おお、怖い怖い。
……ま、投稿者には全く関係ないんですけど。
あと遅くなってすみません。
「ふふふふーん、ふんふんふん、ふーん」
宇良華の鼻歌が風呂場から聞こえてくる。一番風呂を貰えて嬉しいのか?
「……」
デッキを取り出してシャッフル。
俺は元から金上さんに勝てるとは思ってなかった。恐らく、金上さんも負けるとは思ってなかった。
全力で来いと言われたからバージェストマを使った。予定調和の如く負けた。
多分、負けても試練失敗にはならなかったと思う。負けて当然なんだからな。
……で、その後宇良華が何を思ったか金上さんにデュエルを挑んで勝った。
「フフフフン↓、フフフフン↑、フフフフン↓、フフフフン↑」
五枚ドロー。
まぁ、宇良華が勝ったのは素直に賞賛して良い。勝負は時の運とはいえ、強い相手に勝てたんだからな。
「フフフふんふんふんふんふん、ふん、ふーーーーーーん」
あー、全セット。相手スタンバイにマーレラでデッキのやりくりを墓地に。
問題は、それからと言うもの周りの奴らが俺に向ける目が変わったってとこだ。なんつーか、ニートを見る目になった……気がする。
そりゃそうだ、あの状況じゃあ年下の女の子に『勝ってもらったおかげで』バイトを続けられているように見える。金上さんは否定してるが、こればっかりはなぁ。
やりくり発動、ドローは……ピカイアと強脱か。安定なら強脱、次のドローがバージェストマならピカイアだが……ここはピカイアだな。
ちっ、こそこそ陰口叩きやがって。だったら自分たちで金上さんとデュエルしろっての。大方、宇良華が可愛い少女(笑) だから手を抜いたんだろ? ……そういう人に見えねぇけどな。
「おニちゃーん、お風呂上がったよー」
「おう。……なんで鼻歌がベートーベンなんだ?」
「そんな~、気分~♪ うふふ」
「そうかよ」
宇良華は上機嫌に笑いながら自分のデッキを出す。上機嫌なのは職員たちにべた褒めされたからだろう。
あの日から数日が経つのに、職員たちはずっと宇良華を褒める。「凄いね」だとか「偉いね」だとか「プロになれちゃうかもね」だとか。そしてその前後で俺をチラッと見てくる。
うぜぇ。何か言いたいなら面と向かってと言えよ。
「俺は風呂入る」
「えーデュエルしよーよー!」
「いやだ」
パジャマを持ってさっさと風呂場へ。正直、今はデュエルする気分じゃない。普段からなるべくデュエルはしないようにしてるがな。
服を脱ぐ。自分で言うのもなんだが、鍛えてるから良い体つきだ。無駄な肉が無い。
シャワーを出す。宇良華は熱いお湯はあまり得意じゃないのか、けっこう温度を低くする。俺は熱い方が好きだから温度設定をいじる。
「……」
今日はゴミを捨てる日でも無いしそんなに暑い訳でもない。さして汚れてないんだから軽く洗う。
……淡々と流れるシャワーの音は嫌いじゃない。
「ふぅー。上がるか」
風呂にお湯は張ってあるが、宇良華が使った後のお湯に浸かる気はない。本当の
風呂場から出て体を拭き、着替える。パジャマといっても黒の半袖半ズボンで模様なんて入ってない。
ん? そーいやー、宇良華の服追加で買った覚えがないな。いつも同じ服だしパジャマも普段着だ。やっべ、いや今更か?
「一応宇良華に聞くか」
そう呟いて廊下へ出る。目の前で宇良華が倒れた。
―――!?
