魔法少女リリカルなのは~チートな主人公が頑張っている物語~   作:てりー

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第三十二話 かつての敵と共に戦うのってテンションあがる

前回のあらすじ

最高評議会親衛隊に入って任務を行いました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見渡す限りの砂の海、煌々と照り付ける灼熱の太陽、吹き付ける暴風が顔を覆う荒野、そんな砂漠に俺はいた。

 

「こんな格好もたまには役に立つんだな」

 

 身に着けた白装束は直射日光と砂嵐から身を守る役目を担っていた。この服が無ければ身体は焼かれ、砂まみれになっていたことだろう。

今日のミッションはこの何もない星で行われるのであった。

 

 手元の端末を操作するとホログラフィックの映像が浮かびあがる。そこには今日のミッションの概要が記載されていた。

ミッション名は『アヴァタラム掃討作戦』だった。

 

 総帥亡き後、アヴァタラムは弱体化の一途を辿っていた。

彼らがミッドから撤退した後、あの事件のカウンターとして管理局が大規模な摘発を行った。その結果、複数の支配地域を攻撃され、抵抗するも戦力が足りず放棄。結局は戦闘員を集めてとある管理外世界に逃げ込むことになった。

 

 管理局が解放した地域はほぼ全てが管理局の保護下となったが、いかんせん万年人手不足なため抱えきれない地域もある。俺がいる星はそんな地域の一つであった。

 

 資源も何もないこの星には小さな集落を一つ残すのみとなっており、今回のミッションは、そんな管理局の正規部隊の摘発から零れた集落を俺らの手で掃討する仕事だった。

 

「しっかし、わかりにくい位置にあるもんだ」

 

 集落は小さいうえに入り組んだ場所にあり、相当わかりづらい。見つけるにも一苦労だ。

俺はその集落が本当に存在するのか確かめるために前入りしたのだが、停泊している宇宙船からも2日ほど歩く羽目になった。

 

 他のやつらは俺が転送位置を固定すれば、その情報をもとにすぐ近くに転送されるため、こんな苦労を負うことはない。うらめしさを感じながら吹きさらしの山を越えたあたりで冷や汗が出始め、同じようないくつかの山と谷を越えたところで足は鉛のように重くなっていたのだった。

 

 大小様々な砂の山を越え、深い砂の谷を渡るとその集落はあった。

元々は大きな集落なのだろう、沢山の家が立ち並んでおり、小規模な街の体裁を保っていた。

この荒れ果てた星には似つかわしくない文明が、そこにはあったのだ。

 

 だが、そんな集落は見かけだけだったようだ。

家には人が住んでおらず、砂嵐によって倒壊寸前の家屋がほとんどだった。

中心部に向かうと少しずつ人が住んでいる気配が漂ってくるのだが、死臭とでも言うのだろうか。この集落はもう終わっている、そんな匂いが充満している場所だった。

 

 昔は活気があったのであろうお店も今は崩れかけ、どうやって生きているのかもわからない人たちがそこにはいた。見かけるのは老人ばかり、それも一様に死んだような眼をしていた。

 

 こんなところの調査をしても無駄だったかな。

そう思いながら歩いていると、誰かの楽しそうな声が聞こえた。似合わない声に興味を惹かれて歩いていくと、数人ではあるが遊んでいる子供たちがいた。こんな死の地域にも、いくらかの救いはあるようだった。

 

「待ってよー!」

「あはは、俺の勝ちー!」

 

 終わりの見えたこの土地にあっても、子供たちの声は活気に満ち溢れていた。

俺の合図がありしだい、この地は掃討される。それはこの子供たちも例外ではない。

そんなことは分かっているが、どうしようもない死の集落で、それでも元気よく遊ぶ子供たちに目を奪われる自分がいた。

 

 ――風の音に、わずかに別の気配が混じった気がした。

 

「血も涙もないと噂の最高評議会親衛隊でも子供たちの笑顔にはかないませんか?」

 

