FT 火竜の軌跡 -再-   作:元桔梗@不治

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第13話 火竜とS級再び

 幽鬼の支配者との戦いから暫く経った。

あれから、ナツの周りはまた騒がしくなっていた。

 

「だーかーら、勝負しろってんだ火竜(サラマンダー)!」

「毎日毎日懲りねぇな‥グレイだってそんな頻繁に‥」

「ナツー、昨日の喧嘩の続きだ!」

 

 言っているそばから下着一枚の男が意気揚々とこっちに早足で近づいて来ていた。

それから視線を逸らし、改めてガジルに目を向ける。

 

「‥まぁグレイは置いといてだ。仕事なんだよ」

「チッ」

 

 勝負勝負と煩いガジルを押しのけ、クエストボードから依頼書をとると、今度は違う人物が。

 

「あ、あのナツさm‥ん」

「?」

「お、お弁当を作ってみたのですが、いかがでしょうか!?」

「あ、あぁ。ありがと」

 

 ジュビアは最近ギルドの女性連中とよく話しているのを見かける。‥偶にカナやミラ辺りと会話していて、その時何かしら吹き込まれたりしてもいるようだが、仲良くやっているらしい。

 

「あ、ナツー!その依頼行くの?」

「あぁ‥ルーシィも行くか?」

「いいの?」

「あぁ」

「ありがとー!もう今月の家賃がピンチでね‥早く仕事こなしていかないと何だけど、中々うまく行かなくて」

「まぁ早々うまくいかねぇって。慣れの部分もあるしな、効率よくやるには」

「うん」

 

 ルーシィは幽鬼の支配者に狙われていたという事実を知っていた‥というか、ナツが大声で言ったのをしっかり聞いていたらしい。先日彼女は単身で実家に行き、父親にきっぱり自分の意思を告げて家を出てきた。

更にはロキが獅子宮の精霊で、死にかけた彼を救って契約者になったとか‥立派になったもんだ。

 

 仲間の成長を喜びつつ、クエストを終えて戻ると、今度はレビィがやってきた。

 

「ナツ、おかえり!」

「あぁ、ただいま」

「今日はルーシィと一緒だったんだ‥何のクエストだったの?」

「あぁ、今日のはな‥」

 

 レビィはあれからクエストが終えた後、ナツを待ち構えていることが多くなった。

どうやら心配はずっと継続しているらしい。申し訳なく思う反面、嬉しくもあるから何とも言えないナツだった。

 

 新加入者のガジルやジュビアに絡まれ、他のメンツにも絡まれ‥なんだか忙しくなっていた。

 

 

 単身で一日に何件もクエストをこなしていくナツを見て、食事をしていたガジルが不満そうな声をあげていた。

 

「たくよォ、毎日毎日依頼ばっかで全然勝負しやがらねぇ」

「忙しいんですね、ナツさm‥んは」

「‥お前、その言いなおし早く何とかしろよ」

「仕方ないんです!心の中では様づけで固定化してるんですから!」

 

 ジュビアは最初ナツを様づけで呼んでいたのだが、ナツの強い要望によりさん呼びにしているのだ。‥中々矯正できていないが。

 

「にしても、弁当とかまた遠回りなことしてんな」

「ナツさ‥んはあまり強すぎる押しには引いていくばかりだ、とミラさんやカナさんに教わったから‥ん、これおいしい」

 

 ジュビアは恋の手ほどきを色んなギルドメンバーに聞いて回っていた‥本能的に恋敵になりえそうな人を察し、その人以外からだが。

 

「へぇ‥」

「ガジル君は、一体何が気に入らないんですか?」

「ア?」

「だって、幾ら鍛錬しているとはいっても、まだそんなに経ってないのに再戦だなんて‥ちょっと早すぎると思って」

「‥あの野郎は、俺との戦いの後、連戦でお前らと、そしてそのままマスターと闘いやがった」

「えぇ」

「つまりな、アイツは俺との戦いに余力を残してたってわけだ‥こっちは全力だった。全開を超えてたってのに、関わらずだ」

 

 最初から全力でやってほしかった。そんな戦士としての強い気持ちがガジルの再戦の意思を燃やしていた。

事実そうなので、何ともいえないジュビア。ガジルのそれに答えたのは、料理を持ってきたミラだった。

 

「それはね、ナツの悪い癖なの」

「癖?」

「えぇ‥昔ね、全力を出し切った後にあることが起こって、それで何もできなかったことをずっと悔やんでいるの。‥あれから、ナツは余力を残す戦い方をするようになったわ。悪いことじゃないけど、それを実力者にもしてしまうから、悪い癖ってこと」

 

 余力を残すのは決して悪いことではない。後の事に備えるのは重要なことだ。

だが、後先考えられない戦いというのは少なからず存在する。命の駆け引きの中、余力を考えて動くなど通常不可能だ。

 

「ナツ、マスタージョゼとの戦いで負った傷が一日寝ただけで治ってたでしょ?」

「えぇ‥でもあれは何か薬を使ったのでは?」

「ナツはね、あんまりそういうの使わないの。気絶してたから勝手に塗ったけど、何時もなら借りは作りたくないって言って拒否するでしょうね」

「借りねぇ‥らしいといえばらしいが…おいちょっとまて、まさか」

「そう、ナツは魔力の活性による自然治癒の強化だけで治したのよ。それも無意識下でね」

 

