魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~ 作:てりー
前回のあらすじ
俺の戦闘が終了しました
「はい、もっと大きく動く!」
訓練場に響くのは我らが育成課の最強戦力であるロッテの声だ。俺はその声に従い右に大きく展開しデバイスを銃型のデバイスを掲げる。
「いっけぇっ!」
魔力弾が撃ち出される衝撃を抑えつけ、対象に向かって打ち出す。狙いは約20m先にある空き缶だ。動きながら小さなモノを撃ち、バランス感覚や命中精度などをあげる訓練で、けっこう難しいんだなーこれが。
弾はキレイな放物線を描き空き缶を吹き飛ばした。成功だ。
「着弾確認、成功!」
「うおっし、どんなもんじゃい!」
「ナイス、アル!」
今は剣介とアリア、グレアムさんを除いたメンツで訓練をしている。どこかに行くといっていたので何か重要な案件なのだろう。
脳裏に浮かんだのは俺よりだいぶちっこいくせに俺よりだいぶ強い少年、石神剣介の顔だ。
初めてあったとき、他の奴より明らかに成長していないガキが出てきて、この課は大丈夫なのか。という疑問にぶち当たったっけなぁ。
でもその疑問はすぐに氷解した。なんちゃらバビロンとかいう全自動剣射出器の強さを目の当たりにし、圧倒的な実力差を感じた。もはや嫉妬する気もなくなっちまったけどな。
あいつの力は間違いなく管理局でも最強の部類に入る。前にきてくれた『若きホープ』高町なのはちゃんよりも強いだろう。だから俺たちの隊はあいつがいれば崩れないんだ、それは他の新人もそうだろう。
「じゃぁ次は私がいっきまーす!」
ルカが飛びだしていった。ロッテの指示にしたが……は?
「ぐっ、あぁぁっっ!」
俺たちの正面にいたロッテがいきなり吹き飛び壁に叩きつけられた……なにが、なにが起こってる?
「て、敵襲!」
は? 敵? だって……え? どこに? あれ?
「あ……」
何かが目の前に現れた。そう感じた時、俺は意識を失った。
「で、いつまでこの茶番は続くんですか? ゼストさん」
不機嫌そうに、いや、不機嫌に言葉を投げつけた。相手は管理局の超エリート。その気になればこの程度の不満でも俺を免職させることができるくらいの力を持つ人だ。
眼下には黒衣の人間に為すすべもなくやられていく育成課の人員。俺とアリア、グレアムさんにゼストさんは訓練場の全体を見渡せる小部屋からこれを見ていた。
「ふむ。今のところギリギリでも対応できたのはティーダ・ランスターだけか」
「当然でしょうが、相手はゼスト隊のフロントアタッカーでしょう。ティーダが反応できたのだって予想外ですよ」
非難を五割り増しくらいでぶつけるとアリアに目でたしなめられた。肩をすくめてサインを送り、もう一度ゼストさんに向き直る。
「ロッテに茶番をさせてまで計った育成課の強さはどうでしたか」
話の流れから明らかだが、この奇襲はすべて仕組まれた事だ。クイントさんから俺の強さは伝えられているので俺は除外し、それ以外の戦力を調べるのが目的である。
ロッテにはあらかじめ伝えてあるので、それは上手に壁に叩きつけられたフリをしてくれたのだ。
「及第点をとれるものは一人もいないな。今のままでは『鬼』に殺してくれと言っているようなものだ」
まぁ予想通りだ。俺が戦ったあいつくらいの男がでてきたら、一分もあれば制圧されるだろう。
そのためにもすぐにレベルアップをはたさなければならない。だから俺は情報の共有以外にも戦技教導隊とのコネクションのために108部隊という大部隊に協力を仰いだ……はずだったんだがなぁ。
まぁ、あのゼスト隊が鍛えてくれるというのだからこちらのほうがよっぽど良いが。
グレアムさんとゼストさんが話している何かを聞きながらテーブルに置いておいたお茶を飲み、気絶した新人軍団をロッテとクイントさんが運んでいるのを見ていると、乱暴な音がしてドアが開いた。
「わりぃ、遅れちまった」
彼の名前はゲンヤ・ナカジマ。108部隊の副隊長補佐であり、今回の連携に尽力してくれた人だ。
108部隊側の代表なのは予想通りなのだが、副隊長補佐などという地位になっていることには驚いた。たぶん108部隊の将来における隊長候補が前に殺されたから繰り上げなのだろうが。
「よく来てくれたねゲンヤ君……まずは今後の動き方を決めていこうか」
「了解」
三人の各課の代表が話しあいを始めた……俺の出る幕はなさそうだ、隊員たちの様子を見にいこう。
医務室に入ると、見事に5人が横たわっていた。中では手当てをしてくれたリズとセラにクイントさんとロッテが話している。
「あ、剣介お疲れー」
「お疲れ様ロッテ。面倒な事してもらってすまないな」
