【完結】ハーマイオニーと天才の魔法式   作:藍多

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仕事をして、アイドルのプロデュースして、空の上で蛸を狩って、水着鯖とレースに監獄……。
充実した毎日だ。

では28話どうぞ。


28. 決闘大会 後編

「さぁ、後半戦の開始だ! レイブンクローチームの入場! レナード・テイラーに一番影響を受けているこのチームがどういった戦いをするのか見ものだぜ。」

 

レオの勉強会にも顔を出している生徒たちで編成されたチームだ。レオが記憶している限りでは相当に魔法の理解と発動に優れた人たちだったはずだ。

あちらはこちらの小さな動きまで見逃さないように集中している。

 

「試合開始!」

 

試合開始宣言と同時に二人が左右から突撃してくる。

片方は煙幕や光といった魔法でこちらの視界を妨害してくる。

もう一方は壁を作りだしたり、動きを封じる魔法を駆使する。

攻撃をしないことからこの二人は妨害、足止め役だろう。本命は残りの生徒たちか。

何を企んでいるか見てみたいが一応これも課題の一環なわけなので行動を起こす前に潰してしまおう。そう決めて周りの妨害を吹き飛ばす。

 

フィニート・インカンターテム(呪文よ追われ)エクスパルソ(爆破)。」

 

全ての妨害を跳ね除け、ついでに二人を失神させて本隊に向かって移動する。その一歩目を踏んだとたん足の裏から大爆発が起こった。

 

「なんという爆発だ! これには流石のテイラーもひとたまりもないか!? というか本気で殺す気じゃないだろうな!? 容赦ないぜレイブンクローチーム!」

 

実況はああいっているがレイブンクローは全員あれが足止めが精いっぱいだと確信している。

レナード・テイラーとはこの程度でどうにかなるほど小さな存在ではないのだ。

 

予想どうり無傷で歩みを進めるレオ。だが一歩進むごとに爆発、粘着物質での足止め、剣の雨、様々なトラップが発動する。妨害役の二人に注意が向いているうちに透明化した生徒でこれだけの罠を仕掛けたのだ。だがこれでも移動スピードを遅くするだけ、ダメージには至らない。だが時間を稼ぐことが目的なのだ。そういった意味では大成功である。

 

「よし……。皆、準備は完了したか。」

 

「ああ。間に合ったぞ。」

 

「了解! 皆集中しろ! これで決めるぞ!」

 

残りの全員が杖を一か所に向けて構える。向ける先は勿論レナード・テイラーだ。

 

「「「エクスペリアームス(武装解除)エミッシオ(解放)! テンプス(収束)!」」」」

 

あらかじめ前に進む力のみを除外して発動して留めておいた武装解除を解放させ、一点に集中させる。計十の武装解除の呪文は集まり一つの大きな光球となった。

 

「「「「追加! エクスペリアームス(武装解除)! さらに、アクセレイト(加速)!  食らえぇえええ!」」」」

 

追加され、合計二十発分の武装解除の巨大な閃光。それが加速まで付加されてレオに向かって進む。

トラップを抜け、透明化した生徒も倒したレオはその光景を美しく感じた。

 

(いい……。全ての武装解除が無駄なく重なっている。全ては僕を、僕の防御ごと貫くためだけに全員が同じイメージを持って魔法を使っている。相当な特訓をしたんだろう。このまま受ければ最終防御層まで到達するな……。その後で追撃を受けたらダメージは必死。ならば……。)

 

「『反射』、『遮断』右腕集中。『増強』発動。結合解除式付加。母さん直伝の拳で迎撃させてもらう!」

 

レオの腕には幾重にも防御、補助、攻撃の魔法が施され眩い青の光を放つ。

赤の閃光と青の腕がぶつかり合う。一瞬の攻防。だがそれを見ていた全ての人は二つの魔法がぶつかり合う幻想的な光景を目に焼き付けていた。

 

勝敗を分けたのはやはりレオの『眼』であった。武装解除を束ねている部分を解除する式を拳に纏わせていたのだ。一瞬での作成であったため不出来な魔法ではあったが、それでも赤の閃光を緩めるには十分だった。青の拳に砕かれた光球は元の武装解除に分かれて殴り返される。この攻撃に全てを賭けていたレイブンクロー代表は防御をすることもできず等しく吹き飛ばされた。

 

