遊戯王AU-M<英雄の孫>   作:yourphone

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エンターテイメント・デュエル!(後編)

「私のターン、ドロー!」

 

手札無いし、こりゃあ負けかな。

 

「ねぇ、十哉君」

「……なんだ?」

「これはアクションデュエルだから、アクションカードを取ってくれば逆転出来るんだよ! ほら、例えばあそこに」

 

純香さんが指差した方を見る。……ん、バルーンにアクションカードがくっついてるな。

 

「つまり?」

「あれを取ってもルール違反じゃないんだよ!」

「ほう……成る程」

 

なら、勝てるかもな。デュエルは嫌いだが、どうせなら勝ちたいよな。

 

『純香よ、奴の雰囲気が変わった』

「分かってるよバジリ……効果で007を除外!『陽炎霧弾(ヘイズミストボム)』!」

 

右に居たゼロナナが消える。だが、別にいい。

 

「よしっ、ゼロナナ! 取ってこい!」

「えっ!?」

 

一人残され、男泣きに泣いているゼロナナを掴み上げ……たら俺の手が切れそうだったからつまみ上げ、バルーンに投げつける。

投げられたゼロナナは必死にバルーンにしがみつく。

 

……が、ゼロナナは全身刃物。当然、バルーンは割れる。

 

それを見て、落下地点に向けて走る。間に合うか? いや、間に合わせる!

 

「おっとおっ!」

 

スライディングし、落ちてきたアクションカードを取る。

これでよし、反撃の準備は出来た。

 

真横にゼロナナが落ちた。それはもう、首からグシャッと。

 

「よくやったぞゼロナナ」

 

頭を撫で……たら俺の手が切れるから人差し指で背中をなぞってやる。

 

「うわ、えげつねぇわ」「飴と鞭……か」「あいつ、『ド』の付くSだったんか」「あの機械が可哀想だぜ」

 

「おい観客席! 聞こえてんぞ!」

 

ゴチャゴチャ言い始めた観客席に怒鳴る。

 

「十哉君、貴方エンターテイメントの適性あるよ! ねぇ、YUSHOプロジェクトに入らない?」

「すまないが断る」

 

即答したら観客席のガチファンどもが怒りとも絶望とも驚愕ともいえない悲鳴を上げていた。知ったことかよ。

 

「そっか、残念。……燃え残る炎を火種に『陽炎獣ペリュトン』を召喚!」

 

『陽炎獣ペリュトン』

 レベル6 炎属性 炎族

 攻撃力1600 守備力1700

 [陽炎獣の展開要員。ステータスが低いのがなぁ……いやまあ、効果強いのだけど]

 

鹿の顔、馬の体、そして炎のような翼。

 

『おいそこ、つまり馬鹿って思ったろ、ん?』

「何の話だ?」

「ペリュトンをリリース、手札の『フレムベル・ヘルドック』を墓地に送って効果!」

『姉御! 俺もたまにはもうちょい喋りた――』

 

ペリュトンが巨大な炎の塊になる。慈悲は無かった。

 

「デッキから『陽炎獣』モンスター二体を特殊召喚! 仲間たちの亡骸を火種に! 来て!『陽炎獣サーベラス』『陽炎獣スピンクス』!」

『はいどうも』『やっと出番だ!』 『姉御、姉貴、王よ、お久し振りでございます』

 

『陽炎獣サーベラス』

 レベル6 炎属性 獣族

 攻撃力2000 守備力200

 [妥協召喚・被破壊時にヘイズサーチ。レベル6しか居ない陽炎獣の中では一番使いやすい]

 

人面ライオンの スピンクスとは違い、パッと見は普通のライオンだ。……顔が三つで(たてがみ)が全部ヘビだが。

 

「スピ効果! 私は『モンスター』を宣言!」

 

何処からかドラムロールが鳴り響く。……なんでさっきまで鳴らなかったよ。

 

「ジャジャンッ! めくられたのは『陽炎獣メコレオス』! 予知エネルギーを火種に特殊召喚!」

『安心しろ、俺が来た!』

 

『陽炎獣メコレオス』

 レベル6 炎属性 鳥獣族

 攻撃力2200 守備力300

 [守備力200じゃないし攻撃力低めだし爆発できないから陽炎獣デッキに入らない残念強面。てかお前鳥獣族なのか!?]

 

ライオンというより獅子と称した方がいいような体躯。そして尻尾が(さそり)のそれだ。

 

そして、純香さんが右手を高く上げる。そして指が鳴らされる。

 

 

バンッ!

