クィレル、御辞儀、ハリー達はどんな目に合うのか。
では18話どうぞ。
時はハリー達が侵入しようとする数時間遡る。
私、クィリナス・クィレルは主たる闇の帝王ヴォルデモート卿のために賢者の石を盗み出す準備を進めていた。呪いを回避するアイテム、解毒剤などを懐にしまう。
あの老いぼれのダンブルドアは今頃魔法省に向かっている頃だろう。
チャンスは今日しかない。それにユニコーンの血を口にしたこの体はもう限界が近かった。
最初の扉を開け中に入る。ケルベロスがこちらを確認すると凄まじい殺気を放ってくる。
すぐに魔法で勝手に奏でる竪琴を発動させる。あのバカな森番からの情報ならばすぐにでも眠るだろう。
だが、ケルベロスは全く速度を落とさず噛み殺そうと突っ込んできた。
何とか避けることができたが想定外の事態だ。
「殺せ!」
頭の後ろから主の命令が轟く。
「
緑の閃光は確実にケルベロスに命中した。この呪文は全ての生命を終わらす。次の扉に向かおうとしていると後ろから強い衝撃を受け吹き飛ばされた。床を転がり壁に突っ込んでいく。
防御用のアイテムのおかげでなんとか死ななかったが肋骨が何本か折れているようだ。
ケルベロスは健在だった。
「ころす!」「ころす!!」「ころす!!!」
「な、なぜ死なない!? 御主人様どうすれば……。」
「死の呪文を受け死なぬだと……。まさかダンブルドア……、分霊箱を使ったか!? いや違うな……、クィレル! 悪霊の火を使え!」
「は、はい!」
ケルベロスの猛攻を何とか凌ぎながら悪霊の火を当てる。全身が炎に包まれてケルベロスは息絶えた。当初の予定では無傷で魔法も使わず進むはずだったが何たる失態か。
次の部屋に降り立つ。中は暗くじめじめしていた。周りは悪魔の罠がそこら中に植えられている。
「くそ!」
悪態をついて光を杖から出す。しかしケルベロス同様通常とは違うのかこちらを絞め殺そうと蔓を伸ばしてくる。避けながら次の部屋を目指すが、何度か蔓に絡まれてしまった。そのたびに激痛が走る。何とか次の部屋に逃げるて絡まれた部分を見ると、大きく腫れあがり棘で刺された跡が大量にあった。
「なんだ……これは。悪魔の罠に棘など無かったはずだが……。」
だんだん意識が朦朧としてくる。なにがなんだか わ か ら な く なっ て き た 。
「解毒剤を飲め! 毒だ! 愚か者!」
あたまのうしろのこえにしたがってふところのくすりをのむ。
「はっ、私は何を……。」
どの解毒剤が効果があったかは不明だが何とか持ち直した。まだ体は怠いが何とか動ける。
辺りを見渡すと羽根のついた鍵がそこら中に飛んでいる。中央には箒があるためそれで取るのだろう。
「気をつけろ。おそらく正しい鍵を手にした瞬間に他の鍵が襲ってくるはずだ。」
御主人様のおかげで正解の鍵はすぐに見つかった。予想どおり鍵も襲ってきた。
だが、予想外のことも起きた。
「がぁあああああ! 腕がぁああああああああ!」
鍵を手にした腕に激痛が走った。離すわけにはいかないのでそのまま耐えて使う。
扉は開いたのに手から鍵が離れない!
