FT 火竜の軌跡 -再-   作:元桔梗@不治

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第4話 火竜と違法ギルド

 今日も今日とてナツは依頼書を眺めていた。

 

「あ、ナツ今から仕事?」

「ん? ルーシィか。はよ」

「うん、おはよ。どんな仕事見てるの?」

 

 隣に来てナツが手元に寄せていた依頼書を見る。

 

「‥火山の悪魔退治!?」

「まぁ簡単そうなやつを探しててな」

「いや、どこが簡単なの……」

「正確にはやりやすそうだな。俺はぶっ壊すのが得意だから、魔法解除(ディスペル)とか、お宝探索とかは苦手だ」

 

 無論、苦手なだけで出来ないわけではない。

ナツにとって壊す対象は魔法すら含まれるため、正確には魔法破壊(マジックブレイク)になるが行える。尚、加減を間違えて対象を焦がすことが間々あることは蛇足である。

 

「へー‥‥あれ、マスターは?」

 

 いつもは受付のテーブルに座っている小さいその姿がいなかった。

 

「今日は定例会だと」

「定例会?」

「地方のギルドマスターが集まってする定期報告っていう名のお茶会みたいなもんだ」

「へー」

「さて、そんな話よりどれにすっかなぁ」

「ねえ、私もついてっていい?」

「‥いいぞ」

「ヤッタ!」

 

 なんで付いてきたいのか分からないが、断る理由もないので了承すると喜ばれた。

分からんと首を捻りつつ、掲示板を見ていると……ロキが何やら慌てた様子で入ってきた。

 

「みんな、大変だ! エルザが帰ってきた!!!!」

 

 ――ザワッ!!

 

 ロキの言葉にギルド内の全員がざわつきだした。

 

「ナツ、エルザって?」

「うちのギルドの女性最強騎士」

「え?」

「入口見てれば分かる」

 

 そう言って掲示板を吟味しだすナツ。

ルーシィは言われた通りに入口を見ていると‥‥バカでかい角を担いで(・・・)入ってきた赤の長髪の女性が入ってきた。

 何故か鎧をまとっており、その雰囲気はキリっとしていてまさしく騎士のようだと思った。

 

「今戻った。マスターはおられるか?」

「お帰り! マスターは定例会よ」

「そうか…」

 

 ミラの言葉に納得した様子のエルザだったが、周りの目線は角に行っていた。

流石に目立つのか、ナツが話しかけた。

 

「エルザ、何だその角?」

「ん?あぁ、討伐した魔物の角に地元の者が飾りを施してくれてな。綺麗だったので、ここへの土産に持ってきたんだ」

「ほー……ま、いいんじゃねぇの」

「そうか‥ナツは相変わらずなんだな。いい加減上がってきたらどうだ(・・・・・・・・・・)?」

「…」

「あがる?」

 

 含んだ言い方をするエルザに対し、ナツは顔を背けることで答えた。

ルーシィはその様子と言葉に疑問を抱いたようだが、それに誰かが答える前にエルザが話しかけた。

 

「全く、相変わらずだな‥ん?そっちの子は初めましてになるか?」

「はい。新人のルーシィといいます。よろしくお願いします」

「ん、丁寧だな。ありがとう、私はエルザという」

 

 挨拶をしている二人を置いて、ナツは一枚の依頼書に手を伸ばし‥それが偶然にもグレイの手とかち合った。

 

「ん、グレイそれやるのか?」

「あぁ‥てか、邪魔だ」

「あ? 邪魔って、別にいいだろ。数に限りがあるわけじゃねぇんだし」

「分け前減るだろうが」

「ていうか火山だぞ。お前ひとりで大丈夫かよ」

「心配無用だっての‥お前こそ、火山なんて火耐性持ってるやつ多いんだろうし、止めといたらどうだ?」

 

 二人が険悪になり始めたとき、エルザが近寄ってきた。

 

「やめんか!」

「「いってぇええ!!!」」

「うわ、痛そう‥」

 

 鎧を着たエルザの魔力込みの拳が二人の頭を襲った。

 

「全く、お前たちは。組めばあれほど合うというのに」

「いてて‥いや、なんか相性悪いんだよなぁ」

「つい喧嘩腰に‥」

「はぁ‥まぁいい。二人に頼みたいことがってな」

「頼み事?」

「俺達に!?」

「仕事先で少々厄介な話を耳にしてな。本来ならマスターの判断を仰ぐところだが‥早期解決が望ましいと判断した」

「ほー‥」

 

 エルザの厄介事は結構洒落にならないのだが‥まぁもうこうなったら行くしかない。

エルザの頑固さは皆が知っていることで、幼いころから付き合いのあるナツ達にとってはもはや茶飯事だ。

 

