DDGかげろう   作:Kani03

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1話

 ここは呉。その一角に広大な敷地をもつ一つの建物があった。その建築物の名前は呉鎮守府というようだ。その建物は傍目からみても分かるほど警備が厳重で、重苦しさを感じさせる一方で、敷地内では少女達が遊んでいたり、運動をしていてにぎやかな印象をうける。その少女たちを人々は艦娘と呼んだ――

 

 

 

 

――艦娘

 一般的にWⅡを戦った艦の魂が少女になった存在と見られている。

 1955年日本が独立を果たした数年後に世界のあちこちの海に黒い軍艦が見られるようになった。その艦は人間の船を片っ端から沈め始めた。

 日本やドイツの残党かと疑われたが、そうではなかった。日本やドイツの船も襲われていたからだ。

 これらの艦は黒い見た目から深海棲艦と名付けられ、被害はいっそう拡大していった。

 ここになって各国は焦り始め、国連軍を組織し対抗し、初戦は圧倒的勝利を収めたものの、何回も連続して行われる戦闘によって消耗し、また軍艦の修理が間に合わなくなった。そして、アメリカの圧倒的な生産力をもってしても軍艦は減っていき、海に面する中小国は深海棲艦の陸上型の個体が上陸を始めた。

 島国の日本は当然のように大規模な攻撃を受け、できたばかりの海上自衛隊では歯が立たず、米国も自国の防衛にかかりっきりで、在日米軍の増強もできなかった。その頃は通称破壊により、国民も満足にものを食べられなくなった。

 “日本は終わった”と国民が思い始めたとき、希望が表れた。それが艦娘である。

 彼女たちは妖精さんと呼ばれている未知の生物と一緒にあらわれ、彼らはWⅡを戦った艦に似た艦で戦った。(外見は限りなくにている。しかし、ただの重油では動かなかった。)妖精さんは艦娘の補助や、人間が使う燃料を艦娘用の燃料に変え、また彼女らの艦の建造や修理した。彼女達は妖精さんを束ね、艦を操った。艦娘運用はとてもいままでと比べて格段に燃料の消費が少なくなり、また修理に時間がかからない。例えば艦娘の大和は大破しても修理が2日という短時間ですむ。要するに運用するコストが大幅にダウンしたのだ。

 かくして海軍(日本の場合は海上自衛隊)の仕事は軍艦を運用することではなく、彼女達のバックアップをすることに変わった。

 艦娘が各国に表れてから深海棲艦を押し返し始めて、日本を例にあげると日本は沖縄の孤立を解くことに成功した。――

 

 

 

 その呉鎮守府の司令官は秋山篠樹中将で、彼はわわずか20代という異例の若さでありながら艦娘からも信頼が厚く、指揮能力も高い。彼はこの若さでありながら、提督達のなかでは古参のほうである。それは、艦娘運用があまり年数のたっていないことを意味し、大体運用開始から約10年しか経っていない。彼は三期の提督なので彼は確かに古参のほうにはいるのである。(海上自衛隊時代から深海棲艦と戦い続けて、現提督の青木大将などはごく一部の例外)

 彼のような優秀な人材はなかなかいないので、優秀な人材はなりふりかまわず重要拠点に配置されるシステムが構築されていた。

 

 

 

 その秋山中将は部下の少女の報告をうけて悩んでいた。彼女は茶髪のセミロングをツーサイドアップにしており、オレンジと白を基調にした服装。また、マフラーをつけている。夏なのに……。彼女の名は川内。秋山中将が提督に着任してすぐ部下として配属され、いわゆる古参でエリート。今日も最前線に立つ艦娘のうちの一人である。

 その秋山中将は彼女の報告を聞いていた。じつは大規模な海域解放作戦が行われた直後で、残った敵を川内率いる第一水雷戦隊が夜戦で敵を殲滅しきたのだった。これにてこの一大作戦は終了し、一息ついたところで川内からの報告を聞いたのである。

 彼女は“海域で軽巡か駆逐クラスの艦娘がドロップした”といった。ドロップというのは珍しくなく、まれに海域を解放すると気絶している艦娘が発見されることがある。

 ドロップする艦娘はこれまで鎮守府にいない艦娘ばかりなので、海域解放時には新しい艦娘がいないか艦娘は探し回ることになる。新しい艦娘を鎮守府に連れて帰ると、資材と引き換えに妖精さんが船体を建造して、これのよって艦娘が増えてきたのだ。

 話を戻そう。秋山中将は手元の資料を見つめた。そこには妖精さんが船体を建造するためにかかる資源の量の報告書である。それによると、各資材20000ずつ。しかし、駆逐艦や軽巡などだと多くて3000、20000以上ともなると、大和の船体を建造した時以来。あのときは各資源45000ずつくらい飛んでって、1ヶ月ちかく鎮守府の機能が停止した。

「よろしい、出てもらって結構。みんなで間宮アイスでも食べてきなさい。」

 そういって、ちょっと言葉がかた苦し過ぎたかなと思いながら間宮アイスの引換券をわたす。面倒事はひとまず後回しにすることにした。

 “提督ってやっぱブラックだなー”とぼやきつつ秋山中将は業務に戻る。業務が終わったときには朝の1:00近くになっていた。

 

 

 

 提督室の真下。地下1階にある病室の一角で一人の少女が目覚めようとしていた。

 

 

 

 頭がはっきりしてくる。

 ここはどこだろう。  

 というか私はだれ?

――そうだ思い出した。自分は最新鋭イージス艦のかげろうだ。

 目を開けると白い天井が目についた。 

「あれっ……」

 声をあげて自分で驚く。

 自分は船だったはずだ。そこで人間の姿になっていることに気づく。

 その時、足音が響きカーテンが開かれた。ピンク色の髪の人だ。

 ピンク色。……普通なのかな?  

「明石といいます。体調はどうですか?」

「気分はいいですよ。」

 普通に会話できているようだ。

 ここはどこです?  

「いま夜だから明日の朝に話しますね。あっこれ睡眠薬です。」

 そういって彼女の白衣のポケットから取り出した粒状の薬をもらう。

 かげろうはひとまず今日は寝ることにした。……窓がないから本当に夜かはわからないけど。

 

 

 

 夜の病室に忍び込む一人の男の影。

 足音を立てずにすり足である少女の寝ているベッドに近づく。その後ろから別の少女がやはり気付かれないように男に近づく。

 

「なに、やってんですか秋山中将。」

 名前を呼ばれた男の肩が跳ねる。男が後ろを振り返ると長い金属棒を持った彼女――明石の姿があった。

「新入りの顔を見ておこうと思ってね。とこれでその棒なに?」

「不審者対策ですよ。最近女子トイレに入った不埒ものがいたらしいって聞きまして……。」 

 男――秋山中将は冷や汗をかきながら、弁解のセリフを頭の中で練り上げる。

「あれは仕方なかったんだ。仕事をやり過ぎて、頭が回らなくて。それもこんな書類仕事を押し付ける上が悪い。」

 彼は、ひとまず責任転嫁をすることにした。 

「では、そういうことにしておきましょう……。新しい娘は3番ベッドにいますよ。」

 明石はひとまず納得したようだ。

 彼はかげろうの寝顔を見たあと、満足した様子で出ていった。

 結局彼が寝たのは、2:30。

 ……司令ってブラックだなー。

 彼はどろのように眠った。

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