気にしない気にしないと手をヒラヒラと振っている。その姿からはダメージが一切感じられない。演技とはいえ壁に叩きつけられているのだが、それだけタフなのだろう。さすがロッテ。
「クイントさんもありがとうございました……どうでしたかこいつら」
「私たちから頼んでしてもらっていることだから、こちらこそごめんね」
わざわざこんなやり方でやらなくてもという感情が見え見えだ。ゼストさんの考えも当然理解できるのだが、というところだろう。
「育成課の子達は予想外だったわ。基礎もしっかりしているし反応も上々、予想していたより数段強いわよ」
予想が低かったのか強くなっているのか分からないが、そういう評価をもらえたのはうれしい限りだ、あまり時間もないしな。
「どうだろう、モノになりそうか?」
「リーゼさんの教導で一年もてば、一般局員を凌駕できる力はつくわ。グレアムさんの使い魔リーゼロッテ、アリアさんと言えば有名だもの」
「それほどでもあるっちゃあるね~」
良い顔をしながら茶々をいれてくるロッテを目でたしなめて先を言ってもらうように頼む。一応マジメな話だし。
「でもそれで『鬼』に立ち向かえるかと言われれば、首は縦に振れないわ。彼らの強さは常軌を逸している、それは剣介君ならわかってくれると思う」
「……そうですね」
確かにそうだ。チート能力を持っていた俺ですら互角からちょっと優勢くらいだったのだ、部隊のエース級でなければ太刀打ちできないかもしれない。いや、できないだろう。
「そんな不安そうな顔をしないで、そのために私たちが呼ばれたのだから。私たちが一人一人マンツーマンで鍛えれば、時期によるけど間に合う確率があがるわ……それでも強い相手には隊単位で戦う必要があるけれど」
あのゼスト隊からマンツーマン指導を受けた。これだけでも来年育成課に配属されたいという人間は多いのではないだろうか。
これこそが今回の連携における真骨頂なのだ。108部隊からは情報を、ゼスト隊からは武術を、それぞれの隊の得意なモノを吸収し、更に評判を獲得する。これで育成課はかなり強化されるだろう。
「あ、あとここが襲撃された場合に備えて私たちも寝泊まりするわね、よろしく」
ポットからお湯を注ぎお茶をつくりながら言われた。まぁどうせ俺は家に帰るから直接の関係はないが、アルあたりが喜びそうだな。
「あれ、じゃあスバルとギンガはどうするんですか?」
「ここに連れてくるわよ。どうせ家もバレているだろうし、それなら強い人間がたくさんいるここのほうが安全だからね」
「じゃあゲンヤさんは……」
「あの人も部隊のほうに泊まり込みになると思うわよ。相手が相手だから気を抜く暇はないわよ」
今まで情報戦というもので戦ったことがないから分からなかったが、情報戦もやはり体力を使うようだ。戦闘と違って時間がかかる部分だからなのかな。
ロッテとクイントさんがこれからの教導について話をしている。内容は全体的な面と個人の戦闘能力の両方だ。俺なんかが口出せる空気ではないため黙っていると隊員達が起き始めた。
「つっ……こ、ここは」
「お、目が覚めた。具合はどうだアル」
いち早く目覚めたアルは不思議そうに首を左右に動かした後ロッテを見て飛び起きた。
「ロッテ! 大丈夫なのか!?」
「へ!? え、えぇ大丈夫よ」
いきなり言われて驚いたのだろう。ロッテは間抜けな声を出しながら答えた。そうか、アルはロッテが攻撃されたのを一番近くで見ていたからか。
ロッテの言葉に心底ホッとしたように息をつき、ベッドにもふっと倒れ込んだ。あぁよかったーと息を吐きだしているアルは、またも何かに気がついたかのように飛び起き、俺の肩をがっしりと掴んだ。
「な、なんだよ」
「敵は? ロッテを倒した敵はどうなった」
あぁそうか、こいつらには話してないもんな。そりゃ心配するようになるだろう。だがアルが覚えているという事は他の奴もこのことを覚えていてもおかしくない。そいつらにわざわざ同じ事を話すのは面倒くさい。
「あっと、あー敵はだな……」
「う……あれ? ここは……私」
「あ、ルカも起きた」
ちょうどよくルカが目覚め、他の奴らも起きそうだったのでアルには後で話すと伝えて厨房に向かった。セラに、何か温かな飲み物でも作ってもらおう。
セラにミルクセーキを作ってもらった。疲れたりしているときに甘く温かい飲み物は気を休めるという効果がある。気が休まれば落ち着いて話を聞けるし良いことずくめだ。
さて、俺の計画の中で根幹でもあった連携は無事に成り立った。ゼスト隊まで引き出せるとは思っていなかったので、予定よりも上手くいったといって良い。次はいよいよ『鬼』との対決に向けて本腰をいれることになるだろうが、それまでに時をどれだけ稼げるかが必要だ。挑発にのらない、のせられない。ここが重要になってくるだろう。