「ま、いいけどいつ行くんだ?」

「明日だ」

「「明日かよ‥」」

「何かあるのか?」

「「いや、ねぇよ!?」」

 

 確認のためにこっちを振り向いたエルザだが、その顔は有無を言わさないものだった。

きっと用事があると言おうものならその用事を今すぐ終わらせるように動いただろう‥それもかなり過激なやり方で。

 

 

「で、なんでルーシィもついてきてんだ?」

「ミラさんに仲介を頼まれて‥」

「ハッピーがいるのになぁ」

「あい」

「あ‥」

 

 専用の小さな鞄を肩にかけたハッピーが手を挙げて答え、それを見てルーシィが落ち込んだ。

‥と、いうことで、ルーシィも共に行くことに。

 三人と一匹が列車に乗り込む中、ナツだけは炎翼を出して外にいた。

 

「って、ナツは乗らないの?」

「俺は酔っちまうんだよ‥窓の外から聞いてるから、詳細を説明してくれ」

「わかった‥では窓を開けて話そう」

 

 窓を開けた状態で話し出すエルザ。

ナツは列車と並走しながら話を聞く。

 

「先の仕事の帰りだ。オニバスで魔導士が集まる酒場へ寄った時、少々気になる連中がいてな‥」

 

 エルザの話をまとめると、どうやらやたら素行の悪い魔導士達で、やたら目立っていたらしい。

そして、そんな彼らの話で気になったのが〝ララバイ〟というモノの封印解除についてだった。

 

「私も初めはあまり気にかけていなかった。仕事の話かもしれないしな‥ただ、エリゴールという名を思い出すまではな」

 

 エリゴールとは、暗殺系の依頼ばかりを遂行し続け〝死神〟と呼ばれた魔導士。

本来暗殺依頼は評議会の意向で禁止されているが、彼ら鉄の森(アイアンヴァルト)は金を選んだ。

 その結果、6年前に魔導士ギルド連盟を追放、現在は闇ギルドに分類されている。

当時の鉄の森マスターは逮捕、ギルドは解散命令を出されたのだが‥

 

「どうやら、エリゴールと一部メンバーは生き残っていたらしいな」

「なるほど‥で、オニバスにその残党たちのアジトがあるのか?」

「それを調べるんだ」

「面倒だなぁ‥」

 

 ナツ達は話を聞き終わり、オニバス駅で降りた。

そこで鉄の森の情報を聞くために‥だが、そのせいでナツ達は一歩遅れてしまった。

 

 

 約十数分後、それが発覚した。

 

「ナツー!」

「ん?ハッピー、何か見つかったか?」

「大変だよ! 闇ギルドの人が列車を乗っ取ったって!」

「ハァ? どこの列車だ」

「クヌギ駅の」

「クヌギ‥ちっ次の駅じゃねぇか。降りる駅一つ間違えたなこりゃ」

 

 オニバスの次がクヌギだった。一つ遅く下りていれば、現場に鉢合わせたものを‥。

 

「通信‥いや、放送用の魔水晶(ラクリマ)はあるか?」

「あい!」

「よっし、あと」

「はい、映像の魔水晶」

「ナイスハッピー」

 

 ハッピーのカバンから二つの魔水晶を取り出す。

放送と映像を合わせて、上空に大きなスクリーンを出現すると同時に、町中に散らばっているエルザたちに分かるように広域に声を流した。

 

「「「「「闇ギルド、多分鉄の森一派がクヌギ駅に停まった列車を乗っ取ったらしい! 俺達は今から追いかけるから、後から来てくれ!」」」」」

 

 後で騒音だと怒られるだろうが、緊急事態だ。

ハッピーが肩に掴まったのを確認すると、炎翼を噴出してナツは全速力で次の駅に向かった。

 

 

「あのバカものめっ」

 

 悪態を付きながらエルザは足になりそうなものを探す。

列車に追いつけるような物‥目についたのは魔導四輪だった

魔力を消費するが、その分馬以上に速く走れる。

 

「これなら‥」

 

 だが、ナツの炎翼には敵わないことは分かっている。

隠しているようだが、ナツの魔力は桁違いだ。

幼いころ、ナツの異常性を見たことのあるエルザはそれをよく知っていた。

 

―なに泣いてんだ? おまえ―

 

 そして、何時もふてぶてしい彼が。

 

―ア? よくわっかんねぇけど‥ウチ来るか?―

 

 底なしに優しく、お節介焼きで。

 

―フェアリー・テイルってんだ。イイ所だぞ?―

 

 とても、とても暖かく。

 

―ん?どした? 酷い面してるって? ‥気のせいだろ―

 

