FT 火竜の軌跡 -再-   作:元桔梗@不治

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第15話 火竜と――の少女

「っと」

「チッ」

 

 焔が飛び交う魔法の矢を軽く壊し、舌打ち混じりで放出された雷が装置を薙ぎ払う。

最早慎重に歩くことなどせず、駆け足で処理していく。

 

「…ラクサス、今地下何階か覚えてるか?」

「14」

「いい加減ついてもいい頃だよな」

 

 既に大分深くまで潜っていた二人。ここまで来るのに一時間と掛かっていない。

 

「…次で最後の部屋みたいだな」

「やっとか‥」

 

 扉の向こうからは今までとは違い、魔力が強く感じ取ることが出来た。

何があるのやら、と悪い笑みを浮かべたラクサスが扉を無理やり開け放つ。

 

「…おいおいこりゃぁどういうことだ?」

「……」

 

 気を失った人が壁にめり込んでいる‥いや、組み込まれている(・・・・・・・)

手足が埋まり、拘束されている‥だけじゃない。

 

「よく見ろ‥水晶みたいになってる」

 

 埋め込まれた手足‥破れた衣服から覗くのは肌色ではなく、綺麗に透き通ったナニカ。

その何かからは、魔力を感じ取れた。

 

「まさかこれ、魔水晶(ラクリマ)か‥?」

「生きたまま身体から魔力を抽出‥空気中に霧散しない様に水晶状に固定化したわけか‥」

「気をつけろよナツ、もし何らかの魔法でこうなったとしたら‥」

「分かってる‥ハッピー、一応飛翔し続けて地面とか壁につかない様に‥ハッピー?」

 

 ずっと口喧嘩しながら進んできたため、一緒に来ていたが空気化していたハッピーを探す。

何時もならその辺に居たりするのだが‥。

 

「ナツ~」

「お、ハッピー何処に‥‥」

 

 声のした方を辿ってみると‥何故か穴に挟まれたハッピーがいた。

 

「おたすけ~~」

「おま、何してんだ!?」

「いや、ちょっと調べようと思ったらはまっちゃって‥‥」

「たく。ちょっと待ってろ」

 

 穴に嵌まったハッピーを抜こう‥としてふと気づいた。

 

(この穴、そこらじゅうにあるな‥)

 

 ハッピーが入ったのはそこそこ大きな穴だが、それでも人の太もも程度だ。

 

「…いや、違うな」

「?」

 

 そう、太もも程度の穴(・・・・・・・)ではなく太ももが入っていた穴(・・・・・・・・・・)なのだろう。

考えながらハッピーをどうにか引き抜いた、その直後だった。

 

「――っ?!」

「ナツ?」

「‥聞こえた」

「ア?何がだ?」

 

 ハッピーを引き抜いた際に触れてしまった、小さな魔水晶に手を乗せた。

 

 

『t-a―す―――kーて』

 

 

 魔水晶へ自分の魔力を浸透させ、鮮明にする。

そうすると、ハッキリとナツの脳内に声が響いた。

 

 

『『『『『タスケテ』』』』』

 

 

 男の声、女の声、小さな子供の声。

恐らくは魔水晶にされた人たちの声だ。

 

「…」

 

 辺りを見渡す。声の数は大量で分からなかったが、同時に捕えられている人達は老若男女様々だった。

 

「‥ラクサス、ここら辺で行方不明者ってどれくらい出てた?」

「行方不明って‥そういや、こんな大規模な行方不明者が出たなんて報告、受けてねぇな」

 

 此処が中心点に近いのは間違いない。

人を魔水晶に変えてしまう魔法、同時にこの遺跡‥おそらく人為的に造られたダンジョンに、ゴーレムか何かで攫わせていたはずだ。それも一ヵ所から攫うのではなく、多数に散らばせた上に、人気のない夜中を狙って‥。

 

(‥遺跡型なのは探索にきたトレジャーハンターとかを集める為か? どのみち、大規模魔法で支えられているはずだ)

 

 だが、人を魔水晶に変え、更にその魔力を集めているであろう存在、もしくは力場の気配が此処にはない。

 

「…ちょっとやってみるか」

「?‥っ! おい、何してやがる!?」

「ナツ!?」

 

 危険を承知で地面を火竜の鉄拳で殴り割り、そこに腕を突っ込んだまま魔力を流し込む(・・・・)

