魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~   作:てりー

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第二十二話 潜入って難しいよね、スネークさんすげぇ

前回のあらすじ

ついに開戦です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無機質で薄暗い廊下は先が見えないほどに長い。湿度が高く、不快な汗が頬を伝う。

 

「向こうは戦闘に入ったようだ。急ぐぞ」

 

 ゼストさんの短い言葉に全員が一様に頷く。向こうというのは、俺らとは行動を別にしている本隊のほうだ。この作戦について話すならは昨日まで遡る必要があるだろう。

 

 

 

 ゼストさんとの訓練のあと、育成課の面々は会議室に呼ばれた。入ってみるとゼスト隊だけでなく108部隊の人間まで揃っており、まるで最初のチーム結成のような光景である。

 

「ふ、雰囲気が重いわね」

 

 ルカがぼそりと呟いた。その気持ちはもの凄くわかる。俺は偶然『鬼』のアジトが見つかった事を知っていたが、他の面子には知らされていない。なぜ呼ばれたのかすら把握していない状況でこの空気は胃にくるだろう。

 

「さて、彼らも来たことだ。前置きを話す時間も惜しい、いきなり本題に入ろう」

 

 グレアムさんが話しながらデバイスを操作すると壁際に大きな地図が表れた。これはミッドのなかでも中心から少し離れた都市だろうか。地図の中心は赤い点で光っている。

 

「つい先日アヴァタラムの潜伏先が判明した」

 

 動揺が広がったのは新人達だけだった。まぁこの面子であれば全員が知っていて当然なのだろう、なにせ部隊長クラスが大半なのだから。

 

「な、なぜ分かったのですか」

 

 質問をしたのはティーダだった。俺もそこは気になるから質問しようと思っていたのだが、アヴァタラムとの戦闘に赴く心の準備が出来ているという事なのだろうか。

 

 ティーダの質問に一つ頷くと、グレアムさんは先ほどあった事を話してくれた。

アヴァタラムの連中が潜んでいたのは管理局ミッド地上支部陸士538部隊、つまり身内の部隊だったのだ。いきなり夜襲をかけ、戦闘員を皆殺しにし、非戦闘員を全員隔離していたようだ。部隊長を脅し、毎日の定時報告の際は彼を隠れ蓑にすることで表向きは通常の部隊として業務にいそしんでいるフリをしていたということらしい。

 

 なぜそれが判明したのかというと、定期の査察に訪れた査察官に、そのときのみ自由に動けるようになっていた非戦闘員の誰かが助けを求めたからだそうだ。

当然の事ながら査察官は殺されたのだが、その情報だけは殺害される前に本部にとばすことができたため知れ渡ることになったということらしい。

 

「アヴァタラムにしては杜撰ですね」

 

 つい本音が口をついたので周りを見回してみるが、他の奴らもうんうんと頷いているということは俺の考えに間違いはなかったという事だろう。

 

「そうだな。だからこそ確かめるのに少し時間がかかったというのもある」

 

 苦笑しながらグレアムさんが頷いた。今まで慎重だった敵だから慎重に調べていたのだ。そこにこの知らせである、実際に調査していた108部隊の人にとっては驚天動地だっただろう。

 

「とにかくだ。敵のアジトがわかった以上、のんびりする余裕はない。明日戦闘に入る」

 

 新人達が固まったのがわかった。ある意味死刑宣告ともとれるグレアムさんの言葉、その意味がわからない彼らではない。全員が全員一様に冷や汗をかいていた。

 

「作戦を説明しよう。図をだしてくれ」

 

 グレアムさんがそういうと、背後の壁に巨大な図が浮かび上がった。これは見取り図だろうか。

 

「これが538部隊隊舎の見取り図だ。赤で囲ってあるところが正門で、青で囲ってあるところが裏門だ。出入り口は屋上のほかにはこの二つしかない」

 

 グレアムさんの言葉に合わせて地図に丸印が書き込まれていく。

 

「この三点のうち、正門と屋上から本隊である地上本部連合隊が侵入し、制圧及び人質の解放をする。この連合隊の指揮官はレジアス・ゲイズだ」

 

 その人物を聞いた時、ここにいるほとんどの者が反応を示した。レジアス・ゲイズはミッド地上本部の最高司令官。彼がでるということはすなわち地上本部全体による戦争ということだ。

 

「そして、ここの隊から向こうの連合隊に出てもらう者は、クイント・ナカジマを中心としたゼスト隊だ」

 

 空中には作戦で召集されるゼスト隊の面々の顔が浮かび上がる。ゼストさん以外の全員が向こう側にいくみたいだ。

 