 瞬間――思考が切り替わった。

後ろに飛ぶと同時にバビロンから双剣を取り出し、いつでも戦える状態となる。そこまでしてからようやく敵を視認すると、声をかけてきた男は涼やかな顔で片手を挙げていた。

緑色の髪をした中肉中背の優男、記憶の引き出しを掘り起こすと一枚の写真が浮かび上がった。

アヴァタラムの大幹部、トール・マーグリスだ。

 

「まさかこんなところで会えるとは思ってなかったぞ、トール・マーグリス」

「おや、かの有名な石神剣介さんに覚えていただけているとは、私も捨てたものではないようです」

 

 にっこりと微笑むトールの声からは敵意を感じない。それでもやつの一挙手一投足には注意を払うべきだと考える。

アヴァタラムの大幹部、トール・マーグリス。戦闘能力は未知数だが、戦闘力に重きを置く組織で幹部を担っている男なのだ、警戒はしすぎる程しておいた方が良い。

 

 奴との距離は5m程、遮るものはなにもない。

何かを持っている素振りはないが、アヴァタラムは質量兵器上等の敵なのだ、銃、手榴弾、暗器、様々な可能性を考慮しておくべきだろう。

 

 だが、そんな警戒は、

 

「それでは一緒にお茶をしましょうか」

「……は?」

 

 のんびりとした声で打ち砕かれた。

 

 予想だにしていなかった提案に素っ頓狂な声を出すと、トールはくつくつと面白そうに笑っていた。

彼はそのまま近くにあった岩に腰を下ろすと、傍らに置かれたバッグから水筒と紙コップを取り出し、飲み物を入れて差し出してきた。

 

「どうぞ、私の一番好きな紅茶です。本当は暖かい方が香りが立って好みなのですが、こんな星ですからアイスティーにしてみました」

 

 毒気を抜かれた俺は警戒心を保ちながらも差し出された紙コップを受け取った。

もちろん飲む気はないが、少なくとも今のトールからは戦う意思が感じられない。それなら話を聞いてみても良いだろう。

 

「飲む気、ないんですね。信用がなくて残念です」

「仲間ごとビルを爆破するような奴の言うことは信用できなくてな」

 

 残念そうなトールに向かって吐き捨てるように言うと、仕方ないという風に軽く肩を竦めてみせた。

 

「それで、なぜ俺に話しかけてきた? この町のために命乞いをする達でもないだろう」

「私がこの町を? なぜですか?」

「この村はまだアヴァタラムの領地だろう? 領民を助けるみたいな殊勝な心がけでもあるのかと思ったが――質問した俺が馬鹿だったようだ」

「えぇ、残念ながら。私たちの組織は力こそ全て、戦う力のないこの町が淘汰されるのは自然の流れです。感傷などありません」

 

 答えたトールの顔は心底不思議だと言いたげだった。

ここまで当たり前のような反応をされると、こっちがおかしな質問をした気分になる。

やはりこいつらは人でなしのようだ。

 

「私がこの町に来たのはあなたと話したかったからですよ、石神剣介さん」

「俺と?」

「えぇ、私の知る限り最年少で最高評議会親衛隊に入った貴方にです」

「なるほど……いろいろ聞きたいことはあるが、なぜ俺が親衛隊に入ったことを知っているんだ」

「私には情報網がございますので」

 

 俺の当然の疑問はにっこりと笑いながらシャットアウトされた。

 

 なぜ俺が最高評議会親衛隊に所属したことを知っているのだろうか。ここは徹底的に隠された組織のはずだ、存在を知っていても誰がいるのかはトップシークレットと聞いている。

誰か協力者がいるのか、それとも最高評議会自体が情報を流しているのか、どちらにしてもろくでもないルートには違いない。

 

 情報の出所を考えて動きの止まった俺に、トールが更に話しかける。

 

「さて、私が知りたいのは総帥『ゲルト・ミュラー』の居場所です」

「総帥の居場所――?」

 

 アヴァタラム総帥、ゲルト・ミュラー。化け物じみた強さとタフネスを兼ね備え、ゼストさん、アリア、俺の3人で挑んでも勝ち切れなかった相手だ。

だが、彼はそれこそ最高評議会親衛隊に四方から剣で突かれ、絶命したはずだが。

 