 

 

「レディ~ス・エ~ン・ジェントルメ~ン!」

 

 

純香さんがスポットライトに照らされる。

ドレスが輝き、笑顔が光る。

 

「皆は()()のカードを持ってるかな?」

 

紺色? 紫の融合、白のシンクロ、黒のエクシーズ、それと忘れがちだが青の儀式。通常モンスターはバニラで効果モンスターは……橙色。魔法は緑で罠は紅色。

紺色なんて無い。いや待て、確か新しい種類の……

 

「知らぬなら! 見せてあげよう、新カード! バジリ!」

『うむ!』

 

純香さんがバジリコックの上に飛び乗る。

 

「メコ、スピ! 行くよ!」

『えぇ』『練習の成果ってのを見せるとき!』

 

高く高く、スポットライトが届くギリギリ。

 

「私は、『陽炎獣バジリコック』『陽炎獣スピンクス』『陽炎獣メコレオス』の三体でリンクマーカーをメイキング!」

「なっ!? なんだその召喚方法は!」

 

バジリコックが翼を広げ、その右後ろにスピンクスが浮かび、三角形を作るようにメコレオスが飛ぶ。

 

「上・右下・左下でリンクを繋げる! 電子の騎士よ、炎の魂をその剣に書き戻せ! リンク召喚『デコード・トーカー』!」

 

『デコード・トーカー』

 闇属性 サイバース族

 攻撃力2300 link3 (↙↑↘)

 [初のリンクモンスター。効果モンスター二体以上でリンク出来る汎用リンクでもある! リンクマーカーの表示をどうしようか迷っています]

 

三体のモンスターが混じり合い、青い鎧を装着する一体の戦士となる。

そして高速で着地。上から落ちてきた純香さんをお姫様だっこで受け止める。

 

 

観客席から、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

 

 

「ありがとう!……でもね?『デコード・トーカー』は一人じゃ真の力を発揮出来ない。……だから! これを使うよ!」

 

純香さんが手札のカード一枚を発動する。それは……

 

「『真炎の爆発』! 墓地の守備力200以下の炎属性モンスターを可能な限り呼び出す!」

 

純香さんの目の前、メインモンスターゾーンの床がひび割れる。

 

「出てくるのは右から順に『フレムベル・ヘルドック』『陽炎獣サーベラス』『陽炎獣ヒュドラー』!」

 

『フレムベル・ヘルドック』

 レベル4 炎属性 獣族

 攻撃力1900 守備力200

 [モンスターを戦闘破壊して墓地に送れば、デッキから更に仲間が出てくる。攻撃力も中々のもの]

 

噴火が起き、吹き出る炎の中から犬とライオンとヘビ(?)が現れる。

 

「そしてバトル! ヘルドック、007に『ラヴァハウリング』!」

 

フレムベル・ヘルドックがゼロナナに噛みつく。……って

 

遠吠え(ハウリング)じゃねえのかよ!」

「ハウリングで良いの! 格好いいから良いの!」

『ワンッ』

 

良いのかそんな理由で!?

 

「ヘルドックの効果は墓地に送らないと発動出来ないから不発。サベでダイレクトアタック!『陽炎咆哮(ヘイズロア)』!」

 

サーベラスが三つの口を開き、吠える。

 

「う……ぐぁ……!」

 

十哉 LP3500

 

うっせぇ……こっちは技名通りかよ……!

 

「ヒュドラーでダイレクト! 『陽炎連撃(ヘイズコンボ)』!」

 

ヒュドラーの八つの口からそれぞれ炎が飛ばされる。

 

「ちっ、くそっ!」

 

走り、跳び越え、大玉を盾にし、なんとか避けていくが。

 

『そこだっ!』『遅いぜ!』『悪く思うな!』『満足したりねぇぜっ!』

 

避けきれず、炎に当たってしまう。

 

「ぐあっちぃ!」

 

十哉 LP1200

 

全身が焼かれる。

 

「これで終わり!」

 

ああ、普通ならこれで負けさ。……()()()()()()()()()、な。

 

「いいや、ダメージを受けた時に(トラップ)発動!『ダメージコンデンサー』!」

「でもそれは手札を一枚捨てないと……あっ!」

「そう、俺は手札のアクションカード『火の輪くぐり』を捨てられる! 勝つためならルールを最大限活用してやるよ!」

 