「次に、この地図を見て欲しい」

 

 新しく浮かび上がった地図は538部隊とは少し離れた場所にある裏通りだった。その道の端に赤いマークがつけられており、そこから薄い道が伸びていた。

 

「これは地下道だ」

「「地下道?」」

 

 ついにきたか。通常部隊をつくる場合正門と裏門の一つずつだが、それらとは別にもう一つ有事の際に脱出用として使える緊急避難経路をつくるのが慣例となっている。グレアムさんが指したのはこれのことであり、そこから突入して奇襲をしかけるのが別働隊というわけだろう。

 

「新人育成課、並びにゼスト・グランガイツにはこちらから潜入してもらう。目標は敵拠点の奇襲及び制圧だ」

 

 ゼストさんにリーゼ姉妹、加えて俺と武力に長けた面子が集まるこちらは総帥などを直接攻撃する隊ということだ。

それだけ危険度は増すので普通は隊の新人など連れていかないのだが今回の敵はアヴァタラム、何をやってくるのかまったく想像できない相手だ。本隊にいてリーゼ姉妹の管轄から外れるほうがむしろ危ないのでこちらに連れて行くということになったらしい。  

 

「さて、これで作戦の説明は終了だ。質問のあるものは? ーー決行は明日、みなよく休みをとってくれ、解散」

 

 

 

 しかしアバウトな作戦だと思う。たぶん本隊のほうは綿密に作戦をたてているのだが、別働隊のほうは地下道は一本道だしやることは単純明快なため作戦をたてる必要がなかったというのが正解なのではないだろうか。

 

 ジメジメとした地下道はそれだけで不快指数が指数関数的に上昇していく。暑いわけではないのだが汗は吹き出てくるし、それにより服が濡れるのもマイナスだ。

だが何事にも終わりはある。緑色の非常灯が薄ぼんやりと光っておりその前に鉄製のドアがある。これが終着点であり始まりでもある538部隊の入り口なのだろう。

 

「ではこれより作戦を開始する、陣形を乱すなよ」

「「了解!」」

 

 全員小声で声をかけあい扉を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

「α隊、状況はどうだ?」

「現在一階の南階段に向かっている。現在まだ敵は出ておらず問題はなにもない」

「了解。引き続き警戒しつつ先に進め」

 

 538部隊から少し離れたところにあるビルに簡易のコントロールルームがつくられていた。そこにはミッド地上部隊最高司令官であり、今回の作戦における指揮官レジアス・ゲイズと補佐役であるギル・グレアムが座っており、他にも何人もの隊員がモニターの前で突入部隊との連携をとっている。

 

「この戦争をどうみる?」

 

 演説のあと無言を貫いていたレジアスが口を開いた。その声は抑揚がなく、本当に問うているのかもわからなくさせるような声音であった。

グレアムは横をチラリと見やりモニターに視線を戻した。

 

「ふんっ、言うまでもないか」

 

 鼻をならしながら横にある茶を手に取ったレジアスは、唇を湿らせる程度に舐めて置いた。

 

「この戦い、我らの勝利が揺らぐことはあるまい。練度はわからんが兵力差は歴然、加えてこの程度の隊舎は拠点になれど城にはなれん」

 

 レジアスの言った言葉は当然だった。アジトを発見してから数日、アヴァタラム側に何か変な動きはなく、まるでまだ気づかれているのを知らないかのような状態であったのだ。

 

 もし知られていないのであれば好都合、知られているのであれば捨てたも同然の動き、更に豊富な戦力、ベストとは言えないがミッド支部でもなかなかの力を誇る部隊、なにより自分とグレアムという指揮官なのだ、たとえ予想外の事態がおきても負けることも引き分けることもないとレジアスは確信に近い予想をたてていた。

だが冷静な戦力分析をする一方で、どこか不安が胸に広がっているのも事実であった。

 

「我らが勝ちきれないとすれば」

 

 そんなレジアスの胸中を知ってか知らずか、これまで一言もしゃべることのなかったグレアムが口を開いた。そんなグレアムにレジアスは注目する。 

 

「我らが勝ちきれないとすればアヴァタラムの総帥が人外の魔物か、あるいは……」

「ふんっ、そちらの部隊はゼストがいる。やつが負けることなどそれこそあり得んわ」

 

 もはや癖に近くなっている鼻をならす動作をしたレジアスはグレアムの言葉を斬って捨てる。彼にとって唯一無二の親友にして絶対のストライカーであるゼスト、彼が一人であれば敗北はありえるかもしれない。

同様にレジアスが一人であれば敗北はありえるかもしれない。だが今回の戦いには二人とも参加している、それならば負けることはあり得ない。レジアスは予測ではなく確信をしていた。

