「ハーウェイの黒い蠍?」
聞き慣れない名前に、凛は眉をひそめた。
「はい、とても危険なマスターです。
ここ数日、私は黒蠍の行動を監視していました。
すでに十人以上のマスターが、彼らの手によって倒されています」
「つまり、そのユリウスって奴が派手に動き回ってるマスターで、貴女はそれを止めようとしてるって事?」
凛が尋ねた。
赤い弓兵は黙って、ラニの端正な貌を見ている。
「違います。
私が黒蠍の行動を監視しているのは、彼が私の探し人を狙うかもしれないからです。
それ以外で、私の方から彼らに何かするつもりはありません」
きっぱりと否定するラニ。
「私は『私の
それにユリウスはあの二人と因縁がある、と小さな声で呟くラニ。
「なるほど。
お友達を探しにわざわざ冬木市までやって来て、聖杯戦争に参加したってワケね。
ならその友達っていうのも、マスターなんだ?」
凛は呆れとも感心ともつかない声で言う。
もし探し人が一般人ならば、ユリウスというマスターに狙われる必要はないだろう。
「……本当に別人なのですね、遠坂凛。
ええ、私も彼らも黒蠍もマスターです。
冬木市で行われた聖杯戦争とは別の、天上世界で行われた聖杯戦争の参加者です」
ラニはどこか寂しそうな声で言った。
「私が今言える事はこれくらいです。
貴方達とは、今の所戦う必要はないと思われます。
ここでの聖杯戦争は、トーナメントではないのでしょう?」
「……そうね。
冬木市の聖杯戦争はト-ナメントじゃないし、貴女は暴れまわっているマスターじゃないらしいし、本来ならこのまま別れる所なのかもしれないわね」
凛はラニの言う事を認めながら、それでも好戦的な笑みを浮かべる。
「けど貴女達は冬木の聖杯戦争の参加者として、戦うつもりでここにいる。
マスターとして、貴女を見逃すわけにはいかないわ」
「……それは、この場で私達と戦う、という意味ですか?」
いつの間にか、アーチャーの手に双剣が握られていた。
凛の腕の、魔術刻印が光を放つ。
「そうなるわね。
それに悪いけど、貴女の話をすべて鵜呑みにする事はできない。
貴女もこのまま捕まってくれそうもないし、詳しい話は貴女達を倒して聞く事にするわ」
凛の不敵な笑いに、ラニは首を横に振った。
「いいえ、アーチャーの強さはよく知っています。
ですから、貴方達とは戦いません」
「……何?
ならおとなしく捕まってくれるって言うの?」
拍子抜けしたように言う凛。
ラニはまた、首を横に振った。
「それは違います。
戦いにはならない、と言ったのです」
ラニは静かに、そしてはっきりとした声で否定する。
「攻撃するのは、私達だけ。
貴方達はただ、受けとめるだけです」
空気が変わる。
凛とアーチャーに油断があったわけではない。
ただ、長い間冬木市に住んでいた者と、初めて訪れた時代と土地に愛着のなかった者との、認識には違いがあった――
「■■■■■■――!」
「バーサーカー!
コード:ゴッドフォース・クロウラー!」
「なッ!」
アーチャーが驚愕の声をあげた。
狂戦士が吼え、彼の戟に魔力が流ていく。
「馬鹿な、正気か!
こんな街中で奴の宝具を使うつもりか!」
「ええ。
そうしなければ、貴方達は倒せない」
前回で思い知っている。
遠坂凛はマスターとして
故に、最初から全力で宝具を開放する。
出し惜しみしたり周囲の事に気を取られてしまえば、瞬殺されるのみだと分かっている。
「まさか!
そこまでぶっ飛んだマスターなの!」
「凛、彼女は本気だ!
目的のためなら自爆する事をも恐れない!」
すでにバーサーカーは、宝具を発動する態勢に入っている。
アーチャーの双剣で、発動前に狂戦士を倒し切る事ができるか――
「万物は融解し、魂の純度はクオリアの地平に下りる――」
「――ッ!
アーチャーッ!」
――間に合わない!
即断した凛は、己の従者に声をかける。
「チィ――!」
アーチャーは舌打ちして双剣を捨て、高速で自己の裡に埋没する。
バーサーカーの宝具は、彼の持つ中でも最硬の盾でしか防げない――!
「トゥインクゥトラ――トリス・メギストス」
ラニの声が高らかに響く。
狂戦士の戟が闇夜に舞う。
「――
「■■■■■■――!」
アーチャーが剣の丘から盾を引きずり出す。
バーサーカーの咆哮が夜の街に響き渡る。
「主砲、放て――!」
「“
新都の静かな夜は、轟音と閃光に破られた――
ステータス情報が更新されました
【クラス】バーサーカー
【マスター】ラニ=Ⅷ
【性別】男性
【真名】呂布奉先
【筋力】A+ 【耐久】A+ 【敏捷】B+ 【魔力】C+ 【幸運】C+ 【宝具】A
【スキル】バーサーカー化:A 勇猛:B 反骨の相:B
【宝具】