fate/extra night   作:iekiron

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泰山の衝撃

「士郎、一体何処に向かっているの?」

 傍らを歩く士郎に問いかけながら、わたしは辺りを見回した。

 深山町にある商店街。

 昨日、レオと衝撃的な遭遇をしたあの通りである。

「冬木市聖杯戦争の監督役の所だ。

岸波はこっちの聖杯戦争の参加者じゃないけど、一応顔見せ位はしといた方がいい。

何かあった時には、保護して貰う事もできるし」

 説明しながら、士郎はわたしの半歩前を歩いている。

 彼は今、サーヴァントを連れていない。

 待機しているのは、霊体化しているわたしのセイバーのみだ。

「監督役は、一応は中立だ。

信用はできないけど、信頼はできる。

もし岸波が負けてサーヴァントがいなくなったら、教会に駆け込め。

マスターの権利を放棄すれば、聖杯戦争が終わるまでおまえの安全を保障してくれる。

今のこの状態が聖杯戦争と言えるかどうかは分からないから、どの程度の保護が受けられるのか分からないけどな」

 

 ――ここの辺りのルールは、わたし達の経験した聖杯戦争との最大の差異だろう。

わたし達の聖杯戦争では、サーヴァントのいなくなったマスターは電脳死するのがルールだった。

冬木市の聖杯戦争では、敗北したマスターは聖杯戦争を運営している者達に保護して貰える権利があるらしい。

 

「着いたぞ。

……ったくアイツ、待ち合わせなら教会でいいだろうに。

何でよりにもよってここなんだよ」

 珍しく士郎がぼやいている。

 待ち合わせ場所とは、中華飯店だったらしい。

 看板に書かれている名は、『紅州宴歳館・泰山』。

 窓ガラスを昼間から閉め切ったその店は、鬼が出るか蛇が出るかという雰囲気を醸し出している。

「飲食店で待ち合わせしてたんだったら、お昼を食べずに来ればよかったのに」

「いや、飯を食いに来た訳じゃない。

おまえを紹介するだけだ。

一緒に食うように勧められても、食わない方がいい」

 妙にきっぱりとした口調で士郎は言い切った。

 気のせいか、堅い面もちである。

 今、サーヴァントを連れていないせいだろうか。

 昨日のわたしのように他のマスターとぱったり出会ってしまえば、無残に殺される。

 わたしのセイバーがいるが、ユリウスやレオに今襲われたら、対処できないかもしれない。

「……よし。

入るぞ、岸波」

 むしろ自分に向かって言い聞かせるような口調で宣言すると、士郎はドアノブに手をかけた。

 

 

 ――開いた扉から最初に目に入った人物。

 

 器に盛られているのは、地獄が具現化したかのような香りと熱気を放つ麻婆豆腐。

 

 修羅の如くレンゲを持つ手を動かすは、店に似合わない、カソック姿の――

 

 

「あら、ご機嫌よう。

早かったのですね、衛宮士郎。

相変わらずどこに行くにも女連れ。

愉しそうね、貴方達」

 

 ――なんか、シスターがマーボーを食べていた。

 何故だか肩透かしを食らった気分になった。

 

「なんでさ」

 そして何故か呆然とした表情で士郎も呟いている。

 

「なんでさ、と言われましても。

見ての通り、昼食を取っているだけですが」

「そりゃ坊主も絶句するだろ。

まともに味覚がある奴なら、ここの麻婆は食えねぇよ」

 銀髪のシスターの隣に座っていたどこかで見たような青い長髪の男が、げんなりしたようにぼやいた。

 今日は手に槍を持たず、お馴染みの青い戦闘服(タイツ)も着ていない。

 似合いすぎるアロハがその手の筋の人にしか見えないその大男は、世界の終わりに直面したような目を卓上に向けていた。

 

 ……たかが麻婆に。

 

「あー。

いや、すまん。

泰山で麻婆なのにカレンだったのに驚いただけだ。

何なんだろうな、このデジャヴ。

……そう言えば、極端に甘いものか極端に辛いものじゃなきゃ味がしないんだっけ、アンタ」

「ええ。

それにランサーに作らせるばかりでなく、たまには働き者のうちのサーヴァントをねぎらう意味で、外で食事をするのも悪くないかと。

前任者もよく通っていたようですし」

「どう考えてもねぎらってませんよねコレ!

つーか完全に拷問じゃねーかよこのサドマスター!」

 数々の戦場で窮地をくぐり抜けてきた大英雄が、心の底から叫んでいた。

 

 ……たかが麻婆で。

 

 アロハ男(ランサー)の叫びを意に介した風もなく、黙々とシスターは口にレンゲを運んでいる。

 ペロリ、と悩ましげに口の端についた麻婆を舌で舐めとった。

 額から汗が吹き出し、何やら同性から見てもハッとする妖艶さを醸し出している。

 

「何て悪魔的。

火事現場にガソリンをばら撒いたかのよう。

味を忘れたこの舌にさえ、生命の危機を思い出させるなんて。

こんなモノを好んで食べる輩は、よほど人格が破綻した外道神父か、世界に絶望した正義の味方(キリング・マシーン)だけに違いないわ。

うちの駄犬達にも、この感動(不幸)をお裾分けしてあげなければ」

「いらねーよマゾシスター。

被虐趣味は自分一人でやってくれ。

飯食いに来だけなのに、何で生命の危機を感じなきゃならねーんだ」

 怪物じみた強敵との命がけの殺し合いにも笑って応じてきた槍兵が、全力で拒否していた。

 

 ……たかが麻婆を。

 

 ふっとシスターと目が合った。

 感情の感じられない瞳の前に、全てを見透かされているような感覚になる。

 知らず、ゴクリとわたしの喉が鳴った。

 何かを思案するように彼女は首を傾げ、おもむろに頷くと、無表情なままでわたし達の方に皿を押し――

 

 

「――――食べますか――――?」

「――――食べますかッ!」

 

 

 わたしが答えるより早く、衛宮士郎の全力の拒否が店内に響き渡っていた。

 

 

ステータス情報が更新されました

【クラス】ランサー

【マスター】カレン・オルテンシア

【性別】男性

【真名】

【筋力】B 【耐久】C 【敏捷】A 【魔力】C 【幸運】E 【宝具】B

【クラス別スキル】対魔力:C

【保有スキル】戦闘続行:A 仕切り直し:C ルーン:B 矢よけの加護:B 神性:B

【宝具】




また間が空いてしまった……。
カレンがマスターの時のランサーのステータスは間違ってるかもしれません(汗)
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