遊戯王AU-M<英雄の孫>   作:yourphone

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今回、デュエルは無いです。
うーん。破壊剣デッキは癖が強いデッキには勝てないですね。ついさっき磁石デッキにボコボコにされました。同じ遊戯が使ったカードなのに……。


それぞれの新しい日常

「ふん、あんなのマグレさ。次やったら絶対に勝つ!」

「はいはい。……ったく」

 

大講堂でのデュエルの後、遠亞をレッド寮まで案内している。制服とかの買い物はまた後でやるらしい。

『眠り姫』はデュエルで体力を使い果たしたらしく、社長がさっさと帰った直後には既に寝ていた。

つまり、学園から寮まで俺が引っ張っていく訳だ。

まさか宇良華に任せる訳にもいかず、かといって遠亞は自分の荷物(キャリーバッグ)がある。

 

「おい、聞いてるのか!」

「宇良華がきぃてるよ!」

「お前には言ってない!」

「言ってたもん!」

「言ってない!」

「言った!」

「言ってない!」

 

知らぬ間に宇良華と遠亞が喧嘩を始めていた……子供かよ。いや片方子供だけどさ。

 

「おニちゃん! とーあが嘘つく!」

「お前程度に嘘なんか付くか! 十哉、なんとか言ってやれ!」

「…………ふわぁ。ねみぃ」

「おい!?」

 

なんかもうこいつらほっぽっといて寝ようか?寮に辿り着くまでに落ちそうなんだが……ん?

 

「よ~お、てめぇが遊城十哉だな?」

 

道を塞ぐように男が立ち塞がる。そこそこ筋肉が付いてるが……新入生っぽいな。

 

「そうだが、それが?」

「おい、デュエルしろよ。お前を倒せば一躍英雄って事だろ? ぐっへっへっへ!」

 

……まーた勘違い野郎が……めんどくせぇなぁ。

 

「宇良華、先に遠亞を寮まで案内してくれ。すぐに追い付く」

「で、でも、あの人怖いよ?」

「そ、そうだぞ、あれは強そうだ!」

 

なんなのこいつら。いや、宇良華は子供だからまだしも、遠亞お前なぁ。

 

「遠亞。まず、見た目なんてデュエルには関係無い。いいな? そして宇良華、俺が負けると思うか?」

「うん!」

「…………そうか」

 

いや、自分でも負けると思うけどな。『眠り姫』は起きる様子が無いし。おい遠亞、笑いをこらえきれてないぞ。

 

「ちっ、良いから行けって」

「だいじょぶなの?」

「似たようなのを何回も倒してきたからな。余裕だよヨユー」

「……分かった。とーわ、こっち!」

「遠亞だ!」

 

宇良華と遠亞が男の横を通り抜けていく。

……ふーん、ガキどもは見逃すのか。

 

「俺の相手はお前だけ。あんなチビたちは後でどうとでも出来る」

「そうか。……デュエルか?」

「ああ。くっくっくっ」

 

あー、多分これデュエルになったら勝てないパターンの奴だな。

 

「何がおかしい?」

「おかしいに決まってるだろ? 俺は負けると思ってない奴が負けた時の顔が大好きなんだよ!」

「ふーん。……んなっ!? 校長、どうしてここに!?」

「なっ!?」

 

俺の渾身の演技。男はあっさり騙されて、後ろを向く。

ちろっと後ろを確認。門番は居ないな。

 

「いねえじゃ」「うらぁっ!」

 

振り向きに助走付き全力顔面パンチ。コツは頬を殴るようにすること、思いきり殴ること。

不意を突かれた男は倒れる。

 

「ってぇなこの野郎!」

 

が、顔を押さえつつすぐに立ち上がった。

 

「ちっ、俺も鈍ったな。前は一発で刈り取ったんだが……おい脳だけ筋肉。誰がデュエルするなんて言ったんだ? 一人で盛り上がって恥ずかしくなかったのか?」

「ん・だ・と……!」

 

軽く挑発すると、男は立ち上がって殴りがかってきた。大振りの右ストレート? 馬鹿だなこいつ。

左手でパンチを緩く受け、引き付けて手首を掴む。右手を伸ばして襟首を掴む。

相手の勢いを下へ向けるように左手を引き、同時に背中に乗せるように左足を前に出す。

 

「よっと」

「うおおおっ!?」

 

背負い投げ。

地面に頭がぶつかると危険だから、そこは投げっぱなしにせず右手を握り続けることで回避する。

 

そして座り、左足を男の首を押さえるように伸ばし、両足の太ももで二の腕を挟む。手のひらを上になるように捻り、腕を伸ばしてやる。

ほい、腕ひしぎ十字固めの完成。ひしいでない反対の腕は右足の裏で適当に押さえる。外れてもさして問題はない。

ちなちに、これは一秒かからずにやらないと逃げられるかもしれないから注意。

 

「な、ぐっ、放しやがれ!」

「逃げてみろよ」

 

男は暴れるが、そう簡単には外れない。

……このままだとじり貧だからゆっくりと肘に負担をかけていく。

 

「良いのか? そろそろ肘が壊れるぞ?」

「な、ぐぅ……!?」

「肘が壊れたら……デュエルなんか出来なくなるよなぁ?」

 

更に力をかける。……おっと、今ミシとか聞こえたか?