そのまま浸透させ、魔力で地下を含めた周囲を探索していく。

 

「…‥‥見つけた」

「今度はなんだ?」

「地下の霊核と霊脈」

「霊脈?‥あぁそういうことか」

 

 ラクサスは一瞬疑問符を浮かべたが、流石S級。すぐに理解したらしい。

霊脈と霊核‥世界には、純度の高い力の吹き溜まり、「霊核」という物が点在している。そこから人の身体に流れる脈のように、霊的な力が地下や地表を駆け巡っていることを「霊脈」という。

 

「霊核と霊脈を傷つけないギリギリの位置に遺跡を作って、そこから力を吸い上げて、その力で魔法陣を形成、それで人を魔水晶に変えてやがる」

「人を魔水晶に変えるのはそいつ自身の魔力を結晶化すればいいだけだから、そこまでコストはかからねぇ。だが、ここまで大規模な人数を魔水晶に変えるのには労力がいる上に、個人の魔力じゃ補えない‥なるほどなぁ」

「で、ナツ。その魔法陣はどこにあるの?」

「……‥」

「ナツ?」

「‥此処(・・)だよ」

 

 腕を地面から引き抜き、部屋を見渡す。

 

「この部屋を球状に囲う様にして魔法陣が展開されてる。魔法陣自体の強度も高そうだ‥まぁその強度を保つために、遺跡内があそこまでおざなりだったんだろうけど」

「つーことは話は簡単だな。部屋の外に出て、少し離れた場所から魔法陣だけを壊せばいいわけだ」

「壊す前に魔法陣の分析が先だろ。‥絶対ェ助ける」

 

 考察を会話しながら、外に出ようとした瞬間‥入ってきた入口が上から降ってきた大岩で塞がれてしまった。

 

「…ナツー、もしかしてこれって」

「ハッピー、下がってろ!」

「あい!」

 

 ナツとラクサスがそれぞれの属性を体に纏わせる。

同時に、部屋中に魔法陣が浮かび上がった。

 

「トラップ、ってやつか?」

「いや、これは‥」

 

 転移魔法‥高度過ぎて使えるものが殆どいない魔法だ。

地面からスーッと浮かんでくるように現れたのは、紅い長髪の‥少女。

 

「‥‥お前が此処の主か?」

「‥――」

「?」

 

 小さく何かを呟いたが、よく聞こえなかった。

もう一度耳を澄ませると‥。

 

「キ―ケン――■――K●――k@――e――n…kikikikikkikkkkkkkkkkkkkkkkkKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKィィィケェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 最後は既に叫んでいた。

 

「おい、これ」

「霊核から無理やり力を吸い出したせいで、自分で発動した迎撃魔法に取り込まれやがったな‥?」

「ナツ、どうするの‥?」

「どうするってそりゃぁ‥‥ぶっ飛ばすしか、な‥い」

 

 少女の身体には岩が纏わりつき、鎧のようになっていく。

叫び続ける壊れた表情を浮かべるその顔も、例外なく鎧に包まれていく、その寸前――。

 

「‥おい、ナツ。お前まさか」

「……」

「ナツ?」

 

 ナツは、決めた。

 

助けるぞ(・・・・)

「マジで言ってるんだな‥?」

「あぁ」

「まぁ、ナツだもんねぇー」

「悪ぃな、オレの我儘に付き合ってもらうぞ、二人ともっ!」

 

 ナツ・ドラグニルは決めてしまった。

救いを求める彼らも‥こっちを見て、懇願するように涙を流した少女(・・・・・・・)も―。

 

「―全部、見捨てねぇ!!!」

 

 ナツの覚悟を現すように、一際大きく焔が輝いた。

 

 

 始めに動いたのは炎翼を噴出したナツ。

拳に炎を纏い、得意の鉄拳を繰り出した。

鉄竜の鱗すら溶かしたその炎は…土で象られた鎧を貫くことはなかった。

 

(硬ェ‥!)