「御主人様ぁあああああ! どうすればぁあああああああ!」
「切断しろ! 今すぐだ!」
「しかしぃいいいいい!」
「切らねば死ぬだけだぞ!」
左腕を肘上から切断する。止血もしないまま次の部屋に転がり込む。
息も絶え絶え起き上がると巨大なチェスの駒が一斉に襲い掛かってきた。
逃げまどいながら、止血を施す。持ってきていた回復薬とユニコーンの血を全部使って何とか動けるようにする。
「
駒どもを爆破していく。しかし次の瞬間には駒はマグルの映像機器の逆再生のように元に戻る。
「キングを狙え! それが核だ!」
命令に従いキングを狙う。しかし他の駒に阻まれてなかなか成功しない。
逃げながら魔法をひたすら行使する。今までの毒や呪いも完全に取り除いていないので五感も徐々におかしくなってきた。
「
三十分以上かけてようやくキングを粉砕する。
もうだめだ……。死んでしまう……。
「休むな! あの老いぼれがいつ戻るか解らんのだぞ!? さっさと先に進め!」
御主人様への恐怖から精神を削りながら先に進む。
そうだ……、この次は私が仕掛けた罠だ……。トロールが相手ならば何の問題もない……。
そんな希望もすぐに粉砕された。
中には確かにトロールがいた。しかしあんな全身を覆う鎧などなかったはずだ。
鎧はこちらに走ってくる。トロールならば私は命令することができる。たとえどんな魔法や魔法薬で操られていようとも問題はない。
そのはずだった……。
命令など聞かない鎧は手にした大剣を私に振り下ろす。躱す力などどこにも残っていなかった。
(あぁ……。躱せないな……。死んだ……。)
しかし次の瞬間私の体は剣を避けていた。それだけではない、自分の意志とは関係なく動いていた。
「クィレル、貴様の体俺様が使うぞ。代償として貴様の魂は削られていくが、問題はあるまい。偉大なるヴォルデモート卿の復活の礎になるのだから本望だろう。」
御主人様が何か言っている。解らない。ただ激痛と苦しみ、自分が薄れていく感覚しか感じられなかった。
「アバダ・ケダブラ! やはり死なぬか……。これはトロールの死体を鎧に施された魔法で動かしているな。なるほどクィレルの命令を受けつけぬわけだ。ならば!」
御主人様が私とは比べ物にならない魔法で切断や爆破など集中して大剣を持つ腕に当てる。その代償に私は消えていく。
何十発も魔法を当てられ腕が壊れ、離れた大剣で鎧を壁に縫い付ける。それと同時に私は体の主導権を取り戻していた。
「やはり、長時間は体を支配するには力が足りぬ……。クィレル急げ!」
言われるがまま次に行く。
小さな部屋に薬が複数置いてあった。
足を踏み入れた途端、前後左右全てから黒い炎が立ち上った。問題が提示される。どうやら先に進むには正解の薬を飲む必要があるようだ。
『10.9.8……』
時間制限付きらしい。徐々に炎が迫ってくるが、私はもはや何も考えられない。
「この程度の問など……この俺様を侮るな! 一番左だ! さっさと飲んで進め!」
飲む、進む。そして全身を焼かれる。体の中では薬が私を壊していく。
「なんだと!? おのれぇええ!」
叫び声も上げられないまま、体が勝手に進んでいく。
炎の抜けた先で倒れこむ。最後に見たのはこちらを冷静に観察している一人の子供だった。
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予定通りに最後の部屋にたどり着いた段階で侵入者は死亡した。
最後の部屋に到着するまでの悪魔の罠の毒、鍵の呪い、毒薬、そして三度の戦闘での疲労と魔力消費。これらの組み合わせでどんな魔法使いでも確実に死亡する計算だった。
クィレルの死体から黒い靄が発生する。靄は次第に蛇顔を形成していく。
「お初にお目にかかります。闇の帝王ヴォルデモート卿。あなたとは色々と話をしてみたかったのですが……、時間切れですね。ダンブルドア校長がホグワーツに到着しました。逃げた方が賢明でしょう。」
「口惜しいが今回は諦めざるを得ないな。貴様、レナード・テイラーだったか。俺様を見逃すのか?」
「その状態のあなたを捕らえる準備はしていませんし、僕は賢者の石を守れとしか言われていません。次に会う時はゆっくりと話をしたいものです。」
「ふん。完全に復活した時に考えてやろう。俺様も貴様の『眼』には興味がある。」
そういうと黒い靄は壁をすり抜けてどこかに行ってしまった。
みぞの鏡を前に立つ。ダンブルドアは最後の仕掛けをレオにも伝えていなかった。
(さて、闇の帝王も去りましたし解析しますか。)
解析を始めた途端、鏡の中のレオが賢者の石をポケットに入れた。
(あれ? ……なるほど、使いたい者には手に入らないが、見つけたい者には手に入れられるのか。僕は使いたいんじゃなくて研究をしたいから大丈夫だったのか。)
とりあえず、ダンブルドアも戻ってきたし賢者の石を解析しながら戻ることにした。
(ハリー・ポッターがこちらを目指しているようだし鉢合わせになるな。)
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扉の先にはあのレナード・テイラーが立っていた。
こちらを見ても眉一つ動かさないでいる。
「レナード・テイラー! なんでお前がここにいる!? まさかお前も賢者の石を狙っていたのか。そうか! スネイプの仲間なんだな!」
僕とロンは杖を取り出す。しかしあいつはこちらを見向きもせず手に持った石を凝視している。腹が立つ奴だ……石?
「まさか……、その石は!」
「ほっほっほ、そのまさかじゃよ。とりあえず落ち着いて杖をしまいなさい。」
後ろから偉大なる魔法使いの声がした。振り向くとダンブルドアが立っている、これで僕たちの勝ちだ!
