FT 火竜の軌跡 -再-   作:元桔梗@不治

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第11話 火竜と幽鬼

 幽鬼の支配者、本部。

その道中には黒マントの集団がひしめき合って、各々武器をもち、敵を待ち構えていた。

だが、想像していた桜髪の少年は現れない‥否、現れはした。だが、その姿は人のそれではない。

 

 -紅蓮滅爪 -火竜の刃尾 -火竜の炎翼

 

 空に浮かぶその姿は異様としか言いようがない。

炎を使って竜を模した爪を手脚に纏い、背中には炎の翼、その下には炎の尾が生えている。

 

 

  アレは人じゃない―――竜だ。

 

 

 マスタージョゼによって象られた魔法の人形たちは、自分たち以上の魔と威圧(プレッシャー)を感じ、その動きを一瞬止めた。

その隙だらけになった瞬間から‥火竜(サラマンダー)と呼ばれる男の殲滅劇が始まった。

 

「火竜の翼撃――と、剣角!!」

 

 体中に炎を纏い、両翼が燃え広がった状態で突撃をする…真っ直ぐ突き進んだだけだが、直撃した幽兵(シャイド)は蒸散し、当たらなかった兵士も熱波と衝撃波の二重攻撃で吹き飛び戦闘不能になっていく。

 

「ジョォォゼェエエエエエエエエエエエエエ!!!」

「馬鹿なッ!? くそ、ジュピターを用意しろ!」

 

 幽兵に命令し、ギルドに備えられた砲門が開き、中から魔導収束砲ジュピターが現れた。

だが、遅い。アレは溜めるのに15分、発射するのに十数秒の間が必要だ。

 幽兵が壁にならない以上、ナツが砲門の内側に飛び込む方が早かった。

砲門の奥には巨大な魔水晶が鎮座しており、それに魔力を溜め、収束・放出することで砲撃としている。つまるところ、これが無ければ撃てないのだ。

 

紅蓮竜尾(ぐれんりゅうび)――」

 

 両腕と翼、纏っていた炎を刃尾に収束した。

収束された炎はその熱と大きさを増し、巨大な竜の尾となった。

 

炎斬(えんざん)!!!」

 

 身体を一回転させ、炎の尾が部屋を一周し…幽鬼の支配者の本部を、魔水晶ごと斜めに両断した。

上部が斜めに落ち、空が見える‥ナツが見上げる空には、一人の男が浮いていた。

 

「…よぉ、マスタージョゼ」

「やってくれましたね、火竜(サラマンダー)!!!」

「あぁやったよ。後はお前をぶちのめせば、あいつ等が来ても意味はなくなる」

 

 改めて竜椀、炎翼を展開し、火竜と言われても謙遜ない状態へとなった。

さっきよりもずっとずっと強い熱を発するその炎には、妖精の尻尾(フェアリー・テイル)を巻き込まないナツの覚悟が現れていた。

 

「始めようか」

「えぇ、此処までしてくれたんだ…塵も残さず消える覚悟はあるんだな、オイ!!!」

「てめぇこそ、灰も残らないほど焼滅させてやるよ!!!」

 

 上空で魔法を組み立て始めたジョゼに、ナツは勢いよく、真っ直ぐ飛び込んだ。

狙うのはジョゼ‥ではなく、一瞬で組み立てられようとしている、手元の魔法陣ッ。

 

「なっ!?」

「オ、ラァ!!」

 

 炎の竜椀で魔法陣を掴み(・・)破壊(・・)した。

次に刃尾を振るうが、下がられて外れた。

 

「この、目茶苦茶しやがる!!」

「チッマダマダァ!!」

 

 腕を、足を、尾を、翼を振るいジョゼを攻撃するナツ。

対するジョゼは避け、隙を見ては魔法陣を組み立てようとし、ナツに破壊される。

即効魔法を使うが、直線的なものは避けられ、威力が低いモノは炎によって蹴散らされた。

一見すればナツが押しているようにみえるが‥実際有利なのはジョゼだった。

 

(一発、喰らっちまえば終わりだッ)

 

 ガジルとの戦闘で思った以上に疲労しているナツ。

魔力は本部に来ながら、ある程度回復してきたが、体力や気力はそうはいかない。

 ぶっ続けでの戦闘がもう半日以上。それも相手は手練れや数が多く不利な状況ばかりで、大技の連発‥常人ならとっくに倒れている。

竜の体に作り替えると言われる特殊な魔法と、ギルドを想う強い気持ちの二つによって、今のナツは支えられていた。

 対するジョゼは体力・気力・魔力全てがパーフェクトの状態。実力もマスターと言われるだけあって高く、魔法の技術は言わずもがな。

戦況はナツに不利…それでも。

 

「負けらんねぇんだよ‥だから、とっとと消えろ」

「なんつー冷てぇ目をしてんだ、ホントに餓鬼かてめぇッ!」

「ハッそんな邪悪な魔力を発してるアンタにだけは言われたかねぇな!!」

 

 攻め続けてくるナツの攻撃を避けていたジョゼは、埒が明かないと考え戦い方を変えた。

魔力を滾らせ、身体能力を向上‥ナツに向かって拳を振るった。

 

「ガッ!? 痛ぇな、クソっ」

「おら、沈め!」

「チッ格闘戦も得意なのか」

「当たり前だ、そのくらい出来ずに、この歳でマスターなどやってられるか!!」

 