「な、宇良華!?」
慌てて抱き起こす。何故か宇良華はボロボロだし、髪の毛が湿っている。ドライヤーが大好きな宇良華は必ず自分の髪を丁寧に乾かすのに。そして周囲にはカードが散らばっている。
「あらあら、白馬の王子様の登場ね?」
「誰だっ!」
聞くだけで
そしてそのまま、喰われるんだろうな。
「クスクス……、そんなに警戒しなくても良いのよ?」
「うっせぇ不法侵入者。宇良華に何をした」
俺だって健全な男子だし女に興味がないとは言わないが、今は状況が悪い。っつーかこいつは
「不法侵入? クスクス……、不法侵入ねぇ」
「……もう一度だけ聞くぞ。宇良華に、何をした」
俺がそう言うと、女は目を細める。
「クスクス……、別に答える必要は無いけれど。まぁ
「は?」
「だから、その子に渡した私の力の一部。それを返してもらったの。もうその子は用済みになったからね」
くそっ、ワケがワカラナイ。何を言っているのかリカイデキナイ。
「ふざけた事言うんじゃねぇ……宇良華がてめぇの何を持ってたっていうんだ!」
「またそうやって逃げて。でも、そんな頑固な貴方だから目をつけたのよ? クスクス……、おかげで私は復活したんだから」
「だから! 訳のわかんねぇ事を言うんじゃ―――」
両腕が跳ね上がる。まるで抱き起こしていた宇良華が居なくなったように。
いや。
居ない。
「……は?」
「あらあら、限界を迎えたのね。さて貴方はこれをどう解釈するのかしら? マジック? トリック? それとも透明マント?」
「な、てめ……宇良華を」
「私は何もしてないわよ? その子がここに存在出来なくなっただけじゃない」
俺の言葉に被せるように言葉を発する女。……女、なのか? これじゃあ、まるで得体の知れない何かじゃねぇか!
「そもそもおかしいと思わなかったの? 力の弱いカードの精霊は、実体化する為に自身を使ってくれる人間の力を借りなきゃいけないのよ? それこそ『ブラック・マジシャン』とか『
「……っ!」
聞くな聴くな効くな! これは聞いちゃいけない!
「あぁ、そう言えばそもそもその子を精霊だって認めてなかったんだっけ? バカねぇ……クスクス、だから利用出来るんだけど」
「うるせえぇぇぇっ!」
デッキ! デュエルディスク! あぁぁぁ潰す、潰す!
「もう、そろそろ現実を認めなさい? その子は、宇良華は『裏風の精霊』。私が作った偽物の『エルシャドール・ミドラーシュ』の力を借りて実体化した、『裏風の精霊』なのよ!」
「言うなあぁぁっ!」
遊城十哉 LP8000
???? LP8000
「あらもう、身勝手なんだから」
「カードを四枚セット! ターンエンド!」
遊城十哉 手札1枚
魔法・罠 伏せ4枚
「仕方ないわねぇ。ドロー」
「スタンバイに『バージェストマ・ピカイア』! 手札の『バージェストマ・マーレラ』を捨てて二枚ドロー!」
「だーめ、『レッド・リブート』」
女はクスクスと笑い、一枚のカードを発動する。それは手札から発動されるカウンター罠。
???? LP4000
「っ!」
「ほら、デッキからセット出来るわよ?」
「……『バージェストマ・マーレラ』をセットだ」
『レッド・リブート』は罠カードの発動を無効にして戻し、相手はデッキから罠カードをセット出来るという効果を持つ。これだけなら相手のアドバンテージの方が大きい。だがこれとは別に、ことバージェストマにとっては天敵のような効果を持つ。
それすなわち。
「これでこのターン、貴方は罠カードの発動が出来ない」
まさしく行動不能。
「クスクス……、じゃあ『堕天使ゼラート』と一緒に捨てて私の分身、『堕天使イシュタム』の効果を発動。まぁ、私が分身なんだけど……今は関係ないわね。二枚ドローよ」
『堕天使イシュタム』
レベル10 闇属性 天使族
攻撃力2500 守備力2900
[手札交換効果を持ち、ライフを犠牲に墓地の『堕天使』魔法・罠の効果を得る]
「あらあら、『トレード・イン』。レベル8のモンスター『堕天使スペルビア』を捨てて二枚ドロー。更に『闇の誘惑』。二枚ドロー、『クリバンデット』を除外するわ」
十哉は淡々とドローを続ける女を見守るしかない。あまりにも、もどかしい。
「クスクス……、じゃあ『ヘカテリス』を捨てて『神の居城―ヴァルハラ』をサーチ」
『ヘカテリス』
レベル4 光属性 天使族
攻撃力1500 守備力1100
[手札から墓地へ送ってヴァルハラをサーチ。それだけ]
「ヴァルハラ発動、効果で手札の『堕天使アスモディウス』を特殊召喚よ」
『堕天使アスモディウス』
レベル8 闇属性 天使族
攻撃力3000 守備力1500
[デッキ、墓地からは特殊召喚出来ないモンスター。破壊されると二体のトークンを生み出す。片方は戦闘破壊されずもう片方は効果で破壊されない。あとデッキから天使族を墓地へ送れる]
「更に『堕天使の戒壇』。墓地の『堕天使スペルビア』を守備表示で特殊召喚」
『堕天使スペルビア』
レベル8 闇属性 天使族
攻撃力2900 守備力2400
[墓地から特殊召喚されると更に墓地の天使族を特殊召喚できる]
「更にその効果により、墓地より蘇れ我が美しき分身! 『堕天使イシュタム』を特殊召喚! ライフを1000支払い効果を発動するわ! 対象は墓地の『堕天使の戒壇』!
