FT 火竜の軌跡 -再-   作:元桔梗@不治

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第6話 火竜とS級依頼

 エリゴールの件が片付いてから数日後、その日もナツ達はギルドで騒いでいた。

飲んで、食べて、喧嘩して、物を壊して、騒いで騒いで騒ぎまくる。

騒がしいギルド内で、ナツは相変わらず仕事を探していた。

 

「…ん?これって‥」

 

 ふと、知った匂いを感じ取り、薄ら魔力を纏うナツ。

火竜の魔力で自分を守ることで、ある程度の魔法からの干渉を防げるのだ。

 

「どうしたのナツ?」

「ミストガンだ」

「え?―ぁ」

「っと」

 

 そんな騒がしいギルドに、静寂が訪れた。

突然眠って倒れかけたレビィを抱き留め床に座らせつつ、出入り口を睨む。

 

「たく、ちったぁ前兆を起こすとかして知らせろよ。あぶねぇだろ」

「…悪い」

 

 言いつつ、杖を持った黒衣で全身を隠した男はボードにある討伐クエストを一枚受付にいるマスターに渡した。

 

「行ってくる」

「これっ眠りの魔法を解かんか!」

「伍‥四‥三‥二‥一」

 

 数を数えながら、ゆっくりギルドから去っていくミストガン。

そして、最後の一を呟くと同時に、その姿を陽炎のように揺らめきながら消え去った。

同時に魔法が解け、全員がミストガンが来たことを知り、その魔法の強さに賞賛と文句を言い始めた。

 その時グレイがルーシィにミストガンの姿をマスター以外知らないという話をしていた。

確かに彼は強い眠りの魔法を使い、こうして一人で仕事に行くが、別にマスター以外知らないわけではない。

 事実、知っているうちの一人が二階からグレイたちに声をかけた。

 

「いや、俺とナツは知ってんぞ」

「ラクサス!!」

「いたのか!」

「珍しいなっ!!!」

 

 中々ギルドに帰ってこないその人物に全員が驚きながら見上げる。

疑問を浮かべているルーシィに、グレイが彼がギルド最強候補の一人であることを告げた。

 

「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやるな‥つーか、ナツお前はいつになったら上がってくんだよ」

「…上がれねぇよ、オレは」

「上がるって、二階に? そういえばエルザもこの間言ってたけど、何があるの?」

 

 分かっていないルーシィに、ミラがやさしく教えだした。

 

「2階の依頼板には1階とは比べ物にならないくらい難しい仕事が貼ってあるの。S級の冒険(クエスト)よ」

「S級!?」

「一瞬の判断ミスが死を招くような危険な仕事よ。その分報酬もいいけど、目指すものじゃないわ。本当にいくつ命があっても足りないから♡」

「みたいですね‥ってじゃぁナツはS級なの!?」

「ワシ含め、皆が認めておるのじゃがな。 本人が首を縦に振らんから、まだその称号を与えておらん」

「え?」

 

 マスターの言葉に驚きつつナツを見るルーシィや、頷きながらどうするんだ、とナツを見る皆。

注目を浴びているのを自覚しつつ、ナツはため息をついてボードに背を向け今日は帰ろうとした。

 が、そんな彼の前に2階から雷が落ち、最強候補のラクサスが立ちはだかった。

 

「…何だよ?」

「たくっ。一々目くじら立てるなって‥ほら」

 

 ピッと1枚の紙切れをナツに渡した。

HELPUS。救援求むの依頼、額は7百万の依頼だった。

 

「‥…で?」

「で、じゃねぇよ。お前が上がってこないのを良く思ってねぇ連中だっているんだ」

「だから?」

「試験代わりだ。本当にS級にふさわしくねぇってんなら、証拠を提示しろ(負けて来い)

「…うけねぇよ」

「こいつは2階でも一番安いくせして、面倒な依頼だから誰も受けたがらねぇ。もう長いこと放っておかれてる」

「だから?俺が受ける理由には―」

「助けを求めてるやつを見捨てんのか?」

 

 ラクサスの一言で、ザザッとナツの脳裏にノイズのような過去の映像が奔った。

 