「えぇ、総帥は最高評議会親衛隊(あなたがた)によって殺された。と考えるのが自然ですが、その死体はどこにありますか?」

「それはあの時、最高評議会親衛隊(やつら)が持ち帰ったが――そういうことか?」

「その通りです。総帥ほどのお方を討ち取ったのであれば管理局内でもっと話題となって良いのでは?」

 

 トールの台詞は的を得ていた。アヴァタラムは一般局員には馴染みの薄い存在かもしれないが、幹部層には良く知られた存在だった。その総帥を討ち取ったとなれば、もっと大々的な話になってもおかしくないのに、総帥のその字も発表されていない。その後の大摘発も、そういう犯罪組織があるという話までしか出ていないはずだ。あの事件そのものの解決に気を取られて総帥の影響力まで気が及んでいなかったが、明らかにおかしい話だった。

 

「と、言うわけで、あなたならば知っているかもしれないと思ったのですが、当てが外れましたね」

 

 考え込んだ俺の姿を見て、俺が何も知らないことを悟ったのだろう。

トールはそう言うと紅茶を飲み干した。その表情からは何も読み取れない。

 

「では、話を変えましょうか。あなたが随分とご執心の高町なのはさん、彼女が敵に落とされた理由は――」

 

 なのはの名前が奴から出た瞬間、頭が沸騰したように熱くなった。

 激情に任せ、トールの周りを囲むようにバビロンを展開させて剣を射出する準備をした。俺が合図をすれば数秒と立たず、トールの存在を消し去るだろう。

だが、そんな黄金の剣の牢獄を前にしても、トールは平静を崩さなかった。

 

「何か知っているのか? それなら話せ」

 

トールは眉一つ動かさず平静を保ちながら手元の紅茶を一口含んだ。動じない姿はさすが幹部というべきだろうか。

だが、今の俺にはそんなことは関係がない。

 

「もう一度言う。知っていることを話せ」

 

 話せ、の部分を強調して伝えると、トールはやれやれと言った風に息を吐いた。

 

「彼女が貴方のアキレス腱というのは情報通りでしたね。それでは、取引といきませんか?」

「取引なんてしない、死にたくなければすべて俺に話せ」

 

 トールの言葉を切って捨てた。

取引なんてまだるっこしいことはしていられない。

 

 すると、トールはもう一度息を吐くと。

 

「理性のない獣と話すのはお断りです。好きにしなさい」

 

 そう言い切るのだった。

 

「なんだと?」

「言葉すらわからなくなりましたか? やれるものならやってみろ。そう言ったのです」

「おまえ……!」

 

 再度冷たく繰り返される言葉に頭が沸騰する。そのままトールを挽肉にしようと思い立ったが、理性がなんとかそれを妨げた。

いまトールを殺すのは簡単だが、それには何の意味もない。

 

 舌打ちをしてバビロンを消す。トールは当たり前だという風に紅茶を楽しんでいた。

自分が殺されるかもしれない状況下で、当たり前のように紅茶が飲めるメンタルはさすがといったところか。

 

「さて、聞く準備が出来たところでもう一度話しましょうか。私と取引をしませんか?」

「その前に聞かせてくれ、お前はなのはが落ちた事件について何か知っているのか?」

 

 あの事件は親衛隊のアクセス権限を持ってしても情報を集めきれなかったのだ。

トールだとしても、何をどれだけ知っているのか怪しいところだ。

そう言うと、トールの顔が笑顔に戻った。

 

「詳しくは何も」

 

 当然という風に笑いながら言うトールに多少イラつくも、先ほどの件を思いかえして冷静さを取り戻す。

 

「わざわざそんなことを言うということは、確定ではないが、点と点が繋がりそうな情報を持っている……ってことか」

 

 そう返すと、トールのにこやかな笑みの奥で、瞳が光った気がした。

 

「えぇ、今のあなたの方がずっと素敵です」

「その言葉が今までで一番怖いと思ったんだが気のせいか?」

「ご想像にお任せします。さて、それでは協力してもらえる、ということでよろしいでしょうか」

 

 改めての問いに少し間を置いた。これは親衛隊から見たら裏切り行為となるだろう、彼らにバレれば面倒なことになるかもしれない。

だが、それでも、俺の目的は一つだ。俺の手で大切な一を守ること。そして、その一を危ない目に合わせた奴に俺の手で制裁を加えることだ。

それに一番近いのは――。

 

