fate/extra night   作:iekiron

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グロ描写アリです。
苦手な方はご注意を。


標本のピン止め

 餌に牙を突き立てようとした獣が七・八体、同時に宙を舞った。

 肉食魚の如く獲物に喰らいつこうとしたソレらは、捕食すべき対象から手痛い反撃を受けて命を落としていく。

 人間相手ならば骨も残さず殺し尽されている筈の暴力の群れは、人間のカタチをした災厄に吹き飛ばされる。

 殺意の大波は二体のセイバーによって堰き止められ、押し戻されていく。

 

「こいつら、一体何なの?」

「あるサーヴァントの残骸、なれの果てだ。

約束の刻でもないのに、こんなに大量発生してるのはおかしいんだが……」

 言いながらわたしの傍らに立つ士郎の手には、いつの間にか双剣が握られていた。

 昨夜も見せた、夫婦剣『干将』・『莫耶』。

 中国の春秋時代に呉の名工が鍛え上げたとされる剣の、おそらくは贋作。

 錬鉄の英雄と同じく、士郎は『投影魔術』が使える様だ。

 赤い外套の騎士の様に宝具まで投影できる魔術師は特別だと思っていたが、どうやら、地上ではそうでもないらしい。

「気をつけろ岸波。

サーヴァントなら問題にならなくても、人間には手強い相手だ」

 言って士郎は双剣を構えた。

 

 士郎の声が聞こえたからではないだろうが、一体がセイバー達の虚をつく動きで標的を変え、わたしに向かって飛びかかってきた。

「shock(64)!」

 咄嗟に、持っていた礼装『破邪刀』のコードキャストを放つ。

 獣の動きが一瞬、硬直した様に鈍り、鋭いツメがわたしを裂く直前で止まった。

「ヤロウ、こっちだ!」

 怒声と共に士郎の双剣が閃き、獣の腕が斬り飛ばされた。

 次いでわたしの傍まで戻ってきたセイバーが、獣の脳天に剣を叩き込んだ。

「数だけは多い!

奏者よ、余の傍から離れるな!」

 叫びながらセイバーは剣を振るい、さらに三体を斬り飛ばした。

 わたしも礼装『錆び付いた古刀』のコードキャストでセイバーの筋力を強化し、彼女を援護する。

 

 

 ――他のみんなはどうしてる?

 

 

 目をやると、士郎は別の一体と斬り合っていた。

 双剣とツメが火花を散らす。

 青いセイバーが駆け戻り、背後から士郎を襲おうとした五体ほどを一撃で弾き飛ばした。

「一体一体は脅威ではありませんが、数はキリがありません。

シロウ、宝具使用の許可を!

風王結界(インビジブル・エア)で一気に吹き飛ばします!」

 士郎のセイバーは叫びながら二体を斬り倒した。

「ああ!

頼む、セイバー!」

 背後の従者に答えながらも、士郎は異形と剣を交え続けている。

 

 ――風王結界とは、もしかしたら昨夜、アサシンを返り討ちにした宝具だろうか?

 期待に胸が躍った。

 獣の群れは数えきれないほどで、見渡す限り公園は一面、異形に埋め尽くされている。

 こんなのを全て相手にしていれば、セイバーはともかく、わたしの魔力はすぐに尽きてしまう。

 校舎に風穴を空けたあの威力なら、ここにいる全ての敵を一掃できそうだ。

「――風よ――」

 青い騎士の声に合わせるように、どこからか風が吹いてきて――

 

 

「不義・不徳のヤツバラどもよ!

事実無根の自覚はあるか!

妻よ、これなる生贄どもの血潮を以て、その咽喉を潤したまえ!」

 場違いな大声が、青い剣士の声をかき消した。

 

「えっ、今の……」

「跳ぶぞ!

捕まっておれ!」

 声の主を見つけるより早く、セイバーに手を掴まれ、わたしの腰が宙を浮いた。

 セイバーがわたしを抱き上げたのだ。

 自身より大柄なわたしを抱え上げたまま、セイバーの脚が地を蹴り、跳躍した。

 最優のサーヴァントの脚力はスペースシャトルを思わせる推進力を見せ、わたしは自分が鳥になったかの様な錯覚を受けた。

 

 

 ”――串刺城塞(カズィクル・ベイ)――!”

 

 

 慣れない浮遊感に戸惑う中、見下ろす大地から数え切れない断末魔を聞いた。

 阿鼻叫喚の地獄絵図が、地上に展開されていた。

 雨上がりに芽吹く草木の様に、地面から無数の槍や杭が生えてきた。

 獣達は地面から突き出してくる槍に貫かれ、串刺しの標本になっていく。

「アレらは不浄の塊のようなモノどもだったのだろう。

そんなのが奴の宝具を受ければ、一たまりもあるまい」

 耳元で囁いたセイバーの台詞に、記憶のページをめくる。

 ――対軍宝具・串刺城塞(カズィクル・ベイ)

 魔槍から放たれる、呪いと鉄槌の拷問魔城(ドラクリア)

 相手の持つ不義・堕落の罪に応じて痛みを増すという、正義の一撃。

 創作によって世界でもっとも有名な怪物の一人になってしまった、とある武人の代名詞と言える宝具だ。

「雑兵は片付いたが、さらに厄介なのが現れた様だな。

あやつらは余よりも人の話を聞かぬ故、出会ってしまった以上は、逃れるのは困難だぞ」

 セイバーの言う通り、串刺しになった骸達の墓の中央には、二つの見覚えのある人影がある。

 

「奇跡だ。

奇跡だろう!

奇跡である!

そうであろう妻よ!

見るがいい、我が宿敵、我らが求めた天上の供物を!

名声は地に墜ち、信仰を見失ったこの身とはいえ、神は再び機会を与えられた!」

「ウン。

食ベソコナッタゴチソウ。

トッテモ食ベタカッタゴチソウ。

ウレシイナァ」

 『串刺し公』と呼ばれたランサーと、拒食の道化師・ランルーくん。

 月面世界で最も猟奇的だった対戦相手は、凄惨な笑みを浮かべて、重力に引かれて落下していくわたし達を迎えていた。

 

 

ステータス情報が更新されました

【クラス】ランサー

【マスター】ランルーくん

【性別】男性

【真名】

【筋力】B 【耐久】A 【敏捷】E 【魔力】A 【幸運】D

【スキル】信仰の加護:A+++ 戦闘続行:A 無辜の怪物:A

【宝具】串刺城塞(カズィクル・ベイ)

 

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