 発見された時、ナツはボロボロだった。素人目に見て重症だった。

それを、自然治癒を強化しただけで一日で治すなんて、どれだけの魔力が必要なのだろうか。

 

「あいつ、マスターとの戦いにも余力を残したってのか!?」

「えぇ‥だから、悪い癖なの」

「‥ナツ様、やっぱりすごいですけど‥でもそれじゃ」

「普通なら身体が持たないでしょうね。でもナツは滅竜魔導士だから、普通の人よりずっと頑丈で‥だから気にしないの‥まぁ周りからすると心配の種なんだけどね」

 

 困ったように笑うミラを見て、きっと何度も戦い方を改めるように言ったんだろうなと苦労を察した。

 

「ナツは昔っから無茶ばかりしててね‥で、周りからの心配も受け取るけど、受け取るだけで…そのせいで一度ラクサスがキレたりしたのよ?」

「ラクサスって…確か二階によくいる野郎のことだよな?」

「えぇ。ウチの数少ないS級魔導士。実力はフェアリーテイルでも屈指よ‥で、さっき言った通りプッツンってしちゃってね‥もう大変だったわあの時は」

 

 思い起こすのは、火竜のナツを殴り飛ばしたところから始まったラクサスとの喧嘩。

あまりにも苛烈すぎてマカロフですら止められなかった、二人の大喧嘩。

 

「どうにか説得して街から離れた場所でさせたんだけどね‥もう終わった後には焦土と化してたわ‥」

 

 ミラが心配になって様子を見に行ったとき、二人は最後の一撃を放つ寸前だった。

二人とも何をしたのか、火竜と呼ばれたナツは雷撃を纏っていて逆にラクサスは雷ではなく炎を纏っていた。

そして、起こったのは雷を纏った炎と、炎を纏った雷の巨大な魔力の塊のぶつかり合い。

 

「それで、結果は?」

「ドロー、引き分けだったわ。二人とも最後の攻撃の後気を失っちゃって」

「そうなんですか‥ガジル君、どうかしたんですか?」

「‥いや」

(‥雷を纏った炎と、炎を纏った雷)

 

 ガジルにはその現象に見覚えがあった。

ナツの炎を食べた際に手に入れた火竜の性質、それを取り込んだ新しい力、鉄炎竜。

今では自分の魔力の質を一部無理やりナツに近づけることが出来、そのモードになれる。

そして今の話を聞いた感じから察するに‥ナツとラクサスは互いの属性を喰いあったことになる。

 

(つまり、ラクサスって野郎も滅竜魔導士で‥そして火竜の奴はそのモードを使わずマスターに勝利。‥ホントに余力を残してたってわけか)

 

 本当の意味で、自分とは次元が違うと察せたガジルは、手早く飯を食い終わると、最近使っている街離れの広い空間‥鍛錬場へと赴くのだった。

 

「ぜってぇ追い抜いてやるッ」

 

 こうして鉄竜の男の実力は、幽鬼の支配者に居た頃よりもずっと伸びしろがよくなっていくのだった。

 

 

「S級行こうぜ、ナツ」

「‥ラクサス」

 

 依頼書を持ってきたラクサスに、ジト目を向けるナツ。

個人的にはS級なんて危険極まりなく、それ以上に自分に不相応なことしたくなかったが、もう半ばあきらめていた。

ラクサスから逃げたいのなら雷速を超すか、ぶっ飛ばすしかない。前者は無理で、後者も無理だった。

 

「はぁ‥どんな依頼?」

「まぁ簡単な奴だ」

「以前それでゼレフ書の悪魔と相対した身としては、あまり信じられない台詞なんだけど」

「アレは特例だろ‥ほら、行こうぜ」

「はいはい‥で、依頼内容は?」

「あぁ」

 

 ピッと見せる依頼書にははっきりとS級の二文字があり、下の方には以前のガルナ島よりも巨額な達成金額が書かれていた。

 

「最近見つかった遺跡の調査だと。調査隊が尽く戻ってこないから、こうして張ってあんだよ」

「はぁ‥また厄介そうだな」

「分類はHELPと調査の二重依頼だ。特殊だが、だからこそやりがいあるだろ?」

「‥はあ」

 

 確かに、依頼書にはHELPの文字が‥ナツとしては、この文字は見たら最後、見ていない振りは出来ない。

 

「イイぜ、さっさと行ってさくっと救出すっか」

「一応、調査の方が主な内容なんだがな」

「知るか、人命優先だっての」

「へいへい」

「‥そういえば雷神衆はどうしたんだ?」

 

 雷神衆とは、ラクサスを特に慕っている三人組のことだ。かなりの実力者で、S級にも届きうる力を持っている。

こういう任務には人数必要だろうと思って見渡すが、その三人はいそうにない。

 

「あぁ、あいつらは別の依頼だ。悪さしてる奴らを退治してくれって言う、ちょっと離れたところの依頼こなしに行ってるぞ」

「…お前、この依頼二人でやる気か?」

「俺達なら余裕だろ」

「うっわぁ、不安」

「んだとコラ」

 

 軽く言い合いながら、こうして二人の滅竜魔導士が、遺跡探査へと赴くことになったのだった。

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