 

「……あ、ちょっとヤバいかもしれん」

「なぁっ!? は、はな、放せ!」

「ん~、どうすっかな~。喧嘩吹っ掛けてきたのはそっちだしな~」

「分かった! 謝る! 謝るから!」

 

ちょっと涙目になってる。……もうひと押しするか。

 

「それだけか?」

「な……に?」

「こういうのってよぉ。それなりの……賠償金とか……なんとか……なぁ?」

「分かった! 分かったよ!」

 

ついに音をあげたか。

 

「所持金だけでいいぜ?」

「う、ぐ、ぐぅ……!」

 

十字固めをほどくと、男は財布を置いて逃げていった。

 

「デュ、デュエルしたら覚えてろよ!」

 

分かりやすい捨て台詞だ。落ちてる財布と『眠り姫』を拾い、レッド寮へ向かう。

誰かにクスクス笑われた気がして周りを見回すが、誰かが隠れているようでも無かった。

 

「気のせいか」

 

さーて、帰るか。

 

――――――――

 

「おニちゃんおニちゃんおニちゃ~ん!」

「うるせえ聞こえてる」

 

レッド寮の前。宇良華がピョンピョン跳ねていた。

 

「遠亞のやつは?」

「あそこ」

 

指差された場所には遠亞と思われる物体が崩れ落ちていた。

 

「なあ。あれ、本当に遠亞か?」

「うん!」

「どうしてああなった?」

「おうち見たら、急に」

「…………なるほどな。大体分かった」

 

察するに、レッド寮のオンボロ具合に絶望した―――ってところだろ。

なら、やることは一つ。近付いて、蹴る。

 

「おらトーワ!」

「ぐふっ!? にゃ、なにをするんだ十哉!」

「俺は良いが、上級生にはさん付けな」

「はぁ?」

 

遠亞は立ち上がり服の汚れを払う。そして、俺を睨み付けてくる。

 

「僕に指図するな!」

「はいそこ、今日から俺の舎弟な。……これは指図じゃなくて命令だから」

「んなっ!?」

 

やってらんねーけど、社長から直々に言われたからなぁ。

 

「ふざけるな! 誰がお前なんかの舎弟になんか―――」

「特別にお前の部屋はあっちの万丈目ハウスをあてがってやる」

「話を聞け!」

「そっちこそ聞きやがれ、ああ?」

 

頭を掴み、ちょいと脅す。あっという間に萎縮する遠亞。

 

「このレッド寮で一番いい部屋をやるっつってんだ、文句あんのか?」

「な、ない……」

「だろ? ついでに俺は、このレッド寮でのルールを教えてやると言ってるんだ。先輩の話はちゃんと聞きやがれ」

 

無言でコクコク頷く遠亞。……宇良華が少しひいてるから、この辺にしといてやるか。

 

「んじゃあ、荷物置いてこい。寝室は二階な」

「は、はい!」

 

遠亞が走っていく。あー、やっべ、少しやり過ぎたか?

 

「おニちゃん、こわ~い」

「おう、怖いぞ。帰れば怖くなくなるぞ」

「でもうらか、怖いの大好き!」

「そうかよ」

 

『眠り姫』を引きずって自分の部屋に戻る。

―――ん? そういやぁテンテンの奴、宇良華について何も言わなかったけど……空気を読んだのか? あいつなら俺に妹なんて居ないって知ってるはずだしな。

 

待て、そうか! テンテンに口添えしてもらえばこの妹詐欺を追い返せる!

 

「お兄ちゃんそれは無理だよ……うふふ」

「あ? 宇良華、今なんか言ったか?」

「んーん! なんでもないよっ!」

「そうか?」

 

さーてガキンチョを追い返す方法も考え付いた事だし、遠亞だな。どうこき使うか。

 

「宇良華、ちょっと『眠り姫』の事見ててくれ」

「あーい!」

 

早速万丈目ハウスへ。正直、まずは色々教える事がある。分からない事だらけの筈だしな。

 

「おう遠亞。入るぞ」

「じゅ、十哉さん!……な、なんですか。何か用ですか?」

「態度変わりすぎだろ。普段通りでいい」

「う、うん……」

 

ん? カード広げて何やってんだ? 荷物も放りっぱなしだし。……ま、良いか。どうせデッキ調整だろうし。

 

「んじゃ、まずはそのカードを片付けろ。次に、荷物をしっかり戻しとけ」

「な、良いだろこれは! 後で自分でやる!」

「そんな暇無いから。悲しい事にな」

「は?」

「良いから片付けろ」

「わ、分かったよ」

 

