これからの話はどうなってしまうのか?
それでは71話どうぞ。
魔法省の崩壊から一週間が経過した。
僕が目を覚ました時には全てが終わっていた。
僕のせいで……。
僕がヴォルデモートの罠に気付けていたら、閉心術をしっかり覚えていたら……。
魔法省はついにヴォルデモートの復活を認めた。
だけどもその代償は大きかった。
大勢の闇祓いが死に、不死鳥の騎士団員の多くが犠牲になった。
優しくてまるで父親の様だったアーサーおじさんも死んだ。
ロンやジニーたちの泣いた顔が今でも頭から離れない。
シリウスやルーピン先生は生きているけど酷いことになっていた。
シリウスはもう僕の顔を見ることができない。
ルーピン先生は歩くことができない。
どうしてこんなことに……。
今、僕たちホグワーツの生徒は大広間に集められている。
先生やゴーストまで全員がいる。
ここにいないのはハーマイオニーともう一人。
レナード・テイラーがここにはいない。
正確には体だけがある。
もの言わぬ死体だけが棺に納められている。
魔法省がヴォルデモートの復活を認めたことより。
騎士団や闇祓いが大勢死んだことより。
レナード・テイラーが殺されたということがホグワーツ生にとっては衝撃だった。
最初は誰も信じなかった。信じられなかった。
どんな魔法でも使いこなす、新しい魔法や魔法薬を開発する、熟練の魔法使いが束になっても敵わない、競技場を吹き飛ばす、ダンブルドアでされ勝てないと言う。
そんな奴が殺された。
テイラーは嫌な奴だった。それでも実力は誰もが認めるしかないほど凄まじかった。
それが殺された。
これも僕のせいだ。
生徒は皆悲しんだ。多くの者が泣いていた。スリザリン生でさえ涙を流していた。
でも恋人のハーマイオニーは何も変わっていなかった。
ダンブルドアからテイラーの死が伝えられても『レオは死んでいない。』と言って普段通りに生活していた。誰かがテイラーは死んだ、もう帰ってこない、と言っても
『レオが死ぬわけないじゃない。私以外誰もレオの事を理解していないのね。』
と言った。
それ以来誰もハーマイオニーに話しかけていない。
そんなハーマイオニーを見て皆が心が壊れてしまったのだと思った。
これも僕のせいだ。
大広間に集まった全員が沈痛な面持ちでいるとダンブルドアが話し始めた。
「諸君、レナード・テイラーは向こうに旅立ってしまった。彼を失うことはホグワーツ、いや魔法界にとって変えの効かないほどの損失じゃろう。皆、悲しいじゃろうが彼は悲しむのは望んではおらんとわしは思っている。最後に祈りを捧げよう。」
その時だった。大広間の扉が開かれた。そこにはハーマイオニーとテイラーのペットと……レナード・テイラーが立っていた。
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時は一週間前に遡る。
ハーマイオニー・グレンジャーはふくろう試験を終え研究室に戻ってきた。
しかし、レオやクーの姿は見えず研究室内にはフラスコ内の液が振られる音や魔法薬が煮える音ぐらいしか聞こえてこなかった。
「どこ行ったのかしら?」
ソファーに座ってふくろう試験の自己採点を行っているとテーブルを挟んだ前にレオが現れた。正確には魔法で記録した映像が映し出された。
「レオ? 違うわね、魔法での投影ってところかしら。」
『ハーマイオニー、聞こえてるかな? とりあえず用件だけ伝えるよ。僕はこれから不死鳥の騎士団と共に魔法省に行く。多分
闇の帝王が出てこなければすぐに帰る。
でも闇の帝王が現れたら僕は一回死んでくるよ。』
「死ぬ? 何言ってるのよレオ。」
『何言ってんだこいつ、みたいな反応してるとは思うけど僕の研究成果を起動するには一回死ぬ必要があってね。ただ単に死ぬんじゃだめで
そこで映像が途切れた。