 

 僅かに付いた焦げ跡すらすぐさま修繕されてしまうその鎧に驚きながらも、右手で作った土剣が振るわれ、それを翼を巧みに動かし避ける。

避けられたことによってそのまま地へと振り下ろされた土で作られたはずの剣は、容易に地面を切り裂き、地割れを引き起こした。

 だが一瞬の膠着が起こり、その隙を見逃さずにラクサスが雷の咆哮を放った。

相手が体勢を整える間もなく、雷は鎧を貫くが‥やはりその身に僅かな傷しか付けられず、その小さな綻びすらすぐに修繕されてしまう。

 

「…ダメか」

「ホントに土かよ」

「■■■■■■---!!!!」

 

 弱気な言葉を吐く二人だが、無駄口を叩く暇などない。

左手に新たに作り出した剣を地面へと勢いよく突き刺し、咆哮を上げた。

地面と天井から次々に突起物が飛び出し、それを避け壊し前へと走り出す。

 

「只の炎じゃダメなら――」

「これでどうだっ」

 

 ナツの炎から雷が迸り、ラクサスの雷からは炎が噴き出した。

 

「雷炎竜の--―」

「炎雷竜の――」

「■■■■――!!」

 

 負けじと鎧の少女も己の魔力が渦巻く剣を突き出した。

 

「「撃鉄ゥゥウウウウウウ!!!!!!」」

「■■―――!!!!」

 

 炎と雷、剣がぶつかり合い、破壊の衝撃波が辺りに撒き散らされる。

 

「わわわわ!?」

 

 ハッピーがあわてながら周りの魔水晶になった被害者たちを守るために守護の魔水晶をばら撒いていた。

魔水晶はギリギリ壊れなかったが、このままだとこの遺跡擬きが持たずに崩壊してしまうだろう。

そう危惧したハッピーだったが、ラクサスとナツの拳は剣を砕き、少女の鎧を突破した。

 

「ァ―」

 

 確かな手ごたえを感じた。

地脈から無理やり引き出し造ったであろう鎧に二人の魔力が響き、割れ、少女の顔が現れた。

間近で見るとまだ十代前半の幼さが残る顔をしている。

一瞬気を飛ばしたのか生気が抜けた瞳をしていたが、目の前の二人を見た瞬間にその色が変わった。

 

「ゥ、アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「「「!?」」」

 

 その声に、表情に三人は驚き、少女自身から(・・・・・・)巻き起こる強烈な魔力に弾かれた。

怒りではない…悲しみでもない……少女が浮かべていたのは、只々恐怖だけだった。

 

「――の」

「ぇ」

 

 震える小さな声を、勿論身体能力の良いナツとラクサスは聞いた。

聞いたうえで…新たな驚きにその身を固めた。

 

 

錬金竜(・・・)竜鎧(リュウガイ)っ!」

 

 

 先ほどの鎧は完全に砕け落ち、新たな鎧が精製され始めた。

更に、それだけに留まらない。

 

「それとッウ、グアアアアアアアアアアアアア!」

 

 少女から発せられた咆哮は、まるで竜そのものだと思った。

それを裏付けるかのように、少女の身体も変化する。

 

―彼女の頭には水晶のように透き通った一本角が‥そして背からは翼と尾が現れた。

 

 鎧は竜を想われる刺々しい物へと変貌し、さっきの全身鎧とは違って彼女の動きを邪魔しないな簡易なモノになっていた。

衣服が消し飛んだせいで素肌がみえているが、彼女には羞恥はなく、敵意と殺意を隠しもせずにこちらを鋭く睨みつけてきている。

 

「なんなんだ、こいつ」

「…」

 

 ぼやくラクサスと違い、ナツは真剣な表情で少女を見つめていた。

 

「フーッフーッ!」

「まるで獣だな‥っておいナツ!?」

「ナツ何してるの!?」

 

 こちらを見て息荒く警戒する少女に、ゆっくりと歩み寄っていく。

拳を解き、敵意などまるで感じさせないナツを見て、少女も妙な表情をしながらも構えた。

 

「…さっきは暴走してたからな」

「?」

「俺はナツ・ドラグニル。フェアリーテイルの魔導師だ。話を聞かせてくれないか?」

「ハ?」

「ナツ!?」

 

 唐突なナツの発言に思わず口を開けるラクサスと、驚くハッピー。

そんなナツを見て、一瞬の間を置いて少女が叫んだ。

 

「ニンゲンと話すことなんて、なにもない!! 錬金竜の、咆哮!!!」

 

 少女から放たれた咆哮は、辺りを鋭い突起や剣、弾丸に錬金しながらナツへと襲い掛かった。

 