「試合終了~! まさかの魔法を殴り返しての決着となるとは誰が予想しただろうか!? しかし、今の光景はこれからのホグワーツの歴史に語られることになるでしょう! フリットウィック先生、レイブンクローチームはどうでしたか?」

 

「今日ほど、教師になって良かったと思った日はありません。生徒たちが自分で魔法を考え、創り出し、あんなに立派に戦った。私は彼らを誇りに思います。テイラー君ももちろん同じです。」

 

「確かに今までで一番レナード・テイラーを追い詰めた感じがしますね。さーて続いては皆さんお待ちかね! 悪戯ではこいつらの右に出る者はいない、ウィーズリーツインズ! フレッド、ジョージ・ウィーズリーだ! だが相手はあのレナード・テイラーだ、生半可な悪戯じゃ通用しないぞ!? それでも俺たちを楽しませることができるのは確信してるぞ!」

 

 

「「イエーイ!!」」

 

二人は箒に乗って入場してきた。レオとしては彼らは真面目にこちらにダメージを与えるのが目的ではなく、大勢の前で悪戯グッズの宣伝をすることが大事なのだろう。レオが協力したことで色々なグッズができている。試作品もまだまだ多いがレオに対して使用することで性能実験をするつもりだろう。この大会が終わったら評価レポートでも提出してみるか。

 

色が変わるたび色んな感触を体験できるカーペット。発動者が任意で消さない限り増え続ける花火。前後左右上下が反対に感じるようになるスプレー。ありとあらゆる臭いを混合し、更に同時にどの臭いかも認識できるようにした臭い玉EX、等々。

どの悪戯グッズも良くできたものだった。彼らならば新しい悪戯専門店を開業しても問題なくやっていけると確信できるほどに素晴らしいものだった。

一通りの商品の宣伝をしたところで箒から降りる双子。最後は真面目にレオに挑むようだ。

結果としてはダメージこそ与えられなかったが、双子ならではのコンビネーションで奮闘し会場を大いに盛り上げることに成功していた。

 

「さぁて、みんな悪戯グッズは楽しんだかー! 双子の作ったグッズは最終調整次第販売開始だ! 今のうちに予約急げよ! 長かった決闘大会も次で最後だ。トリを飾るのはマグル出身ながら他の追随を許さない、既に七年生をも上回るとも噂されるグリフィンドールの才女……、ハーマイオニー・グレンジャーだー! なんと誰とも組まず一人でレナード・テイラーに挑むぞ。レナード・テイラーとの関係はホグワーツ入学前からの付き合いで魔法を伝授されるなど師弟関係だ。今日師匠を超えることができるのか!?」

 

「彼女は座学、実技ともに非常に優秀です。魔法戦闘をしているところは見たことはないですが期待しています。一人で挑戦なのは自信があるからなのか、自分の実力を試したいのか、どちらにしろ今までの集団での戦いとは違ったものになるでしょうから楽しみです。」

 

ハーマイオニーは堂々とした足取りで競技場に入場してきた。その姿をレオは真っ直ぐ見つめている。視線が交差し、二人は笑う。

 

「レオ! いくわよ!」

 

「来い! ハーマイオニー!」

 

二人は礼をする。それと同時に最後の決闘の幕が上がる。

 

 

先に仕掛けたのはハーマイオニーだ。魔法の閃光をレオに向かって放つ。当然そのままでは反射されるだけだ。だが、反射の範囲に入る直前に閃光が急激にスピードを落とした。反射されるのは決闘前から解っていたのでその有効範囲を調べるために測定用の閃光を速さを調整して当てたのだ。ゆっくりハーマイオニーに向かって戻ってくる閃光。

 

(今ので反射の有効範囲を正確に把握できた。次は……。)

 

考えているとレオが攻撃を放ってきた。肉体強化魔法を使って躱しながら距離を取る。レオも同様に強化して迫っていく。レオの攻撃を避けながら魔法を放ったり、生成した槍などを射出して攻撃を続けるが全て防がれる。

 

(魔力で推進力を持たせて射出した攻撃は反射は抜けても、その次で止まる。魔力以外での攻撃はもう少し進んで弾かれる。ということは呪文反射、魔力を消す防壁、対物理防御で構成されていると仮定できる。だとすれば……。)

 

ハーマイオニーは立ち止まり、自身の前に巨大な岩壁を作り出す。レオは当然横から回り込もうとするがそこにも壁が出現する。レオの周りが全て壁で覆われた。レオが壁を破壊するより一瞬ハーマイオニーが速かった。

 

「砕けよ壁!」

 

ハーマイオニーの号令で全ての壁が砕けて重力によってレオ目掛けて降り注ぐ。ダメ押しで巨大な鉄柱を打ち込む。

 

(鉄柱の推進力は魔力で生成しているけどレオの防壁の外だ。これならば魔力を消すこともできない、そしてこの大質量は受けられない!)

