魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~   作:てりー

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第二十六話 卒業しても仲良い関係って良いね

前回のあらすじ

ミュラーを倒しました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声は天使の音色のようだった。頭の奥底に響いてくる心地の良い音は俺の琴線に届いて――。

 

「いま何時!?」

 

 飛び起きた。

 

「いま8時30分だよ」

 

 横をみるとなのはが呆れた顔で腰に手を置いていた。最近休日に出勤がなかったから緩んでいたが、今日は育成課の出勤日なのである。

 

 起こしてくれたなのはにありがとうと言いながら5分で準備をし家をでた。

 

 

 

「なんとか間に合うか」

 

 転送ポットの順番待ちをしながら時間を見て安堵の溜め息をついた。育成課の人間にとって今日は特に遅れてはいけない日である。

 

 今日は育成課の卒業式なのだ。

 

 あの事件が終わった直後、それはもう大変だった。そもそも決着の時にはいきなりわけのわからない集団が乱入してきたからな。たしかあいつらは――。

 

 

 

---

 ミュラーが静かに目を閉じた。白装束の連中は突き刺した刃を捻るなどして反応を確かめていたが、絶命を確認し剣を引き抜いた。

しかし、ミュラーの身体が倒れることも傾ぐこともなかった。宝具の全力をその身に二回うけ、無数の魔力弾と多数の剣で貫かれたミュラーだが、その両足はしっかりと地面を踏みしめていたのだった。

 

 突然の事に驚きを隠せなかった俺だが、いくらなんでもこんな長い時間放置されれば頭の回転は元に戻る。明らかな異常事態を引き起こした奴らは血のついた剣を布で拭って帰り支度をしているが、あいつらが何者なのか、俺らはダシに使われたのか聞かなければならない。

 

「おい、おまえら――!」

「やめろ剣介!」

「ゼストさん……?」

 

 俺の問いはゼストさんによって遮られた。ゼストさんの声は明らかに警戒しており、その声色は味方に使うものではなかった。

 

 白装束の一人はうるさそうにこちらを見ると、ゼストさんに近づいた。そして目の前でデバイスを起動しなんらかの文書を見せていた。

 

「……了承した。あとは好きにやれ」

 

 文書を読むゼストさんの顔色はサッと赤に変わり、その後諦めたように目を伏せて一言呟いた。

その言葉を聞いた白装束の一人が満足そうに頷ずくと、他はミュラーの身体を持ち上げて何かの装置にいれ持ち去っていった。

その一連の流れは非常に早く俺が何かを発言することはできなかった。

 

 言葉を発することが出来たのは奴らが消えてからだった。何がどうなったか、どうしてこのような事態になったのか、そのどれもが納得いかない事だったのでゼストさんに聞いてみた。

 

「あれはなんだったんですか?」

「――時空管理局本局所属、最高評議会親衛隊だ」

「あれが――!? 噂には聞いていたけど実際に見たのは初めてだわ」

 

 聞き慣れない言葉だった。アリアは何かを納得していたようだが、そもそも最高評議会という名前を今まで聞いたことがなかった。

この反応、そして先ほどの態度からして相当の権力を与えられている事は確かなのだろうが……。

 

「最高評議会?」

「あぁ。普通の職員は知らないだろうがな」

 

 そうしてゼストさんは最高評議会について話してくれた。

最高評議会とは、まだ時空管理局が作られる前、いわゆる旧暦の時代に世界の平定に尽力した三人の人物が引退後のつくった会なのだそうだ。

そんな会だから実質的な権力は凄まじく、彼らが口を出してきた事柄はだいたいそちらに決めざるを得なくなるのだとか。

 

 先ほどのやつらは、その最高評議会子飼いの武装集団だそうだ。詳しい業務内容などは秘匿とされているらしく、また表舞台に出ることはそうそう無いので見ることは極端に少ないそうだ。

 

「あまり良い噂は聞かないから、近づかないほうが無難だろう」

 

 そう締めたゼストさんの顔は悔しさに満ち溢れ、しかめ面になっていた。 

---

 

 

 

 

 そう。最高評議会親衛隊だ。そして、あのあとレジアスさんから直接呼び出されて言われたのは今回起こったことの口止めだった。

 

 今回は作戦は成功したが、実態は負け戦だ。

たしかに総帥であるミュラーを倒し、ミッドより撤退させるという当初の目的は達成できた。

しかし、他の戦果は無いに等しく、こちらの損害に比べると負け戦同然であった。

こうして、後味が悪いままあの事件は終結を迎えたのだった。 

 

 そしてその後は更に大変だった。

事後処理はもちろんだが、全員が何かしらの負傷を抱えたため、まずは病院に運び込まれたのだ。

グレアムさんの計らいで慰安旅行に出かけたりもしたっけな。数ヶ月前の懐かしい記憶だ。

 

 だけど、事件自体の後味は悪くても、俺の目的であった育成課の株上げは大成功に終わった。

なにせ、アヴァタラムへの攻撃を成功させた実働部隊なのだ。

ミュラーを殺したという実績はもちろん、一部を新人だけで撃退したという事実も拍車をかけ、いまや上層部の注目の的になっている。

そのおかげで、俺にも来年度から違う部署で働かないかという話はきており、先日は地上本部からもスカウトされたくらいだ。

 

 そんなこんなを考えながら歩いていると育成課に着いた。中に入ってみるとそこにはリーゼロッテとリーゼアリアがいた。

 