「ダンブルドア校長! 戻られたんですね! こいつとスネイプが賢者の石を!」
「ああ、ハリーそれは誤解じゃよ。レオ、状況はどうじゃった?」
「はい。クィレルは死亡。ヴォルデモートはダンブルドア校長が戻られたことを知って逃走しました。霊体用の捕縛準備をしていなかったため取り逃がしました。みぞの鏡の前に立ったら賢者の石を入手してしまったため、こうして持ってきました。どうしましょうか?」
なんだ? こいつは何を言っているんだ? なんでクィレル先生が死んでヴォルデモートの名前が出てくる。スネイプは? それにダンブルドアはこのことを知っていたのか?
「ダンブルドア校長、いったいどういうことなんです!? ヴォルデモートがいたんですか? スネイプじゃないんですか?」
「いかにもそうじゃ。クィレル先生にヴォルデモートが憑りついておった。そして復活のために賢者の石を狙ったのじゃ。レナード君にはその守りの強化を頼んでいての。さぁ、もう夜も遅い。フィルチさんに見つからないように戻りなさい。レオはわしとともに校長室に行こう。」
僕とロンは何が何だかわからないまま寮に戻った。結局、何をするわけでもなく今日は終わった。
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校長室。
「以上が事の顛末になります。賢者の石はお返しします。」
「うむ、ご苦労じゃった。それと賢者の石は君が持っていてよい。ニコラスからの許可は得た。夏休みにニコラス夫妻を訪ねてみなさい。向こうに旅立つ前に君と賢者の石について色々話してみたいそうじゃ。」
「ありがとうございます! さっそく研究室に戻って解析してもよろしいですか!?」
「もちろんじゃ。もうヴォルデモートも狙うことは無いじゃろうが、賢者の石については秘匿しておくように。明日にでも賢者の石は砕いたと発表しよう。賢者の石の防衛、本当によくやってくれた。わしもニコラスもそんな君だから賢者の石の研究を許可したんじゃ。」
「そうですか。では失礼します!」
レオはダンブルドアの話をほとんど聞かず速足で校長室を去っていった。
校長室でダンブルドアは一息つく。
(賢者の石がトムの手に渡ることは阻止できた。しかし、レナード・テイラーの力は想像以上じゃった。しかも闇に対して拒否感はない。ただ純粋に魔法を極めようとしているだけのようだ。ただそれ故に闇にも躊躇なく進むだろう。はたして賢者の石を渡したのは正しかったのか……。ハリーについても本当はヴォルデモートと対峙させて英雄への道を進ませたかったのじゃが、レナードの影響でほとんど今回の件に関わらなんだ。さて、これからどうしたものかのぉ……。)
闇の脅威は去った。しかしダンブルドアの苦悩は晴れることは無かった。
さて賢者の石の防衛完了です。
以下罠の詳細
〇ケルベロス
音楽の弱点は克服済み、知性UP。さらに分霊箱の要領で魂を首ごとに分割、疑似的な分霊箱状態。そのため下手な呪文は効果がなく、死の呪文でも死なない。御辞儀は分霊箱を使いこなしていたからすぐに見破って悪霊の火を使用した。体内で分割していたのみなので死亡した。レオは分霊箱を知らなかったが独自理論でこれを作成。ダンブルドアが危惧したのはこれのこと。
〇悪魔の罠
光の弱点は品種改良で克服。蔓に毒針を多数仕込んである。解毒剤で一時効果無くなるが体内で潜伏して気づかぬうちに手遅れになる。
〇鍵の部屋
全体的に鍵のスピードUP。正解の鍵は手に取ると呪い発動+離れなくなる。原作のダンブルドアが引っ掛かった指輪と同等の呪い。逃れるには切断しかないが呪いは体に残留。
〇チェス
白黒すべての駒が襲い掛かる。核のキングを破壊しなければ無限再生。
〇トロール
クィレルを考慮してトロールの死体利用。鎧のイメージはグラブルのコロッサス・マグナ。鎧はかなり頑丈だが無敵というほどではない。
〇薬の理論問題
問題はそこまで難しくないが時間制限10秒。しかし現れる薬は全て毒薬。
時間経過で焼かれるか、薬を飲んで死ぬかの二択。薬の効果は致死性の毒+悪魔の罠の毒と鍵の呪いの効果を爆発的に高めるもの。
〇みぞの鏡
レオが関与していないため原作同様。
これがレオの罠の改良でした。実際はもっと凶悪に出来るのですが、どうせなら全部の罠の性能を見てみたいということでギリギリ最後の部屋で死ぬように調整してあります。
ハリーとロンは一歩も部屋に入ることなく終了。原作主人公なのに……。
レオ、報酬に賢者の石ゲット! 引き換えにダンブルドアの苦悩が増大!
次回で賢者の石編は終了です。