「あぁ、協力しよう」

 

 俺はトールの誘いに乗ることにした。

 

「見込んだかいがありました。では、私からは高町なのはさんが負けた敵についてお話ししましょう。その代わりにあなたには総帥の居場所を探っていただきたい」

「ちょっと待った。こちらは組織の裏切りに繋がりかねない取引だ、同じ条件というのはフェアじゃない。もう一つ、なぜお前たちがあの事件を起こしたのかを聞かせてもらおう」

 

 あの事件、とはアヴァタラムと俺らが直接対決をした事件の事だった。

あのとき総帥にも理由を聞いたが、彼は知らないと言っていた。この組織の戦略担当はトールのようだし、彼ならば知っているだろう。

 

 トールは一瞬の間の後に頷き、あの事件を起こした理由を話し始めた。

 

「いいでしょう、あの作戦について知っていた方が調査もしやすい。――ですが、その前に一つ確認を」

 

 トールは紅茶を一口含み、わずかに目を細めた。

 

「あなたは管理局と聖王教会の関係をどこまで理解していますか?」

「詳しくは知らないな。協力関係にある、くらいだ」

「えぇ、その認識で間違ってはいません」

 

 軽く頷いたトールは、どこか楽しげに続ける。

 

「現在の次元世界は、管理局と聖王教会、この二つの柱で成り立っています。管理局が実務、教会が信仰。役割分担としては実に合理的です」

 

 そこで一度言葉を切り、こちらを見た。

 

「ですが――それが『常に正しかった』とは限りません」

「……どういう意味だ」

「簡単な話ですよ。組織が大きくなれば、必ず中に異物が混ざる」

 

 トールは肩を竦める。

 

「教会には、宗教勢力としての成功では満足できず、国家を再興したいと考えている方々がいました。管理局には逆に、教会そのものを危険視している方々がいる。表向きは協力関係、ですが、中身は決して一枚岩ではありません」

「……対立してる、ってわけか」

「えぇ、表層には出てきませんが」

 

 さらりと言い切る声音に、妙な現実味があった。

 

「そこで我々の出番です」

「アヴァタラムか」

「えぇ。管理局に不満を持つ者たちの集まり――それが我々です。ですが、正面から管理局に挑むには力が足りない。だから、利用させてもらいました」

 

 トールは、にっこりと微笑んだ。

 

「同じく管理局を嫌う、教会の過激派を」

「……なるほどな」

 

 点と点が、ゆっくりと繋がり始める。

 

「あなた方と衝突したあの事件。あれは単なるテロではありません」

「じゃあ、何だ」

「選別ですよ」

 

 即答だった。

 

「まず管理局の人間を狙ったのは、教会との協力に反対する連中を排除するためです。露骨にやれば気付かれるので、多少、『別の法則性』を混ぜましたがね」

「……ブラフか」

「えぇ。結果として、内部のバランスは崩れました。あとはミッドでテロを起こして不信感を煽る。そうすれば、教会側の発言力は自然と強まります。そして、結果を出した私達を教会は無視できなくなる」

 

 トールは、そこでわずかに息を吐いた。

 

「……まぁ、その前にあなた方に潰されてしまいましたが」

「当然だな」

「えぇ、本当に。実に残念です」

 

 残念と言いながら、その声に悔しさは一切なかった。ただ、事実を述べているだけだ。

 

「もし総帥が生きていたら、どうするつもりだった」

 

 気付けば、そんな言葉が口から出ていた。トールは少しだけ考える素振りを見せてから、あっさりと答える。

 

「ミッドで暴れてもらいますよ。都市の一つや二つ、簡単に吹き飛ばせる方でしたからね」

「……っ」

「十分に混乱が広がったところで、教会が仲裁に入る。実に分かりやすい構図でしょう?」

 

 何でもないことのように語られる内容に、背筋が冷える。

 

「心底、止めておいて正解だったな」

「えぇ、その点については同意します」

 

 トールはあっさりと頷いた。そこに善悪の感情はない。ただ、合理だけがあった。

 