蘇りなさい、『堕天使ゼラート』!」
『堕天使ゼラート』
レベル8 闇属性 天使族
攻撃力2800 守備力2300
[アドバンス召喚のリリース軽減ができ、手札の闇属性モンスターをコストにサンダーボルトを放つことが出来るモンスター]
???? LP3000
あっという間に大型のモンスターが四体も並んでしまう。その内『堕天使の戒壇』で呼び出されたゼラートとスペルビアは守備表示ではあるが、まだ女は召喚を行っていない。そしてまだ手札は二枚も残っている。
「クスクス……、サレンダーしないのは何故かしらね? もしかして、私がこれだけで展開を終わると? もうモンスターが出せないとでも? クスクスクスクス……、『堕天使の追放』を発動するわ」
『堕天使の追放』は、堕天使カードを何でもサーチできる万能の魔法カード。そしてサーチされたのは。
「せっかくなんだから、
「……様?」
黙っていた十哉だが、普通カードに付けない敬称に思わず呟いてしまう。だが女は気にせずクスクスと笑い続ける。
「クスクス……、ゼラートとスペルビアをリリース。
神に
『堕天使ルシフェル』
レベル11 闇属性 天使族
攻撃力3000 守備力3000
[特殊召喚できず、召喚成功時に相手効果モンスターの数だけデッキから堕天使モンスターを特殊召喚できる。
更に他に堕天使モンスターが居る限り効果の対象にとれず、堕天使モンスターの数だけデッキの上から墓地へ送りその中の堕天使カードに応じて回復する]
黒い光を纏って降臨した堕天使。その存在感は
「クスクスクスクス……それじゃあ、
『堕天使ルシフェル』が剣をゆっくりと掲げる。それと同時に『堕天使アスモディウス』が立ち上がる。
「やりなさい、アスモディウス」
ルシフェルの剣が降り下ろされ、アスモディウスのビームが十哉にぶつかる。
「ぐあっ!?」
遊城十哉 LP5000
十哉は全身を駆け巡る
「クスクス……、言い忘れてたけどこのデュエルではダメージが現実になるわ。怖いなら、サレンダーしていいのよ?」
「く……」
「まぁ、あの子はサレンダーしなかったけど。可愛い悲鳴で面白かったわ……クスクス」
女はクスクスと笑い、次の攻撃宣言を行う。……が、十哉が何か呟いた事に気付いてその手を止める。
「……あの子? 宇良華の事か?」
「えぇそうよ。痛いよおニちゃん助けておニちゃんってばっかり騒いでたわ。可哀想にそのおニちゃんとやらは、何でもかんでも否定する頑固者は、お風呂の最中なのにねぇ? クスクスクスクス」
「……」
十哉は、うつむく事しか出来ない。出来る事は……ない。
「じゃ、そろそろ終わりましょう?
イシュタムが息を吹き掛ける。背中の黒い羽根とともに飛んできた風は、十哉の体を縛る。
「う、ぐうぅぅ……」
遊城十哉 LP2500
身体中がミシミシときしむ。見えない巨人に握りしめられているようだ。
「あら……耐えるのね。でもこれで最後。ルシフェル様、お願いしますわ。
堕天使の王がその剣を再び天高く掲げる。その姿は天に居る神へ宣戦布告しているようにも、罪人を裁く処刑人のようにも見える。
「…………」
そして、剣は振り下ろされた。
遊城十哉 LP0
???? Win
これがあるからバジェは……!
そうそう。内容には全く関わらないんですけど、このお話は比較的アニメ基準の世界観です。
初代とGXから数十年後で、5D´s終了から5、6年後、zeal終了から2、3年後ぐらいです。それぞれの事件は既に終わっていて、遊星も生きてますし遊馬は中学生となってます。遊馬は本編でも出てますよ。
Arc-V? あれは世界線が完全に別物ですから……。
そんな矛盾が沢山ありそうな設定を垂れ流したところで次回予告。ナレーター:????
堕天使に敗北した十哉。彼は闇のデュエルの激痛の中後悔と
その頃YUSHOプロジェクトは突然の襲撃を受ける。プロたちは次々と倒されていき、九重純香が最後の砦となる。
純香の『
クスクスクスクス……どうなるのかしらね?
次回、『主人公の戦い』