【完結】ハーマイオニーと天才の魔法式   作:藍多

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少しずつ書いてきて数カ月。
これでもまだ三巻の終盤。
まだまだ先は長いけれど完結まで頑張ります。

それでは43話どうぞ。


43. 新薬完成

魔法界に衝撃が走った。

魔法省から緊急の発表があった。その内容に魔法界全土が驚愕した。

アズカバンより脱獄した大量殺人犯のシリウス・ブラックが本当は無罪であったというのだ。

真犯人は殺されていたと思われていたピーター・ペティグリューである。

ポッター夫妻を裏切り闇の帝王に売り渡していたのもペティグリューであり、シリウス・ブラックはそれを知ってペティグリューを追い詰めたが逃げられ、裏切りと大量殺人の濡れ衣を着せられていたのだ。

真実がどのように明らかになったのか、その詳細は発表されなかったがシリウス・ブラックがホグワーツに侵入していたことから偉大な魔法使いのアルバス・ダンブルドアによるものだと世間では認識されていた。

逃亡していたピーター・ペティグリューも無事捕まりアズカバンへの終身刑が決まった。

これで晴れてシリウス・ブラックは自由の身となり多額の補償金が魔法省から支払われることとなった。

 

 

シリウス・ブラック無罪の衝撃の次の日。またもや世間を驚かせることが起きた。

アズカバンへ投獄されたピーター・ペティグリューが脱走し行方をくらませたのだ。

これには世間から魔法省、特に大臣のコーネリウス・ファッジへの責任問題になったがファッジは大臣を続けることとなった。

 

 

そんな世間の騒ぎなど関係ないとばかりにレナード・テイラーはここ数日脱狼薬の改良に取り組んでいた。ルーピンの助力もあって狼人間の詳しい分析ができたので以前の脱狼薬とはもはや別物になっている。後は最終調整をしてルーピンでテストの予定だ。

 

「ふぅ。こんなところかな。」

 

一段落したので休憩にすることにした。ソファーに座ると即座に紅茶が準備される。メイドの姿をしたクーによるものだ。

 

「ありがとう、クー。」

 

紅茶の香りと味を楽しむ。クーの腕前は日々進歩している。料理やその他の事、魔法薬の作成の手伝いまでどの分野でも成長中だ。レオが目指していた自分の作業を手伝えるペットという部分はすでに合格だ。

 

「クー。紅茶を飲み終わったら、魔法訓練場に行くよ。クーの能力が今どんな感じなのか見ておきたい。」

 

「かしこまりました。」

 

魔法訓練場。ここは新しい魔法の実験などに使う場所で空間拡張によって広げられた広大な場所でありなおかつ高耐久性を持っている。

 

「クー。戦闘形態に変化。」

 

「了解しました。」

 

クーの体が一回り大きくなる。メイド服も黒々とした鎧に変化する。その状態を隅々まで『眼』で観察し、実際に触れたりしていく。

その後は性能テストの実施だ。テストの結果、判明したのは鎧はドラゴンとバジリスクの鱗が形態変化したものであり耐久性はそれらを上回っている。アバダケダブラ(息絶えよ)でも数発ぐらいでは突破はできないだろう。仮にダメージを与えても体液の命の水で少しの欠損なら即復元。そもそも単細胞生物が群体をもって一つの形を構成しているのだから完全に滅ぼすには幾兆の細胞を全て破壊するしかない。

体の変化も今までの比ではない。ドラゴンの翼による高速飛行。硬質化させた伸縮自在の髪による斬撃。体のいたる所からから変幻自在の触手を出し、触手の先端からは魔法、ドラゴンの炎、バジリスクの毒が出すことができる。更にはバジリスクの目にまで変化可能だ。

……正直造り出したレオでさえまともに戦えば指輪全開、魔法薬によるドーピングをしても勝てるか分からないような存在になってしまっている。レオとしてはこの結果には満足しているのだが。

 

「うん、素晴らしい……。クー。僕の最高傑作だ。何か欲しいものはあるかい? 何でも言ってごらん。」

 

「ありがとうございます、マスター。……その、お願いが一つあります。」

 

自身を落ち着かせるように深呼吸をするクー。

 

「抱きしめて、頭を撫でてください!」

 

思っていたようなお願いでは無かったので驚くレオ。

 

「そんなんでいいのかい? もっと、こう欲しいものとかない? というかなんでそれ?」

 

「そのですね……、今まで褒めてもらったりは有ったのですが、そういった行為は無くてですね。今までに不満があるわけでは無いのですが、そういうものにちょっと憧れていました。犬とか猫は撫でられていると聞いたのでペットである私もそうしてもらいたいなと。」

 

(ふむ……。少女型になっているせいなのかな、よく分からないが望むならやってあげるとしよう。)

 

抱きしめて頭を撫でる。ついでにもう少し褒めてあげる。

 

「クー。君はよくやってくれているよ。これからもよろしく頼むよ。」

 

クーは幸せそうな顔をしながら心の中でもう一度誓った。この方に命の限り、細胞全てを使って尽くすと。立ちふさがる障害は全て排除すると。

 

 

 

シリウス・ブラックやピーター・ペティグリューの一件で世間が騒がれてから数日が経過した。世間はすでに騒動のことなど忘れてクリスマスムードだ。

ホグワーツもクリスマス休暇に入っている。ホグワーツに残っている生徒は極僅かだ。その中にレナード・テイラーの姿もあった。

レオの研究室には人が集められていた。レオとハーマイオニー、クーの他にはダンブルドア、スネイプ、シリウス・ブラックに本日の主役ともいうべきリーマス・ルーピンだ。

 