我が恋人ながら頭のネジが全部吹っ飛んでるなと改めて思った。
だが仮にも死ぬと言っているのにレオが一言、問題ないと言っただけで平常心な自分も大分イカレてきているとは思った。
とりあえずふくろう試験の自己採点の続きに戻った。
しばらくしてクーが姿現しで戻ってきた。
「お母様、レナード様からのメッセージは受け取りましたか?」
「ええ。クーが戻ってきたってことは上手くいったのかしら?」
「はい。こちらに、ご案内します。」
クーに連れられて研究室の最奥に向かう。
そこには人一人が入れるだけの透明な容器があった。
中にはレオがいた。全裸に指輪だけをしているという何とも言えない姿だが、傷などは見えない。
「レオ? 生きてるの?」
「レナード様は現在こちらの肉体に魂を転移させたようです。魂の再構成・調整に一週間ほどかかるとの事です。それまでは目を覚ましませんが肉体は健康そのものです。」
「それで一回死ぬ必要があるっていう研究は何なのかしら? 肉体を別に移すだけならそこまでしなくてもレオならできそうだけど。」
「詳細はわたくしも教えていただいておりません。目が覚めたらサプライズとして教えるとだけ言われております。」
「ん~……。レオからの課題ってところかしらね。一週間でどんな研究か推察してみましょうか。」
一週間の間に世間では色々なことが起こっていた。
魔法省が崩壊したり、ヴォルデモートの復活を認めたり、コーネリウス・ファッジからルーファス・スクリムジョールに魔法大臣が交代したり、多くの死傷者が出たりなどなど。
ホグワーツではレオが死んだことで恐怖や混乱が広がっていた。
ハーマイオニーにも心配するように声をかけられていたがレオが生き返ると正直に言っても誰も信じようとはしない。それどころか頭がおかしくなったように扱われてしまったのでそれからは適当にはぐらかしていた。
そうして一週間が経過した。
カプセル内の溶液が排出され、レオの新たな肉体が出てくる。
レオが目を覚まして最初に視たのは最愛のハーマイオニーの姿だった。
「おはよう、ハーマイオニー。」
「おはよう。調子はどう?」
体を動かして調子を確かめる。次に魔法で自分の服を取り出して着る。
色々と魔法も使ってみたり、周りを見渡す。
「魔法を使うのは問題ないね。前の体よりは効率が良いぐらいだ。『眼』の方も問題ない。
ただ体の方は違和感があるね。体に蓄積した経験というのがあるのか何となくぎこちない感じだ。」
「それでこんな事をした理由って何かしら? 私の予想では不滅を目標にしてるとは思うんだけど具体的な方法は分からなかったわ。」
「うん正解。目標はそれだね。どうやったかは後でね。とりあえず先に済ませることを終わらせよう。クー、いるかい?」
「ここに。成功おめでとうございます。用件は何でしょうか?」
「前の肉体はどこかな? もう埋葬されてしまったかな?」
「いえ、まだでございます。世の中色々ありましたのでレナード様の葬儀は今日、ホグワーツの大広間で執り行われる予定です。」
「そうか。だったら体の方に用があるから取ってこよう。」
レオはハーマイオニーとクーを連れて大広間に歩き出した。
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大広間にいる全員が何も言えずそれを見ていた。
ダンブルドアでさえ信じられないモノを見るように見つめていた。
それを無視して大広間を歩いていくレオ。
手厚く埋葬されている己の過去の肉体を取り出す。
そこでやっと動くことができたダンブルドアから声がかかった。
「お主は誰じゃ?」
「僕はレナード・テイラーですよ。」
「そんなはずは……。彼は死んだ。わしもこの目ではっきりと見た。いったい何者なのじゃ!」
その言葉を無視して自分の死体を分解して新しい肉体と合一させる。
「うん。これで良し。大分今の体に馴染んだ。」
