特に何もない平凡な授業だけだったはずなのに……?
一体何が起きたのやら。
それでは67話どうぞ。
「今日は皆にお知らせがある。長らく不在だった闇の魔術に対する防衛術の教師が決まった。三年前と同じくレナード・テイラー君に特別に担当してもらう許可が魔法省から得られた。皆しっかりテイラー君から学ぶとよいじゃろう。」
朝食時に大広間に集められた生徒にダンブルドアからレオがまたもや教師に任命されたことを知らされた。
今学期が始まってからずっと教師が不在だった闇の魔術に対する防衛術。
ダンブルドアはレオを教師に推薦していたのだが、魔法省が難色を示したためここまで時間がかかってしまった。
教師不在に不安を覚えた生徒たちがすでにレオに師事を仰いで週一回特別授業を開催してもらっているが、それが普段の授業でも学べることになると知って喜んでいる生徒が多い。
スリザリンでもレオの勉強会に参加できなかった生徒もいるがこれで確実に学べると歓迎している者も少なからずいる。
クリスマス休暇を目前に控えたある日。
レオはダンブルドアからの頼みでクーを引き連れて聖マンゴ魔法疾患傷害病院に訪れていた。
どうやらウィーズリー家の大黒柱、アーサー・ウィーズリーが任務中に蛇に襲われたらしい。
命は助かったようだがしばらくは入院することになってしまっていた。騎士団は人手不足であるのですぐにでも回復して欲しいとの事だ。
アーサーとレオの父アースキンは元同僚でありそれなりに仲が良かったようなのでダンブルドアからの依頼を受けることにした。
聖マンゴ魔法疾患傷害病院はマグルには隠されるようにして存在している。
改装中のデパートに偽装されておりマグルの街中にありながら気づかれることがない。
レオとクーが受付で要件を伝えると近くを通りかかった
「レ、レナード・テイラー!?」
その言葉を聞いた
ざわざわと一層うるさくなった受付前でアーサー・ウィーズリーの病室の確認をしていると院長らしき高齢の
「レナード・テイラーさんですね。お会いできて光栄です。あなたが開発した数々の治療薬のおかげで多くの患者が助かっています。これからもあなたの研究成果、大いに期待しています。」
そういうと握手を求めてきた。
その後も多くの
病室の前にはマッド・アイ・ムーディとトンクスが待っていた。
「来たか。本人だろうな?」
「真実薬でも飲みましょうか?」
「どうせ効かないのだろう? 一応確認しただけだ。そんな防護魔法を纏っているのがお主以外にいてたまるか。」
病室の中に入るとウィーズリー家とハリー・ポッターがいた。
真っ先に反応したのはハリーとロンだった。
「テイラー! 何しに来た!?」
「パパを実験動物にでもするつもりか!? 出ていけ!」
レオが何か言う前にフレッドとジョージ、それにジニーが二人に文句を言う。
「ロン、ハリー。お前たちいい加減にしたらどうだ?」
「なんでいつまでもレオの事をそんな風に言うんだ。ダンブルドアだって認めてるすげぇ奴だぜ。」
「おまけに俺たちの悪戯グッズ開発の手伝いだってしてくれる。」
「ああ、それが普通の天才とは違うとこだな。」
「はぁ……。二人とも呆れるわ。ロンとレオ交換できないかしら。」
ハリーは言い返そうとしたがモリーに病室だから静かにするように言われ黙る。
ロンはジニーの言葉にショックを受けて口をパクパクするだけだ。
「それで、レオ君もお見舞いかしら。ありがとう。アーサーは眠ってしまったけど、起きたら伝えておきますね。」
「いいえ。ダンブルドア校長からの依頼で治療のために来ました。」
「本当なの? でも、
「ママ。レオなら大丈夫だよ。」
「そうそう。レオなら何とかしちゃう。これホグワーツ生なら常識だぜ。」
「レオ。パパをお願いします。」
レオとクーは寝ているアーサーに近づく。腕、肩、足、数か所に包帯が巻かれ血が絶えず滲んできている。
腕の包帯を外し傷を確認する。大型の生物に噛まれたのが一目で分かる。数センチにわたる穴がそこにはあった。
「クー、傷口から体内の毒を抽出してくれ。その毒の成分を僕に教えてくれれば僕が解毒する。」
「了解しました。」
クーが傷口に触れる。体内に微小に展開した触手で毒の成分を取り出す。
同時にレオの体内に体を融合させ毒の成分の詳細を伝える。
その情報を元に指輪の一つ『治癒』を使って解毒の方法を解読する。
「よし。結構複雑な毒だったけどどうにかなったな。」
アーサーに触れ『治癒』の力を共有する。結果として体内の毒は瞬時に無効化された。
「仕上げだ。クー、傷口を癒してくれ。」
クーの髪が伸びて傷口に触れる。髪先からは極微量の命の水が生成され細胞を復元していく。髪が離れる頃には傷一つない健康そのものの体がそこにはあった。