掃除はまだ良いか。洗濯と、食事の用意、後は……金の仕送りについて聞き出して……あーくそ、やること多いんだよなぁ。

 

「片付けは終わったけど」

「そうか。そんじゃまずは―――」

 

腹へったな。

 

――――――――

 

 

「宇良華、釣り行くか?」

「いく!」

 

貧相とはいえ、自作の釣竿を二本担ぐ。あー新しく幾つか作らねぇとな。

それと、バケツ、網、餌箱。

 

「……こいつは置いてくか。寝てるしな」

 

『眠り姫』は放置。疲れただろうし、海に落ちても困る。起きてればこいつほどよく釣れる奴は居ないんだけどなぁ。

 

「十哉……それは……?」

「ん? 食材調達の道具。これお前の分。くれてやる」

 

片方の釣竿を渡す。遠亞は受け取りつつ、怪訝な顔をする。

 

「……寮食は?」

「んなの五、六年前にレッドコースに誰も居なくなって、寮母さんが必要なくなってから無くなった。校長に掛け合ったが、今更数えるほどしか所属していないレッド寮にお金を回すつもりは無いらしい」

「そんなの差別じゃないか!」

「購買を使うなとは言われてないだけマシだ」

 

レッド寮……もはや魔窟と化してるからな。俺のじいさんがここの出じゃなけりゃ、とっくに潰されてる。

 

「幸い、海がすぐそこだからな。……そのせいで外に服を干せないんだが」

「え、およふく干せないの?」

「潮風でパリパリになっちまうんだ」

「へー」

 

話している内に普段から利用している釣りスポットへ。つっても、ただの海岸なんだけどな。

 

「ほい、遠亞。餌はこれ使え」

 

持ってきていた餌箱を地面に置く。

 

「これは?」

「ミールワーム」

 

箱を開き、中の虫を釣り針に付ける。

 

「うえっ、なんだこれ……気持ち悪いな」

「『寄生虫パラサイド』よりはマシだろ。ほら、お前も付けろ」

「はあっ!? これに触れって!?」

「『精神寄生体』じゃないから乗っ取られないぜ。な、宇良華」

「ねー! よっと!」

 

宇良華は既に何回か釣りしてるから慣れたもんだ。

 

「ほら、遠亞も速くしないと……夕飯無くなるかもな」

「んなっ!?」

 

絶句する遠亞を横目に来る途中で折った太い枝を使って簡易的な釣竿を作る。糸とかは流石に買った。

 

「お……オシリスレッド……なんてところなんだ……!」

 

俺もそう思う。

 

「おニちゃん、おニちゃん!」

「お、来たか」

 

宇良華の釣竿にアタリ。

 

「遠亞、よく見とけ? こうやって、釣るんだ!」

 

釣竿を宇良華の手の上から握り、釣り上げる。

 

 

――――――――

 

 

「……もしもし。あー、社長さんに。え? あぁ。遠亞の指導してる十哉と言います。

 …………どうも。遠亞から聞いたんですけど、お金の仕送りが月に十万だとか。流石にそんなに必要無いので……え? ……あぁ、分かった。敬語は無し、で。んじゃあこっちとしても気軽にさせて貰うぜ。

 とにかく、遠亞への仕送りは一万。精々二万にしてくれ。―――いやいやいや、無しはキツいから。それは生きていけないから。ああ。それでお願いするぜ。

 ……ハハハ、そんな大層なもんじゃねえよ。……え、良いのか? やー、社長さんの個人用番号教えて貰えるとは、恐縮だぜ。……ああ、また何かあったら電話するさ。そんじゃ」

 

通話を切る。

 

「酷い事……してるわね……ふわぁ」

「やっと起きたのかよ。もう夕飯だぞ」

 

今は遠亞と宇良華に魚を焼かせている。その間にあまり遠亞に聞かせたくない事をする。我ながら完璧な作戦だ。

 

「米は昨日の残りを使ったから、明日炊いて……あ。そうか人数増えたから買う量増やさなきゃいけねぇのか」

「ふわぁ……すっかり主婦ですわね、お孫さん?」

「お前は相変わらず引きこもりみたいな生活だよな『眠り姫』」

 

さーて、明日の朝が楽しみだ。

 

「うわ~!」

「きゃあっ!? とーあ、何でそうなるの!?」

「…………」

 

……こりゃあ今晩は飯抜きか。はぁ。




おや、前回の次回予告での遠亞は仕送り減らしの事知っていたのに……十哉、知らせてないぞ? んんん?
まあ、遊戯王の次回予告なんてそんなもんでしょう。

では、次回予告。ナレーター:十哉

毎年恒例、新入生歓迎会がどの寮でも行われたらしいな。俺らのも、まあ、歓迎会だろ。うん。
よお、テンテン。え? 歓迎会が出来なかった? そんで今からデュエル? ふーん、お疲れさん。相手は?
―――げ、あれって俺が殴った奴。

次回、『生徒最強・天上院天馬』
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