 ジョゼはマスターの中でも若い。

相応に努力を積み重ねてきたのだろう…格闘技術の高さ、魔導技術のレベルがそれを物語っていた。

 

「そんだけのことが出来るんなら、そこまで自分を高められるのにッッ」

「グッ、ガ!?」

 

 拳を受けつつ、ジョゼの襟首を掴み勢いよく引き寄せ、額と額をぶつけ合った。

 

「何でこんなクソみたいなことしか出来ねぇんだよ!!! 人間だろ!?語れよ!! 魔導士だろ!?実力で勝負しろよ!!!」

「――ッうっせぇんだよ青臭いクソガキが!!!」

「グァッ」

 

 至近距離で怒鳴り散らしたナツを、怒鳴り返しながら蹴って遠くに追いやった。

 

「ハァ、ハァ‥」

「んなクソ真面目にやってて得られるモンなんてなぁ、大したことはねぇんだよ! 何事にも裏道がある、狡いやり方がある、そっちの方が利益が高いんだよ!ならそっちを選んで何が悪い!?楽な方を、自分が得する方を選び続けることの何がオカシイってんだ!?ア゛ァ゛!?」

「悪ぃに、決まってんだろうが‥」

「ア?」

 

 息絶え絶えの状態になりながら、ナツは強くジョゼを睨み付けた。

 

「自分の為に誰かを傷つけ、搾取する。悪いに決まってんだろ! それに、楽な方を選んだ?違うだろ、アンタただ逃げただけだろうが!!」

「…逃げた、だと?」

「あぁそうさ。正直言ってウチの連中は全員頭のネジがどこか吹っ飛んでる! 仲間のためにこれからを犠牲にしかねない奴ばっかりだ!」

「何が言いたい」

「…お前の狙いは、ルーシィだよな?」

「…」

「無言は肯定とみなすぞ‥まぁルーシィが入ってきて、最近依頼をこなしてそこそこ経った。ルーシィの知名度はともかく、ウチのギルドの知名度は高い‥アイツ外見いいからな。憶えられやすい。 まぁ売れること自体は悪いことじゃねぇ。そのうちルーシィ自身が指名される日も来るだろうよ…今回は、嫌な指名だったみたいだがな」

「何のことだ?」

「しらばっくれんなよ。ルーシィ、あいつ本名全部明かさないから不思議だったんだ‥で、悪いとは思ったが、ちょっと調べさせてもらった。そしたら、あいつはハートフィリア家のご令嬢だった。しかもルーシィの母親は死んでて、ルーシィは一人娘…後継ぎがいないんじゃあ、連れ戻すっきゃない‥そこで依頼したんだろ、お前らに」

 

 だが、正規の方法では何時までかかるかもわからない上、ルーシィ自身が強く断れば無理なのだ‥そこで、目を付けたのが幽鬼の支配者。

妖精の尻尾と同格と言われるギルドな上に、金次第で何でもしてくれるという噂‥これだけそろってれば十分だろう。

 

「‥あぁ、大正解だ! この依頼が成功すればウチのギルドには多大な金が入る。そして、お前らからハートフィリア家との関係も消える!!最高だ!!!」

「‥正直いって最低だな。一人娘の自由を奪って、家のことしか考えてねぇルーシィの親父さんも、それを非道なやり方でやるアンタらも、気に食わねぇッ」

「だったらなんだ!?これは『依頼』だ!何をやってでもルーシィ・ハートフィリアを連れて来い、フェアリーテイルを潰しても構わん、というな!」

「ハッ、何が潰すだ! その依頼にかこつければ、報酬ももらった上に、戦争の責任をハートフィリア家に押し付けられただろうに、それをせずにチマチマこっちに仕掛けさせようとしやがって!! 逃げ腰の雑魚野郎は大人しく消えてろ!!!」

 

 ナツとジョゼの魔力が高まり、二人の魔力が衝突する。

その魔力は衝撃波となり、辺りに轟音を響かせ、地鳴りを起こした。

 

「デッド・――」

「紅蓮竜腕・――」

 

 ジョゼの目の前に魔法陣が描かれ、ナツの右腕には炎が集まり、更に巨大な竜椀と化した。

 

「ディアボロス!!!」

「炎激!!!」

 

 魔法陣に収束された魔力が解き放たれ、ナツはそれに真っ直ぐ右腕を突き放った。

 

「「オォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」

 

 魔法の衝突に耐え切れず、幽鬼の支配者のギルドは余波で倒壊していく。

それだけに留まらず、二人を中心に魔力が球状に発散され、丘が削れていった。

丘が削れ、凹みが生まれ‥そこに二人はいた。

 

「…」

「…」

 

 膝立ちの状態で、ジョゼの腹に炎が消えた只の拳を押し当てているナツと、立ったままのジョゼ‥二人はしばらく無言だったが。

 

「ゴバッ」

 

 ジョゼの腹部分には竜の爪の形に火傷の痕があり、ジョゼは血反吐を吐いて倒れた。

 

「‥‥か、‥った」

 

 対するナツも、真正面から魔法を受けたせいでボロボロ‥ジョゼとは反対の方向に倒れた。

 

(…ふぇあ、りー‥ている…? ‥そ、か‥おれは)

 

 最後に、自分の愛しい紋章が描かれた旗が遠くから来るのを見て、彼は微笑んだ。

 

(おれは、まに‥あった)

 

 ナツは仲間が来る前に決着がついたことを喜び、その意識を闇へと沈めた。

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