 

 その力強く断言する言葉を聞いたグレアムは軽く笑みを浮かべ、そうだったなと言いモニターに向かいなおった。レジアスの言葉に同調しただけではない、彼も思いだしたのだ。どんなときでも自分に付き従い、ある時には盾に、またある時には矛になる存在を。

 

 ロッテ、アリア……頼んだぞ。グレアムが胸の中で呟いた言葉は誰にも聞かれるわけはなく、そのまま溶けて消えたのだった。

 

「こちらα部隊、応答願う!」

 

 張り詰めていながらも緩やかな空気を打ち消したのは一本の通信だった。現場に一気に緊張が走る。

コントロールルームにいる下士官が慌ただしく動き出して通信が繋がる。

 

「こちらコントロールルーム、何が起きた」

「現在一階南階段前、最後の部屋の前に到着した。しかし……これは……」

 

 そういってα部隊の隊長が部屋の中に映像を向けると、そこには鍬や鉈を持った老人がたくさんいたのだった。

 

 

 

 

 

「前方敵影なし、トラップの類もなしと判断、直進しますか?」 

「えぇ、行きましょう」

 

 水色のボディータイツに身を包んだ美しき女性、クイント・ナカジマは同じ部隊の隊員に答えた。彼女がいる部隊は中央突破を任されていた。クイント・ナカジマにとって中央突破は一番好きな作戦である。

この日に合わせてコンディション調整も上手くいっている、いまの自分であれば負ける相手はあまりいないとまで調子が良かった。

 

「それにしても敵がいないわね」

 

 現在彼女がいる場所にたどりつくまでに奇襲を受けそうなところは数カ所あった。そのたび注意を払って進んでいるのだが、今まで敵の一人どころか影すらも見えない。

敵が出てこないにこした事はないのだが、ここまで無防備であると逆に不安になってくるというものだ。

 

 部隊は無言で進軍していく、そんなこんなで彼女たちは誰に邪魔をされるわけでもなく二階に辿り着いた。順調すぎると言って良いだろう。

だがそんな旅は唐突に終わりを告げた、二階の中央部の部屋を開けた部隊は驚きで動きが止まったのであった。

 

「これは……」

 

 部屋には大量の老人が武器を持って立ちはだかっていた。

よくぞこれだけの量を用意していたものだ。と妙に冷静にクイントは考えた、だがその数瞬の後に、いまのこの異様すぎる事態に気がつきコントロールルームに連絡を入れたのだった。

 

「こちらβ隊クイント・ナカジマです。部屋に多数の老人がいます、どうしましょうか」

 

 手短に連絡をすませたクイントは回りを見渡した、クイント以外にこの状況に対応できている者は数人、他は余りの事態に思考停止している。だがこんな絶好機だというのに部屋の中にいる老人たちは襲いかかってこない、まるで部隊から攻撃してくるのを待っているようである。

 

 少しの余裕ができたクイントに浮かんできたのは隊舎の地図だった。この異常な部屋を迂回することはできないだろうかと考えてみるが、これ以上先に進みたいのであればこの道を進むしかない、それか一度一階に戻って他の部隊に合流するしかない。そのどちらかしか道がない事に気がついたクイントは舌打ちをした。

 

「こちらコントロールルーム、聞こえるか」

「こちらβ隊、聞こえているわ」

「そこの他に道はない、老人たちを無力化し先に進め。繰り返すぞ、老人たちは無力化だ、絶対に殺すな」 

「了解」

 

 コントロールルームからの予想通りの答えにクイントは歯噛みした。管理局という組織は殺人を基本的に容認しない、よほどの凶悪犯罪者でない限り殺害許可はおりず、捕縛しろという命令が下される。

 

 だがしかし、実際の戦闘は色々あるので誤って殺してしまうことはありえる。その際は厳重注意をうけ何度か講習を受ける程度で許されるのだが、今回の相手は老人ときた。しかも彼らが何をしたかというと公務執行妨害程度なのである。

 

 普段であればクイントはここまで狼狽しなかっただろう。相手はたかが老人、怪我をしないように抑えて拘束することは朝飯前だ。だが今回は数が多すぎる、さすがにこの人数を相手にして誰も彼も無傷ですませるのは不可能に近い。こちらの予想より消耗していた場合、殺してしまうこともありえるのだ。

 

「こうやって足止めするのか……本当にゲスね」

 

 ようやく落ち着いてきた他の隊員に向けクイントは指示をだす。あまり上手な方法ではないが、確実に安全な道をとるならこれしかない。

 

「全員用意はできた? せーの!」

 

