ダイアゴン横丁での買い物となります。
4.ダイアゴン横丁
ミネルバ・マクゴナガルはその日はいつものエメラルド色のローブではなく、マグルの女性が着る服装で目的の家に向かっていた。今年入学するマグル生まれの少女の入学準備のために共にダイアゴン横丁に向かうためだ。
(マグル生まれの子に魔法について知らせると不安になるか、積極的に知りたがるかの二択ですが彼女は後者でしたね。初めて会った時に色々と聞かれましたが、ホグワーツに入学してからもその知識欲から良い魔女になってもらいたいものです。)
マクゴナガルは少女、ハーマイオニー・グレンジャーのこれからに期待しながら呼び鈴を押した。とたん玄関が開き笑顔のハーマイオニーが立っていた。どうやら待ちきれなくて、玄関前で待機していたようだ。
「おはようございます! マクゴナガル先生。今日はよろしくお願いします。」
「おはようございます、ミス・グレンジャー。準備はよろしいようですね。では出発しましょう。」
マクゴナガルはさっそく漏れ鍋まで付き添い姿現ししようとすると、ハーマイオニーが質問をしてきた。
「先生。今日はどんな場所へ行くのでしょうか?可能であれば友達と一緒に行きたいのですが……。」
「ミス・グレンジャー、今日は入学準備なので魔法使いの道具などが一通り揃う場所まで行きます。ダイアゴン横丁という名の場所です。マグルは入ることのできない場所なので諦めなさい。」
「友達は魔法使いの家系で今年ホグワーツ入学するって言っていました。一緒に入学用品を買いたいとのことでした。」
「それなら問題ありません。しかし驚きました、あなたはマグル生まれなのでてっきり友人はマグルであるとばかり……。」
「私もつい昨日、彼が魔法使いであると知ったばかりです。待ち合わせの場所まで少し歩きますが構いませんか?」
マクゴナガルは肯定し、ふたりは図書館へ向かった。
図書館前
二人が図書館に到着するとすでにレオが待っていた。
「おはよう、ハーマイオニー。隣の方がマクゴナガル教授ですね。初めまして、今年からホグワーツに入学することになっていますレナード・テイラーと申します。」
マクゴナガルはレオの名前を聞いた瞬間、衝撃を受けた。それだけレナード・テイラーの名前は魔法界では有名であったのだ。
「まさか、あのレナード・テイラーなのですか?確かに今年の入学名簿にありましたね……。まさかマグル生まれの子の友人としてあなたが現れるとは驚きです。」
ハーマイオニーは魔法界やレオの事情は知らなかったが、マクゴナガルの反応からレオが普通の子供ではないと悟った。
(やっぱり、レオはすごいのね!)
マクゴナガルは驚いたものの、すぐに今日の要件を思い出した。
「それでは、入学用品を買いに向かいましょう。二人は私に捕まってください、漏れ鍋まで付き添い姿現しをします。」
ハーマイオニーは聞きなれない単語について聞きたそうにしていた。知らないことを積極的に知ろうとするその姿勢をレオはとても好印象であった。
「漏れ鍋はロンドンにあるパブで魔法界の市場、ダイアゴン横丁の入り口になっている。認識阻害の魔法によってマグルには感知されないようになっているんだ。姿現しは簡単に言えば瞬間移動、マグルのSF風ではワープとかなのかな。付き添いだからマクゴナガル教授に連れてってもらうといった感じかな。今日は他にも色々聞きたいことが山ほど出てくると思うけど、遠慮なく僕に聞いていいよ。答えられる範囲なら答えるよ。」
「ありがとう、レオ!」
二人はマクゴナガルの腕を掴むと臍の奥が引っ張られる感覚とともに姿を消した。
次の瞬間には先ほどまでの場所ではなく漏れ鍋の前に立っていた。
ハーマイオニーは初めての姿現しに少し気分が悪くなったが、今しがた体験した魔法についての感動で酔ったことなど吹き飛んでしまった。
三人がパブに入ると店内はざわついていた。いつもはここまで騒がしくないはずである。
何かあったのかとマクゴナガルが店主のトムに尋ねると、トムは興奮しながら先ほど店に誰が来たかを話しだした。
「ハリー・ポッターです! あの『生き残った男の子』がいらしたんです! あぁ…あの英雄がやっと魔法界にもどられたんですねぇ……。」
マクゴナガルとレオは店内の様子に納得したが、ハーマイオニーは有名人が来たのかなぐらいの認識であった。
店を出て石のアーチをくぐりダイアゴン横丁に入る一行。
アーチの先はまさに魔法の世界。見たことなく、使い方も想像できないような魔法の道具の数々にハーマイオニーは目を輝かせる。
レオは自身の「眼」で見る様々な魔法にあふれるカラフルなダイアゴン横丁の景色がお気に入りなのだった。
まずは、魔法界唯一の銀行で換金と引き出しを行った一行は教科書や鍋などを購入していく。
購入した用品はレオが転送呪文で家まで送ったため荷物を抱えずに済むことができた。
ペットについては二人とも今は興味がないとのことで買うことは無かった。
次に「マダム・マルキンの洋装店」に向かったが、店の前には普通では考えられないような大男が立っており正直なところ店に入るにはかなり邪魔であった。