「おはようロッテ、アリア」

「おはよう剣介、遅かったじゃない」

「寝坊たんだ、危なかったよ」

「こんなおめでたい日に寝坊なんて、早く着替えてきなさいな」

「了解です」

 

 ロッテはあの戦いで一番重傷を負った育成課のメンバーだ。ジェイドに放った文字通り捨て身の爆発はジェイドの足を犠牲にしてロッテを吹き飛ばした。

威力としては間違いなく即死だったのだがロッテは生きている。それはなぜか、溜めた魔力を暴発させようとした瞬間、サラがアイギスを持って割り込んだからである。

当然アイギスは壊れて四散したが、サラは軽傷ですみ、ロッテも右腕を失うだけで済んだ。

出血多量で生死の境をさまよってはいたが、いまは全快している。

結局ロッテは右腕を再生してもらい、五体満足で現場復帰して今に至る。

 

 アリアは一番何も変わっていないかもしれない。

魔力切れをおこしかけて病院に運び込まれたが一日の入院だけで退院し、グレアムさんと共に事後処理に勤しんでいた。

そのかたわらで育成課のメンバーのお見舞いなどもしていたので忙しいことには変わりなかっただろうが。

 

 廊下を歩いて自分の部屋に行き、黒の子供用スーツを着て食堂に行くと、予想通り育成課の隊員が揃っていた。

 

「剣介! やっときたか!」

 

 ティーダの声に右手をあげて答えて輪の中に入る。話す内容はいつもと変わらない雑談ばかり。

今日でこのメンバーが育成課として集まるのは最後だとわかっている。

だが、いや、だからこそいつものくだらない会話をしているのだ。いまこの時をいつもと同じ素晴らしい時間とするために。

 

「だから俺はこうやって世界に飛び出すわけよ。そうすりゃいろんな女の子と仲良くなれるってもんだ」

 

 アルベルト・クラフェルト。通称アルは、あの戦いの後にある地上部隊にスカウトされたらしい。

 その部隊はアルのことを将来の幹部候補生としてみており、本人も満更でもなく、その部隊に決めたそうだ。

 

「はぁー、あんたはブレないわね。でも世界に飛び出すってのはわたしも賛成。色んな世界を見たいわ」

 

 キュルカス・クローバー。通称ルカは、あの戦いで成長した一番の存在かもしれない。

ここ一番の度胸がつき、どんな状況下でも己を貫く強さを手に入れた。

そんな彼女はミッドにおける恵まれない子供達のために活動する部隊に入るそうだ。

 

「そうだね。僕も自分の力を鍛えるよ、そしてアイギスに見てもらうんだ」

 

 サラミス・イーリアス。通称サラは、あの戦いの最後で相棒であるアイギスを亡くした。

インテリジェントデバイスは現在も修理中であり修理がいつになるかはわかっていない。

だが、彼自身はいつアイギスが帰ってきてもいいように己を鍛えると非常に前向きなようである。

アルとはまた別の地上部隊からスカウトを受け、そこに入るそうだ。

 

「ははっ、サラも見てもらう人がいるんだもんな。俺もティアナに顔見せできるように頑張らないと」

 

 ティーダ・ランスター。全員のまとめ役でもあったティーダは様々なところから誘いを受けたそうだ。その中で彼が決めたのは首都航空隊だそうだ。

まごうことなきエリート部隊であり、一番出世であることは間違いないだろう。

ティーダはそこで指揮官と執務官の両方を目指していくそうだ。険しい道だが、ティーダならできると誰もが信じている。

 

「私もですね。皆さんと同じようにこれからを頑張りたいです」

 

 ルーオカ・キザンカ。通称ルーは本局の部隊にいくそうだ。

様々な軋轢がある陸と海、その問題を見極めて、融和を図りたいという思いもあると言っていた。

海もエリートが多いので大変になるだろうが、頑張れると信じている。

 

「ほんと、全員変わらないな。でもだからこそ、皆と会えて良かった」

 

 そして俺、石神剣介はというと、一番変わらなかった。来年も育成課で新人を指導しながら自分も指導されるという立場になる。

移動しなかった理由はいくつかあるが、一番はまだまだ自分の力が弱いということだろうか。

今回の功績でこの隊にはもっと様々な仕事が回ってくるようになるだろう。それを享受し成長する。そうすることで様々な力を得ることが出来ると判断したからだ。

 

「「俺もそう思うよ!!」」

 

 そして俺らはスーツを着て体育館で卒業式にでていた。壇上に立つのはグレアムさんだ。

 

「よくぞ一年間訓練に耐え抜いた。よくぞ一年間厳しい職務を全うした。この経験は君達の血となり、肉となるだろう。

そしてこれからの人生、道はバラバラになり、暗い何かで道が見えなくなることもあるだろう。

だがその時は仲間を、そして私やリーゼ達を思い出して欲しい。君達は最高の仲間と最高の訓練官に講義を受けたのだ。

これからどんなことがあっても君達ならばやっていける。己を信じよ。君達にはそれができる力がある。

では、諸君の薔薇色な未来を期待して、ここに新人育成課、第一期生の卒業式を終える!」




新人育成課編もついに終了です。
なんとか終わることができました。

もし良ければ感想をいただけると嬉しいです。
嬉しいお言葉も批判も全て執筆意欲につながりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、また次回もよろしくお願いいたします。

次回
幕間

この小説を読んでくださる全ての方にありったけの感謝を
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