「さて――前置きはこのくらいにして、本題に入りましょうか」

 

 トールはカップを軽く揺らしながら、こちらを見据える。

 

「あなたが知りたい、高町なのはさんの件についてです」

 

 その名前が出た瞬間、空気の温度がわずかに変わった気がした。

 

「先ほど申し上げた通り、私はこの件について確定的な情報は持っていません。ただ、類似した事例を一つ、風の噂で耳にしています」

 

 嫌な予感が、背筋を撫でる。

 

「それが、あなたもよく知る、ゼスト・グランガイツの死。そして、ゼスト隊の壊滅です」

 

 思考が、一瞬止まった。

ゼスト隊の壊滅。それは地上本部にとっても、そして俺個人にとっても、あまりに重い事件だった。

だが――それが、なのはの件と繋がる?

 

「……どういうことだ」

 

 絞り出すように問いかけると、トールはわずかに目を細めた。

 

「ゼスト隊の件についても、詳細な記録が残っているわけではありません。ですが一点、どうしても看過できない違和感がありました」

 

 淡々とした口調のまま、トールは続ける。

 

「魔法の行使に関する異常です」

 

 その一言で、胸の奥がざわつく。

 

「噂レベルの話ではありますが、ゼスト隊の面々は魔法を使用できず、そのまま壊滅したと聞いています」

「魔法が……使えなかった?」

 

 思わず反芻する。

 

 ありえない話だ。この世界において、魔導師が魔法を使えないなど――。

 

「えぇ。そして、その状況に酷似した現象が、もう一件確認されています」

 

 わかっていたが、それでも、聞かずにはいられなかった。

 

「……なのはか」

「その通りです」

 

 即答だった。

 

「高町なのはさんもまた、魔法を発動しようとして――消えた。そう聞いていますが、違いますか?」

「……あぁ」

 

 あの時の話を思い出す。

爆発から離脱するために移動魔法を使ったはずが、途中で霧散した、と。

 

「間違いない。魔法は発動した。だが、途中で消えたらしい」

「やはり」

 

 トールは小さく頷いた。

 

「通常、魔法が『消える』などという現象は起こり得ません。発動失敗ならまだしも、成立した術式が途中で崩壊するなど、理論上も説明がつかない」

 

 そこまで言って、わずかに口元を歪める。

 

「だからこそ――そこに何かしらの共通要因がある、と考えるのが自然でしょう」

 

 静かに断言されたその言葉は、やけに重く響いた。偶然なのか? いや、現象として再現されている。

ゼスト隊の壊滅。

なのはの怪我。

点だったはずの二つが、今、一本の線で繋がり始めている。

 

「……なるほどな」

 

 ゆっくりと息を吐く。

今まで追っていた情報とは、まるで別の角度からの一手だった。

 

 なのはの周辺、交友関係、戦闘履歴、そういったものばかりを洗っていた。

だが、そもそも『現象そのもの』を軸に考えるという発想はない。むしろ、盲点だった、と言っていい。

 

「トール、助かった。かなり有益な情報だ」

 

 素直にそう言うと、トールはいつもの調子で肩を竦めた。

 

「お役に立てたのであれば何よりです。では、総帥の件――よろしくお願いしますね」

「あぁ。何かわかれば連絡する」

「期待してお待ちしております」

 

 軽く手を振りながら、トールは踵を返す。

 

 その背中を見送りながら、思考を整理する。

魔法が消える現象。

再現性がある異常。

そして、それに巻き込まれた二つの事件。

調べるべき方向が見えてきた。




感想感謝コーナーです
『○○○はCOOLに去るぜ』さん感想ありがとうございました。


大変ご無沙汰しております。
4年間もお待たせし、申し訳ございません。

今回の話は説明会です。次回と合わせて2話構成となりますので、もう1話は週末〜週明けあたりに更新予定です。
楽しみにしていただけると嬉しいです。

もし良ければ感想をいただけると嬉しいです。
嬉しいお言葉も批判も全て執筆意欲につながりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、また次回もよろしくお願いいたします。

次回
新たな罪



この小説を読んでくださる全ての方にありったけの感謝を
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