冷えたサンダルに足を通すと、セイバーは縁側から庭に出た。
室内よりも肌寒い空気が貌を撫でる。
陽光に照らされ、金砂のような髪がさらりと流れた。
「おや。
ここにいましたかアーチャー、それにライダーも」
庭先にある、土蔵の入り口。
衛宮士郎の工房兼藤村大河の物置となっているその前に、長身の男女の姿があった。
「珍しく衛宮邸三サーヴァント、勢ぞろいという訳ですね」
「――待ち給えセイバー。
その括りで何故、私が数に入っている?」
憮然とした表情で、弓兵は剣士を返り見る。
赤い騎士のすぐ隣では、騎兵が大きく頷いていた。
「確かにその通りですね。
衛宮邸のサーヴァントというからには、ランサーや英雄王やアヴェンジャー、それにバーサーカーもいないとおかしい」
「――更に待ち給えライダー。
何だその訳の分からん、破滅じみたラインナップは。
しかもバーサーカーなど、この家に来た事自体あるのか?
私の覚えている限り、あの巨体が衛宮邸の屋根を突き破り、改修工事せざるを得なくなったとかいう記憶はないぞ」
「貴方や士郎の知らない時に、そんな事がなかったとも限りませんが。
それはともかく、私達に何の用ですか、セイバー」
アーチャーの渋顔にクールに返しながら、ライダーはセイバーを見る。
昨夜の戦闘時のマスクはすでになく、代わりに彼女の眼の力を殺す眼鏡が理知的な光を放っていた。
「いえ、昨夜の事を聞いておこうと思いまして。
私とシロウが穂群原学園でアサシンと戦闘している際、貴方達も戦闘になったと聞きました」
「……戦闘、というかシンジへのお仕置きというか。
ともかく、私がライダーのサーヴァントと交戦した事は確かです。
紆余曲折あってアーチャーや他のサーヴァントの介入もあり、結局その辺りが有耶無耶になってしまいましたが」
残念無念、とライダーは肩をすくめる。
常はクールな筈の彼女だが、その口調はかなり真実味を帯びていた。
……彼女なりの冗談なのかはたまた本気か、二人のサーヴァントは確かめる事を放棄する。
「こちらも、冬木の聖杯戦争にはいなかった二組のサーヴァントやマスターと交戦しました。
アサシンとキャスターのサーヴァントでしたが、これらのクラスには似合わず、どちらもかなりの強敵です。
戦うのでしたら十分な注意を。
キャスター組など、特におかしかった。
あのマスターには、
「待て。
実体がないマスターだと」
セイバーの話をそれまで聞くともなく聞いていたアーチャーが反応した。
ライダーも興味をそそられたのか、居住まいを正してセイバーに向き直った。
「はい。
双子のように、容姿のよく似たマスターとサーヴァントでした。
というより、おそらくはマスターの容姿をサーヴァントが模しているのでしょう」
「サーヴァントはいい。
それよりマスターの実体がないとは、どういう意味だ?」
「言葉通りの意味です。
彼女は生身の肉体を持たない。
……おそらくはすでに死んでいる、霊体としての存在かと」
やや戸惑ったように、セイバーは口を濁した。
昨夜のマスターは、彼女から見ると異常な存在だった。
「それでは、まるで
死者が
そのマスター、魔術でその場にいるように見せかけていただけではないのですか?
本体は安全な場所で、サーヴァントのみを貴女達と戦わせていたとか」
「……いえ、それならば誰も気づかない筈がありません。
あの場には、三組もの魔術師とサーヴァントがいたのです。
あのマスターは、確かにあの場所にいた。
代理マスターという可能性もありますが、代役ならばもっと普通の人間を持ってくるでしょう。
あのようにあからさまに不自然だと分かるマスターを立たせるのでは、このマスターは偽物だと言っているようなものですから」
「ああ。
君の出会った少女は、確かにキャスターのマスターだろうさ」
考えを纏めるように腕を組み直しながら、アーチャーが合槌を打った。
「アーチャー。
あのキャスター組を知っているのですか?」
「知っていた
あのキャスターは子供達に話を読み聞かせる本であり、眠りを誘う歌、夢を見せる鏡だ。
私達のような、元は生きた人間であった英霊とは違う」
思考の海に沈みながら、アーチャーは応えた。
「彼女の主が死者でありながらマスターであるのは、そうでなければ再現にならないからだろう」
赤い弓兵は独白する。
脳裏によぎるは自身の知る筈のない記憶。
白と黒の砂糖菓子。
クッキーが砕けるように消えていった合わせ鏡。
「他のマスター達は皆、肉体を持ってこちら側に来ている。
彼女が肉体を持ってこちらに来ていても不思議はなかった。
――できなかったのか、それともしなかったのか。
元々、彼女はあちら側でも肉体を持ってはいなかった。
地上であの聖杯戦争を再現するのならば確かに、ありすは肉体を持っていない事が自然なカタチではあるが……」
言って外套の騎士は目を閉じた。
頭に浮かぶ、昨夜会った記憶のない少年、彼と同じ名前の少女。
「それならば何故、あの二人は肉体を持ってこちらに来ている?」
アーチャーの疑問に答えられる者は、この場にはいない。
その答えを知るのは誰か。
おそらく彼と出会う筈がなかった、赤い暴君と狐耳の巫女のみが答えを知っている。
幕間劇は続いている。
学生時代から私は英語、すごく苦手でした。
extra nightで余分な夜なんて読めるか、とか言わないで(汗)
いやホント、無理やりすぎるこじつけですな。
あと学校は冬休みに入っているので、縁側同盟も登校する必要はありません。