失敗した。
説明会にギリギリ間に合ったのは良かったんだが、所長の話が難しく、長かったのでつい寝てしまった。
ただ、俺だけでなく、立香さんも寝てしまい、二人とも自室で待機を命じられてしまった。
「いやー、所長の説明って難しかったねー」
「それに長かったしな」
「フォウ!」
俺たちの言うことに同意するかのように鳴くフォウ。
こいつ、着いて来たのか。
さて、これからどうするか…。
「ねぇ、よかったら私の部屋でお話しない?」
あからさまに怪しいので、断ろう。
「いや、俺は休みたいから自分の部屋へ行くよ」
「そう?残念だなー」
そうこうしているうちに、俺の自室に着いた。
「あ、丁度よかった」
声の聞こえた後ろを見ると、ミス・ロマンがいた。
「お願い!少しの間でいいから匿ってくれない?」
「またサボりですか?」
「まぁ、そうなんだけど…」
全くこの人は…
「ねえ、この人は誰なの?」
どうやら立香さんは初対面らしい。
「この人はロマニ・アーキマン。ここカルデアの医療部門のトップをしている人だ。ミス・ロマン、こちらは藤丸立香さんです」
「初めまして。もしかして君が最後に来たマスターかな?よろしく」
「…ええ、よろしく」
ミス・ロマンからは何かフワフワした空気を感じるが、立香さんか、は穏やかじゃない空気を感じる。
『ロマニ・アーキマン、もう少しでレイシフト開始だ。万が一に備えて管制室へ来てくれないか?』
二人が握手をしていると、知らない人からミス・ロマンに連絡が入る。
「えっと…今すぐに?」
『そうだ、今すぐにだ。今は医務室にいるんだろ?なら、すぐに来れるだろう。それじゃあ、待ってるからな』
伝えることは伝えたのか、すぐに通信が切れた。
「はぁ…イヤだなぁ…」
そうは言いつつも呼ばれた管制室へ向かうミス・ロマン。しかし、よほど嫌なのか、その足は重く、ゆっくりとした歩調である。
「ロマニさん、大丈夫かな?」
「精神はギリギリでアウトかもな」
そう返した瞬間、突然辺りは真っ暗になり、大きな音と揺れがカルデアを襲った。
少しして大きな警報があちこちで鳴り響く。
「な、なんだ!?なにが起こった!?」
大きな揺れのせいで倒れた時に頭を打ってしまったのか、少し気を失っていたようだ。
腹の上に何か重さを感じるので見ると、そこには同じく気を失っている立香さんがいた。
「立香さん、起きてくれ、立香さん!」
立香さんの肩を持って揺する。
「ううん…一体なに?」
なんとか起きた立香さんは辺りを見渡して、俺の顔を見ると固まった。
「ちょっ、星河さん!ち、ちか、近いよ!」
男性にこんなに近づいたのが初めてのせいか、再び気を失ってしまう立香さん。
「ちょっ、立香さん!?」
また肩を持って揺するが起きる気配がない。
「ああ、もう!」
なんとか立香さんを俺の上から下ろした後、また肩を持って揺すったり、申し訳ないが頬を軽く叩くなどして意識を取り戻させる。
「緊急事態なんだ、しっかりしてくれ!」
「ご、ごめんね」
流れて来たアナウンスによると、説明会を行っていた中央管制室で火災が起こっているらしい。さっきの音といい揺れといい、おそらく爆破テロのようなモノだろう。
「二人とも、大丈夫!?」
あまり離れていなかったらしいミス・ロマンがこちらへ駆けてくる。
「何があったんですか!?」
「まだ何も分かっていない。取り敢えずあなたたちはすぐに外へ避難して!」
「ミス・ロマンは?」
「私は管制室へ行く。生存者の確認をしなければいけないからね」
「なら、俺も行きます!」
「だったら、私も行きます!」
「いや、話聞いてた!?」
「聞いたうえで言ってるんです!」
「そりゃあ人手があった方が助かるけど…」
おそらく俺が、世界でも数が少ない男性だから判断に困っているのだろう。
「ああ、もう!言い争っている時間も勿体無い!いい!?隔壁が閉まる前には戻るんだよ!」
流石は医療部門のトップ。俺たちの説得に時間がかかると考えて、すぐに適切な判断をする。
「分かりました」
「管制室はここから少し離れてるから、急ぐよ!」
こうして俺たちは中央管制室へと向かった。