――ムーンセルの聖杯戦争の本戦では、最初に対戦相手が決められた。
対戦相手が決まると、マスターは
この期間内に対戦相手の情報を集め、アリーナに入って力をつける。
アリーナは
二つの
サーヴァント同士の一騎打ちで決着をつける。
勝利したマスターとサーヴァントは、次の戦いに駒を進める。
敗北するとサーヴァントは消えて、マスターには電脳死という最期が待っている。
これを最後の一組になるまで繰り返したトーナメント戦が、わたし達の前回の戦いだった。
「セイバーが最初に言ってた、冬木市の聖杯戦争がバトルロイヤルだって、こういう事か」
士郎から聞いた冬木市の聖杯戦争は、ムーンセルよりシンプルだった。
七組のマスターとサーヴァントによる戦い。
対戦相手も決められないし、決戦の準備のための
アリーナのように鍛錬をする場所もないし、決まった決戦場所もない。
もちろん
つまり、いつでも・どこでも・どの相手とでも戦いが始まるという事だろう。
「言いかえれば、いつ・どこで・だれが襲って来ても、おかしくない状態って事だ」
そして、戦いが始まる前に、準備できる時間や場所が確保されているワケではない。
ムーンセルの聖杯戦争でも、決戦の時以外で襲われた事はある。
アリーナで鉢合わせした時に攻撃されるのはもちろん、酷い時は月海原学園内で奇襲をかけられた。
よく分からない場所に連れ込まれて、襲われた事もある。
それでも、基本的に学校では戦闘禁止だったし、アリーナでも短時間で強制的に戦闘を終了させられていた。
今回の聖杯戦争にはどうも、それすらないらしい。
「どこにも安全地帯はないって事か」
例えばこの衛宮邸だって、安全というワケではないだろう。
「そう悪い事ばかりでもあるまい。
対戦相手がはっきり決まっていないのなら、一時的に他のマスターと手を組みやすいだろう。
決戦の日が決まっていないのなら、我らの方からいつでも仕掛けていけるではないか」
セイバーが励ますように言ってきた。
よほどわたしは頼りない顔をしていたらしい。
「そうだね。
悪い事ばかりじゃない」
例えば対戦相手が決まった時点で、『絶対に自分か相手の死を覚悟しなきゃならない』というワケではない。
そういう意味では、少しだけ気が楽かもしれない。
「問題はこっちか……」
思わず溜め息が出る。
こちらの問題は、わたし達だけでは解決できない。
現在、セイバーは本来の力が出せていない。
これは、マスターであるわたしの
確認してみたところ、セイバーだけでなくわたしの
携帯端末の数値で表すならば30。
士郎のセイバーに使った『守り刀』ならば、コードキャストを一回しか使えない量だ。
礼装で魔力の底上げをしても、ムーンセルで勝ち抜いた時の量に届くかどうか。
アリーナで鍛錬をするのは、マスターの力量を少しでも上げるためである。
――『魂の改竄』という方法がある。
マスターの力量が低くてサーヴァントの実力が完全に発揮できない場合、マスターはサーヴァントとの魂の
実力のないマスターはアリーナで力をつけ、『魂の改竄』によってサーヴァントの力を復元する。
前回わたしが勝ち残れたのも、『魂の改竄』によってセイバーの霊格を完全に戻せた為だ。
「それができないなんて……」
ムーンセルの聖杯戦争では、教会にいた姉妹が『魂の改竄』をやってくれていた。
士郎は教会はあるが、『魂の改竄』については知らないと言った。
それはつまり、『魂の改竄』を行える者がいないと言う事だろう。
セイバーは今の最弱の能力のまま、最後まで戦っていかなければならない。
「それについても、これから二人で考えていこう。
今宵は、もう休むべきだ。
休息も奏者の大切な仕事だぞ」
セイバーの言葉は正しい。
今日は色々あって、すごく疲れた。
畳には二組の布団が、きちんと並べられている。
「奏者よ、おやすみ。
麗しき夢を見るがよい」
「うん。
おやすみ、セイバー」
布団にもぐり込むと、すぐに睡魔はやってきた。
今日はここまで。
続きはまた明日から――