fate/extra night   作:iekiron

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interlude ~赤い少女と褐色の少女~

 日付はすでに変わっている。

 人影がなくなり静かになった筈の夜の新都(しんと)に、二つの異分子の影がある。

「……脱落したのは二人、男性と女性。

ハーウェイ家の黒い蠍と、そのサーヴァントによって倒された。

レオ・ハーウェイもこの場に来ていたようですね」

 何もない地面を見ながら、少女は呟く。

 相づちを求めたわけではない。

 もとより、もう一人との会話など最初から成立しない。

「倒されたのは、私の探し人ではない。

しかし、ユリウスやレオナルドの狙いも、あの二人に違いありません」 

 一人で呟き続ける少女の褐色の肌は、夜の闇に溶け込んで塗り潰されたように黒い。

 傍らに立つ中華風の巨人は、無言で彼女を見守っている。

「黒い蠍は活発に動き回っている。

私の星達は、大丈夫なのでしょうか……」

 褐色の肌の少女はごち、その場から立ち去ろうとする。

 

「そこまでよ。

動かないで」

 真冬の夜の冷気よりも更に冷たい、別の少女の声。

 褐色の少女の足が止まった。

「こんばんは、名前も知らないマスターさん。

また、随分と派手にやってくれてるみたいね」

 褐色の少女は振り返る。

 視線の先には二つの人影。

 一人は長い黒髪を二つに結わえた、意志の強そうな瞳を持った少女。

 一人は短い白い髪に浅黒い肌、外套の上からでもその筋肉質な身体が想像できるような屈強な体格の男性。

 赤い衣装に身を包んだ二人は、どちらも腕組みしながら、褐色の少女を睨みつけていた。

「貴方は――」

 褐色の肌の少女の目が見開かれる。

 紫色の瞳の見つめる先は、声をかけてきた少女ではなく、何故か赤い男性の方だった。 

「アーチャー?

何故、貴方が遠坂凛と一緒に――」

「何、アンタの知り合いなの?

アーチャー」

 怪訝そうに赤い少女は己の従者に振り返った。

 赤いサーヴァントは肩をすくめる。

「――さて、私は会った事がないはずだが。

君の知り合いではないのか、凛」

 名前を呼ばれたのは君だろう、と皮肉げに続ける赤い弓兵。

 凛と呼ばれた少女は、むぅと唸った。 

 敵マスターはどう見ても赤い弓兵に言っているのだが、彼女のサーヴァントは我関せずを決め込むつもりらしい。

 

「……まぁいいわ。

後でちゃんと聞かせてもらうから。

で、そこの貴方。

わたし達の事を知ってるって事は、貴方はこの聖杯戦争の参加者だって思っていいのかしら?」

 気を取り直して話を進める凛。

 彼女達は第五次聖杯戦争の参加者だったのだから、『新たな参加者』と違って、名前を知られていても不思議はない。

「……そんな、会った事がないなどと。

敵として戦った事もありますが、二人きりの密室で身体を重ねた仲ではないですか」

 そんな凛をまったく無視して話を戻す褐色の少女。

 びきっ、と凛のこめかみに青筋が浮いた。

「……今の、どういう意味?

アーチャー」

「――誤解するな、マスター。

もう一度言うが、私は彼女に会った事がない」

 主の怒りに回りくどく言う余裕がなくなったのか、アーチャーは憮然としながら、褐色の少女の言葉をはっきり否定した。

「初めて会った女の子が、いきなり『責任取って!』て迫って来てるって言いたいワケ?」 

「……いや、『責任取って!』は言ってないだろう。

それに、そもそもそんな事実はない、と私は言っているのだ」

 褐色の少女は赤い主従を不思議そうに見ている。

 己の発言が敵の信頼関係に亀裂を入れた事は、意識していないらしい。

「私はともかく、あの二人から遠坂凛に乗り換えたのですか、アーチャー?

敵になった者に言う事ではありませんが、あまりフラフラとし過ぎるのもどうかと――」

「……『あの二人』?

アーチャー――」

「だから違う!

私には何の事だかさっぱり分からん!

ええい、ほら凛、彼女は敵マスターだぞ?

私達を動揺させて、間隙をつく作戦に違いない!」

 秒単位で悪化する己の立場に耐えかね、彼らしくもなく、アーチャーは声を荒げる。

 赤い少女は疑わしげな視線を従者に向けながら、褐色の少女に向き直った。

 

「……アーチャーの事はひとまず置いておくとして。

わたしは貴女を知らないけど、貴方はわたしを知っているようね」

「私を知らない?

遠坂凛、霊子虚構世界(セラフ)での戦いをお忘れなのですか?

私と貴方の戦いの間に、あの二人が割り込んで来た事も――?」

 更に不思議そうな顔をする褐色の少女。

 凛の顔が不快げに歪んだ。

「悪いけど、人違いよ。

わたしは貴方を知らないもの」

 己のサーヴァントに関しては否定しない凛。

 弓兵はものすごく文句がありそうな顔で、己のマスターを見ている。

 

「人違い?

しかし……いえ、きっとどちらでも良い事なのですね」

 どこか納得したような表情で、褐色の少女は眼鏡をかけ直した。

「それでは改めて。

初めまして遠坂凛。

私はラニ=Ⅷと言います」

「……ご丁寧にどうも。

わたしの自己紹介は、必要かしら?」

「いいえ。

名前はすでに知っていますし、現在(いま)の貴方がどういった人間なのかを知る必要はありません」

 褐色の少女のきっぱりとした拒絶。

 凛のこめかみに、更に多くの青筋が浮き出た。

「……そうね。

これから殺し合いをする相手の事を知ったって、心の贅肉ですものね。

それで、貴方はこの聖杯戦争の参加者で、近頃夜を騒がせているマスターだと思っていいの?」

 凛は残った理性を総動員して平静を装いながら、話を本題に戻した。 

「聖杯戦争の参加者、というのは合っています。

しかし、他のマスターを襲っているマスターというのは、私ではありません」

 言いながらラニは何もない地面に視線を落とした。

「つい数時間前にもここで、二組の参加者が脱落しました。

襲撃者の名前はユリウス・ベルキスク・ハーウェイ。

『ハーウェイの黒い蠍』と呼ばれる殺人鬼です」

 赤い弓兵の貌が引き締まる。

 彼にとっては、あるいは三騎士クラスのサーヴァント以上に警戒するべきかもしれない相手の名前だった。

 

 

ステータス情報が更新されました

【クラス】アーチャー

【マスター】遠坂 凛

【性別】男性

【真名】

【筋力】D 【耐久】C 【敏捷】C 【魔力】B 【幸運】E 【宝具】??

【クラス別能力】対魔力:D 単独行動:B

【保有スキル】千里眼:C 魔術:C- 心眼(真):B

【宝具】

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