「ぬぉっ!?」

 

「なんだ、しゃべれるんじゃないの」

 

 β隊の全員がデバイスを振り下ろすと、その場にいた全ての老人の身体を様々な色の輪っかが纏わりついた、バインドである。

 

「これで身動きはとれないわよね、扉の前にいる人だけをどかしながら進みましょう」

 

 溜め息をつきながらクイント達β隊は部屋に入っていった。そして全員が入り中腹部まで進んだところで、彼女たちは空中に放り出された。

 

 目の前の景色が上下に左右に揺れる。人の骨が砕ける音がして絶叫が響き渡る。何がおきたか理解しているものはほとんどいなかっただろう。

 

「みんな無事!?」

 

 何が起きたか理解した数少ない一人であるクイントは空中で体勢を立て直し、できるだけ瓦礫が少なく人もいない部分を選び着地した。凄まじいホコリと血の臭いにむせそうになるのを抑え、現在の状況を確認するために声をはりあげる

 

 苦悶の声をあげながらも立ち上がってくる隊員の多さに安心したクイントは辺りを見渡し、改めてこの凄惨な光景を直視することになった。

特に酷いのが老人たちである。クイント達がかけたバインドのせいで受け身をとることなく地面に落ちた人々は、折り重なるようにして潰されており原型をとどめていない者も何人かいた。

 

「β隊、被害状況を報告しろ」

 

 そのとき、クイントの耳にコントロールルームからの連絡が入った。クイントが手短に報告すると、他でも似たような事が起こっており、事前に取り決められていた三ルート全てが物理的に塞がれたという連絡が入った。

 

「クイント・ナカジマ、君は空中を歩く術を持っているはずだ。それを使い先に進んでくれ、こちらからは余剰戦力を投入し怪我人の救助に向かう」

 

 引けない戦いであることがわかっているクイントはそれに頷いた。余剰戦力はそれほど多いわけではないので、怪我人の救助や諸々に人員をさかなければならず、前に進む場合は自分の他に人数を絞らなければならない。せいぜい10人連れていければ良い方だろう。

 

「了解」

 

 正直に言えば人数はまったく足りないだろう。この先どんな敵がいるかも、どんな罠があるかもわからない。それでも前に進むしかないクイントは、メンバーを選ぶためにすでに救助活動を始めている部隊員の元に歩き始めた。

 

「ぐぁっ!」

 

 短い悲鳴が聞こえた。クイントがそちらを見やると、一人の局員の胸から銀色の鈍い光りを反射する何かが胸のなかから突き出ていた。

 

「あれっ、バレちゃったか~、まぁいいや」 

 

 刺された局員は倒れ、その後ろから現れたのは老婆だったが明らかに声が若い、その理由はすぐ後にわかる。老婆は返り血のついた顔を文字通り剥ぎ取ったのだ。そして下から現れたのは赤い髪の女性だった。

 

「ってかさ、これあんまりじゃない? 若い女の子にやらせる変装じゃないわよね~。ほらそこのお兄さんどう思う?」

 

 女性は直前の刺し殺した局員の頭をつま先で蹴り、答えを求める。当然返答はないが満足そうに笑っている。

 

どうにか立ち上がってた局員達はあまりの驚きに動けなくなり目を見張っている。クイントもその場で動かず、目は長髪に隠されて何を映しているのか見ることはかなわない。

 

「ひ~ふ~み~よ~ってやっぱたくさんいるじゃないのよ! あの優男やっぱり嘘吐きね~。まぁいいわ、ほらさっさと来なさいよ、そこの年増のおばさんにいかにも弱そうな男共」 

 

 女性の挑発にデバイスを構え始める局員達、そんな彼らを手で抑え伏し目のままクイントが口を開いた。

 

「……あなたはこの計画を知っていたの?」

「あははっ! な~に言ってんのおばさん。当然知ってたよ、この捨て駒の老害共を犠牲にすることなんて」

「あなたはそこに何かを感じなかった?」

「感じるって……あぁそうね~、とっっても愉快だったわぁ」

 

 その言葉を聞くとクイントの両腕についたデバイスが回った。そして彼女が前を向くと、その双眸が怒りの色に満ちていた。

 

「管理局局員クイント・ナカジマ、あなたを逮捕します」

「ふ~ん、面白いおばさんね。ナズナ・セイランよ、覚えておきなさい」

 

 そして二人は同時に駆け出した。

 

 

 

 

 

 先ほどから空気は静かになっている、敵の位置を早めに察知するために歩くのが遅くなっているし、何より誰も喋らなくなっているからだ。

またコントロールルームからの情報が入らないのも問題になっている。538部隊の内部に潜入したとたん妨害電波か何かわからないが通信ができない状態なのだ。 

 