「うー……。うん? なんか妙に体が軽いぞ。」
毒と傷が消えたアーサーは目を覚ました。
「アーサー!」
「「「パパ!」」」
モリーと息子、娘は父に抱き着いた。皆涙を浮かべている。もちろん嬉し涙だ。
「おおっと。これはいったいどうしたことだ? 体は痛くないし不快でもない。むしろ力が湧いてくるようだ。」
「あなた、大丈夫なの? 傷は、血は?」
「……平気みたいだ。誰が治してくれたんだ?」
「レオだよ、パパ!」
「流石だぜ、レオ!」
「レオ? おお、君が治してくれたのか。ありがとう。やはりダンブルドアの言うようにすごいね。戦闘技術だけじゃなく治療までできるとはね。」
「これもダンブルドア校長からの依頼でしたしね。それに父さんと親しいようでしたし。退院したら一杯行こうぜ、と父さんから伝言預かってました。」
「任務だろうと何だろうと感謝の気持ちは変わらないよ。もう一度、ありがとう。この恩は忘れないよ。」
その後もウィーズリー家からお礼の嵐だった。ロンも放心状態から復帰して一応礼を言ってきた。
病室でうるさくしているのを咎めに来た
「ここは病院ですよ! うるさくするなら帰ってくだ……さ……い?」
勢いよく入ってきた
「え、あれ、え? なんで? 最低でも一カ月はベッドから動けるような状態じゃなかったのに。ん? 君はッ!?」
レオの事を認識した途端、疑問は解消したようだ。
「これは面倒なことになりそうだ。それではホグワーツに帰りますので、何かあれば僕のところまで連絡下さい。おそらく問題はないでしょうが念のため。クー掴まって。」
レオとクーは姿くらましで逃げた。
「ああ!? いない! 治療が必要な患者はまだまだいるのに。次に彼が来たらどうにかしてとどまらせておかなくては……!」
レオが一日聖マンゴ魔法疾患傷害病院に居れば大抵の患者はその日のうちに退院だ。
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ホグワーツの研究室に戻ってきたレオとクー。
ハーマイオニーが出迎えてくれる。
「お帰りなさいレオ、クー。アーサーさんはどうだった?」
「ただいま、ハーマイオニー。問題ないよ、もう退院できるだろう。」
その後はクリスマス休暇の予定について話し合った。ハーマイオニーの両親の為の防護魔法を改良するためにも一度戻ることに決めた。
今年は両家全員が揃ってクリスマスパーティーが開催されることになりそうだ。
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ダンブルドアは考えていた。
アーサー・ウィーズリーが魔法省で蛇に襲われた。
恐らくヴォルデモートの愛蛇のナギニだろう。
それならば別におかしなことはない。あやつはまずはターゲットとしてハリーを選んだと考えられる。自身とハリーに関連する予言を手に入れるため魔法省の神秘部に入る必要があったということだ。
だが、問題なのはその現場をハリーが目撃していたということだ。
しかも蛇の目線でだ。
(……やはり、ハリーにはトムとの繋がりがある。トムもすぐにそれに気が付くじゃろう。このままではハリーを通じてこちらの情報が洩れる恐れがある。それだけではない。最悪ハリーが乗っ取られ操られることも想定できる。何とかしなくては。)
対策としてスネイプに閉心術の特別授業をしてもらうことにした。
スネイプは一流の開心・閉心術師だ。多少手荒な方法になるだろうがこれもハリーの為だ。
(それに懸念は他にもある。レナード・テイラーは言うに及ばず。スリザリン生も何やら動きがある。ドラコ・マルフォイが頻繁に手紙を出している。さてこれから一波乱ありそうじゃ。)
ダンブルドアはちらりと部屋にいる長年のパートナーのフォークスを見る。
不死鳥。死を超越した存在。死して蘇る。
だが、今は不死鳥がここにいることで起こりえることへの懸念がある。
(レナード・テイラーが騎士団に参加する条件としてフォークス、不死鳥の研究をしたいと言った。最初は興味深い研究対象として見ていると思ったが……。どうするつもりなのじゃ……?)
ヴォルデモートにレナード・テイラー、分霊箱に
百歳を超えたというのにまだまだ死ねないとため息をつく偉大な魔法使いであった。
アーサー襲撃からの即退院でした。
レオがいたら呪いは解除できるしクーは傷ならすぐに治せる。
聖マンゴ要らずですな。
アーサー襲撃からハリーが分霊箱だとダンブルドア確信。
対策としてはレオを使おうとも考えたけど頼りすぎると後が怖いと考えなおした。
ダンブルドアは完全にはレオの事を信用していません。
それでは次回お楽しみに。