―クソ、どうなってんだよこれ!?―

―‥な、つ…ないて、るの?―

―泣いてねぇ! チクショウッ止まれよ!!!―

―だいじょぶ、だよ‥だいじょ――

 

 銀の短髪の少女が脳裏に浮かび、震える彼女を思い出した。

頭を振って忘れようとして、やめる。アレは忘れちゃいけないことだから。

 

「…チッ、誰か一緒に行くか!? 今なら700万山分けだぞ!!!」

 

 その言葉にギルドの皆が沸いた。

行く!という言葉、止めとけ死ぬぞ~という呑気な静止の声、私行きたい!と報酬+αの黄金のカギのマークを見て参加しようとするルーシィ。

 改めて騒がしくなったギルドを見て、ミラがラクサスに話しかけた。

 

「もうちょっとやり方はなかったの?」

「‥あいつがあんな所でウジウジ燻ってんのなんざ、見たかねぇだけだ」

「素直じゃないんだから」

「るせぇ」

 

 ギルドの光景を見ていたラクサスもまた、古い記憶を思い起こしていた。

 

 ―オレナツ、よろしく―

 ―へぇ、じーちゃんの孫だったのか‥ま、いいや。それよりこのクエなんだけどさ‥―

 

 興味なさそうに自分に自己紹介をして見せた少年を、自分の詳細を知っても尚態度が変わることがなかった彼を。

 

「‥とっとと上がってこい」

 

 ○

 

 次の日、準備を終えたナツ、グレイ、ルーシィだったが、誰も依頼先のガロナ島へ船を出してくれる人がいなかった。どうやら相当恐れられているらしい。

 

「さて、取りあえずグレイ、船造ってくれ」

「氷の船なんざ溶けちまうって。大体つめてぇぞ?」

「性質変換で海と同じくらいの温度にしちまえばいいだろうが」

「お前なぁ、んな簡単に出来たら俺は今頃S級だ!」

「んじゃ飛ぶか‥二人とも捕まってくれ」

 

 グレイが手を握り、ハッピーが頭に乗り、ルーシィが背に乗った。

 

「…レビィもだけど、何で背中に乗りたがるんだよ。怖くねぇの?」

「ナツなら大丈夫でしょ?」

「どっかで聞いた言葉だ‥」

 

 言いながら、彼らは島へ向かった。

 

 

 島に着き、村長に会いに行って依頼内容の詳細を訊いた。

何でも、紫色になった月の光を浴びて悪魔になってしまっただとか。

だから月を壊して欲しい、との依頼なのだが。

 

「月ねぇ…」

「流石に月を壊せってのはな‥」

「あぁ。というより、この島からしか月は紫色に変わってないんだから、島の方が問題あるんだろうな」

「どういうこと?」

「ちょっと飛んでみたが、途中で島を覆うように力の膜みたいなのに当たったんだよ」

「ってーことはつまり、その膜を消しちまえばいいのか?」

「いや、膜がなんで出来たかが分かんない。そっちの問題を解決するのが、今回の依頼の本題だな」

 

 膜がなぜできたのか、それを解明することから始めることにして、今夜は泊ることになった。

 

(…ん?)

 

 だが、ふと深夜に力の昂りを感じて目が覚めた。

ルーシィやグレイが寝ているのを確認して、窓の外を確認する。

 

「…なるほどな」

 

 空に浮かぶ月の光を、一点に集めていた。

誰だか知らないが、大掛かりな儀式だ。

この光が集まり、余剰効果で上空で固まったため、島がおかしくなっているのだと瞬時に理解した。

 

「原因判明、取りあえずあそこに行ってみるか…」

 

 チラッと後ろの二人を確認する。

あの規模の儀式なら、恐らくかなりの数の敵がいるだろう。

何時からこんなことしてるか知らないが、少なくとも村の現状を知っていてやっているに違いない。

 

(そして村人もあの光に気付かないはずがない)

 

 何かあることは明白だが、取りあえずあの光を調べるのが先だと判断したナツは、一人その場へと向かった。

 途中でデカいネズミに出会ったが、火竜の咆哮で焼いてレアにしたのは蛇足である。

 

 

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