『ダメージ・コンデンサー』は受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚できるカード。そして……ブンボーグたちの攻撃力は。

 

「攻撃力2300以下のモンスター……攻撃力500の『ブンボーグ002』を守備表示で特殊召喚だ!」

 

俺の目の前で電気が走り、ゼロツーが生まれる。

 

「そしてゼロツーは特殊召喚されたときにデッキからブンボーグをサーチ出来る。ゼロスリーを手札に加える!」

「へぇ……普通、そういう普段と違うルールっていうのは受け入れ(がた)い……って人が多いのに」

「はっ、ただの負けず嫌いだよ」

 

そう言うと、純香さんはニッコリと笑った。

 

「それも一つの才能だよ! 『デコード・トーカー』で002を攻撃! デコードの攻撃力はリンク先のモンスターの数×500アップする! よって3300!」

 

デコード・トーカーの持つ剣でゼロツーが切り裂かれる。ありがとよ、ゼロツー。

 

「ん~、これだからアクションデュエルは止められないんだよね。……メイン2! サベ、ヒュドでX(エクシーズ)召喚! もう一度手を貸して、『陽炎獣バジリコック』! そしてヒュドラーによる追加効果で、墓地の……メコレオスをX素材に追加する!」

 

再び降臨したバジリコックの体から、ヘビのような炎が床に顔を突っ込み、素材を追加していった。

 

『バウッバウッ!』

「エンドフェイズに『真炎の爆発』で呼び出されたモンスターは除外される。ごめんね……ヘルドック」

『クゥ~ン』

 

ヘルドックが水蒸気となって消えた。

 

 

純香 LP8000 手札1枚

モンスター 『デコード・トーカー』(EX)

      『陽炎獣バジリコック』ORU(オーバーレイユニット)3(右端)

魔法・罠 『陽炎柱』(中央)

     伏せ(右から2)

 

「俺のターン、ドローだ!」

 

さて、引いたカードはゼロツー。世話になるぜ。

 

「そうそう、デコードのリンクマーカーの一つは十哉君の方に向いてるよね?」

「だな。……ん、ってことはこっちも二体出せるのか?」

「そうだよ! まあ、そんなことしたらデコードの攻撃力が上がるけどね」

 

今は一体だけだから攻撃力2800で、仮に俺がデコードの前に出したら3300か。それなりに高いな。

 

「だが関係ない! ゼロサンを通常召喚! 効果でデッキからゼロツーを特殊召喚して『ブンボーグ005』をサーチ!」

 

一息つく。

 

「大きくだ……大きく振れろペンデュラム! 来い、絆で結ばれる機械たちよ! P(ペンデュラム)召喚! 手札からゼロツー、ゼロゴ! エクストラデッキからゼロナナだ!」

 

『デコード・トーカー』のマーカー先には出さない。念のため、な。

 

「ゼロツーの効果でデッキから『ブンボーグ・ベース』をサーチ、ゼロゴでスケールのゼロゴを破壊! そしてスケールで破壊されたゼロゴの効果で墓地のゼロツーを特殊召喚だ! よって更にサーチ! 『ブンボーグ005』!」

「良いねぇ……結局空いていたデコードの前に出すことになってるって、凄く良いよ!」

「うるせぇよ!? ベース発動、スケールセッティングゼロゴ! ……さて、計算の時間だ!」

 

バンッとスポットライトが俺に当たる。良いんだよこんな演出要らないんだよ!

 

「まあ、良いさ。三体のゼロツーの攻撃力はベース・相方のゼロツーたちによって1500アップの2000! ゼロサンはベース・ゼロツー三体によって2000アップの2500! そしてゼロナナはベース・ゼロツーたちの効果に加えて自身の効果で墓地のブンボーグカードの数×500アップだ! 俺の墓地のブンボーグは一枚……よって合計2500アップの3000! ゼロゴはエクストラデッキの表側のブンボーグカードの数分アップだ……エクストラデッキにはゼロゴ一枚! よって同じく3000となる!」

 

分りやすくすると、

『ブンボーグ002』攻撃力2000 が三体

『ブンボーグ003』攻撃力2500 

『ブンボーグ005』攻撃力3000 

『ブンボーグ007』攻撃力3000 がEXモンスターゾーン

そしてスケールに005、006、フィールド魔法でブンボーグ・ベース。

 

「凄いね。でも、それだと私のモンスターたちには勝てないよ!」

「ああ。……だから最後の一押しが必要になるな? バトルだ! ゼロゴでバジリコックに攻撃だ!」

「バジリコックの素材は三つだから攻撃力3100……返り討ちにしてっ、バジリ!」

『承知』

 