 右頬から垂れてきた汗を拭った。今はそこまで影響を及ぼしていないが、いつ誰がくるかわからないこの状況は非常に神経を使い疲れる。むしろ敵がでてきてくれると嬉しいくらいだ。

 

 鈴の音のような小さな音が聞こえたはそんな時だった。

 

「T字路の左か」

 

 ゼストさんがそう呟くと全員の足が少し早めになった。これまで何度道を曲がってもおとずれなかった変化がおとずれてくれた事、それがある意味救いになったのである。

 

「罠があるかもしれん両方同時に制圧するぞ」

「了解!」

 

 T字路の目の前まで来た。どちらに誰が飛び込むのかは適当に決まり、ギリギリの場所で待機する。

 

「いくぞ。ワン、ツー、スリー!」

「うわっ!?」

 

 叫んだのは誰だったか、もしかしたら俺かもしれない。頭の上から何かが落ちてくるのを回避しようと曲がり角に飛び込んだので何か言った気がする。

 

「しまった!」

 

 誰かの叫び声に気がついて後ろをみるがもう遅かった。俺が振り向いたときには厚い壁が降りきってしまい、完全に分断されてしまったのだった。

 

 しかし誰が分断されたのか、リーゼ姉妹はいるしゼストさんもいる……まさか。

 

 その事実に気がついて血の気が引いた。この場所で、よりにもよってアヴァタラムの本拠地でティーダ達と離ればなれになってしまったのだ。

 

「ティーダ! アル! 無事か!?」

 

 壁にすがりついて思い切り叩く、びくともしないので斧剣を思い切り叩きつけるが無傷のままだ。なにか特殊な材質で出来ているのだろうか。

 

「剣介、聞こえるか?」

「ティーダ!? 大丈夫なのか?」

 

 少しくぐもってはいるがはっきりとした声が聞こえて多少安心する。だが問題は解決していない、どうやって彼らを助けに行くのか。斧剣でノーダメージということは物理耐性はかなり高いようである。

 

 だが今の攻撃は対人宝具の斧剣、対軍宝具、対城宝具を使えばまた話は変わってるであろう。そう考えてバビロンから取りだそうとしたが、ここで最悪な事に気がついた。先ほどまでの道はところどころ分岐はあったが基本的に一本道、そんな場所で強力な宝具を使おうものならば勢いがそのまま向こうに伝わってもおかしくない。

 

「おまえたち」

 

 先ほどまで何かを考えてたゼストさんが顔をあげた。 

 

「ティーダ・ランスター、アルベルト・クラフェルト、キュルカス・クローバー、サラミス・イーリアス、ルーオカ・キザンカ以上5名は来た道を戻り撤退しろ」

「なっ……!?」

 

 ゼストさんの非情な決定に耳を疑う。来た道を戻れ? 撤退しろ? この敵の本拠地でか?

 

「そんなのっ……」

 

 叫ぼうとした直後に気がついた、考えてみるとそれしかないのだ。ここでこれ以上時間を使えば上の連中に迷惑がかかる。それは部隊として行動している以上避けなければいけない。

 

「おーい剣介」

「……なんだ?」

 

 敵地にいるとは思えない不自然な軽い声に声が曇る。なにを言うのかわかってるからだ。

 

「なんていうかな……あれだ、今まで一緒にやってきた仲間を舐めるなってことさ。俺らは絶対に生きて戻る。お前こそ総帥に負けるなよ」

「そうよ! だってあのクイントさんやリーゼ姉妹に戦いを習ってるのよ、負けるわけないじゃない」

「私たちに関わっている暇が先に進んでください」

「ゼストさんたちの足手まといになんじゃねぇぞ」

「応援してるから……僕たちにことも応援しててね」

 

 本来は励ます立場の自分なのに励まされている、そんな現状に自嘲じみた笑いがこみ上げてくる。そうだ、あいつらは確実に強くなっている、簡単に負けることはないはずだ。そう考えよう。

 

「わかった……わかったよ、俺らは前に進む。後で会おう、帰ってゆっくり話そう、今は少しの間お別れだ」

 

 ゴンッと壁に拳をあてると、同じように拳をあてる音がした。言葉に出さなくてもこれで伝わるモノは伝わった。

背を向けて前に走り出すのであった。

 

 




感想感謝コーナーです
『佐天』さん感想ありがとうございます

なんかフラグが立っている気がします。折れるか折れぬかは展開次第ということですね

次回
戦闘①

この小説をよんでくださる全ての方にありったけの感謝を

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