人数分のミルクセーキを運んでいるセラは両手がふさがっているのでドアを開けると、全員目を覚ましていた。何人かは肩を回して痛みなどをチェックしているがほとんど残っていないらしい。さすがクイント・ナカジマだ。
「まぁこれでも飲んで身体休めろ」
「あぁ、ありがとう」
全員に配り終え、さてどう説明するかと考え始めた矢先にドアが開いた。入ってきたのは各部隊の隊長格、すなわちギル・グレアム、ゼスト・グライガンツ、ゲンヤ・ナカジマの三人だ。
全員ゼストさんの名前は知っているので、なぜこんなビッグネームがこんなとこに来るのだろうと呆けている。
「あ、ぜ、全員ーー」
「あぁ座ってくれて構わん。飲み物も飲んでくれたまえ。そのままの体勢で話を聞いてくれ」
空中で動こうとしたティーダの動きが止まり、元の位置にもどる。他のみんなもベッドの腰掛けた。
「ここにいる方々が気になるものが大半だろうが、まずは話を聞いてくれ。いまこのミッドの平和を脅かす不埒な輩がいる、その名前を知っている者はーー」
グレアムさんの演説が始まった。これは部隊の連携をとることを示すための軽いパフォーマンスなのだろう。ゼスト隊だけでなく108部隊に出向く隊員もいるだろうから、そのときに頼ることになるゲンヤさんもここで紹介している。
『鬼』の話になると、場の緊張が一気に高まった。奴らのやり方があまりにも凄惨だからというのも理由の一つだが、もっとも効いたのはグレアムさんと、クイントさんの娘が実際に襲われたからだ。
人間というものは身近で事件がおきないとあまり実感が沸かないというのはどこの世界でも同じなんだな。
グレアムさんの演説が終了して、次はゲンヤさんとゼストさんの自己紹介を含めた話だ。ゼストさんが先ほどの茶番を説明してくれたので俺が説明する手間が省けたのはラッキーだ。これに対する反応は沈黙だった、誰一人としてしゃべらない。全員がまだ自分の力が足りていないということが自覚できていたということだろうか。もしかしたら……いや、たぶんこの前に話した『鬼』の話にショックを受けたのだと思う。
「……君たち、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですよ……し、市民の安全を守るのは局員の義務ですから」
俺たちは管理局員だ。危険な仕事もするし、死と隣り合わせの場合もある。確かにそうに違いないのだが、果たして本当に覚悟できている局員は全体の何割なのだろうか。育成課の奴らなんてまだ新人だ。口ではなんとでも言えても、覚悟なんてものはできないに決まっている。その証拠に、いま口を開くことができたアルでさえも顔を青白くしている。
俺の横にいた影がスッと動いた。立ち上がったのはグレアムさんで、静かな足取りで全員の前に立った。
「アルベルト・クラフェルト、キュルカス・クローバー、サラミス・イーリアス、ルーオカ・キザンカ、ティーダ・ランスター、石神剣介よく聞きなさい。いまの君たちが感じている不安、恐怖それは誇るべきことだ」
え? という顔をして隊員全員の顔が前を向いた。ゼストさんは腕を組み目を閉じて、ゲンヤさんは顎に手をあてながら次のセリフを待っていた。
「自分より強いもの、自分では勝てないもの、そういったものを避けるために必要なものは恐怖だ。断言しよう、人間は恐怖により進化し、恐怖により発展してきた。だから私は君たちが『鬼』と戦わない選択肢をとることを歓迎する、安全も保証する。その選択肢は逃げではない」
グレアムさんのように死線を潜り抜けてきた人間だからこそ説得力のある言葉だ。もし本当にここで安全な道を選んでも、それがこれからの将来に影を落とすことはないのだろう。
「君たちに短いが時を一日だけ与える。これから自分がどうするのか、それをしっかりと考えてきなさい。もう一度言う、私はどんな選択をとっても君たちを誇る」
そういうと、扉を開けて出ていった。部屋の中は陰鬱な空気だけが満ちていた。
感想感謝コーナーです
『竜華零』さん、『きゃっまだ』さん、『佐天』さん感想ありがとうございました。
更新遅くなってしまいすみません。
ただ、現在ちょっと忙しいので、このペースで更新するのがデフォになりそうです。エタることはないので、そこだけはご安心ください。
色々迷惑をかけてしましますが、これからも当作品を読んでいただけたら嬉しいです。
感想いつでも受け付けております。一言だけでも嬉しいですので、何かありましたらよろしくお願いいたします。
次回 それぞれの選択
この小説を読んでくださる全ての方々にありったけの感謝を