 

崩れた岩山と突き刺さった鉄柱を見ながらもハーマイオニーは緊張を解かなかった。

 

(やって……ないはずよね。今のを高速移動で避けたか、防御で耐えたか、あるいは別の手段か……。)

 

ふと違和感を感じ下を見る。

 

(!? 地面が波打ってる!?)

 

とっさに横に飛ぶ。次の瞬間には彼女が立っていた地面の下から魔法が放たれた。続いてレオも姿を現す。当然のように無傷だ。

 

「ちょっと焦ったよ。今の攻撃から僕の防御についておおよその検討はついたのかな?」

 

「一応ね。これが終わったら採点してくれない? それより今の魔法は何? 見たことない魔法だったけど。」

 

「今のはまだ試作段階の魔法で正式名称は決めていないんだ。地面を水のように潜ることができる魔法さ。未完成で土しか対応していないし、潜っても息はできない、視界もない、声が出せないから無言呪文しかできない、魔法の効果が途中で切れたら生き埋め。まだまだ完成には程遠いよ。今の攻撃で何か気づいた点はあるかい?」

 

「呪文が出てくる前に地面が波打ってたかしらね。だから避けられたわ。」

 

「ふーむ……。やはり実戦で使わなければ解らないこともあるね。……さて話はここまでにしようか、次の手はあるかい?」

 

(どうしましょうかね……。おそらくレオの防御を突破するには大質量での攻撃か、防御を打ち破るだけの強力な魔法が必要になってくる。質量攻撃は一回やってるから次はないだろうし、こうなったらあれを使うしかないかな……。)

 

実際、ハーマイオニーの推測はほぼ正解だった。『反射』は物理を防げず、『吸収』と『遮断』の範囲外の魔力には効果がない。最後の物理保護を抜けるだけの攻撃を吸収と遮断の範囲外から魔力で打ち込む先ほどの鉄柱での攻撃など当たればダメージを与えられたはずだ。しかしレオも動くし、迎撃もする。次は同じ手段は通用しないのは明らかだった。

強力な魔法、極論から言えばアバダ・ケダブラ(息絶えよ)などそれぞれの防御を一つずつ殺して破壊できる。連続で放てば防御機構が再展開する前にレオに直撃するだろう。

 

ハーマイオニーはレオをしっかり見て決意を固めた。

 

「レオ! 信じてるわ、あなたなら防げるって!」

 

ハーマイオニーの杖に魔力が集中する。そして生み出されるは呪われた火、『悪霊の火』だ。

観客席はどよめき、教師たちも驚く。まさか二年生で悪霊の火を使う生徒が現れるとは思っても見なかった。

炎は獅子の形になりレオに向かって走る。ハーマイオニーは制御に全神経を集中しているのか相当な負荷が襲っていた。

 

「まずいな。このままだとハーマイオニーも危険だ。楽しかったけど終わりにしよう。」

 

レオは両手を突き出し魔力を集中させる。顕現するは黄金に輝く一対の巨大な腕。

レナード・テイラーのとっておきの一つ、『巨神の腕』だ。

十メートルは優に超える腕が炎の獅子を受け止める。獅子は腕に嚙みつくがびくともしない。逆に放り上げられ蚊でも潰すかのように両手で挟みつぶされて消滅した。

 

炎の消滅と同時にハーマイオニーが仰向けに倒れる。悪霊の火は制御が難しく消耗も激しい。これで試合は終了だろう。

レオはハーマイオニーに近づき手を差し出した。

 

「まさか悪霊の火まで使えるとは思わなかったよ。僕の予想以上に強くなっている。まだまだこれから君は成長できる。僕が保証しよう。」

 

「ありがとう、私もっと頑張るね。でもまずはこの課題を乗り越えなきゃね!」

 

レオの手を取って立ち上がりながら杖を体に直に押し付けハーマイオニーは言う。この決闘の敗北条件は戦闘不能またはギブアップ。まだハーマイオニーは負けていない! 悪霊の火を使って倒れて、試合終了と判断したレオが近づくのを狙ったのだ。

卑怯かもしれないがこうでもしなければレオに一矢報いることもできない。

 

(だけど、これで魔法防御を抜けてゼロ距離で魔法を放てる! この距離なら絶対に躱せない!)