様々な(のり)を使ってバジリコックに攻撃を仕掛けるゼロゴ(0 0 5)

だが、あまりにも体格が違いすぎる。ゼロゴはバジリコックの目と同じぐらいの大きさ。

 

だがゼロゴはその体格の違いを逆手に取る事で、バジリコックと同等に戦う。

 

『ちょこまかと……』

「っ!? バジリよけて!」

『む? グフゥッ!?』

 

飛んできた定規がバジリコックの王冠を割った。

 

「ダメージステップにゼロサンの効果、対象となったゼロゴの攻撃力は、俺のフィールドのブンボーグカードの数×500アップ。ブンボーグカードの数はモンスター六体+スケール二枚+ブンボーグベース、よって九枚! 4500アップの7500だ!」

 

バジリコックに刺さった定規に、ゼロゴが全力で殴る。

 

『く……無念……』

「バジリィッ!」

 

バジリコックが弾け、消える。

 

純香 LP3600

 

「そしてバジリコックが居なくなった事でデコードの攻撃力は下がる。……2800にな!」

「くっ!」

「ゼロナナ、かっ切れ!」

 

『デコード・トーカー』と『ブンボーグ007』が剣で切り結ぶ。デコードは長剣、ゼロナナは分解した鋏。

デコードは大振りにゼロナナを攻撃するが、ゼロナナの小ささ故に当たらない。そしてゼロナナは隙を突いて細かく切っていく。

 

そして、最後はゼロナナがデコードを切り飛ばした。

 

純香 LP3400

 

「ゼロサン、ダイレクトアタックだ!」

 

ゼロサンが落ちている定規を回収、装着して純香さんを追いかける。

 

「ふふっ、ほらほらこっちだよ!」

 

純香さんは走って逃げる。フープを飛び抜け、大玉を転がし、バルーンを跳び移る。

 

しばらくすると、ゼロサンが疲れたようにフラフラと戻ってきた。

 

「ゼロサン」

 

声をかけると、こちらを見上げてくる。ソッと持ち上げる。

 

「よし、そんじゃあ」

 

純香さんはバルーン二つにぶら下がっている。よくもまぁあそこまで行けたもんだ。……だが。

 

「行ってこい!」

 

ゼロサンを純香さんに向けて ―――――全力で投げる。

 

「えぇっ!?」

 

よっし、狙いは抜群。

 

「―――なんてね! アクションマジック『終幕(フィナーレ)』! お互いに1500のダメージ!」

「はぁっ!?」

 

純香さんのライフは3400。そして俺のライフは……1200。つまり。

 

「文字通り……フィ・ナーレ!」

 

派手に、派手に、サーカス劇場が弾ける。

 

純香 LP1900

十哉 LP0

 

win 純香

 

「……くはあっ」

 

負けた。アクションデュエル……もうしたくないな、この弱いカテゴリ有利なルール。

 

「ふぅ~。お疲れさま! 楽しいデュエルだったね!」

「……そうですね」

 

手を出してきたので握手する。

観客席から盛大な拍手「ざけんなー!」「ちくしょー!」「十哉、てめ、そこ変われー!」「おニちゃん格好いいー!」「私のが強いわよー!」

 

「罵声九割かよ!?」

「あはは」

 

……っておい、待て、ちょっと聞いたことがある声が。まさかな。まさか、な。

 

「ん、どうしたの?」

「あー、いや、何でも無いですよ」

「そう?」

 

『眠り姫』の方を見る。眠る銀髪と元気溌剌(はつらつ)に跳び跳ねている緑髪が見えた。……オーケー、後で門番とこ行くか。

 

『なんでちゃんと見てなかった』と怒鳴ってやろう、うん。




な~のねさんは出番なしでした。
ちなみに、『火の輪くぐり』の効果は『自分モンスター一体は相手にダイレクトできる』というものという設定です。
アクションマジック無しなら十哉は何も出来ずに負けてましたね。話としてはご都合主義満載に出来るから楽ですけど……もう二度とアクションデュエルしない。させない。

長くなりましたが、次回予告:門番さん

ふむ、生徒たちは勉強を順調に進めているな。結構結構。最近は遊城十哉も遅刻してこない。大変結構。
今日も平和だな……ん? あれは……か、かか、海馬社長!? 何故ここに!?

次回『パワーVSスリープ』
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