「ナツ!!!」

「あのバカ、なにまともに食らって‥!」

 

 土煙が晴れ、炎を纏ったナツが‥微笑みながら立っていた。

傷だらけで、ボロボロのまま。

 

「…まぁ、さっきまで戦ってたわけだからこうなるか…仕方ねぇ」

 

 それでも優しい表情をしながら、その瞳には再度戦意を燃え上がらせる。

 

「悪ぃけど、ぶちのめしてから話を聞かせてもらうぜ」

 

 殺意は消えない、だがそんなナツに戸惑いを隠せない少女は、咆哮とも悲鳴ともつかない声を上げながら敵へと翔けだした。

 

 

 ――意味が分からなかった。

 

 攻撃を仕掛けたのはこっちだ。ボロボロにしたのは自分だ。

なのに、何故彼は笑いかけて来るのだろうか。

 

(関係ない、ニンゲンは敵、ドラゴンは敵!!!)

 

 彼らが使ってくるのが竜の魔法だということには、とっくに気付いていた。

自分と同じ荒々しく力強い魔力。

 地脈と魔水晶を使った鎧を砕くその力は、同種の力によって弾かれる。

やはり他から引っ張ってきた力より、己自身の力の方が一番馴染み、使いやすい。

 ――だというのに、殺し切れない。

両者が強いのもある‥だが、それ以上にあの瞳達が脳裏にちらついて仕方がなかった。

―炎の少年の優しい笑み、強くも暖かな瞳。

―雷の青年の戦意溢れる表情、こちらを射抜かんとばかりの力強い瞳。

少女の頭の中には古く大切な思い出が浮かびだす。

 

「消えて!!」

 

 大事な思い出に、目の前の二人に言い放つ。

 

「雷炎竜の、咆哮!」

「錬金竜の剣戟!」

 

 雷迸る優しい炎を断ち切る。

―――自分と同じ、いやそれ以上に綺麗な髪をした、優しい母だった。

 

「炎雷竜の顎!」

「錬金竜の砲撃!!」

 

 雷速で炎を吹きだしながら拳を振り降ろそうとしてきた青年を、錬金で作り出した大砲で吹き飛ばす。

―――誰よりも厳しくて、気高い父だった。

 

 

「「ォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」

 

「ァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 そんな両親を殺したのは、人で、竜だった。 

錬金術師の母をニンゲン達は、水晶()の父を竜たちは、裏切り者だと、叛逆者だと叫びながら殺した。

自分に魔法と錬金術を教えてくれた、優しい母。

自分に竜の力の扱い方を教えてくれた、強い父。

 

―許せない、赦せない。

 

 この二人は、憎い人間で嫌いな竜だ。

なのに、大好きな人と竜を思い出してしまう。

 

(なんで、なんで!!)

 

 目の前の二人と重なる想い出を振り払うように、竜人(ハーフ)の少女は己の力を全力で振り切った。

父から受け継いだ随力、母から受け継いだ術を全力で。

 

 

「錬金竜の―――練爆晶刃!!!!!」

 

 

 彼女の力は、地下では収まり切れず……地上まで貫いた。

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……?」

 

 息を切らせながらも不思議そうに地下から青空を見上げる。

 

「綺麗……」

 

 青空を見るのなんて、もう何百年も前。両親が生きていた頃の話だ。

そんなことを思い出し、少し落ち着きながら前へ目を向ける。

 

「ねぇ、どうして?」

 

 錬金竜として最高の一撃を放った。それは天を衝いたが、本来は地中で撒き散らされ全てが埋まったはずだ。錬金竜の自分なら生き残れるからこそやったことだ。

 だが、そうならなかった。なぜなら……目の前にいる魔導士たちが上へ向けて力を逸らしたからだ。

 

「……」

「我の力を逸らしたのは凄い。でも、さっきの行為は自殺行為だった」

 

 違う?と首を傾げてくる少女に対し、その通りだとナツは無言でうなずいた。

埋められてもアウトだが、力をそのまま受け止め上へ無理やり流すのは身体が木っ端微塵になってもおかしくないことだ。事実、ハッピーは気絶し、ラクサスは気絶していないが倒れ込み、ナツも立ってはいるがフラフラになっていた。