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

レオの胸で赤い閃光が炸裂した。

 

 

 

ハーマイオニー渾身の武装解除が放った光は眩しく競技場の皆が一瞬だが目をつぶるほどだった。誰もが目を開けた次の瞬間にはレナード・テイラーが破れている光景を想像した。

 

だが、現実の光景は想像とは別だった。ハーマイオニーは悔しさを顔を歪ませている。杖の先には誰もおらず、先ほどの武装解除は競技場の端に命中していた。

レナード・テイラーはなぜかハーマイオニーのすぐ後ろに立っている。

 

「いやいや、冷や汗をかいた。今のは正直ギリギリだった。だけどこれで本当に終わり。研究室で待ってるから目が覚めたら来てね。」

 

ハーマイオニーは声の方に振り向くがそれより先に失神の魔法が胸を貫く。

これで全試合終了だ。

 

「決まったー! ハーマイオニー・グレンジャー惜しくもレナード・テイラーには及びませんでした。しかしとても二年生同士での決闘とは思えない内容でした。正直びっくりしっぱなしで実況じゃなくて絶叫してただけになってたぜ、ゴメン! でも皆も俺の気持ちは分かってくれるよな!? そんだけスゲー内容だったぜ! フリットウィック先生はいまの試合どうでしたか?」

 

「テイラー君がもの凄いのは重々承知でしたが予想以上だったと言わざるを得ませんな。それよりも予想外なのはグレンジャーさんです! 大人の魔法使いでもあそこまでの戦闘をできる人はそうそういませんよ。まさか悪霊の火まで使えるとは。彼らはまだまだ若い、これからの魔法界をあのような若者がどのように変えていくのか非常に楽しみです。

最後に機会があれば私もテイラー君と決闘したいですな。若い時の決闘チャンピオンの血がうずいて仕方ありません!」

 

「おおっと! まさかのレナード・テイラーVSフィリウス・フリットウィックが実現か!? これからも俺たちのことを楽しませてくれそうだぜ! 第一回決闘大会はこれで終了だ! 次回は未定だが今日の戦いを見て参加したい奴はどんどん参加可能だ! 目指せ、打倒レナード・テイラー!」

 

この日の決闘大会はどの寮も等しく大いに盛り上がった。自分たちの寮は勿論、他の寮の試合も全然違う内容で飽きることが無かった。そしてこれに触発されて生徒全体が魔法戦闘の練習に力を入れる結果となった。




レナード・テイラー全戦全勝! まぁ、チート装備使ってますし当然か。

レイブンクロー生は一番レベルアップしています。今後も強化は続きます。

双子はほぼ宣伝目的。レオがバックに着いたので4巻の優勝賞金がなくてもいいくらいになってる。

ハーマイオニーはすでに教師や上位死喰い人レベルになりました。あとは経験を積むだけ。

『巨神の腕』……レオのとっておきの一つ。光で構成された巨大な腕。攻防一体の魔法。大抵の敵はこれで撲殺可能。色々設定あるがまたいずれ。

ヒロインであろうと容赦なし。相手への敬意があるからこそ失神させた。

強さはフル装備レオ>校長≧御辞儀>レオ父>教師=上位死喰い人(ベラトリックスなど)=レオ≧ハーマイオニー>死喰い人=闇払い>セドリック>大人>生徒な感じで。

レオの指輪紹介 その6
・増強
身体機能強化。使用魔力量に比例して強くなる。身体能力以外も五感も強化可能。
単純なので魔力効率が良いという利点もある。

レオの指輪紹介 その7
・守護
物理保護がメイン機能。最低値でも拳銃程度なら防御可能。こちらも使用魔力量に比例して強くなる。
決闘大会では使用していないがプロテゴとしても機能できる。この場合MAXまで魔力を使うとプロテゴ・マキシマになる。

レオの防御は反射→吸収→遮断→守護の四層になってる。
突破は一層ずつ強力な魔法で打ち破るか、最後の守護を物理で破るかの二択。

では次回お楽しみに。

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