「脱狼薬の更なる改良品が完成しました。これからルーピン先生で最終テストをします。効果の証人としてダンブルドア校長とスネイプ先生にも来ていただきました。」

 

「配合のリストを見せたまえ。」

 

スネイプはルーピンがどうなろうとどうでもよかったが、一人の魔法薬研究者として新しい魔法薬の内容は知りたかったのだ。

手渡されたリストを確認していく。ダンブルドアやシリウス、ルーピンも覗き込んでくるが無視して内容を確認していく。使われている材料を読み進めていくにつれリストを見ていた全員が険しい顔になる。読み終えたスネイプはレオに疑問をぶつける。

 

「テイラー。これは何かね? 我輩にはこれがただの強力な毒薬としか思えないのだが。」

 

「わしも同意見じゃ。これではルーピン先生が死んでしまうのぉ。ユニコーンの血まで入っておるし仮に生きられてもそれは死んだほうがましな状態じゃ。」

 

「そうですね。これは強力な毒薬でもあります。これを使ってルーピン先生の中の狼だけを殺します。この薬はそのままではただの毒薬以外の何物でもないのですがそこに狼人間の血を入れることで、血の持ち主の人間の部分以外を殺す成分に変化します。ユニコーンの血の生かす部分を人にそれ以外の呪いの部分と毒を狼に作用させる。結果、狼人間の狼だけが殺され人の部分だけが生き残り人間になります。僕はこの薬を『殺狼薬』と名付けました。」

 

予想外の効果の薬であった。今までの脱狼薬や改良脱狼薬は理性を残したり、狼に変化するのを抑制するだけだった。今回の改良はその抑制を恒久的なものにするものだとばかり思っていたのだが、まさか完全に狼を除去させるものだとは思いもしなかった。

 

「では、ルーピン先生。この中に血を入れてください。」

 

ルーピンに手渡されたフラスコには真っ黒な液体が入っていた。そこに自らの血を一滴入れる。血が混入してもその色は黒く変化はなかった。

レナード・テイラーのことは信じているルーピンも流石に躊躇してしまう。

 

「あ、言い忘れてましたけど飲んだ後は最初すごく苦しいと思います。そのうち平気になるはずですけど。」

 

いざ飲もうとした瞬間、いらない追加情報が出てきた。迷っていても先には進めないと覚悟を決めて飲む。

 

「ぐ、おあああおおおおお!」

 

薬を飲んだとたん苦しみだすルーピン。うずくまる体は次第に次第に毛深くなり牙も伸び始める。その姿は完全に狼に変化してしまった。

レオ、ハーマイオニー、クー以外は失敗したと思ってしまうのも無理はないだろう。

狼になったルーピンをダンブルドアたちが警戒しているとルーピンの体から煙が立ち込める。その次の瞬間にはルーピンは炎に包まれる。

 

「ルーピン! レナード・テイラー、これは一体どういうことだ!? どうにかしろ!」

 

怒りに任せてレオを怒鳴るシリウス・ブラック。だがそれを止めたのはルーピンであった。

 

「大丈夫だ、シリウス。最初は苦しかったが今はとても気分がいい。体の中から汚いものが抜けていくのが分かる……。今、確実に浄化されている……。」

 

炎に焼かれているというのにルーピンはとても穏やかな気分だった。炎が消えたときには先ほどまでの毛も牙もない人間としてのリーマス・ルーピンだけがそこに立っていた。

 

「気分はいかがですか?」

 

「最高だ。こんなに清々しいのは初めてだ。私は人間だ……、人間なんだ!」

 

その様子に満足するレオ。ルーピンは感動で放心状態になりブラックは喜んで友を抱きしめる。

この瞬間、レナード・テイラーがまた一つ常識を覆したのだった。

 

クリスマス休暇の残り時間を使ってリーマス・ルーピンの体は聖マンゴ魔法疾患傷害病院で徹底的に調査された。結果、彼は唯の人間であることが証明された。

年が明ける前に殺狼薬は公表された。

世間の反応はシリウス・ブラックの件と同等以上の衝撃的なるのも必然だ。もちろん狼人間たちの喜びようは他の比ではなく凄まじいものだった。

魔法省が把握してない者も含め、名乗り出た狼人間になってしまった人間は無償で殺狼薬が与えられ、狼人間という存在は魔法界からほぼ消え去る。

この功績を讃えられレナード・テイラーには勲一等マーリン勲章がおくられることとなった。

1993年は魔法界にとって色んな事が起きた年となった。




シリウスの無罪証明とピーター逮捕はダンブルドアに丸投げしたので描写カット。

ピーター脱獄。ファッジが無能なのでシリウスと同様に動物もどきなのを失念していた。
ピーターはネズミの状態で海を渡り切れるかどうかは賭けだったが、途中力尽きて人間状態でマグルの漁船に救助されて無事でした。

クーは正直どうやったら倒せるんだ状態。アバダケダブラが直撃しても細胞が一個死ぬだけなので正直無意味。どうすりゃいいんだよこれ……。
クーが撫でて欲しいって言ったのは犬などが構ってほしいっていうのと同じ感じ。今まではハーマイオニーがいるところでは我慢してた。恋愛感情等は無いです。

脱狼薬あらため殺狼薬完成。強力な毒薬でもあるので武器としても使用可能です。

これで三巻のイベントは終了ですかね。あとは三年目の終わりと閑話一つ挟んで炎のゴブレット編です。

それでは次回お楽しみに。

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