では20話どうぞ。
20. 夏休み
夏休み。それは多くの学生にとって至福の時間だ。ホグワーツの生徒たちにとってもそれは変わらない。あるものは友人と遊びまくる。あるものはクィディッチの練習に夢中になる。ほとんどが宿題など忘れている中、宿題などさっさと終わらせて自主的に魔法の勉強に取り組んでいる学生などいるのだろうか?
ハーマイオニー・グレンジャーはその存在が疑わしい稀有な学生だった。
今日で夏休みに入って一週間。親友のレナード・テイラーが大錬金術師ニコラス・フラメルの元から帰ってくるのだ。今はレオの研究室で帰りを待っているところだ。
(この一週間、最初の一日で宿題は終わらせた。残り六日で飛行術はマスターしたし、
もうすでに同学年ではレオ以外に勉強でハーマイオニーに勝てるものなどいるはずがない、いや上級生にも彼女以上の存在は数えるほどだ。それでもまだまだ目標ははるか先だ、その先を目指し続けなければ。ハーマイオニーは握った手を真上に挙げて気合を入れた。
その瞬間、音もなくレナード・テイラーが現れた。通常の姿現わしでは出現時にポンといった音が鳴る。レオは屋敷しもべ妖精の魔法を参考にその点を改良していた。
ハーマイオニーは手を真上に挙げた格好のまま顔を赤くして固まっていた。
(レオ!? いきなりなんてずるいわよ! 変な恰好見られちゃった……。)
コホンと咳払いをして仕切りなおす。
「お帰りなさいレオ。どうだった?」
「ただいま、ハーマイオニー。いやぁ……すごかったよ!! 賢者の石の創造の着想、開発経緯、精製方法、問題点。色々と教えてもらったし、二人で更なる課題や発展について毎日熱く語り合ったよ。とりあえず賢者の石を造るだけなら可能にはなった。だけどそれだけじゃ今までのものと変わらない! 僕はこれを更に発展させていくつもりだよ。」
「いい経験ができたみたいね。私もこの一週間で成長したわ! その成果見せてあげるわ。」
二人は魔法実験スペースに移動する。レオはハーマイオニーがどれだけ進歩したか期待していた。
ハーマイオニーが魔力を集中させる浮き上がる。その次には箒と同じくらい速度で縦横無尽に飛び回る。最初は暴走したのかと一瞬思ったが、様々なアクロバティックな挙動や急停止など繰り返す様子を見て完全に制御していることを確信した。それだけではないかなりの速度を出しているのに体には負荷はそれほどではなさそうだ。周りもしっかり認識して飛行している。
降りてきたハーマイオニーは的用の人形に
最後に上下から最大の力で押しつぶす。人形は力に耐えきれず圧壊する。
それをハーマイオニーは見て深く息を吐き終了を告げる。レオは惜しみない拍手をおくる。
「いやぁ、予想以上だ! 並大抵の努力ではこうまで上達しないよ。僕が教えていなかった使い方までマスターしているとは、流石だハーマイオニー!」
「ありがとう、レオ! 飛行術はフェリスさんに協力してもらって身体強化の魔法で制御したわ。私のアレンジで動体視力も強化してより確実にしたわ。
「いいね、やっぱり君は良い! 夏休みの残りは勉強だけじゃなくて戦闘訓練もしてみるかい?
「そうね。魔法薬も書物だけじゃなく実際に作らないと覚えないし、それと同じで魔法を知っているだけじゃなく使ってみないとね。やってみるわ。」
少し休憩した後、レオは宿題を終わらす。
夕食をハーマイオニーと両親と楽しみ、これからの予定を立てていく。
二人で色々やりたいことを考えている時間も楽しいものだった。
1992年8月
夏休みも後半に入り、ホグワーツから二年生で使う教材のリストが届いた。
テイラー一家はハーマイオニーを連れてダイアゴン横丁に買い物に来ていた。
レオとハーマイオニーはリストを見て困惑していた。
「このロックハートって人の教科書多いな。というか誰なんだ?」
「レオも知らない人なの?」
「魔法研究の学会とかでは名前は見ないよ。父さんは知っていますか?」
首を横に振って答えるアースキン、心当たりはないようだ。代わりにフェリスが答える。
「何かイケメンの冒険家? そんなのみたい。学生時代の友達がキャーキャー言ってたわ。そのリストにある本は自分の活躍をまとめたものらしいわ。彼がいかに素晴らしい人物かを何時間も聞かされれてうんざりだわ。きっと新しい先生はそのロックハートのファンの魔女なんじゃないかしら。」
レオたちはふーんと興味なさげに答えるだけだった。
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に到着した一行は唖然としていた。もの凄い人だかりがいるのだ。例のロックハートのサイン会が行われているのが原因らしい。哀れにも買い物に来ていたハリー・ポッターが捕まり一緒に写真を撮られていた。