気が付くと周りを教師たちが杖を構えて囲んでいた。
皆レオの事を得体の知れないバケモノを見ているかのようだ。
「ミス・グレンジャーこっちに来なさい! 危険です!」
「何者であろうと死からは蘇れない。貴様は何者だ?」
「杖を降ろしてください。僕は正真正銘のレナード・テイラー本人ですよ。」
「そうですよ。レオに失礼ですから止めてください。」
「レナード様に害するようならわたくしも黙ってはいられませんよ。」
「だったら詳しく証明と説明して欲しいものじゃ。何がどうなっているのかを。」
「証明か……。難しいですね。先にどうやってこうしてここに立っているかを説明してもよろしいですか。」
全員が頷く。生徒たちも知りたがっているようだ。
「では説明しましょう。まず最初に僕の目標は魔法の全てを理解すること。それには膨大な時間が必要でした。賢者の石や
あらかじめ蘇生した後の肉体を作っておいて自身が死んだときに魂を不死鳥と同じように再構成して次の肉体に転移するように仕込んでおきました。そのためには一度
これで僕は不死です。この肉体が滅んでも魂は不滅です。次の肉体を作って蘇ることができます。そもそも今の肉体を滅ぼすことさえ難しいでしょう。この肉体はクーを参考に改良発展させたものです。ドラゴンやバジリスク、それ以外にも数多くの魔法生物を組み合わせて賢者の石を組み込んだ特別製。
これで
誰もが絶句していた。つまりはレナード・テイラーは不滅の存在になってしまっているということだ。
「レオが不老不死になったのなら私が先に死んじゃうじゃない。」
ハーマイオニーは不満だった。レオの望みが叶うのは良いが、いずれは自分との別れが待っているということだ。そんなのは御免だ。
「研究データは十分あるからハーマイオニーが望むなら永遠に僕といっしょに一緒も可能だよ。どうする?」
「そんなの言うまでもないじゃない。あなたとなら永遠も苦じゃないわ。」
「当然わたくしもお供いたします。」
「二人ともありがとう。さて今回の件についての詳細は話しましたけど、どうやったら僕がレナード・テイラーであると証明できますかね?」
「……いや良い。お主が本物か偽物かなど些細な問題になってしまった。つまりはわしらには、いや何者であろうとお主を滅ぼせないということじゃろう。そんな存在とは敵対しないのが一番と言える。ゆえにお主がたとえ偽物であろうともレナード・テイラーとして扱うしか選択肢がないということじゃ。」
「そうですか。まぁ、不老不滅になっても僕は今までと何も変わりません。魔法の研究を続けますし、闇の魔術に対する防衛術の教師も辞めません。先生方も今まで通り僕の事を一生徒として扱ってください。」
それでもうここには用がないのかハーマイオニーとクーを連れて大広間から出て行ってしまった。
誰も何も言えない。レオの言ったことがあまりに現実離れしていたので誰もその事実を処理しきれていなかった。
大広間の時間が動き出したのはしばらくしてからだった。
レナード・テイラー復活!!
当然のように蘇りました。
というか、前回の感想で誰も心配していなかった。主人公なのに……。
指輪紹介その10
・蘇生
全指輪同時起動によって死亡時に肉体から分離する魂を指輪内に保存する機能。
今回は用意していた新しい肉体に指輪を転移させることで即座に蘇りました。
レオは一時的に肉体から解き放たれた魂を不死鳥と同等の存在に加工することで不滅の魂に己を改造しました。章タイトルの通り不死鳥を超えました。
更に新しい肉体としてクーのバージョンアップ版を用意していました。
これでレオを殺すことは限りなく不可能に近くなりました。
隕石にも耐えられますね。
ハーマイオニーも当然のように共に永遠を望みました。
そのうち彼女も人外の存在になるでしょうね。
それでは次回お楽しみ。