「ハグリッド、ドアの前に立たれると他の利用者が入れませよ。少しずれたらどうですか。」
「おお! これはマクゴナガル先生。こいつはすいませんですだ。よっと……今日は新入生の付き添いの買い物ですかい?」
マクゴナガルはハグリッドと話があるとのことで二人で制服の購入をすることとなった。
店内では二人の男子が話をしているようであったが、青白い顔をした方が先に終わったらしく出て行ったが、まだ採寸している方は何やら疲れた顔をしている。
特段興味がない二人は大人しく順番待ちとなった。
先にレオが採寸することとなり残った方の隣に立つ。
「ねぇ、君たちもホグワーツに入るの?」
「そうだよ。君もなのかい?よろしくね。」
「私もよ、よろしく。」
「あの……君たちの親は魔法使いそれともマグル?」
「なんでそんなこと聞くのかな?」
「さっきまでいたヤツが名門だとか両親が魔法使いじゃないとだめだとか色々言ってたからちょっと気になっちゃって……。」
「ああ、それは純血主義ってやつだ。古くからある血を重んじるって考え。僕はそういうのはどうでもいいと思っているよ。」
その言葉に少年の疲れた顔が少しはましになる。
その後もホグワーツに入学したらどうなるのかなど、他愛のない話をしていると少年は採寸が終わりローブや制服を受け取って店を出る。ドアの前にいた大男と一緒に行動していくようだ。
レオは今の少年が金色の薄いベールのような魔法をまとっていると気づいた。
おそらく何かしらの保護の呪文であろうがとても優しい色と構造をしていて美しかった。
次に会う機会があればもっと解析したかったなぁと残念に思った。
レオとハーマイオニーも買い物を済ませ店を出る。待っていたマクゴナガルと最後は杖を購入するために歩き出した。
「杖はオリバンダーの店で買うのが一番だと断言します。私もそこで自分の杖に出会いました。あなたたちも必ず自分に最適な杖が見つかるでしょう。」
『オリバンダーの店-紀元前382年創業 高級杖メーカー』と書かれた小さな店。
マクゴナガルが自信たっぷりに言うにはみすぼらしい店であると感じながらも二人は入っていく。
中は天井近くまで山のように積まれた杖の箱でいっぱいでただでさえ小さな店が余計に狭く錯覚させられた。
店内でしばらく待っていると店主のオリバンダー老人が現れた。
オリバンダーはまずはハーマイオニーに杖についての説明をし、一つ一つ相性について確認していく作業に移っていく。
ほどなくしてブドウにドラゴンの心臓の琴線の杖に決まったようだ。
「それでは、次はそちらの少年の杖を見繕いますかな。お名前は何と言いますかな?」
「レナード・テイラーと申します。僕は杖の購入はしません。自作の杖をすでに持っていますので。」
「なんと、あのレナードさんでしたか。まさか杖の制作についてもされているとは…。機会があれば杖の制作談義などしてみたいものです。」
「機会があれば是非。」
杖を手に入れて学校に必要なものは一通り揃えることができた二人。
「本日はお疲れ様でした。私は他にも用事があるので帰りはマグルの移動手段で帰るのがよろしいでしょう。あぁ、そうでした。二人ともこれをどうぞ。ホグワーツ行きの汽車のチケットになります。場所はミスター・テイラーならばわかるでしょう。それでは次はホグワーツで会うことを楽しみにしていますよ。」
そういうとマクゴナガルは姿をくらませ、残った二人は電車を利用して帰路につくのだった。
ハーマイオニーはホグワーツ特急のチケットを見てニコニコしている。よほど今日一日の体験が嬉しいようだ。
「レオ、九と四分の三番線ってどういうことかしら。今日の漏れ鍋みたいに隠しているの?」
「それは当日のお楽しみということで。とりあえず、明日からは約束通り一緒に勉強かな。ハーマイオニーの家や図書館でするわけにもいかないから僕の家でやろう。入学までにどこまでやれるか楽しみにしてるよ。ついて来れるかな?」
「望むところよ! 私の目標はあなたを超えることなんだから!」
ハーマイオニーの魔法界での最初の一日は興奮と希望の中終わろうとしていた。
レオは明日からどのようにしてハーマイオニーを鍛えるかを考え、成長した彼女の造る魔法がどのような美しさなのかを期待しているのだった。
本作では「」は実際に発声したセリフ、()は声に出してない心の声として使います。
レオが未成年なのに転送呪文を使っていますが、今までの研究成果から特例で魔法を使うことが認められてます。(臭いについてはレオは問題なく消すことができます。)
ハグリッドとマクゴナガルが話していたのは回収した賢者の石についてです。
レオがハリーと出会いましたが、額の稲妻型の傷が見えなかったためハリー・ポッターだと気づきませんでした。
ハリーの母の血の守りが守っていると「眼」で気づきましたが、さすがに初対面でじろじろ見るのは失礼だと思ってハッキリ解析はしませんでした。
レオとしてはハリーがなぜ死の呪文を受けて生きているかは気になってます。
次回はハーマイオニーに対してのレオの魔法講座の話になります。
私の個人的な魔法についての考えを使っていこうと思います。