「あら、たしかにイケメンね。でも私のアースキンの方が絶対いい男よ。」
フェリスは自信満々に宣言した。アースキンは顔を赤くしつつも嬉しそうだ。
(顔は良いわね。でもそれだけだわ。)
ハーマイオニーも特に感想はそれだけだった。周りの女連中がなぜあそこまで熱狂しているのか理解できなかった。
ロックハートが大々的に今年の闇の魔術に対する防衛術の教師になると宣言する。
レオとハーマイオニーは不安しか感じることができなかった。
解放されたハリーが戻っていく。どうやらウィーズリー一家と行動を共にしているようだ。
ハーマイオニーが挨拶に行くので付いていくレオ。
「ハリー、ロン! 久しぶり。」
「ハーマイオニー。元気だった?」
「久しぶり! ……げっ! テイラーじゃないかよ。」
レオを見て嫌な顔をするロン。追い打ちで更なる嫌いな奴が現れる。
「有名人は書店に行くだけで大変だね、ポッター?」
ドラコ・マルフォイがこちらに近づきながら嫌みを言ってきた。
ウィーズリー家の女の子、ジニーというらしいが庇って更にウィーズリー家の父親とマルフォイの父親も現れて、口論からの殴り合いの喧嘩になってしまった。
「どうしよう、レオ。止めた方が良いかな?」
「あー……。離れよう。爆発しそうだ。」
レオはハーマイオニーの手を取って歩き出す。
壁際まで離れたとき怒声が爆発した。
「何をやっているんだ! この馬鹿どもが!!」
予想して音を遮断していたレオとハーマイオニー、フェリス以外は全員耳を押さえている。
一瞬にして書店内は静かになった。
「あ、アースキン……。い、いつから見ていたんだ?」
「そんなことはどうでもいいだろ。それよりアーサー・ウィーズリー! 大の大人が公衆の面前で殴り合いなどどうかしているぞ。それでも魔法省の一部門のトップか! もっとしっかりしろ!」
「いや……しかし、ルシウスが……。」
二人のやり取りを無視して逃げ出そうとしているルシウス・マルフォイを呼び止めるアースキン。
「相変わらず逃げるのだけはうまいな、ルシウス・マルフォイ。聖二十八一族なんだろ? もっと相応しい振舞いしたらどうだ? アズカバンなんかがお似合いだぞ。今からでも遅くない、ぶち込んでやろうか?」
ルシウスは憎らしそうにアースキンを見る。しかしアースキンに一睨みされると息子を連れてさっさと書店から立ち去ってしまった。
「さて、アーサー。この後飲みに行こうか。もちろん説教だ。じゃあ母さん、二人を頼むよ。」
「わかったわ。あんまりきつくしちゃダメよ?」
アーサーはアースキンに連行されて行った。
ウィーズリー兄弟とハリーはそれを見てるだけしかできなかった。ウィーズリー家の母、モリーはよろしくお願いしますと頭を下げていた。
「アースキンさんってすごいわね。一喝して黙らせちゃうし、あのマルフォイの父親もすぐ逃げちゃったわ。」
「父さんは怒ると怖いしね。マルフォイ家は死喰い人として活動していた時に父さんに何度も痛い目を合わされていたみたいだし、トラウマになっているんじゃないかな。」
書店での買い物以外では特にトラブルもなく買い物は終了した。
帰ってからロックハートの本を数冊読んでみたが、実際の魔法や魔法生物とは少し描写が異なっていたため、創作であるとの結論に至った。ただ、小説としての出来は良かったので本自体は楽しんで読むことができた。
(というか、こんな本を事実だとして出版している。詐欺師か……。ホグワーツでの授業で化けの皮がはがれるな。というかダンブルドア校長なら見抜いていそうなものだけど。)
とりあえず最初の授業で退場してもらうことが決定した。
翌日、ハーマイオニーにも本の感想を聞いたところ
「面白い内容だったわ。あの冒険をこなしているなら闇の魔術に対する防衛術の先生としては文句ないわ。……本の内容が事実だったらね。」
どうやらハーマイオニーも本の内容に疑問を抱いているようだ。
レオはホッとした。ハーマイオニーが顔が良いだけで騙されるような女性ではないことが分かって良かった。
夏休みの残りもレオは研究、ハーマイオニーは自分のレベルアップに費やした。
レオの十の指輪も完成し、調整も終了した。これで後は実戦形式でのデータ収集をすれば問題ないだろう。
あっという間に休みの残りは過ぎていく。とうとう明日は二年生の始まりだ。
夏休み……懐かしいですね。
ハーマイオニーのレベルはすでに並みの死喰い人と戦えるぐらいにはなりました。
ハーマイオニーは岩心には引っ掛かりませんでした。レオのおかげでレベルアップしてますし、嘘も見抜けました。
では次回お楽しみに。