は機能しているようなものですからね。私がいる理由もですが。 

 

 そしてもう一つの懸念事項。ミッドが本格的に動き出しそうな気配があるのです。あのギル・グレアムとレジアス・ゲイズが接触したという話もあります。ですがこちらはすぐにカタがつくでしょう。すでに手はうちましたから。ま、なるようになるでしょう。今までだって全て越えてきたのですから。そう。あの方さえいれば何の問題もありません。

 

 




後編でした。
今回の感想は……視点移動は難しい! ってことです(笑) グレアムとティーダ、剣介が分かりづらくなりがちなんですよね。何か上手い方法はないものか。

さて、これで元サイトで投稿していた分は全て投稿し終わりました。
次回からは一週間に一話ずつの連載となります。
来週の水曜日あたりに更新します(不定期)ので楽しみに待っていてください

次回
なのは地上に降り立つ

この小説を読んでくださる全ての方々にありったけの感謝を。

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