 独りで抱え込む、臆病で繊細な人物であることを、エルザはよく知っている。

 

「無茶だけはしてくれるなよ‥」

 

 魔導四輪を飛ばし、ルーシィとグレイを途中で拾ってエルザたちはナツの後を追った。

 

 

 エルザたちが魔導四輪で追いかける最中、既にナツは駅についていた。

 

「さてと‥行くか」

 

 オシバナ駅はすでに混沌と化していた。

占拠された駅内にはすでに一般人はおらず、軍の小隊が突入したらしいが戻ってきていないらしい。十中八九やられたのだろう。

 ごった返す駅前を突っ切って急いで中に入ると、そこには全滅した小隊がいた。

 

「ま、だよな」

 

 言っちゃ悪いが闇ギルド相手に魔法を使えない小隊では話にならない。

駅のホームにつくと、そこにはズラリと鉄の森のメンバーが集まっていた。

 

「お前一人か、妖精の尻尾」

「ア? ‥あぁそうだよな。俺たちが一つ先に降りちまったから、あの時乗り合わせたであろう誰かは俺達を見てたわけか」

 

 もっと視線に注意すればよかったが、既に後の祭りである。

 

「ララバイってのは呪いの類らしいな。子守唄‥まぁ大方死の子守歌か」

「ハッよく頭のまわる妖精(ハエ)だ」

「で、こんな無人の駅で何をするんだ?」

「ハ、駅には何がある?」

「…まぁ、だよな」

 

 チラッと少し離れた位置にある放送機を見る。

あれがあれば街中に呪いをまくことが出来るだろう‥が。

 

「じゃぁ―」

 

 ダッ、全力で放送機に走り寄る。

行き成りのことで誰も止めないのをいいことに、その拳に炎を纏った。

そして――

 

「これで、放送できねェなァー!!!」

 

 放送機をぶん殴り、折って破壊した。

 

「なっあいつ正気か!?」

 

 鉄の森の連中が騒ぎだす。

 

「騒ぐんじゃねぇ! 放送機何ざまだまだ―」

「ナツ~」

「今度はなんだ!って、空飛ぶ猫ぉ!?」

「しかも喋ってるぞ!」

 

 ハッピーが数枚の紙切れを持ってきた。

それには駅の詳しい地図が書き込まれていた。

魔水晶にはナツの炎が込められたものがあり、それを使えば大抵の保管庫のカギは溶かせてしまえる。

 軽く窃盗だが、緊急事態だし許してもらえるだろう。

 

「よし、ナイスだハッピー」

「あい!」

「さて、これで場所は把握したし、後は放送機か放送室をつぶせばいいんだが‥」

 

 ここでようやく鉄の森の戦意がナツに向けられた。

 

「ひ、怯むな!相手は小僧一人―」

 

 最初に叫んだ一人が、横から勢いよく噴出した炎によって燃えた。

驚いて隙が出来た瞬間に、足元を爆熱することで推進力を生み出し、連中の中心へ行く。

 

「火竜の翼撃!!!」

 

 ゴォッ!!! 炎を腕に纏い、勢いよくふるうことで周りのメンバーを燃やし、吹き飛ばした。

 

「…まだ、やるか?」

「くっ、この!」

「やる気かよ‥ん?」

 

 偉そうにしていた鎌を持った男が消えていた。

おそらくボスなのだろうが‥何処にいった?

 

(‥あ、ミスった)

 

 気づいたのは、エルザたちが駅内に入ってきたのを見てからだった。

 

(街中に流したかったら駅を占拠するまでもなく放送室を乗っ取っちまえばいい。なのにここまで大事にしたのは、目を逸らすためだとしたら―)

 

 鉄の森のメンバーを吹き飛ばし、鎌を持った男―エリゴールの匂いを追う。

追っていくと、匂いは外へ‥だが、ナツはそこで立ち止まった。

 

「風の、壁」

 

 駅を丸ごと風の結界で囲まれており、外に抜け出せなくなっていたのだ。

 

「ギャハハハハハハ!!! ちょいと遅かったな火竜(サラマンダー)!」

「! エリゴール! てめぇ、どこ行く気だ!!」

「笛の音を聴かさなきゃいけねぇ奴がいるんだよ‥必ず殺さなきゃならねぇ奴がいるんだ。俺達から権利を奪った、あの老いぼれどもがな!」

「チッそうだった。 駅の終点はクローバー駅! ギルドの定例会が狙いかァ!!」

「もう遅ぇよ!!じゃーなー蜥蜴野郎!!」

「クソッ‥」

 

 笑い声が遠ざかっていく中、ナツは一先ず合流するために駅の中へと戻った。

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