管制室に着くことはできたのだが、そこには地獄のような光景が広がっていた。
「生存者はいない。無事なのはカルデアスだけ…」
「そんな…酷い…」
あちこちから火の手が上がっており、管制室の中を赤く染め上げている。
「これは事故じゃないね。明らかに人為的に行われたテロ行為だ」
「いったい誰がこんなことを…」
しばらくその光景に呆然としていると、放送が流れる。どうやら電力不足のようで、手動で予備電源に切り替えなくてはならないようだ。
「…私は地下の電源所へ行ってくる。カルデアを止めるわけにはいかないからね。だから、あなた達は急いでここから脱出しなさい。いいね、寄り道しちゃだめだよ?」
俺たちの返答も聞かず、ミス・ロマンは行ってしまった。
「星河さん、どうする?」
「どうするって、急いでここから」
「うう…」
「っ!」
すぐ近くから声が聞こえた。急いでそこへ向かうと、マシュさんが瓦礫の下敷きになっていたが、まだ息があった。
「マシュさん!」
「マシュちゃん!」
「……、あ」
マシュさんはぼんやりとした目でこちらを見る。
「待ってて、今助けるから!」
マシュさんの上に乗っている瓦礫に手をかける。火にあたっていたせいか、瓦礫は熱を持っており手が少し焼けるが、俺は気にせず瓦礫を持ち上げようとする。
「ぐぬぬぬぬ…」
「ちょ、星河さん、男がそんなの無茶だよ!?」
「うるせえ!やってみなきゃ、分からねえだろ!」
「私の、ことは…いい、です…」
「よくない!」
「でも、早く…逃げないと…」
「目の前にある命を無視できるほど、俺はできた人間じゃないんだよ!」
「そうだね。なら、私も手伝うよ」
「星河…さん…、立香…せん…ぱい…」
「立香さん…ええい、まどろっこしい!立香!いち、にの、さんでいくぞ!」
「うん!」
「よし。いち、にの、さん!」
手のひらを熱で焼かれながらも瓦礫を持ち上げようとするが、まったく持ち上がらない。
そうしていると、急に管制室の中心にある機械が動き始めた。
「あ…カルデアスが…真っ赤に…いえ、そんな、コト、より」
どうやら、時間がきてしまい、隔壁が閉まってしまったようだ。
「…隔壁、閉まっちゃいました」
「そうだな。けど、どうにかなるだろうよ」
「ええ。それよりもまずは、マシュちゃんを助けないとね」
「……あの……星河、さん……立香、せんぱい……」
「どうした?」
「どうしたの?」
「手を、握ってもらって、いいですか?」
「…わかった」
カルデアスと呼ばれる機械が動き出して、何かが起ころうとしている。
もしかしたらこの管制室にいる俺たちに、大変なことが起こるのかもしれない。
そんな中でマシュさんは、手を握ってほしいとお願いして来た。
俺たちはマシュさんの手を片手ずつ、両手で包み込むように握った。
「ああ…あったかい…」
薄れていく意識の中、最後に聞こえたのはマシュさんのどこか嬉しそうな声だった。