彼らの実力なら上手いように力を分散したりして、崩落を防ぐことだって出来たはずだ。

 

「…あの、ままだと……壁に埋まってる、やつらが、死んでた」

「そう……」

 

 何処までも他人のための行動なんだな、と少し感心してしまった。

そこでふと、あることに気付いた。

 

「……竜の気配がない」

「もうずっと昔に、絶滅したらしい」

「でも、貴方からは竜の匂いを感じる」

「育ての親が、竜なんだよ」

「親が…」

 

 なるほどと頷きながら、少女はその場に座り込んだ。

 

「此処は、我の父が力と場を与えて母が造ったの。我が外に出なくても生きていけるように、魔力を養分にして生きられるように‥‥そういう風になるような魔法を態々掛けてくれた」

「……人間を対象にしたのは、最近だな?」

 

 恐らく少し前までは近くの動物や魔物を対象にしていたのだろう。

だが、それが居なくなった。森林に入った時に動物や魔物の気配がなかったのは、警戒されて隠れていたからではなく、物理的にいなくなってしまっていたから。

 そして、人間を対象にした。そのためにゴーレムで誘拐したり、ダンジョンの様な入口を作り、誘い込んだりしたのだ。

 

「知らない。我は遺品でもあるここを護りたかっただけ」

 

 だから自分を強化し、狂化する迎撃魔法を自身に掛けた。

でも結果的に理性が薄れ、解けた後も怒りに呑まれてしまった。

 

「結果、自分でそこを壊して‥‥もう何もない」

「……そんなこと、ないだろ」

「?」

 

 倒れていたラクサスが起き上がろうとして、失敗。どうにか這いずって壁を背もたれにして座り込む。

 

「その身体は、誰から貰った……お前は、誰に何を望まれた」

「……」

「分かってんなら、なにもねぇなんて言うな。下らねぇ感傷、だ」

「…じゃぁどうしたらいい」

「知るか」

「アハハ、酷いなぁ」

 

 ふてぶてしいラクサスを笑うと、あーぁと空を眺める。

今にも飛んで消えてしまいそうな竜の少女。そんな彼女に、彼らは―――。

 

 

 

 

「ただいまー」

「戻ったぞ」

「疲れたよ~」

 

 数日経ってギルドに戻ったナツ達。

まさか一週間以上かかると思っていなかったギルドの面々は、ワッと騒ぎだす。

 

「こんなにかかるなんてなぁー!」

「っていうかそもそもクエストは3日目でクリアしたって話聞いたぞ?」

「今まで何してたんだー?!」

 

 出入口で質問攻めにあう二人と一匹だったが、暫く聴き流しすのも限界になった。

 

「「ダァァァーー!!うるっせぇ!!」」

「あ、ミラーおいらお腹空いた-」

 

 今度は蜘蛛の子を散らすようにぱぱーっと各々席へ戻っていく。ついでにハッピーはバーに居るミラの元へ飛んで行ってしまった。

毎度クエスト二時間かけるたびにこれなのか、と少し嫌な気分を切り替え、後ろで待機している少女を前に連れ出した。

 

「マスター」

「ん?なんじゃ、その子は」

「ん」

 

 ラクサスが呼び、ナツがマカロフの前へと背を押した。

 

「‥‥ルビィ・ドラゴニクスという。ここ暫く、ナツとラクサスに常識を教わっていた。…‥我は今、自分以外何もない。だから、此処に何かを探しに来た」

「ふむ‥‥」

「ナツとラクサスの提案だけど、我も大切を見つけたい。…我を、このギルドに入れてくれ」

 

 ジッと見つめ合った二人。

少しして、マカロフは頷いた。

 

「よかろう。その二人からの推薦、という辺り少し心配じゃが」

「どういう意味だジジイ」

「爺さん、その言い方は不服だぞ」

「……大丈夫、二人ほどめちゃくちゃしない」

「この間まで街すら見たことが無かった箱入り娘がよく言うぜ」

「さっきここに来るまでずっとキョロキョロしてたもんな」

「…‥‥」

 

 ふいっと恥ずかしそうに顔を背けるルビィ。

顔が赤くなり、髪の色も相まって真紅色極まっていた。

 

 こうして真っ赤な小さい少女が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に仲間入りを果たすのだった。




ここまでが最新です、次話は連続投稿できませんと思われますm(__)m

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